Archive for the ‘所得税・法人税’ Category
クリニックの脱税はどう処罰される?実刑判決の事例とリスクを解説

クリニックが脱税するとどうなるかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
今回は、具体的な事例を紹介します。
事例の内容、判決結果等
今回紹介する事例は、平成5年に判決のあった事例で、Aクリニックの名称で泌尿器科、形成外科等を扱う診療所を営む医師であるB氏が、昭和63年から平成元年にかけて包茎手術等により多額の自由診療収入を得たにもかかわらず、それら自由診療収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、虚偽の所得税確定申告書を提出して、所得税を脱税したという事例です。
本件の脱税額は、2年分の合計で4億8000万余りに上り、ほ脱率も2期通算で約94パーセントと高率でした。また、脱税の態様は、雑誌等の広告により多数の患者を集めて行った包茎手術が自由診療であることから、その手術代の一部を除外したというものであり、B氏自ら経理担当者に指示して、まず発覚しにくい現金払い分を除外し、さらに分割払い分の分も除外した上、金庫や仮名・借名口座を含む数口の預金口座に分散隠匿し、カルテもB氏所有のマンションに隠匿するというものでした。さらに、犯行の動機を見ると、提携診療所の開設の状況や、B氏を実質経営者とする医療関係会社の設立の状況等をみると、B氏の事業欲が脱税の動機の大きな部分を占めているのは否定しがたく、本件犯行の動機に酌量の余地は乏しいものでした。
一方、ほ脱された本件2年分の本税については既に完納され、重加算税等についても相当部分が納付済みであり、現在もB氏は残額の納付に努力していること、B氏は前科前歴もなく、犯行を素直に認めて本件を真摯に反省悔悟していると認められること、B氏は本件で逮捕・勾留され、その他本件の発覚により、既にある程度の社会的制裁を受けていることなどがB氏に有利な事情でした。
判決においては、このようなB氏に有利な諸事情を十分斟酌しても、本件犯行は、その脱税額、ほ脱率、犯行態様・動機等からして、悪質な事案であり、大きな社会的非難を免れないものであるとして、B氏を懲役1年4月及び罰金1億円に処しました(なお、検察官の求刑は、懲役2年及び罰金1億3000万円でした)
自由診療収入の申告と管理について
自由診療クリニックで最も注意すべきは、自由診療収入を正確に申告・管理しているかです。保険診療は制度上、不正が起こりにくい仕組みになっています。一方、自由診療は患者から直接現金やカードで受け取るため、計上漏れや過少計上が発生しやすいと見られています。そのため自由診療が多いクリニックの場合、税務調査の際にも自由診療の売上計上漏れがないかなどについては特に厳しくチェックされる傾向があります。
本件事例は、このようないわば申告に当って不正が発生しやすい自由診療収入を多額に得たことから、悪い気持ちを起こし脱税に及んだ事例と言えるでしょう。
脱税事案では実刑判決もあり得る
本件事例では、実刑判決という重い判決が出ていますが、例えば令和6年度中に1審判決のあった脱税事件99件では、うち13人(約13パーセント)が実刑判決を受けています。この実刑率自体決して低いものとは言えないと思います。一般に、ほ脱額が合計3億円を超える場合には、全額納付しても実刑判決となる場合が多いとも言われており、この点、医療行為の収入は金額が大きいだけに、要注意です。
最後に
クリニックにおいて脱税が疑われた場合には、早期に弁護士に相談し、たとえ起訴されるに至っても実刑判決という重い判決を受けることがないよう、また、そもそも起訴や刑事告発を避けられるよう活動してもらうことが極めて大切です。
クリニックの脱税が発覚したらどうなる?刑事責任・行政処分・手続きの流れを弁護士が解説

クリニックが脱税するとどうなるかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
クリニックが支払う税金
クリニックが支払う税金は、その経営形態(個人事業主か医療法人か)によって大きく異なります。主な税金の種類は以下の通りです。
個人事業主の場合(個人クリニックの場合)
・所得税:累進課税制度が適用され、所得が高くなるほど税率も高くなります(最大で45パーセント)
・個人住民税
・個人事業税
医療法人の場合
・法人税:所得に応じて一定の税率で課税されます(出資金1億円以下の法人であれば、所得800万円以下の部分は15パーセント、800万円超えの部分は23.2パーセント)
・法人住民税
・法人事業税
いずれの経営形態でも発生する可能性のある税金
・消費税:社会保険診療報酬は非課税ですが、基準期間における自費診療の売上などの課税売上高が1,000万円を超える場合、課税事業者となります。
クリニックが脱税を行った場合
脱税とは、課税される要件があるにも関わらず、これを故意に隠して、課税を免れようとする行為をいいます。
例えば、売上を意図的に除外したり、架空の経費を計上するなどにより、所得を圧縮する行為は脱税です。
この点、所得税法は「偽りその他不正の行為」により所得税を免れ、または所得税の還付を受けた者は、十年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると規定しています(所得税法238条1項)。その他の税目にも同様の規定があります(法人税法159条1項、消費税法64条1項等)。
クリニックの場合も、適正に税金を納めなければならないことは当然です。この点、医療行為の収入は金額が大きいだけに、脱税が発覚した際の扱われ方も大きくなりがちで、一般社会に与える影響も大きいものがあります。また、脱税で有罪ということになれば、クリニックの経営そのものが成り立たなくなってしまう危険性があります。
さらには、医師の脱税行為に対しては、医師免許の取り消し、医業停止の処分など、所得税法等の条文に定められている上記刑事処分とは別に厳しい行政処分が科されるというリスクもあります。このような最悪の事態に陥らないよう注意が必要です。
刑事手続
クリニックにおいて脱税が発覚した場合、不納付額が過少の場合には、本来の納税額の納付に加えて、各種加算税等の納付の手続きを経て終結します。
しかしながら、不納付額が多額に上るなど悪質な脱税行為と判断された場合には、税務当局は、検察庁に刑事告発を行うことになります。
脱税の額が1億円になると脱税として刑事告発されると聞くことがありますが、実際にこうした明確な基準があるわけではありません。もちろん脱税の額も一つの基準とはなりますが、態様の悪質性や納税者のこれまでの対応など総合的に判断して、脱税として刑事告発されることになるようです。
刑事告発を受けた検察庁は、クリニックの経営者、経理関係者等を被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。
最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。
また、起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
国税局が毎年発表する資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、いずれの年もほぼ100%の割合で有罪となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。
最後に
既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。ですから、クリニックが税務調査を受け、脱税が発覚するかもしれない、あるいは、発覚したという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが極めて重要です。今現在何をどうしてよいかわからない方もとにかく早めに専門家に相談しましょう。
【個人事業主向け】飲食店の源泉徴収漏れは脱税になる?突然の税務調査や刑事責任のリスクを弁護士が解説
個人経営の飲食店における源泉徴収漏れ

飲食店において源泉徴収漏れが発覚した場合のリスクについて、今回は個人事業主の方を対象に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、企業が従業員の給与から所得税に当たる部分を差し引いて、企業が従業員の代わりに所得税を国に収める制度のことを言います。
源泉徴収制度の目的は、従業員の所得税の申告漏れを防ぐことにあります。
企業に勤めている従業員の方は、この源泉徴収制度により所得税が納められているため、基本的には自分で確定申告をして所得税を納める必要がありません。
個人事業主は源泉徴収義務者に該当するか
源泉徴収制度においては、源泉徴収に係る所得税を給与や報酬から差し引いて、国へ納税する義務がある者を源泉徴収義務者といいます。これが法人であれば、給与の支払者となるので源泉徴収義務者になりますが、個人事業主の場合には、支払う費用によって源泉徴収義務者に該当する場合と、該当しない場合があります。
(源泉徴収義務者に該当する場合)
個人事業主であっても正社員、アルバイト、パートなどの従業員を雇用し給与を支払っている
(源泉徴収義務者に該当しない場合)
・従業員を雇っておらず、弁護士や税理士などの報酬や料金だけを支払っている
・常時2人以下の家事使用人のみに給与を支払っている
飲食業は税務調査が入りやすい業種、調査が突然行われることも
飲食業は、税務調査が入りやすい業種の一つです。
その理由としては、現金商売が多いため、売上の除外や過少申告のリスクが高いこと、日々の仕入れが頻繁に発生し、食材や備品の購入を現金で行うことも多いため、仕入れの計上漏れが起こりやすいことなどが挙げられます。
また、飲食業に対する税務調査は、無予告で突然行われることが多いといえます。税務調査が行われる場合、課税庁は、納税義務者に対し、あらかじめ、調査を開始する日時・場所、調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等を通知しなければならないとされています(国税通則法74条の9・1項)。このように、税務調査が行われる場合には、課税庁から事前連絡があるのが原則です。
しかし、飲食業の場合、現金商売が多いため、事前連絡なしで、いきなり店舗に調査官が訪れるケースもあり得ます。現金商売の場合、事前に通知をすることで、その時だけ現金の調整をされてしまうと、税務調査に出向く意味がなくなってしまうからです。
このような無予告調査は、法律で認められている調査であり、課税庁は、被調査者である納税義務者の申告や過去の調査実績、事業内容などから、違法または不当な行為を容易にし、正確な所得や税額などの把握を困難にするおそれ、その他調査の遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しない、とされています(国税通則法74条の10)。
個人経営の飲食店において源泉徴収漏れが発覚した場合のリスクについて
飲食店の個人経営者にとっても、従業員を雇っていれば、従業員の給与等から所得税を天引きして納税する源泉徴収は日常業務の一環です。
しかし、源泉徴収義務は法律上の徴収義務であるだけに、源泉徴収漏れが生じた場合、その影響はかなり深刻です。飲食店業は、そもそも税務調査が入りやすい業種であることは既にお話しましたが、飲食店に税務調査が入り、源泉徴収漏れが発覚した場合、単なる経理処理上のミスでは済まされず、追徴課税や延滞税はもちろん、悪質な場合には刑事責任まで問われるリスクもあります。
個人経営の飲食店で頻発する源泉徴収漏れとは
飲食店では、アルバイト従業員に対する給与等の支払いについて源泉所得税の徴収漏れが生じやすいと言われています。
多くの個人経営の飲食店でもアルバイトやパートを雇用していますが、毎月継続して給与を支払っている以上、源泉徴収を行わなければならないことは正規の従業員と変わりありません。しかるに、アルバイトやパートの場合、源泉徴収をする必要はないと誤解して源泉所得税が徴収漏れとなっているケースが多々見受けられます。
また、家族経営等の小規模飲食店の場合、アルバイト従業員に対する給与を手渡ししており、源泉所得税の天引きを失念していたケース等もあります。
税務調査で源泉徴収漏れを指摘された場合の一般的な流れ
源泉徴収漏れというのは、本来納付すべき税額に不足が生じている事態ですので、その不足分については延滞税及び加算税(不納付加算税)が課されます。また、税務調査の結果、隠蔽又は仮装工作によるものと判断された場合には、通常の加算税に代えて重加算税が賦課されます。重加算税は、不納付加算税を賦課する代わりに、本来納めるべき税額の35%もの高率で賦課される税金です。
刑事手続
源泉徴収漏れが発覚した場合、一般的な納付税額の過少の場合には、本来の納税額の納付に加えて、各種加算税等の納付の手続きを経て終結します。
しかしながら、源泉徴収漏れが単なる偶発的なミスではなく、意図的なもので、不納付額も多額に上るなど悪質な脱税行為と判断された場合には、税務当局は、検察庁に刑事告発を行うことになります。
刑事告発を受けた検察庁は、飲食店の経営者、経理関係者等を被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。
最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。
また、起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
国税局が令和7年6月に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和6年度中の判決件数99件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。
最後に
既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。ですから、税務調査を受け、源泉徴収漏れが発覚するかもしれない、あるいは、発覚したという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが極めて重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。
eスポーツの大会賞金と課税リスク ~確定申告や源泉徴収は必要? 弁護士が解説します~
eスポーツの大会賞金と課税リスク

eスポーツの大会で獲得される賞金と課税リスクについて,選手と企業それぞれの観点を踏まえ,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
eスポーツとは
コンピューターゲーム等の各種ゲームを,個人が行う娯楽にとどまらず,スポーツ競技としての領域にまで昇華させたものがeスポーツになります。eスポーツの市場規模は,国内においても年々,拡大傾向にあります。ゲームの種類によっては世界的な大会も開催されており,多額の大会賞金が提供されることもeスポーツの特徴の一つです。
一大コンテンツとしてeスポーツが成長することに伴い,大会賞金やスポンサー収入で生計を立てるプロゲーマーの人口も増えています。プロゲーマーの多くは個人事業主に該当しますが,eスポーツチームの運営会社といった企業に所属しているケースもあります。
eスポーツの大会賞金と税金の関係
規模によっては相当な額の賞金が発生するeスポーツの大会ですが,お金が動く以上は,税金のことも考えなければなりません。選手の立場で見ていきますと,eスポーツの大会賞金には所得税が課されるため,確定申告が必要になります。
プロゲーマーのように,営利を目的とした継続的な所得が認められる場合は,eスポーツの大会賞金は事業所得として扱われます。これに対して,個人が趣味の範疇で参加した大会で賞金を獲得したような場合は,営利目的や継続的行為といった性質を欠くため,一時所得として扱われることになります。一時所得として扱われる場合は,所得の計算方法が変わります。差し引かれるのが必要経費ではなく,収入を得るために直接支出した金額に限られるなどの違いあるため,注意が必要です。
なお,国内ではまだ少数にとどまりますが,選手が個人事業主ではなく,起業に所属して給与を得ている場合は,源泉徴収がされるため,自ら確定申告をする必要はありません。この場合は大会賞金を企業が受け取る形になるため,法人税として課税されることになります。
eスポーツの大会賞金と課税リスク
ここまで述べたとおり,選手の立場で見ると,eスポーツの大会賞金には原則として所得税が課せられることになります。そのため,適切に確定申告を行わなければ,課税リスクを伴うことになります。
意図的に税金を逃れようとする脱税の場合はもちろんですが,確定申告にあたって計算を間違えるといった,いわゆる申告漏れのケースでも課税リスクは顕在化します。以前よりメジャーになってきたとはいえ,プロゲーマー自体が新しいタイプの仕事ということもあり,必要経費が認められる範囲などは,税務上も問題になりやすいといえます。
申告漏れとなってしまった場合,不足した納付分について追徴課税がされるのは当然ですが,それ以外にも各種のペナルティが生じます。期限までに納付が間に合わない場合は,延滞税が課せられます。完納までに時間を要すると,延滞税による負担も増すことになります。他にも,適正な申告がされていない場合は,過少申告加算税や無申告加算税といった各種の加算税も課せられます。延滞税や加算税については,こちらの記事もご参照ください。
不正の目的をもって納付を免れた場合は,脱税事件として国税局による査察や告発がされる可能性もあります。脱税事件となってしまった場合は,重加算税が課せられるおそれや,刑事処罰として拘禁刑や罰金が言い渡されるリスクもあります。なお,期限内に確定申告を行わなかった場合は,意図的な脱税でなかったとしても,刑事罰の対象にもなっています(所得税法241条)。法定刑は「1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」となります。
企業の立場から見ると,所得税ではなく法人税となりますが,同様に申告漏れには課税リスクが生じます。適切な源泉徴収が行われていない場合,不納付加算税も課せられます。
eスポーツに関係する税務上の問題は弁護士に相談を
eスポーツそのものの歴史は長いものがありますが,コンテンツとして身近になったのは,ごく最近といえます。そのため,申告漏れによる課税リスクや,適切な確定申告について,周知が十分でないケースもあり得ます。
個人事業主として活動するeスポーツ選手で,申告漏れをはじめとする課税リスクに不安がある場合は,速やかに専門家に相談を行うことをお勧めします。ストリーマーとして活動することも多いeスポーツ選手にとって,税務上の問題が生じることは,風評の面でも深刻な結果がもたらされるリスクも考えられます。
法的なリスクについては,税の専門家である税理士のみならず,法の専門家である弁護士から助言を得ることも重要です。
飲食店における源泉徴収漏れ

飲食店において源泉徴収漏れが発覚した場合のリスクについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
源泉徴収とは
源泉徴収とは、企業が従業員の給与から所得税に当たる部分を差し引いて、企業が従業員の代わりに所得税を国に収める制度のことを言います。
源泉徴収制度の目的は、従業員の所得税の申告漏れを防ぐことにあります。
企業に勤めている従業員の方は、この源泉徴収制度により所得税が納められているため、基本的には自分で確定申告をして所得税を納める必要がありません。
源泉徴収の仕組み
源泉徴収制度は、企業が従業員の代わりに従業員の所得税の計算や申告をするものです。
そのため、納税義務者は企業ということになります。
源泉徴収の対象となるのは、基本的に企業から支払われる給与所得です。
その他には、退職金や株の配当金なども源泉徴収の対象になります。
源泉徴収されているかどうかは、企業から交付される給与明細をご覧いただくと、所得税などが差し引きされていると思いますので、給与から差し引きされている場合には源泉徴収が行われていると判断することができます。
この源泉徴収された税金部分(源泉所得税)は、企業が毎月国に納税しています。
飲食業は、税務調査が入りやすい業種であり、しかも調査は突然行われることが多い。
飲食業は、税務調査が入りやすい業種の一つです。その理由としては、現金商売が多いため、売上の除外や過少申告のリスクが高いこと、日々の仕入れが頻繁に発生し、食材や備品の購入を現金で行うことも多いため、仕入れの計上漏れが起こりやすいことなどが挙げられます。
また、飲食業に対する税務調査は、無予告で突然行われることが多いといえます。税務調査が行われる場合、課税庁は、納税義務者に対し、あらかじめ、調査を開始する日時・場所、調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等を通知しなければならないとされています(国税通則法74条の9・1項)。このように、税務調査が行われる場合には、課税庁から事前連絡があるのが原則です。
しかし、飲食業の場合、現金商売が多いため、事前連絡なしで、いきなり店舗に調査官が訪れるケースもあり得ます。現金商売の場合、事前に通知をすることで、その時だけ現金の調整をされてしまうと、税務調査に出向く意味がなくなってしまうからです。
このような無予告調査は、法律で認められている調査であり、課税庁は、被調査者である納税義務者の申告や過去の調査実績、事業内容などから、違法または不当な行為を容易にし、正確な所得や税額などの把握を困難にするおそれ、その他調査の遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しない、とされています(国税通則法74条の10)。
飲食店において源泉徴収漏れが発覚した場合のリスクについて
飲食店の経営者にとっても、従業員の給与等から所得税を天引きして納税する源泉徴収は日常業務の一環です。
しかし、源泉徴収義務は法律上の徴収義務であるだけに、源泉徴収漏れが生じた場合、その影響はかなり深刻です。飲食店業は、そもそも税務調査が入りやすい業種であることは既にお話しましたが、飲食店に税務調査が入り、源泉徴収漏れが発覚した場合、単なる経理処理上のミスでは済まされず、追徴課税や延滞税はもちろん、悪質な場合には刑事責任まで問われるリスクもあります。
飲食店で頻発する源泉徴収漏れとは
飲食店では、アルバイト従業員に対する給与等の支払いについて源泉所得税の徴収漏れが生じやすいと言われています。
多くの飲食店がアルバイトやパートを雇用していますが、毎月継続して給与を支払っている以上、源泉徴収を行わなければならないことは正規の従業員と変わりありません。しかるに、アルバイトやパートの場合、源泉徴収をする必要はないと誤解して源泉所得税が徴収漏れとなっているケースが多々見受けられます。
また、家族経営等の小規模飲食店の場合、アルバイト従業員に対する給与を手渡ししており、源泉所得税の天引きを失念していたケース等もあります。
税務調査で源泉徴収漏れを指摘された場合の一般的な流れ
源泉徴収漏れというのは、本来納付すべき税額に不足が生じている事態ですので、その不足分については延滞税及び加算税(不納付加算税)が課されます。また、税務調査の結果、隠蔽又は仮装工作によるものと判断された場合には、通常の加算税に代えて重加算税が賦課されます。重加算税は、不納付加算税を賦課する代わりに、本来納めるべき税額の35%もの高率で賦課される税金です。
刑事手続
源泉徴収漏れが発覚した場合、一般的な納付税額の過少の場合には、本来の納税額の納付に加えて、各種加算税等の納付の手続きを経て終結します。
しかしながら、源泉徴収漏れが単なる偶発的なミスではなく、意図的なもので、不納付額も多額に上るなど悪質な脱税行為と判断された場合には、税務当局は、検察庁に刑事告発を行うことになります。
刑事告発を受けた検察庁は、飲食店の経営者、経理関係者等を被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。
最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。
また、起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
国税局が令和7年6月に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和6年度中の判決件数99件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。
最後に 既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。ですから、税務調査を受け、源泉徴収漏れが発覚するかもしれない、あるいは、発覚したという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが極めて重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。
投げ銭は贈与?税金は?

投げ銭(スーパーチャット)は贈与でしょうか?税金はかかるのでしょうか?その疑問に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がお答えします。
投げ銭(スーパーチャット)とは
投げ銭という言葉は、もともと路上パフォーマーなどのパフォーマンスに対して、観客がパフォーマー側が準備した集金箱などに金銭を投げ入れる行為のことを指していました。
映画などで大道芸人が演技が終わった後にシルクハットなどを観客に差し出してそこに観客からお金を入れてもらう場面を見たことがあるのではないでしょうか?
しかし、インターネットが普及した現在においては、「投げ銭」の意味も変化しています。
今回取り上げる「投げ銭」とは、インターネットでの配信などに対して、視聴者やファンなどがオンラインで送金する行為を言います。
YouTubeではスーパーチャット(スパチャ)と言われていますが、これも代表的な「投げ銭」と言えるでしょう。
「投げ銭」のシステムは、オンライン上で金銭を送金する以外にも、有料ギフトを購入し送るなどの方法もあり様々ですが、いずれも配信者を金銭面で支援しているという面で共通しています。
投げ銭は贈与か?
投げ銭は贈与でしょうか?
贈与とは、無償で金銭等を譲渡する(譲り受ける)行為をいいます。
そのため、インターネット配信をしている人が何もパフォーマンスなどをしていないのに、投げ銭をされた場合には贈与に当たるといえるかもしれません。
しかし、ほとんどの場合、なにがしかのパフォーマンスを配信し、そのパフォーマンスに対して投げ銭が行われています。
そうすると、対価性が認められることになり、もはや「贈与」ということはできなくなります。
この場合、投げ銭で得た利益は「所得」として申告する必要があります。
贈与か所得かは納税の段階で非常に大きな違いが出てきます。
「贈与」の場合、贈与税の申告が必要となりますが、1年間に得た贈与の額が110万円を超えていなければ申告する必要がありません。
一方「所得」の場合には、基本的に20万円を超えている場合には確定申告が必要となります。
投げ銭の所得は何所得か?
投げ銭が「所得」になるとして、その所得の種類が問題となります。
すなわち「事業所得」か「雑所得」かです。
この点、基本的には「事業所得」となると考えられます。
たとえば、YouTuberの方などは動画配信を仕事として行っており、その動画配信を通じて「投げ銭」を得ていることになるので、仕事=事業によって得た収入と考えられます。
つまり、なにがしかの事業若しくは反復継続性のある行為によって得た利益は「事業所得」となると考えられます。
一方、一般の方が趣味でアップした動画などについては、「雑所得」となる可能性の方が高いと言えます。
反復継続性がなかったり、その行為によって利益を得ることを目的としているとはいえないからです。
投げ銭による所得の申告漏れが発覚したケース
ライブ配信者(ライバー)が投げ銭による所得を申告せず、国税局から多額の追徴課税を受けた実例について、以下の引用記事を基に解説します。
事件の概要
あるアプリでトークのライブ配信を行っていた女性が、大阪国税局から約2100万円の追徴課税を受けた。「ライバー」は、アイテムやギフトなどと呼ばれる視聴者からの投げ銭を主な収益源としているが、この投げ銭ももちろん課税の対象となる。しかし、女性は、4年分の投げ銭1億1900万円もの所得を一切申告していなかった。女性は「忙しくて確定申告をしていなかった」という趣旨の説明をしたという。
(令和6年12月10日付goo blog記事より抜粋。大元の記事(FNN)はリンク切れ)
https://blog.goo.ne.jp/kaikeinews/e/5615dce16ebd35a9daf30e832548790d
投げ銭(スーパーチャット)はYouTubeなどが有名ですが、引用記事のように各種トークアプリでも広く実装された機能といえます。投げ銭の額が大きくなるほど、無申告だった場合の加算税の負担も大きくなり、ケースによっては重加算税が課されたり、脱税事件として刑事処罰の対象となったりもします。
投げ銭の確定申告
事業所得に当たる場合、総収入から経費や控除額を引いたものが課税対象の金額となります。
ここで、青色申告か白色申告かによって、控除額が異なります。
たとえば、個人事業主で開業届を提出し青色申告承認申請をしている場合、青色申告をすることができます。
青色申告では最高55万円(令和元年以前は65万円)を控除することができます。
投げ銭は履歴が残るため、税務調査が入ると申告漏れが発覚しやすいといえます。
投げ銭が贈与になるのか事業所得になるのかわからない、所得になるのに贈与として申告していて心配という方は専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では無料の法律相談を実施していますので、税務調査・査察調査が入ったという方は一度お問い合わせください。
YouTubeの収入は確定申告が必要?

YouTubeでの収入は確定申告が必要か、確定申告しないとバレるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
YouTubeでの収入
YouTubeに動画をアップして広告収入を得ているYouTuber(ユーチューバー)は、近年子供のなりたい職業ランキングに登場するなど一般的になりつつあります。
また、新型コロナの影響により、YouTubeで動画を配信して収入を得ている方も増えてきています。
そんなユーチューバーの方は、一部の有名な方々を除くと、ほとんどがYouTubeから広告収入を得ていると思います。
広告収入についても、所得税の申告が必要となるのは当然です。
もっとも、広告収入のすべてに所得税が課せられるのではなく、収入から必要経費や控除額を差し引いた残りが所得税の申告が必要となる「所得」となります。
そのため、収入の額が控除される額(基礎控除は48万円)以下の場合には「所得」がないということになり、申告は不要となります。
YouTubeでの収入は税務署にバレる?
YouTubeなどのインターネットを利用している取引については、国税庁が積極的に調査を実施しています。
国税庁が発表している「インターネット取引を行っている個人の調査状況」という資料によれば、平成29年度におけるインターネット取引の実地調査件数は2015件で、コンテンツ配信やネット広告に関する件数は274件を占めています。
また、国税庁は「電子商取引監視チーム」を配置し、インターネット取引を中心に扱う専門官が監視を強化しています。
このように、インターネット取引については、国税庁が常に目を光らせている分野といえます。
そして、YouTubeの収入については、
①再生回数が表示される
②広告収入は電子送金される
ということから税務署はユーチューバーが収入をどれくらい得ているのか把握しやすいといえます。
再生回数が多く、相当程度の広告収入を得ているはずなのに、確定申告がなされていないと税務署が調査に入ることになります。
確定申告を怠ったYouTuberが実際に追徴課税を受けたケース
確定申告を行なわなかったことが国税局に発覚し、多額の無申告加算税を支払うことになった実例について、以下の引用記事を基に解説します。
事件の概要
動画をユーチューブに投稿し、その報酬などとして約3600万円を得ていた男性が、確定申告をしていなかったとして、関東信越国税局の税務調査を受けた。重加算税を含む約700万円を追徴課税されたという。男性はかつて会社員だった。当初、国税局に対して「確定申告が必要なことを知らなかった」という趣旨の説明をしていたという。さらに追及を受けた男性は、意図的に申告をしなかったことを認めた。国税関係者は「確信的な無申告だったのに、それを隠そうとする。言い逃れの典型例だ」と指摘する。
(令和5年3月11日付朝日新聞オンラインの記事より抜粋)
https://www.asahi.com/articles/ASR3B3W07R36UTIL00P.html
引用記事によりますと、国税局は男性が税務調査への対応策を事前に調べていた事実も掴んでいたようです。先ほど述べたとおり、YouTuberの収入は国税局からすれば容易に捕捉することができるため、ごまかしは効きません。自分だけは大丈夫と思わずに、適切な確定申告を行うことが求められます。
YouTubeの収入を確定申告していないと
YouTubeの収入を確定申告していないと「無申告加算税」が課せられることになり、確定申告をしていた場合よりも多くの税金を支払わなければならなくなります。
また、意図的に確定申告をせず所得を隠していたということになれば、「重加算税」の対象となってしまう場合もあります。
さらに、無申告には刑罰も定められているため、金額や悪質性によっては、刑事裁判にかけられてしまう可能性もあります。
バレないから大丈夫と安易に考えていると、急に税務署が調査にうやって来て、多額の課税がなされる場合があります。
また、チャンネルの継続が難しくなる可能性もありますので、確定申告を忘れてしまっていたという方は、早めに専門家に相談して修正申告などをしていきましょう。
キャバ嬢が現金で受け取ったお金も申告が必要

キャバクラの従業員に対して税務調査が入る可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 お店に対する税務調査から発覚することが多い
キャバクラをはじめとする水商売と呼ばれる仕事については税務調査が入りやすい職種といえます。
そうした仕事では、大きなお金が動くため、きちんと税金を納めていないのではないかと国税局が注意をしていると考えられます。
では、仮に、キャバ嬢が脱税していた場合、どのようにして、それが発覚するのでしょうか。
税金に関する調査として、税務調査という言葉と聞いたことがあると思います。
その名のとおり、適切な税金が納められているのか、その前提として、どれくらいの売上や経費があったのかなどを調査するものです。
キャバ嬢本人に対する税務調査ではなくとも、お店に対する税務調査の中でキャバ嬢の申告漏れが発覚することも多いです。https://www.asahi.com/articles/ASND85W01ND8PTIL012.html
2 現金手渡しだから大丈夫というわけではない!
給料を現金手渡しで受け取っているから、その給料については大丈夫ではないかと思っている方もいると思いますが、実際にはそうではありません。
先ほど説明したように、お店に対する税務調査が行われることがありますが
仮に、キャバ嬢に対する給与を現金手渡しとしているお店であっても、
その調査の中で、お店からキャバ嬢に対し、いつ、いくらの給与を支払った記録が出てきた場合には
そのキャバ嬢がその給与を申告しているかどうかが調査されることになります。
また、仮に、お客さんから現金を受け取っていた場合においても
そのお客さんや他の従業員から、そのことを密告され、結果的に、そのキャバ嬢も調査の対象とされることに繋がります。
ですので、現金を手渡しで受け取っているから、税金については申告せずとも大丈夫だという認識は間違っているといえます。
3 現金で受け取ったお金を申告しないとどうなるの
仕事の対価として受け取ったお金については、所得として申告し、そこに所得税がかかってくると考えられます。
また、お客さんから、お店を通さず個人的に受け取っていた場合には、贈与として、贈与税がかかってくることが考えられます。https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2024/12/04/kiji/20241204s00041000295000c.html?page=1
ですので、それぞれ適切に、税金として申告する必要があり、そのようにしないことで余計に税金がかかり
最終的に自身にとって不利な結果になることがあります。
また、税金を納めるということだけで済まず、さらに刑事事件となる可能性もあります。
申告していない税金の額が高かったり、長期間に渡って申告をしていなかったりした場合には、
税務調査にとどまらず、国税局による査察、そして、検察官への刑事告発がなされ、最終的に刑事裁判にかけられるということもありえます。
刑事裁判となるのは悪質性が高いようなケースですので、すぐにそうなるわけではありませんが
やはりまずは適切な税金を納めていく必要があります。
4 適切な税金を納めていくためには
適切な税金を納めていくため、まずは、税理士に相談することが重要です。
お店でお願いしている税理士がいることもありますので、お店の人に相談してみるというのもいいと思います。
また、税務調査や査察など、さらに手続が進んでいった場合、税理士だけではなく、弁護士が介入していく必要があるかもしれません。
先ほど言及した刑事裁判は悪質性が高いようなケースですので、税金に関するトラブルとしては、どちらかというと少ないものですが
早めに対応することで、その後の手続きを回避できる場合があるかもしれません。
架空外注費で法人税脱税

法人税の脱税について、事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
建設会社の代表者であるAさんは、下請けの個人事業主に虚偽の請求書を発行させ、架空の外注費を支払ったことにして経費を水増しして計上し、個人事業主からキックバックを受けていました。
この方法で1億円を超える所得を隠していたAさんは、大阪国税局の査察調査を受け、法人税3000万円を脱税したとして、法人税法違反の罪で大阪地方検察庁に告発されてしまいました。
(実際の事件をもとにしたフィクションです)
建設業(建設会社)で起こりやすい水増し請求
建設業でよくみられる不正に水増し請求があります。水増し請求は、下請けが元受けに対し、実際にかかった工事金額よりも多額の金額を請求するものです。工事金額を上乗せする方法としては、人工の数を増やしたり、材料費を上乗せする方法が多く見受けられます。
本事例における脱税の方法
事例のAさんは、下請けの個人事業主に実際にかかった費用よりも高額である虚偽の請求書を発行させ、水増しした外注費を支払って計上し、その後個人事業主からキックバックを受けています。
Aさんがキックバックを受けた金銭は、Aさんの収入(所得)となるため、Aさんにはキックバックを受けた金額に応じて所得税の確定申告をする必要があります。
Aさんが、所得税の確定申告をしていなかった場合には、Aさんが所得税の脱税をしていることになるのは、わかりやすいと思います。
しかし、今回の事例では、Aさんは法人税法違反の罪で告発されています。
法人税とは法人つまり会社が得た収益に対してかかる税金です。
キックバックをAさん個人ではなく、Aさんの建設会社が受けていた場合には、会社の収益といえるため、キックバックの部分は法人税の対象になり、確定申告をしなければ法人税の脱税になるでしょう。
では、キックバックはあくまでもAさん個人が受けていた場合はどうでしょうか。
この場合、問題となるのは、水増しした外注費を計上しているところとなります。
今回の事例では、外注費については、個人事業主に支払われています。
しかし、支払われている外注費のうち水増しされた外注費は本来であれば支払われない経費ということになります。
そうすると、水増しされた外注費の部分については、経費計上してはいけない部分ということになります。
そのため、会社が得た収入から架空の外注費を経費として差し引いて確定申告していた場合には、本来であればその架空経費の部分は差し引いてはいけない部分となるため、架空経費の部分も含めて課税対象金額に含まれることになります。
そして、架空経費の部分については、確定申告から漏れていることになるため、過少申告をしていたということになります。
架空外注費の計上はばれやすい。
架空外注費の計上は、企業の所得を意図的に減らし、納めるべき税金を少なくする目的で行われることが多いため、税務署は重大な不正行為とみなしています。そのため、外注費については特に注意深くチェックされます。
本事例の場合、キックバックの要求を受けた下請けの側としては、その水増しした金銭を出金する際の会計処理に困ってしまい、やむなく架空仕入れなどの架空の経費を計上したりします。
そのような状態のところに税務調査が入った場合、その架空の経費について追及されれば、簡単に不正加担が発覚してしまいます。このように、税務署が申告者本人だけでなく、その取引先にも調査の確認を行い、取引の事実を確認する方法を反面調査といいます。
法人税脱税のペナルティ
Aさん及びAさんの会社が受ける脱税のペナルティについては、大きく分けて①加算税、②刑事罰の二つが考えられます。
①加算税
Aさんの会社の場合には、過少申告をしていたことになるので、過少申告加算税が課せられることになります。
過少申告加算税は、新たに納めることになった税金の10%(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%)が加算されます。
もっとも、Aさんの場合には、架空経費の計上という悪質性が高い方法によって過少申告をしているということが言えるので、過少申告加算税ではなく、重加算税が課せられる可能性が高いです。
重加算税は、過少申告加算税の基礎となる税額の35%に相当する金額が課されることになります。
②刑事罰
Aさんは告発を受けているので、今後は刑事事件としての捜査や裁判を受けていくことになります。
統計上、最近では告発された事件の約80から90%は起訴されています。
今回の事例では、偽りその他不正の行為により法人税を免れたといえるため、罰則は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科」となります(法人税法159条1項)。
ちなみに、罰金の額については、脱税額が1000万円を超える場合には、脱税額まで罰金の上限額を引き上げることができるとされています(同条2項)。
また、今回の事例では、会社代表者であるAさんが行っているので、会社に対しても罰金刑が科せられることになります(同法163条1項)。
そのため、起訴される場合にはAさんだけではなく、Aさんの会社も併せて起訴されることになります。
法人税脱税を疑われた場合の対応
法人税の脱税を疑われた場合には、まず実際に脱税といわれるような行為をしていたかどうかを自分たちでも調査しておく必要があります。
そして、税務調査などの調査では、脱税とはならないという根拠を示していくことが必要です。
もし、脱税に当たる行為をしていた場合には、それが意図的なものかどうかが重要なポイントとなります。
単なる申告漏れなどの場合には、脱税額が高額であったとしても査察や告発を免れることができる場合があります。
その場合でも、調査に対してどのように答えていくかが非常に大切になるので、早めに専門家に相談して方針を決めたうえで、調査に臨みましょう。
また、早めに修正申告をして納税義務を果たすことも、処分を軽くするために必要な行為です。
税理士や弁護士などに依頼して、修正申告をして、早めに納税をしましょう。
もっとも、脱税方法が悪質であるとか脱税期間が長かったり脱税額が高額であったりした場合には、告発までされる可能性が高くなります。
特に脱税額が3000万円を超える場合には、多くの事件が告発されていますので、刑事裁判を見据えて税理士だけではなく弁護士にも早めの段階から関与してもらっておくと安心です。 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱っているので、刑事事件化を見据えた弁護活動も行えます。早めにご相談ください。
所得税法違反による脱税で実刑判決となった事例③

所得税法違反で実刑判決を受けた事例を紹介するとともに、実刑判決を避けるためにはどうしたらよいかを弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説していきます。全3回のうち、最終回の今回は、実刑判決を避けるためにはどうすればよいのかを中心に解説します。
実刑判決を避けるために重要な「反省」と「納税」
これまで紹介してきた事例から明らかなように、たとえ所得税の無申告・過少申告による脱税であっても、悪質性が高ければ実刑判決が現実のものとなります。
では、逮捕・起訴されてしまった後に実刑を避ける余地はあるのでしょうか。
絶対ではありませんが、裁判で情状が考慮され執行猶予付き判決(実刑回避)となるためには、以下の点が重視されます。
①速やかな納税措置
起訴後でも遅すぎることはありません。可能な限り早く修正申告を行い、免れた税額や加算税の納付に努めることが肝要です。
実際に、ある事件では被告人が脱税分と重加算税を既に納付済みであることが考慮され、懲役刑に執行猶予が付されたケースもあります。
納税義務の履行は反省の具体的な証左として評価されやすく、「社会復帰後も更生して納税を続ける意思あり」と裁判官に示す効果があります。
②深い反省と再発防止の誓約
被告人自身が犯行を認めているか、法廷でどれだけ真摯に謝罪・反省を述べるかも重要です。
脱税額が高額でも全額を納付し関与を認めて猛省していると裁判所が判断すれば、執行猶予を付して更生の機会を与えることがあります。
逆に「バレないと思った」「他にもやっている人がいる」などと言い訳したり反省が見られなかったりすれば、裁判官の心証は悪化し実刑可能性が高まります。
③初犯かつ社会的更生状況
前科がない初犯であること、家族や雇用主など周囲からの支援が期待でき、更生環境が整っていることも情状として有利に働きます。
一般的に前科がなく反省している初犯者は執行猶予となる場合が多い傾向です。
ただし再犯者や、過去に税務署の指摘で修正申告をしたのにまた隠ぺいを繰り返したようなケース(事例①のように前科猶予中の再犯)は極めて厳しく扱われ、執行猶予は期待しにくくなります。
また、脱税に関する前科ではなく、たとえば薬物に関する前科などであったとしても、初犯の方に比べると厳しい判断が出やすくなります。
さらに、すでに前科の執行猶予が満了しており、かつ、起訴をされた脱税の期間には含まれていなかったとしても、前科の執行猶予中から脱税行為に手を染めていたという内容が裁判で明らかになった場合には、かなり厳しく判断されることになります。
実際に、弊所で担当した脱税事件では、起訴されたのは直近3年間の脱税でしたが、薬物前科執行猶予中であった6年前にも脱税行為に手を染めていたということが考慮されて、実刑判決を受けた事案があります。この事案では、前科がなければ執行猶予が付けられてもおかしくはありませんでした。
弁護活動としては、上記の点を踏まえて被告人の反省文提出、税務当局との交渉による納税の実施、再発防止策の準備(税理士をつけ修正申告や納税をする誓約等)、家族の監督誓約書の提出などが考えられます。
実際、裁判例を見ても脱税額そのものだけでなく「犯行後にどう対応したか」が量刑に反映されています。巧妙な無申告による所得隠しであっても追徴税を完納したことで執行猶予となっている例もあります。
まとめ
無申告・過少申告による脱税は、「うっかりミス」では済まされない重大な犯罪です。
判決年月日や裁判所名は異なれど、紹介した事例はいずれも悪質な税逃れに対し裁判所が毅然とした態度で臨んだものです。
逮捕された被疑者本人やご家族にとっては大変な精神的負担でしょうが、まずは事実関係を認めた上で専門家(弁護士・税理士)の力を借り、一日も早く適正な納税と再発防止策を講じることが肝要です。
それが結果的に情状酌量につながり、執行猶予獲得や刑の減軽につながる可能性があります。
判決が出るまでのプロセスは苦難ですが、適切な対応次第でその後の人生を立て直す余地は残されています。
「逃れ得た税より失うものの方が大きい」――本記事の事例が示す教訓を胸に、真摯な反省と更生への努力を続けることが何より重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、所得税法違反で告発された方など、刑事裁判になりそうで不安な方の相談を随時受け付けています。
初回のご相談は無料ですので、不安な方は一度弊所までお電話下さい。
