【国税庁発表】令和5年度査察の概要

査察調査の概要

国税庁が発表した令和5年度査察の概要について、要点は以下のとおりです。

査察の概要とは

査察の概要」は、毎年国税庁が前年度の査察調査に対する取り組みや実績を報道発表するための資料として作成されているものです。
査察調査の件数や検察庁に告発した件数、起訴された事件での有罪事案の紹介、不正資金の留保・費消状況及び隠匿場所、告発の多かった業種などがまとめられています。
また、査察調査を行った事案については、その一部について事例付きで紹介されています。
令和5年度査察調査の概要は令和6年6月21日に公表されました。

令和5年度査察の概要

令和5年度の査察調査の概要としては、
1 査察の処理件数は151件、検察庁に告発した件数は101件、脱税総額(告発分)は約89億円
悪質な脱税者に対して厳正な査察調査を実施、1件当たりの脱税額は8800万円。令和4年度と比較して、告発件数及び脱税総額ともに微減し、告発率66.9%で平成18年以来の高水準だった前年度より7.2ポイント減少したが、引き続き高水準
2 消費税事案、無申告事案、国際事案のほか、社会的波及効果が高い事案を告発
3 一審判決83件全てに有罪判決が言い渡され、9人に対して実刑判決
実刑判決のうち、査察事件単独で最も重いものは懲役4年、他の犯罪と併合されたものは懲役6年
という3項目が紹介されています。

重点事案への取り組み

重点事案への取り組みとして、以下の内容が紹介されています。
① 消費税事案
消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、27件を告発
消費税の仕入税額控除や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、16件を告発
② 無申告事案
納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告事案について16件を告発
そのうち、不正行為はないものの、故意に申告書を提出しないで税を免れた単純無申告ほ脱事案は11件
③ 国際事案
経済社会のグローバル化の進展に伴い、国境を超える取引が恒常的に行われ、資産の保有、運用の形態も複雑・多様化しているところ、国際取引を利用した脱税への対策が求められている。このような状況の中、外国法人を利用して不正を行っていた事案や海外に不正資金を隠していた事案などの国際事案で23件を告発
④ その他の社会的波及的効果の高い事案
脱税のために虚偽の経費を計上するスキームを節税とうたって、広く納税者を勧誘し、納税者らが当該スキームを利用して法人税及び消費税を免れていた事案、インターネット上の物品の転売やそのノウハウの指南を業とする者が、架空の経費の計上や売上を除外することで、自身の所得税及び主宰法人の法人税を免れていた事案、半導体製造工場の建設が盛んな地域における工場内設備工事事業者が、架空の経費を計上することで、法人税及び消費税を免れていた事案などを告発

不正資金の留保・費消状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていたが、脱税者が数千万円規模の費消をしていた事例も見られ、その使途としては、高級車両の購入、有価証券等への投資、暗号資産の購入などが見られた。
脱税によって得た不正資金の隠匿場所としては、天井裏、階段下収納、蔵に置かれた木箱などに現金を隠していた事案があった。

その他参考計表

① 税目別の告発件数
所得税14件、法人税59件、相続税1件、消費税27件
② 告発の多かった業種
1位:不動産業 18業者、2位:建設業 16業者、3位:人材派遣業 6業者、4位:小売業 5業者
建設業、不動産業はここ数年1位、2位を占めており、取り扱う金銭の額が多いことからも査察調査で狙われやすい業者といえます。 

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら