事件別―相続税・贈与税

第1 相続税

1.相続税とは

相続税は、相続や遺贈によって取得した財産および相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の価額の合計額(債務などの金額を控除し、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加算します。)が基礎控除額を超える場合に、その超える部分(課税遺産総額)に対して、課税されます。

この場合、相続税の申告および納税が必要となり、その期限は、被相続人(死亡した人)の死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。

2.課税遺産総額の算出

課税遺産総額を算出するには、まず「正味の遺産額」を算出する必要があります。

正味の遺産額とは、相続や遺贈によって取得した財産(遺産総額)と相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の合計額から非課税財産と葬儀費用および債務を差し引いた額(遺産額)に相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加算したものを言います。

※(遺産総額+相続時精算課税の適用を受ける贈与財産)-(非課税財産+葬儀費用+債務)=遺産額
遺産額+相続開始前3年以内の贈与財産=正味の遺産額

※非課税財産
非課税財産は以下の4つです。

  1. 墓所、仏壇、祭具など
  2. 国や地方公共団体、特定の公益法人等に寄付した財産
  3. 生命保険金(死亡保険金)のうち次の額まで
    500万円×法定相続人の数
  4. 死亡退職金のうち次の額まで
    500万円×法定相続人の数

課税遺産総額は、正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた残りの部分を言います。

基礎控除額は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)の計算式で計算します。

※平成26年12月31日以前の相続又は遺贈の開始(死亡の日)の場合のキぞ控除額は、5000万円+(1000万円×法定相続人の数)の計算式で計算されます。

3.納税義務者と課税財産

相続税のかかる人と課税される財産の範囲
相続税のかかる人 課税される財産の範囲
(1) 相続や遺贈で財産を取得した人で、財産をもらった時に日本国内に住所を有している人(その人が一時居住者である場合には、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。) 取得したすべての財産
(2) 相続や遺贈で財産を取得した人で、財産をもらった時に日本国内に住所を有しない次に掲げる人
イ 財産をもらった時に日本国籍を有している人の場合は、次のいずれかの人
(イ) 相続の開始前10年以内に日本に住所を有していたことがある人
(ロ) 相続の開始前10年以内に日本に住所を有していたことがない人(被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)
ロ 財産をもらった時に日本国籍を有していない人(被相続人が外国人被相続人、非居住被相続人または非居住外国人である場合を除きます。)取得したすべての財産
取得したすべての財産
(3) 相続や遺贈で日本国内にある財産を取得した人で、財産をもらった時に日本国内に住所を有している人((1)に掲げる人を除きます。) 日本国内にある財産
(4) 相続や遺贈で日本国内にある財産を取得した人で、財産をもらった時に日本国内に住所を有しない人((2)に掲げる人を除きます。) 日本国内にある財産
(5) 上記(1)~(4)のいずれにも該当しない人で贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した人 相続時精算課税の適用を受ける財産

第2 贈与税

1.贈与税とは

贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。

会社など法人から財産をもらったときは贈与税はかかりませんが、所得税がかかります。

また、自分が保険料を負担していない生命保険金を受け取った場合、あるいは債務の免除などにより利益を受けた場合などは、贈与を受けたとみなされて贈与税がかかります。

ただし、死亡した人が自分を被保険者として保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合は、贈与税でなく相続税の対象となります。

なお、贈与税は相続税とともに相続税法に規定されています。

2.贈与税の課税

贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができます。

  1. 暦年課税
    贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。

  2. 相続時精算課税
    「相続時精算課税」を選択した贈与者ごとにその年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から2500万円の特別控除額を控除した残額に対して贈与税がかかります。
    なお、この特別控除額は贈与税の期限内申告書を提出する場合のみ控除することができます。
    また、前年以前にこの特別控除の適用を受けた金額がある場合には、2500万円からその金額を控除した残額がその年の特別控除限度額となります。

3.相続時精算課税とは

相続時精算課税とは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。

なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。

また、この制度の贈与者である父母または祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。

このように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。

第3 罰則

偽りその他不正の行為により相続税又は贈与税を免れた者は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する(相続税法68条1項)となっています。

相続税については、課税対象となる遺産を決めるにあたって、遺産総額をきちんと算出することが前提となります。

相続税や贈与税の算出については、専門家に相談や調査を依頼して、不正を疑われることが無いようにすることが肝要です。

相続が開始した、贈与を受けたという場合には、一人で悩まずに専門家に相談しましょう。

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