相続税はややこしい?~②~

相続税がかかる場合や、相続税の計算方法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が2回に分けて解説します。
第2回目は、相続財産から控除できる費目や、相続税の実際の計算方法について具体例を参考にしながら解説します。

相続財産の価額から控除できる債務と葬式費用

被相続人の「債務」と被相続人の葬式に際して相続人が負担した「葬式費用」は、相続財産の価額から差し引かれます。
差し引くことができる債務には、借入金や未払い金などのほか、被相続人が納めなければならなかった税金で、まだ納めていなかったものも含まれます。
また、葬式費用とは、①お寺などへの支払い、②葬儀社への支払い、③お通夜に要した費用などです。
なお、墓地や墓碑などの購入費用香典返しの費用や法要に要した費用などは、葬式費用に含まれません。

相続税の計算

【具体例】財産を取得した人それぞれの課税価格の合計額が1億円で、配偶者が8000万円子2人が1000万円ずつ相続した場合
まず、課税遺産総額を算定
課税価格の合計額:1億円
基礎控除額3000万円+(600万円×相続人の数3人)=4800万円
課税遺産総額課税価格の合計額-基礎控除額=1億円-4800万円=5200万円

次に課税遺産総額を法定相続分で按分
法定相続分とは、法律上定まっている相続割合のこと。子及び配偶者が相続人のときは、子の相続分と配偶者の相続分は各2分の1となります。
具体例のように、子が二人の場合には、2分の1をさらに二人で分けることになるため、子の法定相続分はそれぞれ4分の1となります。
そのため、課税遺産総額を法定相続分で按分した場合
配偶者:5200万円×2分の1=2600万円
子:5200万円×4分の1=1300万円
となります。

相続税の総額を算定
相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続分で按分した額にそれぞれ相続税率を掛け、控除額を差し引いた額を足し合わせたものとなります。
1000万円を超え、3000万円以下の場合の相続税率は15%です。またこの場合の控除額が50万円となっています。
そのため、配偶者:2600万円×15%-50万円=340万円、子:1300万円×15%-50万円=145万円となります。
相続税の総額は、340万円+145万円+145万円=630万円となります。

相続税の総額を実際の相続割合で按分
具体例の相続割合は、配偶者:子:子=8:1:1です。
そのため、配偶者:630万円×0.8=504万円、子:630万円×0.1=63万円となります。

実際に納付する税額を算出
按分した税額から税額控除の額を差し引いた後の金額が実際に納付する相続税額となります。
今回は、配偶者の税額軽減措置のみが適用されたとして考えていきます。
配偶者の税額軽減措置とは、被相続人の配偶者の課税価格が1億6000万円までか、配偶者の法定相続分相当額までであれば、配偶者に相続税がかからないという措置のことです。
そうすると、具体例の場合、実際に納付する相続税額は、配偶者:0円、子:63万円、子:63万円となります。

相続税はややこしい?

これまで相続税に関する基本的な内容を見てきました。
相続税には基礎控除額が3000万円+(600万円×相続人の数)というある程度大きな金額が定められており、相続税がそもそもかからない人も多いと思われます。
しかし、生前に贈与を受けた金銭が相続財産に含まれたりと、実際に相続が発生した段階で現存する財産以外も相続税が課せられる財産に含まれてしまう可能性があります。
そのため、相続税がかかるかかからないかについては、専門家に依頼して、しっかりと見極めてもらう必要があります。
また、相続財産の額によって相続税率が変わりますし、そもそも相続税を計算する計算式も民法の知識が必要であったりして複雑です。
相続が発生した場合には、お葬式など様々な行事に手間をとられて大変だと思いますが、税金についておろそかにすると、のちのち追徴課税などで痛い出費になってしまう可能性もあります。
専門家に任せることで、手間も減らせることになりますので、早めに専門家に相談しましょう。

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