【事例解説】人気トレカ転売で申告漏れ

トレーディングカード(トレカ)の転売で得た利益について税申告をしていなかったとして、大阪国税局から税務調査を受けた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

事件の概要

「遊戯王」や「ポケモン」など人気アニメのトレーディングカード(トレカ)を転売していた神戸市の男性3人と会社1社が2022年、大阪国税局の税務調査を受け、合計1億円の申告漏れを指摘されていた。
関係者によると、神戸市に住む男性3人は、17~21年、インターネットサイトや中古品販売店で購入したトレカをネットなどで転売し、利益を得ていたが、確定申告を怠り、合計約8000万円の申告漏れを指摘され、無申告加算税を含む合計約1900万円を追徴課税された。
男性3人は税務調査に対して「申告方法がわからなかった」などと説明したという。
また、トレカ販売会社については、国税局が調査した結果、2年間売り上げの一部を除外するなどして利益を圧縮して申告しており、仮装隠ぺいを伴う所得隠しがあったとして、重加算税を含む約600万円を追徴課税された。
(読売新聞オンライン2023年4月6日の記事より抜粋)

トレカ転売

トレカには人気アニメのキャラクターや著名人の写真などのカードやそれ自体が対戦ゲームの主要な使用品となるカードなど様々なものがありますが、共通しているのは、所持しているカードを他人とトレード(交換)することができるという点にあります。
このトレードはあくまで交換なので、基本的に同価値のカード同士を交換することがもともとの意味で、お金を支払て購入することは例外的な場合といえます。
しかし、全体総数が少なかったりゲーム的に非常に強いカードなどは「レアカード」と呼ばれ、お金を支払ってでも手に入れたいという人が多くいるため、最近ではインターネットサイトを通じて高額で転売されるということも多くなってきています。
新品であれば数枚入ったパックで数百円で販売されているカードが、レアカード1枚で1000万円以上で取引されることもあり、投資や転売目的で購入されることも多くなっています。

トレカ転売で得た利益

トレカ転売で得た利益については、所得となります。
もっとも、転売価格すべてが所得税の課税対象となるわけではなく、カードを取得した時にかかった金額(仕入額)については経費として差し引くことができます。
そのため、所得税の課税対象となるのは、「転売価格-仕入にかかった経費」という計算式によって算出された金額ということになります。
トレカ販売を会社として行っていた場合には、販売によって得た利益に対して法人税が課税されます。法人税の課税対象も仕入にかかった経費などを差し引いた金額になります。
また、所得税や法人税に加えて、消費税など別の税金もかかってくることになります。

トレカ転売利益の確定申告

トレカ転売によって得た利益について、20万以上ある場合には、確定申告が必要となります。
確定申告を怠っていた場合には、税務署の税務調査などを受けることになり、本来納めるべきであった税額(本税)に加えて、無申告加算税や延滞税といった追徴課税が課せられることになります。
また、本事件のトレカ販売会社のように、確定申告は行っていたものの、売り上げの一部を除外するなどして、利益を実際よりも少なく申告していた場合には、過少申告加算税が課せられることになります。
さらに、無申告や過少申告の方法が、仮装隠ぺいを伴うような悪質性が高い行為によって行われていたとされた場合には、無申告加算税や過少申告加算税に代えて、重加算税が課せられる場合もあります。
重加算税が課せられる多くの場合は、国税局による査察調査を経て課せられることになるため、査察が入った場合には高額の追徴課税がなされることを覚悟する必要があります。

査察調査が入った場合には、重加算税などの追徴課税だけでなく、検察庁への刑事告発がなされる可能性も考えておかなければなりません。
本事件のトレカ販売会社やその代表者が刑事告発をされたかどうかについては報道では明らかではありませんが、仮装隠ぺい行為によって法人税を免れていたということであれば、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその両方が課されることになり、罰金の額は免れた税額まで上限を上げることが可能となっています。
刑事告発をされても、必ず刑事裁判になるわけではありませんが、告発からの起訴率は約70%と言われており、高い確率で刑事裁判で罪に問われることになります。

税務調査を受けたら

トレカ転売を個人で行っていたとしても、利益を多く得ていれば確定申告が必要となります。
本事件では「申告方法がわからなかった」と男性らは説明しているようですが、そのような説明は確定申告をしないことを正当化する理由にはなりません
確定申告が必要か否か、必要だとしてどのように申告したらいいかを専門家に相談して検討してもらいましょう。
また、確定申告を忘れていたり、確定申告の内容が間違っていた場合には、早急に修正して確定申告をし直しましょう。
税務調査がすでに入っている場合には、税理士や弁護士などに相談し、専門家とともに調査に臨み、早めに修正申告をしたり、本税の納付を早急に行うなどの対応をすることで、査察調査を免れたり、刑事告発を免れられる可能性が高まります。

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