【告発事例】消費税免税制度を悪用した消費税不正受還付事案

大阪国税局が発表した令和4年度査察の概要に紹介されている、消費税免税制度を悪用した消費税不正受還付事案を大阪国税局が告発した事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例


A社は、日用品の輸出販売のほか、輸出物品販売場の経営等を行うものですが、取引事実がないにもかかわらず、不正加担者と共謀して、同人が主宰する法人から化粧品等を仕入れたかのように装い架空の課税仕入れを計上し、当該化粧品等を輸出物品販売場において外国人観光客に販売したかのように装い架空の免税売り上げを計上する方法で、不正に消費税等の還付を受け、又は受けようとしました。

消費税免税制度とは

先週のブログで某有名百貨店が追徴課税を受けた事件を紹介しましたが、そこで問題となったものも消費税免税制度でした。
消費税免税制度は、消費税免税店において外国人観光客などに消耗品などを販売した場合、一定の要件のもと、消費税が免税される制度です。
物品を仕入れる際に仕入先に対して消費税を支払っている場合、仕入れた物品を免税対象者に対して免税物品として販売すると、その物品に関する消費税は免税されることになります。
そうすると、仕入先に支払った免税販売物品にかかる消費税について、免税店は税務署に対して消費税の還付を申請することができ、支払った消費税を取り戻すことができます
事例で問題となっている化粧品は消耗品として免税対象物品に入っているため、仕入れの際に消費税を支払っていれば、それを免税販売した場合には、仕入れにかかった消費税が還付されることになります。

消費税免税制度の悪用

今回の事例では、上記消費税免税制度を悪用したということができます。
実際には仕入れていないのに、化粧品を消費税を支払って仕入れたように装って、なおかつ、外国人観光客に免税販売したように装って、その分の消費税の還付を申請しているからです。
全く取引実績がないのに、取引があったように装っている点で、悪質性の高い仮装行為ということができますし、それによって還付を請求したことは、詐欺にも該当するような行為を行っていたということができます。
先週のブログで紹介した百貨店の事例では、免税販売における必要な確認が不十分なことが原因で、本来であれば免税とはならない取引についても免税対象としてしまっていたということが問題とされていました。
この場合には、実際に取引はありますし、意図的に隠ぺいや仮装を行ったというよりも、不注意による申告漏れという側面が強いといえます。
そのため、告発はされずに追徴課税がなされるにとどまっていました。
しかし、今回の事例では、非常に悪質性が高い方法により消費税の還付を受けているということで、告発をされたといえるでしょう。

告発されるとどうなるか

国税局から告発されると、告発を受けた検察庁が刑事事件として捜査を開始します。
通常の刑事事件では警察が捜査をするのが一般的ですが、脱税事件の場合には、いきなり検察庁が捜査をすることになります。
今回の事例では大阪地方検察庁が捜査をすることになります。
それまでの税務調査や査察調査では身体拘束をされることはありませんが、刑事事件としての捜査が開始されると逮捕される可能性が出てきます。
事件を否認している、脱税方法が悪質、共犯者多数、脱税額が巨額などの場合には、逮捕される可能性が高いといえます。
また、告発をされると報道されるリスクも格段に上がります。

検察庁が捜査をした後は、多くの場合、起訴されます。
告発事件の起訴率はおよそ7割です。
起訴されると、刑事裁判が開始されます。
身体拘束状態であれば保釈が認められない限り、身体拘束を受けたまま裁判を受けることになってしまいます。
裁判で有罪判決を受けると、実刑判決の場合には、刑務所に入ることになってしまいます。
執行猶予付きの判決だった場合には、刑務所にいきなり入ることはないですが、基本的に罰金刑が同時に言い渡されるので、罰金は払わないといけなくなります。
罰金の金額は脱税額の2~3割ぐらいが相場と言われています。

追徴課税は別に受ける

告発を受けて捜査や裁判を受けることになっても、追徴課税は別に受けることになります。
追徴課税とは、申告をしていなかった場合の無申告加算税や少なく申告していた場合の過少申告加算税など、本来納めるべき税額の他にペナルティーとして課される税金のことです。
悪質性が高いと、無申告加算税や過少申告加算税に代えて、より税率の高い重加算税が課せられる場合もあります。
特に、告発を受けた事件であれば、重加算税が課される可能性は高いと言えるでしょう。

不正に消費税還付を受けてしまったら

追徴課税や刑事罰に問われる可能性がありますので、早期に対応する必要があります。
不正に還付を受けてしまった金員を返還することは減軽につながります。
刑事事件化した場合には、身体拘束を避けたり、裁判で重い刑罰を受けないようにするために、刑事事件に強い弁護士に依頼するようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に精通した弁護士が全力でサポートします。

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