金地金の密輸は告発されやすい?

金地金の密輸は告発されやすいのか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

金地金の密輸

金地金を海外から日本に持ち込む場合、①重量が1kgを超える又は②他の物との合計金額が20万円を超えるときには、税関に申告して税金を納める必要があります。
金地金の密輸とは、この申告をしないために消費税の納付を免れることで、消費税分の利益を得ることができるという仕組みになっています。
具体的な例で考えてみましょう。
1kg当たり500万円の金地金を5kg(2500万円相当)を輸入する場合、本来であれば税関で消費税10%に当たる金額(250万円)を納付する必要がありますが、これを納付せずに国内に持ち込み、国内で消費税相当額250万円を上乗せして売却することにより、密輸入者は250万円の利益を得ることができます。
きちんと納税をして売却しても売却益を得ることができますが、消費税分の利益と比べれば微々たるものとなってしまいます。
そのため、金地金の密輸は後を絶たず、財務省は金地金の密輸に対して2017年以降「ストップ金密輸」という対策を打ち出しており、それに伴い、関税法や消費税法の罰則が強化されています。

金地金密輸の告発事例

令和4年11月9日に財務省が行った報道発表によれば、令和3年の告発事例として以下の2事例が紹介されています。
①航空機旅客による金地金の密輸
Aらが、シンガポールから入国する際に、金地金約18kgを税関長の許可を受けることなく輸入し、消費税等約649万円を不正に免れた事案の告発
②航空貨物を利用した金地金の密輸
Bらが、中国からの航空貨物(スマートフォンホルダー)により、金地金約7kgを税関長の許可を受けることなく輸入しようとし、消費税等約467万円を不正に免れようとした事案の告発

金地金の密輸は告発されやすい

金地金密輸の告発事例で注目すべきは、免れたとされている金額です。
一般的に、査察調査などを経て告発される事案では、免れている税額が3000万円を超えていることが多いとされています。
当然それよりも低い金額で告発されることもあり、2019年7月1日に仙台地裁で下された判決にかかる事例では、逋脱税額が約1500万円でした。
しかし、上記で取り上げた告発事例では、逋脱税額が約649万円や約467万円と非常に少額にもかかわらず告発されているということになります。
この背景には、税関が金密輸への対策を強化していることに加え、国税庁も消費税事案を重点事案として積極的に告発している現状を踏まえたものと考えられます。

金地金の密輸については、関税法上の無許可輸出入罪、消費税の逋脱罪、地方税の逋脱罪の3つの罪が成立することが多いとされています。
この3つの罪は観念的競合となり最も重い刑により処断されることになるため、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又はその併科となります。
そして、罰金の上限額については、貨物の価格の5倍が1000万円を超える場合には貨物の価格の5倍、脱税額の10倍が1000万円を超える場合には脱税額の10倍まで上限を引き上げることができることになっています。

金地金の密輸事件については、告発されやすく、逮捕される可能性もあります。
不安な方は早めに弁護士に依頼をして、身体拘束からの解放や不起訴の獲得、実刑判決の回避などに向けた対策をとるのが有効です。

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