このページの目次
脱税工作のための支出金を出していた会社における問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
X会社は、架空の経費を計上して所得を秘匿し、法人税を過少に申告しました。X会社は、架空の経費を計上することについて協力した者に手数料を支払っていましたが、この手数料の金額については、損金として所得から控除されると考えていました。
違法な支出も法人所得計算上、損金算入される?
違法な支出、たとえば、架空の経費を計上するため(脱税をするため)に、協力をしてもらった者に支払った手数料(脱税工作金)ついても法人所得計算上、損金算入されるのでしょうか。
この点が争われた事件で、最高裁判所は、「架空の経費を計上して所得を秘匿することは、事実に反する会計処理であり、公正処理基準に照らして否定されるべきものであるところ、右手数料は、架空の経費を計上するという会計処理に協力したことに対する対価として支出されたものであって、公正処理基準に反する処理により法人税を免れるための費用というべきであるから、このような支出を費用又は損失として損金の額に算入する会計処理もまた、公正処理基準に従ったものであるということはできないと解するのが相当である。」として、法人税法22条4項の「公正処理基準」を根拠に損金性を否定しました(最高裁平成6年9月16日第三小法廷決定・刑集48巻6号357頁)。
本件は、不動産売買等を目的とする被告会社が架空造成費を計上して所得を秘匿し、法人税を過少に申告したとして法人税法違反で起訴された事案です。被告会社は、架空の土地造成工事に関する見積書等を提出するなどして脱税工作に協力した者に支払った「手数料」は被告会社の法人所得計算上、損金として所得から控除されるべきであると主張していたものです。
現在の立法
こうした判例を踏まえて、平成18年度の税制改正で、次のような条文が規定されました。
法人税法55条1項
内国法人が、その所得の金額若しくは欠損金額又は法人税の額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装すること(以下「隠蔽仮装行為」という。)によりその法人税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合には、当該隠蔽仮装行為に要する費用の額又は当該隠蔽仮装行為により生じる損失の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
この規定ができたことで、現在では、脱税工作金について法人所得計算上、損金算入できないことは明らかになっています。また、法人税法55条は、賄賂を渡すことなどについても、損金算入を認めていません。
条文に記載されていない違法支出について
もっとも、既に述べたように条文に明記されていれば別ですが、条文で損金に算入できないことが明確に記載されていない違法支出については、どうでしょうか。この点、損金算入が認められるか否かについて未だ争いがあるところです。条文が禁止していなければ損金算入できるという考えも成り立つと思います。他方で最高裁平成6年決定のように、法人税法では、その所得金額の計算においては、公正処理基準に従って会計処理を行うとされているので(法人税法22条4項)、公正でなければならないという点を強調すれば、広く一般に違法支出の損金算入は認められないと考えも成り立つと思います。
最後に
法人税法違反があるなどとして刑事事件化した場合には、脱税事件に強い弁護士のサポートが不可欠といえます。課税処分に不服がある場合にはこちらhttps://datsuzei-bengoshi.com/fufukumousitate/
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。