このページの目次
「お年玉」にも確定申告が必要かどうかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
ジャニーズ事務所に追徴課税
2022年12月27日の報道によれば、ジャニーズ事務所とグループ会社2社が、所属タレントに渡していた「お年玉」を経費として計上し、所得税の源泉徴収を行っていなかったとして、東京国税局による税務調査で合計約4000万円を追徴課税されていることが分かったとのことです。
この報道によれば、「お年玉」を「交際費」として会社の経費に計上していましたが、実際には社長が会社の報酬から個人的に支出したもので経費には当たらないと判断されたようです。
この報道からは、会社の従業員に対して「お年玉」名目で金銭や物品を与えた場合、ボーナス(賞与)とみなされる場合や個人的な支出とみなされる場合があることに注意が必要であると言えるでしょう。
この報道のケースでは、実際には社長の個人的な支出にあたると判断されているため、本来であれば「お年玉」として支払っている金銭は社長の所得となっているはずであり、その分の源泉徴収を会社がしなければならなかったところ、会社の経費として計上していたために、源泉徴収義務を怠ったことになり不納付加算税などの追徴課税がなされたようです。
報道からはこれ以上のことはわかりませんが、会社の経費として計上していたということであれば、その分会社の収益は減額して確定申告を行っていると考えられるため、法人税について過少申告と言われる可能性もあると思われます。
お年玉をあげる側は、経費計上してもよいものかどうか慎重に判断することが必要でしょう。
税理士や弁護士など専門家に相談して申告漏れなどにならないように注意してください。
「お年玉」をもらった側は確定申告が必要か
では、お年玉をもらった側については、確定申告が必要でしょうか。
お年玉の性質によって場合分けをして考える必要があるでしょう。
①ボーナスとしての側面がある場合
ボーナス(賞与)としての側面がある場合には、所得税の確定申告が必要になります。
もっとも、サラリーマンの場合には源泉徴収を会社が行っているため、別途確定申告をする必要は基本的にありません。
ですが、お年玉としてもらったものが源泉徴収されているかについては確認しておいた方がよいでしょう。
仮に源泉徴収されていない場合には別途確定申告をする必要がある場合があります。
②もっぱら贈与としてもらった場合
お年玉は多くの場合は贈与としてもらっているでしょう。
この場合は贈与税の対象となる可能性があります。
注意が必要なのは、贈与税の対象となるのは、あくまでも個人から贈与により財産を取得した場合に限られることです。
仮に法人から贈与により財産を取得した場合には、贈与税ではなく所得税の対象となります。
贈与税は原則として、1年間に贈与を受けた金額が110万円を超えた場合にかかります。
そのため、贈与を受けた金額が110万円以下の場合には、贈与税の申告は不要になります。
気をつけなければならないのは、1年間の合計額で判断するという点です。
1回の贈与で10万円だったとしても、毎月もらっていれば1年間で120万円になるため、贈与税の申告が必要となります。
「お年玉」としてもらった場合には贈与税の申告が不要な場合も
もっとも、合計で110万円を超えていたとしても贈与税がかからない場合があります。
例えば、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものが挙げられます。
そして、この例外の中に「個人から受ける年末年始の贈答、祝物などのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」というのがあります。
そのため、例えばお正月に親族や友人200人から一人1万円ずつ「お年玉」としてもらった場合には、この例外にあたり、贈与税の申告をしなくてもよいことになります。
ですが、「年末年始」ではない時期にもらった場合には、「お年玉」としてもらったとしても例外に当たらないと判断されてしまう可能性が高くなるため、時期が重要になります。
また、たとえ年末年始に「お年玉」として一人から200万円をもらった場合も、200万円という金額は社会通念上相当とは言えないでしょうから、贈与税の対象となります。
「お年玉」は渡す側も渡される側も注意が必要です。わからないことがあれば、まずは専門家に相談しておくのがよいでしょう。