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国外財産調書制度とはどのような制度かについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
国外財産調査制度とは
この制度は、平成24年度財政改革において創設された制度です。
制度の概要
1 国外財産調書の提出
その年の12月31日において、価額の合計額が5000万円超える国外財産を有する非居住者以外の居住者は、当該財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、翌年3月15日(令和5年分以後は翌年6月30日)までに、税務署長に提出しなければなりません。
この場合、財産の評価については原則として時価ですが、見積価額とすることもできます。
また、国外財産提出に当たっては、別途「国外財産調査合計表」を作成し、添付する必要があります。
2 過少申告加算税等の特例
国外財産調書を提出期限内に提出した場合に、国外財産調書に記載がある国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときは、その国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税が5パーセント軽減されます。
逆に、国外財産調書の提出が提出期限内にない場合又は提出期限内に提出された国外財産調書に記載すべき国外財産の記載がない場合に、その国外財産に関して所得税・相続税の申告漏れ(死亡した方に係るものを除きます。)が生じたときは、その国外財産に係る過少申告加算税又は無申告加算税が5パーセント加重されます(ただし、相続国外財産について、相続国外財産を有する方の責めに帰すべき事由がなく提出等がない場合には、加重の対象になりません。)。
3 罰則
国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合又は国外財産調書を正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることがあります。ただし、正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合には、情状によりその刑を免除することができることとされています。
(国外財産等調書法5条、6条、10条参照)
何故、国外財産調書制度が創設されたのか
「海外の資産は、税務調査を免れることができる」という話を耳にすることがあります。
実際、近年、我が国の納税者による国外財産の保有が増加傾向にある中で、国外財産に係る所得税等の申告漏れが増加している現実があり、国外財産に係る課税の適正化をいかにして図るかが喫緊の課題となっていました。
こうした背景のもとに、国外財産の状況を把握する方策として、課税当局が国外財産を把握する仕組みや、国外財産を保有している納税者からその保有する国外財産の状況を課税当局に対して自ら申告してもらう制度が創設されています。このうち後者の制度のひとつとして、国外財産調書制度が創設されたのです。
上記2で述べましたように、この制度は、国外財産調書が提出されていなかったり、本来記載すべき国外財産が記載されていなかったりした場合、その際課せられる過小申告加算税等が上乗せされるのに対し、調書を提出していれば記載のある国外財産に対して所得税・相続税の申告漏れが生じても、同様の加算税等が軽減されるという恩恵が与えられるという制度になっています。そうすることで、調書を確実に提出するよう促しているのです。
まとめ
売上の一部を海外預金口座に入金するなどして課税を免れようとしても、CRS(OECDが策定した共通報告基準に基づくもので、世界各国の税務当局が有する銀行口座の情報を交換する仕組みであり、各国の金融機関を通じて各国で情報交換されることになっています。)による金融口座情報によって口座を把握されるなどすれば、税務調査が入る可能性があります。
そして、税務調査が入った場合、国外財産調書を提出していなければ、上乗せされた過少申告加算税等を支払う必要があり、また、罰則まで課されることがあることにも注意しなければなりません。
更に、悪質性が高かったり脱税額が巨額になる場合には、査察調査に発展することもあります。
査察調査は税務調査と違い、強制的に調査をすることができ、最終的には刑事告発に至る場合が少なくありません。実際、査察調査から刑事告発される割合は約70%と言われています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。