税務調査と取調べの違い

1 質問調査について

脱税事件の流れで説明した税務調査においては、刑事事件と取調べのように国税庁の調査員から事情を聞かれる質問調査という調査があります(「査察調査について」のページ参照)。

そして、質問調査において脱税の嫌疑が認められた場合には、検察庁への告発がなされ、刑事事件として取り扱われることになります。

したがって税務調査における質問調査にどのように対応するかは、脱税事件として刑事事件になるかどうかに関わる重要な手続きです。

質問調査では刑事事件の取調べで作成される供述調書にあたる質問顛末書という書面が作成され、調査の際に作成され署名と押印を求められます。

この署名押印については内容を確認して誤りがなければ行っても構いませんが、刑事事件の取調べの際と同様に署名押印を拒否することも可能です。

当然誤った内容が書かれていても署名押印をしてしまうと、誤った内容を認める証拠になるので署名押印をするかについては専門家のアドバイスを受けてから、どうするか決めることをお勧めします。

以下では質問調査の根拠と、刑事事件での取調べとの原則の違いについて紹介します。

2 調査を拒否できるかの違い

税務調査において質問調査をすることができることには国税通則法74条の2に根拠規定があります。

国税通則法74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査)

国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。

そして、税務調査に対してその調査を拒んだ場合には、罰則を受ける可能性があります。このことは国税通則法127条に規定があります。

国税通則法127条

次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一  第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者

二  第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)、第七十四条の四(第三項を除く。)、第七十四条の五(第一号ニ、第二号ニ、第三号ニ及び第四号ニを除く。)若しくは第七十四条の六(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

三  第七十四条の二から第七十四条の六までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者

この規定があるために、調査への出頭を拒否していたり、調査での質問に対して黙秘の態度をとり続けてたりしていると国税通則法127条によって罰則を受ける可能性があります。したがって、刑事事件の取調べで被疑者に認められているいわゆる黙秘権は質問調査にはないといえます。

それでは黙秘権がない質問調査にはどのようなことに注意して臨めばよいのでしょうか。

3 質問調査における弁護士の必要性

もちろん黙秘権がないからと言って全ての質問にその場で直ちに答えなければ国税通則法の罰則の対象となるわけではなく、次回までに考えておきますというように調査に協力する姿勢を示しておけば問題はありません。

したがって質問調査を受ける方はすぐに質問された内容や、調査で指摘された資料の内容についてすぐに弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士に相談することで質問の回答について客観的に検討することができ、また調査員からの不当な指摘についても次回の調査において適切に反論を準備することができます。

もちろん質問の主体や黙秘権の有無が異なっても、自分の覚えていることだけを話す、資料などの証拠に基づいて話すなど基本的な対応は刑事事件における取調べへの対応と大きく異なることはありません。

質問調査で不利な内容を話し、真実とは異なる質問顛末書が作成されれば刑事事件に発展するリスクが大きくなるなどリスクが非常に高いです。

質問調査を受けることになった場合には、刑事事件における取調べの対応にも精通している弁護士にすぐに相談することをお勧めします。

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