架空外注費で法人税脱税

法人税の脱税について、事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

土木工事会社の代表者であるAさんは、下請けの個人事業主に虚偽の請求書を発行させ、架空や水増しした工事の外注費を支払って計上したうえ、個人事業主からキックバックを受けていました。
この方法で1億円を超える所得を隠していたAさんは、大阪国税局の査察調査を受け、法人税3000万円を脱税したとして、法人税法違反の罪で大阪地方検察庁に告発されてしまいました。
(実際の事件をもとにしたフィクションです)

脱税の方法

事例のAさんは、下請けの個人事業主に虚偽の請求書を発行させ、架空や水増しした外注費を支払って計上し、その後個人事業主からキックバックを受けています。
Aさんがキックバックを受けた金銭は、Aさんの収入(所得)となるため、Aさんにはキックバックを受けた金額に応じて所得税の確定申告をする必要があります。
Aさんが、所得税の確定申告をしていなかった場合には、Aさんが所得税の脱税をしていることになるのは、わかりやすいと思います。

しかし、今回の事例では、Aさんは法人税法違反の罪で告発されています。
法人税とは法人つまり会社が得た収益に対してかかる税金です。
キックバックをAさん個人ではなく、Aさんの土木工事会社が受けていた場合には、会社の収益といえるため、キックバックの部分は法人税の対象になり、確定申告をしなければ法人税の脱税になるでしょう。
では、キックバックはあくまでもAさん個人が受けていた場合はどうでしょうか。
この場合、問題となるのは、架空や水増しした外注費を計上しているところとなります。
今回の事例では、外注費については、個人事業主に支払われています。
しかし、支払われている外注費のうち架空や水増しされた外注費は本来であれば支払われない経費ということになります。
そうすると、架空や水増しされた外注費の部分については、実際に支払われていたとしても、経費計上してはいけない部分ということになります。
そのため、会社が得た収入から架空の外注費を経費として差し引いて確定申告していた場合には、本来であればその架空経費の部分は差し引いてはいけない部分となるため、架空経費の部分も含めて課税対象金額に含まれることになります。
そして、架空経費の部分については、確定申告から漏れていることになるため、過少申告をしていたということになります。

法人税脱税のペナルティ

Aさん及びAさんの会社が受ける脱税のペナルティについては、大きく分けて①加算税、②刑事罰の二つが考えられます。

①加算税
Aさんの会社の場合には、過少申告をしていたことになるので、過少申告加算税が課せられることになります。
過少申告加算税は、新たに納めることになった税金の10%(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%)が加算されます。
もっとも、Aさんの場合には、架空経費の計上という悪質性が高い方法によって過少申告をしているということが言えるので、過少申告加算税ではなく、重加算税が課せられる可能性が高いです。
重加算税は、過少申告加算税の基礎となる税額の35%に相当する金額が課されることになります。

②刑事罰
Aさんは告発を受けているので、今後は刑事事件としての捜査や裁判を受けていくことになります。
統計上、告発された事件の約70%は起訴されています。
今回の事例では、偽りその他不正の行為により法人税を免れたといえるため、罰則は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科」となります(法人税法159条1項)。
ちなみに、罰金の額については、脱税額が1000万円を超える場合には、脱税額まで罰金の上限額を引き上げることができるとされています(同条2項)。
また、今回の事例では、会社代表者であるAさんが行っているので、会社に対しても罰金刑が科せられることになります(同法163条1項)。
そのため、起訴される場合にはAさんだけではなく、Aさんの会社も併せて起訴されることになります。

法人税脱税を疑われた場合の対応

法人税の脱税を疑われた場合には、まず実際に脱税といわれるような行為をしていたかどうかを自分たちでも調査しておく必要があります。
そして、税務調査などの調査では、脱税とはならないという根拠を示していくことが必要です。
もし、脱税に当たる行為をしていた場合には、それが意図的なものかどうかが重要なポイントとなります。
単なる申告漏れなどの場合には、脱税額が高額であったとしても査察や告発を免れることができる場合があります。
その場合でも、調査に対してどのように答えていくかが非常に大切になるので、早めに専門家に相談して方針を決めたうえで、調査に臨みましょう。
また、早めに修正申告をして納税義務を果たすことも、処分を軽くするために必要な行為です。
税理士や弁護士などに依頼して、修正申告をして、早めに納税をしましょう。
もっとも、脱税方法が悪質であるとか脱税期間が長かったり脱税額が高額であったりした場合には、告発までされる可能性が高くなります。
特に脱税額が3000万円を超える場合には、多くの事件が告発されていますので、刑事裁判を見据えて税理士だけではなく弁護士にも早めの段階から関与してもらっておくと安心です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱っているので、刑事事件化を見据えた弁護活動も行えます。早めにご相談ください。

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