損害賠償金に税金はかかるのか?

損害賠償金に対して課税はされるのかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

損害賠償金

不法行為などによって損害を被った場合、損害を被った側は損害を与えた側に対して損害賠償を請求することができます。
損害賠償は通常の場合、金銭で支払われることになりますが、損害賠償金を受け取った場合、所得として課税対象となるのでしょうか。
今回は、犯罪によって損害を被った場合における損害賠償金に課税されるかについて、事例をもとに解説していきます。

事例1~過失運転致傷の場合~

Aさんは自動車を運転中によそ見をしてしまい、東京都千代田区の横断歩道を青信号に従って歩行中のVさんをはねて怪我をさせてしまいました。
Aさんは、Vさんが怪我の治療により支払った治療費や休業損害、慰謝料などを含め200万円をVさんに支払うことで、Vさんから許してもらいました。

この場合、Vさんは、200万円の利得を得たことになりますが、「心身に加えられた損害に対する損害賠償金」については、「非課税所得」となるため(所得税法9条1項18号)、所得税の課税対象とはなりません。

事例2~業務上横領の場合~

Bさんは、愛知県名古屋市にある会社の経理を任されていましたが、会社の売上金から合計1000万円を横領していました。
会社から問い詰められたAさんは、横領の事実を認め、会社に対して1000万円の損害賠償金を支払うことで示談しました。

この場合、会社には実際に1000万円の損失があり、1000万円の損害賠償金はその損失を回復しただけということになるので、課税されないことになります。

事例3~窃盗の場合~

Cさんは、大阪府堺市にある店の倉庫に忍び込み、商品を盗んで売り払っていましたが、あるとき忍び込んだところを店員に見つかり、警察に逮捕され、逮捕された後の捜査で、Cさんが盗んだ商品の総額が300万円になることが判明しました。
店は今回の事件を受けて防犯のために防犯カメラの設置などを行ったため、その費用も含めてCさんに請求しようと考え、盗まれた商品が売れたとしたならば得られたであろう利益防犯カメラの設置代などを合わせて500万円をCさんに請求し、支払ってもらいました。

この場合も、店としては商品の損害を受けているため、それを補填してもらっているのであるから、非課税となりそうです。
しかし、事業用の資産に対しての損害賠償金の場合には注意が必要です。
社会通念上ふさわしいとされる範囲での見舞金の金額に相当する部分については非課税とされますが、商品を売った場合に得られる売却益を損害賠償金として受け取った場合、収入金額に代わる性質をもつものとして課税対象となります。
また、防犯カメラの設置代などについては、本来であれば会社の経費として算入される金額を補填するためのものと言えるため、非課税とはならず、事業所得の収入金額となる可能性が高いです。
そのため、今回の事例では、社会的に相当と言える範囲を超えた部分や事業収入の代わりに支払われたと考えられる部分については、課税されることになります。

まとめ

損害賠償金として受け取った金銭については、基本的には非課税所得となりますが、場合によっては課税対象となる場合があります。
そのため、損害賠償金として受け取ったとしても、確定申告が必要となる場合があり、税理士や弁護士に確認しておく必要があります。

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