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1 どのような場合に逮捕されるのか
脱税事件で逮捕される場合の根拠法令は、通常の刑事事件と同じ刑事訴訟法です。
脱税事件で逮捕されるほとんどのケースは、裁判所が逮捕の要件があると判断した場合に発布する令状に基づいて行われる通常逮捕によるものです。
通常逮捕の要件は、大きく2つあります。
1つは「逮捕の理由」であり、もう1つは「逮捕の必要性」です。
①逮捕の理由
「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある」ということです(刑事訴訟法199条1項)。
特定の犯罪の存在と被疑者がその罪を犯したという意味での関連性が、相当程度の蓋然性で認められることが必要です。
雑ぱくにいうと、この被疑者が犯罪を行った可能性が相当程度ある、ということです。
②逮捕の必要
逮捕の理由が認められれば、明らかのその「必要」がないと認めるときをのぞき、逮捕状が発布されます。
必要性については、「被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるとき」は逮捕状請求を却下しなければならない(刑事訴訟規則143条の3)と定められています。
また、「逮捕の必要」は、逮捕によって得られる利益(逃亡・罪証隠滅の防止)と逮捕によって生じる権利侵害の程度(例えば、被疑者が高齢・重篤な病気にかかっている等)とが明らかに均衡を欠く場合には否定されるべきで、逮捕が相当であること(逮捕の相当性)を含む概念であると考えられています。
2 脱税事件で逮捕されるのはどのようなケースか
脱税事件でも通常の刑事事件と同じ要件で逮捕の有無が判断されます。特に問題になることが多いのは、「罪証を隠滅する虞」の有無です。
そして捜査機関や裁判所から「罪証を隠滅する虞」があると判断されやすい場合としては、
- 関係者が多数いて口裏合わせのおそれがある場合
- 被疑者が取調べに出頭しないなど捜査に非協力的な場合
- 被疑者が証拠品を隠してしまう危険が高い場合
などが挙げられます。
脱税事件は基本的に多数の関係者がいて、証拠品も多岐にわたりかつデータや紙などは簡単に破棄できてしまうので一般的に逮捕されるリスクの高い事件類型であるといえます。
それではどのように対応していけば逮捕のリスクを下げることができるでしょうか。
3 脱税事件で逮捕される可能性を下げるためにできること
(1) 取調べにしっかりと対応する
ここでいう「しっかりと対応する」というのは、やってもいないのに安易に疑われている事実を認めるという意味ではありません。
取調官の誘導に従って安易に事実を認めてしまっては、かえって本来関わっていない脱税に加担していると疑われることになります。
安易に自白してしまえば、自白の他に十分な証拠がないにもかかわらず「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があるとして、逮捕されるリスクを高めてしまうことになりかねません。
そこで疑われている事実を争う場合には、取調べで自分の言い分をしっかりと伝え取調官に自分の潔白を理解してもらう必要があります。
また取調べでの出頭要請があった場合に、それを無視することは逮捕のリスクを高めることになります。
仮に出頭を要請された日にどうしても都合がつかない場合には、日程の調整を求めることは可能なので、連絡を無視したり出頭することになった日に無断で出頭しなかったりということはないように対応するべきです。
(2) 証拠品はしっかりと提出し捜査に協力する
脱税事件では先述のように証拠品が多岐にわたるケースがほとんどです。
潔白を主張したい場合、事実を認め罪を争わない場合いずれの場合でも証拠品を積極的に提出し、証拠隠滅行為を行っていないことは逮捕のリスクを下げる事情になります。
(3) 修正申告及び修正申告に基づく納税を行う
これは脱税事件特有の対応になります。
脱税事件の場合は、速やかに修正申告および納税をすることで、国税局による告発および検察による逮捕のリスクを下げられる可能性が高くなります。
この対応では併せて刑事事件になるリスクを下げ、刑事事件になった場合でも不起訴や減刑につながる事情ですので、疑われている脱税の事実に間違いがないのであれば早急に対応するべきです。
4 最後に
逮捕のリスクを下げるためには捜査に対する対応が重要になることはこれまで述べてきたとおりです。
特に取調べの対応は個々の事案や証拠関係、お客様の言い分によっても取るべき対応が大きく変わってきます。ですので是非一度弊所の法律相談を利用してどのような対応を取るべきかについてご相談ください。
また逮捕されてしまった場合には留置されている場所に弁護士を派遣する初回接見サービスもありますので併せてご検討ください。