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脱税事件を起こしてしまった場合、延滞税や各種加算税(https://datsuzei-bengoshi.com/zei/)が課せられるほか、検察官に起訴されて刑事裁判となった場合は、高額の罰金も命じられます。しかし、脱税事件で科せられるのは金銭的なペナルティだけではありません。脱税事件も刑事事件である以上、懲役刑も言い渡されます。
今回は、著名な報道事例を脱税事件の観点から取り上げるとともに、脱税事件の中でも実刑判決が言い渡されるリスクが高い類型を解説していきます。
【報道事例】
「頂き女子りりちゃん」を名乗り、男性から恋愛感情を悪用して1億円以上をだまし取るなどの罪に問われた女の控訴審で、名古屋高裁は9月30日、懲役8年6カ月を言い渡しました。「頂き女子りりちゃん」こと被告は、マッチングアプリなどで知り合った男性3人から、恋愛感情を悪用して合わせて1億5500万円余りをだまし取った罪などに問われていました。(9月30日付ヤフーニュースの記事より引用。一部修正)。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9618fbcd5705bf2e78160cee498398f2332b556b
【事例解説】
本事例は著名な詐欺事件として報道されていましたが、各種税法に違反した脱税事件でもあります。被告は詐欺によって得た金銭を税申告していなかったため、所得税法違反も起訴罪名に加えられています。
いわゆるパパ活(頂き女子もその一類型といえます)では、お金のやりとりが個人間にとどまるため,適切な税申告を欠きやすいという問題点があります。ケースによっては、かなりの額のお金が動くため、個人であっても税務調査を受けてしまう可能性があります。報道事例の被告のように、詐欺罪などの別件で捜査が始まり、併せて税務調査も行われて脱税が発覚してしまうケースもあり得ます。
本件は、いわゆる頂き女子が被告になっただけでなく、脱税事件として実刑判決が言い渡されたことも注目すべき点です。なお、一審判決では懲役9年、罰金800万円の実刑判決が言い渡されていました(名古屋地判令和6年4月22日)。
控訴審では懲役6月分の減刑がされていますが,報道によりますと、被告が第三者を介して被害者に損害賠償を行ったこと等がその理由のようです。
【脱税事件で実刑になりやすいケースとは】
脱税事件として起訴され刑事裁判となっているケースは毎年のようにありますが、執行猶予がつかず、そのまま服役することになる実刑判決が言い渡されるケースは、必ずしも多くはありません。
報道事例のケースで実刑判決が言い渡された理由としては、主に次の2点が原因と考えられます。まず1つ目は脱税額の高さです。脱税事件は国家の徴税権を侵害することを原因に処罰されます。このことはあまりに自明なため触れていない裁判例も多いですが、松山地判令和4年2月3日のように、比較的近時の裁判例でも、法の趣旨について言及しているものもあります。そのため、脱税額が高額になるほど、実刑判決が言い渡される可能性が高くなります。
逋脱税額の高さが原因となり実刑判決が言い渡されたケースとしては、東京地判平成30年11月20日(実刑懲役4年。逋脱所得は約35億4300万円。逋脱税額は約10億6000万円)などがあります。
これに対して報道事例では、逋脱税額はそこまで高額ではないものの(逋脱所得は約1億5500万円。逋脱額は約4000万円)、法人ではなく個人の所得税としての脱税なので、高額な部類に入るとはいえます。
もう1つは、脱税以外の別罪が問題になるケースです。報道事例では,刑法犯である詐欺罪及び詐欺幇助でも起訴されています。前科等がない初犯での脱税事件では、逋脱税額が億単位になることで実刑も視野に入りますが、詐欺罪の場合は、百万円単位の被害額でも実刑が言い渡される傾向にあります。
報道事例では、脱税事件としては極端に高額な逋脱税額とはいえませんが、詐欺事件としてはかなり高額の被害額であるため、長期の実刑が言い渡されたと考えられます。