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フォートナイトを運営する企業に対し、東京国税局が税務調査を実施し、追徴課税を課したというニュースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【ニュースの内容】
東京国税局は,人気ゲームを配信するアメリカノースカロライナ州に本社のある企業で世界各地に40以上のオフィスがある企業に対し,その海外子会社に税務調査を執行した。
その結果,同国税局は,同子会社が2020年12月までの3年間で約30億円の申告漏れをしていたことを発見して指摘した。
申告漏れの内容は,同社の配信するオンラインゲームで,日本人ユーザーが支払った,同ゲームのアイテム購入代金などの一部に係る消費税が計上されていなかったというもの。
追徴税額は,過少申告加算税を含めると,約35億円となるという。
関連ニュース記事(令和5年11月1日付YAHOOニュース「課金収入300億円申告計上せず フォートナイト会社に35億円追徴 東京国税局」)
【フォートナイトとはどんなゲーム】
ゲームは,スマートフォン,パソコン,ゲーム専用端末などどれでもでプレイできる。プレイヤーは,銃を中心とした武器をゲーム内キャラクターに持たせて,これをプレイヤーが操作してゆき,現れてくる敵キャラクターを武器を使って倒すというゲーム。
世界中で数億人のユーザー(プレイヤー)がいるとされている超人気ゲームだ。
この種のオンラインゲームは,キャラクターの能力向上やプレイ時間短縮のため課金されることが多いが,フォートナイトでは,キャラクターやその装備品の見た目を変えるといったゲームのプレイ自体とは直接関係しない品物(アイテム)が主な課金の対象とされているという。
日本には,大人から子供達を含め幅広いファンがいるという。
【課税の対象】
ゲームは,基本的に無料で配信されているが,上記のようにゲーム内で使えるアイテムを購入した際には課金される。
東京国税局は,同社のルクセンブルクにある子会社が,日本に向けて「フォートナイト」を配信して課金していることを把握して税務調査を開始した。その結果,課金収入約300億円について,前記子会社に消費税の申告納税義務があるのに申告に計上されていないとして約30億円の申告漏れを指摘したという。
【親会社のコメント】
親会社は,取材に対し,「日本の税務当局による定期的な調査の中で,弊社側の不注意により一部の消費税が未払いの状態にあることを認識できました。東京国税局の指摘を受けてすでに税の納付をしました。」とコメントした。(関連記事:令和5年11月1日付日本経済新聞「フォートナイト開発元、ゲーム課金巡り消費税35億円追徴」)
【海外の会社まで追及して逃げ得を許さない,国税当局のすごさ】
今回,税務調査により,人気オンラインゲームをめぐりその配信会社に対して,高額の申告漏れを特定するに至った。東京国税局は,海外にいる親会社側の担当者に対し,web会議で面談するなどして効率的に調査を進め,比較的短期間で修正申告に至ったとみられる。
この点について,元国税庁国際業務課のOBによれば「企業のコンプライアンスの重視は,国際的風潮であり,世界的な有名企業であれば,脱税によるイメージダウンは避けたいはずである。税務調査担当者は,その弱みをうまく突き,協力的姿勢を引き出したのではないか。web会議で面談するのも調査手法の新たな向上だ。」と話す。
国税庁は,世界各国の税務当局と租税条約に基づいて情報交換をしており,日本と関係する海外企業の資金の流れについても注視している。ただ,海外企業の税務調査は,地理的遠隔,使用言語の壁といった国内企業に対するそれとは格段の困難を伴う。今回のような数十億円規模の追徴課税は異例であり,国税当局の面目躍如だ。
【今後の動向】
オンラインゲーム,アプリ,音楽の配信などのインターネット上のサービスは急速に拡大している。日本の総務省の情報通信白書によると,モバイル端末向けアプリの売上高は2024年に387億ドルとなる見込みであり,2015年の5倍超になると予想されている。
東京国税局は,2017年海外に拠点を置くゲームアプリの開発・配信業者に着目して消費税を申告していない約数百社をリストアップし,このうち日本での売上高が多いと見込まれる会社に絞って納税義務があることを通知する文書を送付して啓蒙した。しかし,その反応は芳しくなかった。
国は,納税義務を果たさない海外事業者の「逃げ得」を許さないため,2021年度の税制改正でその事業者と取引のあるプラットフォーム運営事業者などを「特定納税管理人」に指定できることを定めた。これは国税当局と納税者間の書類授受を「特定納税管理人」に担わせる仕組みであり,税務調査の端緒を付けたものとして大きい。国税幹部は,「海外当局と連携し,売上高の大きな事業者を中心に粘り強く対応する。」と話しており,税徴収の公正,適正な実現に注力することを明らかにしており,世界規模の自主申告の適正化が図られている。
今後もその動向に注目し,海外事業者のコンプライアンス遵守が実現されることが望まれる。