事件別―貧困ビジネス

事例

Aさんは、生活保護を受給する人たちのために無料・低額宿泊所を運営していましたが、入居者から毎月生活保護費約12万円を回収し、食事などの経費として約10万円を徴収して残りの約2万円を入居者に渡していました。

そして、経費として徴収していた約10万円を他人名義の口座に入金するなどして、2年間で1億円近い収入を得ていたにも関わらず、約300万円しか所得がなかったと嘘の申告をしていました。

Aさんは、所得税法違反で国税局から告発され、検察庁に逮捕されてしまいました。

解説

1.貧困ビジネスとは

「貧困ビジネス」とは、「貧困層をターゲットにしていて、かつ貧困からの脱却に資することなく、貧困を固定化するビジネス」と定義されています。

「貧困ビジネス」には、無料低額宿泊所、住み込み派遣、消費者金融、闇金勇、ゼロゼロ物件などにかかわる様々なものがありますが、特に無料低額宿泊所に関しては、路上生活者などに生活保護費を受給させる目的で施設に囲い入れ、受給した生活保護費から家賃や食費などの名目で必要以上の金額を徴収するという手口が使われています。

生活保護受給者から高額な家賃やサービス料などを徴収する「囲い屋」などの貧困ビジネスを規制する条例を、2010年に全国で初めて大阪府が制定し、注目を集めました。

そして、2014年には、本事例の下となった事件でさいたま市の無料低額宿泊所の運営者が所得税法違反で逮捕されています。

2.税務調査、査察

納税義務者が、所得税を免れていると疑われる場合には、まず税務調査が行われることが一般的です。

税務調査はあくまでも任意ですが、質問に対する回答を拒否すると、刑事罰を科される可能性があります(国税通則法128条2号:1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。

税務調査の結果、申告漏れが発覚すると、申告した税額と調査の結果算出された税額との差額を追徴課税として徴収されることになります。

また、追徴課税とは別に、延滞税や加算税を課される可能性があります。

意図的な脱税の疑いがあると、国税局査察部による犯則調査、いわゆる「査察」が行われます。

査察の結果、犯則があると判断された場合には、間接国税以外の国税に関する犯則事件については、検察官に告発しなければならないとされています(国税通則法155条1号)。

査察を受けた場合には、刑事事件化する可能性が高いので、税理士だけではなく、弁護士にも早急に相談しましょう。

今回の事例のもとになった事件では、査察を受けて刑事告発がなされています。

3.刑事手続

告発を受けた検察官は、刑事事件として捜査をし、刑罰を与えるべき内容か否か、犯罪を立証する証拠があるか否かを検討した上、起訴不起訴の判断をします。

この捜査を受ける際には、必要に応じて逮捕・勾留がされる場合があります。

逮捕・勾留されてしまわないように、又は逮捕・勾留された場合には早期に身体拘束から解放してもらえるように、刑事事件に強い弁護士に協力を仰ぎましょう。

また、取調べへの対応などによって起訴されるか否かも変わってきますので、身体拘束を受けていなかったとしても、早急に刑事事件に強い弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。

なお、告発された事件の起訴率は約70%となっています。

起訴されると、刑事裁判が行われることになり、有罪無罪の判断が下されます。

保釈により身体拘束からの解放や、無罪を勝ち取るための対策、有罪でも実刑とならないための公判活動など、起訴された後も刑事事件に強い弁護士の力が発揮できる状況は多くあります。

あきらめずに活動をしていくことが必要です。

今回の事例のもととなった事件では、運営者が逮捕されており、最終的に懲役1年6月、執行猶予3年、罰金1500万円の判決が下されています。

なお、事例では所得税法違反に問われていますが、法人として行っていた場合には、法人税を免れたとして法人税法違反に問われる可能性もあります。

貧困ビジネスに関する事件では、社会的弱者を食い物にする犯罪であるとして社会的に厳しい目で見られるため、処分も重くなることが予想されます。早期に脱税や刑事事件に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

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