見積額を費用として計上することができるのか

見積もり

完成工事原価の見積額を費用(損金)として計上した場合における問題について、事例を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 事例


大阪府大阪市に本社を置く建設会社X社は、令和4年の確定申告において、令和4年に大阪市と契約をした公共工事(以下、「本件工事」といいます。)の完成工事原価見積額約1億円を、費用として計上しました。
X社は税務調査を受けることになりましたが、上記のことが不安で、担当者が、弁護士に相談することになりました。

2 完成工事原価の見積額を費用として計上することの可否


完成工事原価とは、請負工事契約に基づく工事の原価を意味し、請負による収益に対応する原価の額には、その請負の目的となった物の完成または役務の履行のために要した材料費、労務費、外注費および経費の額の合計額のほか、その受注または引渡しをするために直接要したすべての費用の額が含まれます。
通常、請負工事を発注する際、事前に、どれくらいの費用(これが完成工事原価)がかかるか見積もりを出します。
その上で、請負契約を締結しますが、実際に、工事が完成するのは、事業年度をまたぐこともあります。
そのような場合、当該事業年度の収益が大きいと、完成工事原価の見積額を費用として計上し、課税対象となる所得を減らせないかということが問題となります。
この点について、最判平成16年10月29日刑集58巻7号697頁は、売上原価等(ここに完成工事原価も含まれます)を構成する費用の額の全部または一部が事業年度終了の日までに確定していない場合、すなわち債務が未確定である場合にも、①近い将来に当該未確定の費用を支出することが相当程度の確実性をもって見込まれておりかつ②事業年度末日の現況によりその金額を適正に見積もることが可能であったという事情があるときには、収益と対応する売上原価等として損金算入することができるとしました。
仮にそうした事情が認められない場合には、法人税に違反するということになります。

3 税務調査等における弁護活動


X社としては、税務調査において、本件工事について、見積額を費用として計上していることが問題となった場合、まず、そうした見積額を費用として計上することができるか検討する必要があります。
その上で、費用計上できると判断される場合には、①近い将来に、その費用を支出することが相当程度確実であること、②事業年度末日の現況によりその金額を適正に見積もることが可能であったことを説明していくことになります。
具体的には、契約に至った経緯や契約内容、工事の進捗状況等を説明したり、見積もりの算定根拠を、資料に基づき説明していったりすることが考えられます。
一方で、本件工事に関する見積額を費用として計上することが認められないと判断される場合には、早期に修正申告をすることが考えられます。
税務調査などにおける説明や修正申告については、基本的に税理士が行っていくことになりますが、法的な判断が必要になりますので、弁護士のアドバイスのもと、上記のような対応をしていく必要性はあります。
また、その他にも法人税法違反があるなどして、刑事事件化した場合においては、弁護士が対応する必要があります。
その際には、脱税事件や税金関係に強い弁護士のサポートが不可欠ともいえます。

4 最後に


弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、法人税法違反など多数の事件を取り扱っています。法人税法違反の疑いがあるとして税務調査を受けた方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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