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逋脱犯の成立要件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
租税逋脱とは
租税逋脱(ほだつ)とは,いわゆる脱税行為を指し,一般に納税義務者が偽りその他不正の行為により税を免れることにより成立する犯罪です。現行法上,租税逋脱犯には,所得税,法人税,相続税,贈与税,消費税,酒税等の逋脱が犯罪としてありますが,事件数が多いのは所得税逋脱犯及び法人税逋脱犯です。
所得税や法人税の逋脱犯が成立するには,客観的要件の充足と主観的要件としてその認識(租税逋脱犯の故意)からなりますので,順にみていきましょう。
逋脱犯成立に必要な客観的要件
脱税行為となる不正の行為の態様を基に,逋脱犯は,①虚偽過少申告逋脱犯,②無申告逋脱犯,③税務調査に対し,不正工作する逋脱犯とにおおむね3つに分類されます。
これらの具体例として,①は所得金額を過少に記載した申告書を提出する行為,②は所得金額があるにもかかわらず正当な理由なく納税申告書を提出期限までに提出しない行為,③は税務署職員の調査に対し,嘘をつくなどの不正な工作をして税を免れる行為が,それぞれ典型例として挙げられます。
主観的要件
逋脱犯も一般の犯罪と同じく故意犯でなければ処罰されません(刑法38条1項)。したがって,逋脱犯が成立するためには,上記①~③の脱税行為に対する行為者の認識が絶対に必要とされます。
その認識の対象となるのは,①では,申告書に所得金額を過少に記載した事実,②では,所得金額があるにもかかわらず申告書を提出していない事実,③では,税務署職員に対し,虚偽の不正工作をしている事実がそれにあたります。
そして,当然ながら,これらの事実に対する認識が納税義務者や違反行為者に存しなければなりません。つまり,所得を得た者のほか,会社の代表取締等の代表者は,本来的にこれに当たり,さらに,上記①,③の行為をした会社の従業員も違反行為者となるでしょう。
逋脱犯の主体となる行為者は誰か
逋脱犯は,納税義務者等が故意に逋脱して成立します。そのため,上記の客観主観の両要件が成立するのと同時にその主体が逋脱犯行為者でなければなりません。これが所得税であれば,具体的に所得を得た者であり,株式会社の場合であれば,一切の権限を有する代表取締役(会社法349条4項)であることも明白です。さらにケースバイケースとなるものの,法人の場合には,その従業員である納税申告事務担当者も該当し得ることになります。
弁護士等に相談を
一見,単純明快な逋脱犯の成立要件ですが,法人等の場合は意外と複雑です。そして,脱税の嫌疑がかかり起訴されて裁判となれば,所得税や法人税の逋脱の場合,刑事罰として10年以下の懲役又は千万円以下の罰金(場合によっては併科される)が科されるおそれがあるほか,行政上の制裁として加算税等が賦課されることとなります。
逋脱犯には,このように複数の処罰が法定されており,関与者が重大な事態に陥ることが避けられないおそれがあります。そこで,修正申告による是正措置の可能性や本税の予納など法的手段を尽くした対応が求められますが,それには,できるだけ早く弁護士等への相談をすることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談は初回無料ですので、一度ご相談ください。