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税務署による税務調査を受けている際に使うことのできる予納制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
税務調査と修正申告
所得税や法人税の確定申告内容に誤りがないかどうかを確かめるために、税務署は数年に1回ほどの頻度で税務調査を行います。調査の結果、申告内容に不備があることが発覚した場合は、本来納めるべきはずの税金を納付しなければいけません。
既に確定申告期限が過ぎている場合は、修正申告を行うことになります。本税の他にも、期限までに税金を納付しなかったことへのペナルティとして、附帯税も課せられます。附帯税には加算税(過少申告加算税や重加算税など)や延滞税といったものがあります。
延滞税とは
延滞税とは、期限までに税金を納めていなかった場合に、法定納期限の翌日から実際に納付を行った日までの日数に応じて課せられる附帯税の一種です。延滞税の割合は、法定納期限の翌日から2ヶ月を経過しているか否かで変わってきます。
延滞税は、本税を基準に納付が行われるまで課せられるため、納税者にとって大きな負担となる場合があり得ます。
予納制度とは
先ほども述べたとおり、通常は修正申告を行ってから本税や附帯税を納めることになります。もっとも、修正申告までに時間を要してしまえば、その分だけ延滞税の負担も大きくなっていきます。また、既に国税局による査察調査に移行している場合は、強制調査によって関係資料が押収されてしまい、修正申告をしようにもできないこともあり得ます。
このような場合に役に立つのが予納の制度です。予納とは、納付すべき税額の見込額を税務署長に申し出て、あらかじめ納付することを指します。予納は修正申告を行う前にも可能なため、修正申告を行うまでに時間を要する場合や、手元資料の関係で修正申告が困難な場合にも行うことができます。
予納を行う際は、国税の予納申出書に必要事項を記載して所轄税務署に提出し、納付を行うことになります。予納申出書については、国税庁のホームページでも紹介してありますので、そちらもご参照ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/zeirishi/annai/pdf/0019011-087_03.pdf
予納による延滞税の負担軽減
延滞税は税金を納めるまで課せられるため、予納制度により早期に納付を行えば、延滞税の負担を最小限に抑えることができます。税務調査官の方から予納を促されることもありますが、延滞税の負担を軽減する大きなメリットがあるため、納付できる現金が手元にある場合は、積極的に予納制度を用いて早期の納付を行っていくことが重要です。
予納制度と刑事事件の関係
予納制度を利用するもう1つのメリットに、刑事事件化を抑止する事情の1つになることが挙げられます。刑事事件化とは、税務署による税務調査や国税局による査察調査だけでは済まず、国税局によって検察庁に刑事告発をされた場合を指します。
刑事告発をされてしまうと、脱税事件という刑事事件として扱われることになるため、逮捕や勾留によって身体拘束がされるおそれもあります。検察庁によって起訴された場合は、刑事裁判を受けることになります。脱税事件が起訴された場合の有罪率は100%なため、起訴をされてしまうと、懲役刑や多額の罰金が科せられることになってしまいます。
予納制度を利用して税金の納付を行うことは、刑事事件化を回避するうえで有利な事情の1つとなりえます。国税局による告発や検察庁の起訴を行うか否かは、主として脱税額や脱税スキームの悪質性で判断されますが、納税者の姿勢も考慮されます。実際に、脱税事件の刑事裁判の量刑理由においても、修正申告の有無や本税、附帯税の納付が済んでいるかは考慮されています。
予納により早期の納付を行うことは、好ましい納税者の姿勢として、有利な情状として考慮されます。ケースによっては、告発や起訴そのものを回避できることもありますし、起訴されるにしても、その範囲が縮小されることもあります。
早期に弁護士へ相談を
ここまで述べたとおり、予納制度は延滞税の負担軽減や刑事事件化の回避を目指すうえで重要な手段の一つといえます。
もっとも、予納によってどの程度まで刑事事件化を回避できるかを自力で正確に判断するのは困難です。そのため、予納制度の利用を検討している場合は、税理士だけでなく弁護士にも相談をしておくことが肝要です。