【国税庁発表】令和3事務年度法人税等の調査事績の概要

令和4年12月に国税庁から報道発表のあった「令和3事務年度法人税等の調査事績の概要」から国税庁の調査状況について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が考察します。

法人税との調査事績の概要

令和4年12月の報道発表では、法人税等の調査事績の概要のまとめとして
①新型コロナウイルスの影響を受けつつも、調査件数、申告漏れ所得金額、追徴税額が増加
悪質な納税者には厳正な調査を実施する一方で、その他の納税者には簡易な接触を実施
とあります。

法人税・消費税の調査事績の概要

国税庁では、あらゆる資料情報と提出された申告書等の分析・検討を行った結果、大口・悪質な不正計算等が想定される法人など、調査必要度の高い法人について実地調査を実施しています。
実地調査の件数は、令和2事務年度が2万5000件だったのに対して、令和3事務年度では4万1000件と1.5倍以上の増加となっています。
この急激な増加については、令和2事務年度の実地調査件数は令和元年度と比べると32.7%にあたるものしか行われていないことから、令和2事務年度の件数が少なかっただけということができるでしょう。
もっとも、新型コロナの影響で実地調査が減少していた令和2事務年度と比べると、新型コロナ流行前の実地調査件数に戻ってきたということもできるため、令和4事務年度は昨年度ほどの大きな増加は見られないと思いますが、昨年度と同程度以上の実地調査が行われる可能性が高いと言えるでしょう。

実地調査の結果、申告漏れの所得金額は6028億円で、令和2事務年度の114%、追徴税額は2307億円で、令和2事務年度の119.2%となっています。
申告漏れ所得金額、追徴税額ともに令和元年度よりも増加していますが、実地調査の件数が増加しているため、当然の結果といえそうです。
それよりも重要なことは、実地調査の件数の増加率よりも、申告漏れ所得金額や追徴税額の増加率の方が低いことです。
調査1件当たりの追徴税額を見ると、令和2事務年度が780万6000円、令和3事務年度が570万1000円となっています。
つまり、令和2事務年度の方が1件当たりの申告漏れ所得額も多かったということができます。
このことは、令和2事務年度は新型コロナの影響により、より大口で悪質な案件のみに限って実地調査を行ったことも原因と考えられますが、一方、令和3事務年度では大口・悪質される案件のハードルが下がっていると考えることもできます
そのため、今後もこれまでよりも少額や悪質性が高くないと思われる案件についても実地調査が行われる可能性を示唆しているといえます。

簡易な接触事績の概要

簡易な接触とは、税務署において書面や電話による連絡や来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しなどを要請するものです。
単純な申告内容の誤りなど、悪質性が低いと思われる事案に対して行われるものと考えてください。
簡易な接触の件数は前年度と比べて98%とほとんど変わっていません
実地調査は大きく増えているのに対して簡易な接触の増減が少ないことは、国税庁が大口・悪質性が高い事案に対して、積極的に取り組んでいることを示しているといえるでしょう。

これらのデータからは、新型コロナの影響が終息に向かっていくにつれて、国税庁の調査も本格化していることがわかります。
自分は大丈夫と安易に考えず、早めに専門家に相談し、取り返しがつかなくなる前に対処しましょう。

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