法人税脱税事件の実刑判決事例紹介

実刑

日本では脱税事件の有罪率は極めて高いものの、多くは執行猶予付き判決にとどまり、実刑(執行猶予なしの懲役刑)が言い渡されるのは脱税額が巨額であったり常習性がある場合です。法人税に関する脱税で実刑判決に至った代表的な事例を、概要と判決内容・量刑理由とともに紹介します。

銀座「丸源ビル」オーナーによる10億円超の法人税脱税事件(2018年)

事件概要: かつて「銀座の不動産王」と呼ばれた「丸源ビル」オーナーは、自身が社長を務めていたビル管理会社のテナント賃貸収入の一部を除外する手口で、2011~2013年の3年間に計約35億円の所得を隠し、法人税約10億6000万円を免れたとして起訴されました。被告人は初公判で全面否認し、公判中に弁護団を何度も交代するなど長期裁判となりました。

判決内容: 東京地方裁判所は被告人に対し懲役4年及び罰金2億4000万円の実刑判決を言い渡しました(求刑は懲役5年・罰金3億円)。判決理由で裁判長は、「脱税規模は極めて大きく、所得隠しの手口も巧妙。被告は売上や経費を自身の思うままに操作し、納税義務をないがしろにした」と被告人の犯行態度を厳しく非難しました。巨額かつ悪質な脱税であること、起訴後も反省や納税が見られなかったことが実刑・長期懲役の主因となりました。

税理士による法人税脱税ほう助事件(2020年)

事件概要: 税理士で会社社長の被告人は、首都圏の2社が所得隠しを行って法人税の納付を免れた際、その事実を知りながら自らの管理する会社名義の口座に架空名目の資金を入金させる方法で脱税を手助けしました。具体的には、2社が計上した架空の雑損失や不動産手数料の支払いを装って、被告人の会社口座に資金を迂回入金させることで、両社の所得隠しを容易にしていたとされます。被告人は過去にも同様の法人税法違反ほう助で有罪判決(執行猶予付き)を受けており、その執行猶予期間中に再び本件犯行に及んでいました。

判決内容: 東京地方裁判所で判決が言い渡され、被告人に懲役10か月および罰金800万円の刑が科されました。全国で初めて法人税法違反のほう助犯に対して実刑判決が出たケースでもあります。量刑理由としては、過去の前科があり執行猶予中の再犯だった悪質性が決定的でした。裁判所は「一度有罪判決を受けながら再び脱税ほう助に及んだ点は看過できない」として、再犯抑止の観点から実刑が相当と判断したものとみられます。

まとめ

国税庁の公表データによれば、近年の脱税事件で実刑判決にまで至るケースは毎年数件程度です。例えば令和5年度中に一審判決があった脱税事件83件では、うち9人(約11%)が実刑判決を受けています。実刑となる懲役期間の平均は約16ヶ月で、最長は前述の銀座ビルオーナー事件の懲役4年でした。一般に「ほ脱額が合計3億円を超える場合には、全額納付していても実刑判決となる場合が多い」とも言われており、巨額・悪質な脱税には厳罰が科される傾向があります。実刑判決が確定すればただちに服役が必要となり、執行猶予付き判決と比べて社会的制裁も一層深刻なものとなります。 脱税を疑われた場合には、早期に弁護士に相談し、実刑判決という重い判決を受けることがないように活動してもらいましょう。

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