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光学部品会社と同社の社員(実質経営者)を東京国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。(前回と同じ事件の補足解説)
事件の概要
売上げを正しく計上せず脱税したとして、東京国税局査察部が、光学部品会社であるA社と同社の社員(実質経営者)であるB氏を法人税法違反の疑いで東京地検に告発したことがわかりました。告発は、2024年5月31日付けです。
関係者によりますと、A社は、医療用の光学部品を香港に輸出するなどして利益をあげていましたが、受け取った売上代金の一部をB氏からの借入金の返済を装って、A社の口座からB氏の個人口座に送金するなどしていたとのことです。この方法で2023年3月期までの3年間で計約2億1500万円の所得を隠し、約5200万円を脱税した疑いがあります。隠した所得はB氏が自宅兼社屋の購入に充てたり、預金したりしていたとみられています。
(2024年9月19日、朝日新聞DIGITALの記事より。一部改変)
刑事告発
本事件では、法人税法違反の疑いで東京地検に告発がなされています。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。https://datsuzei-bengoshi.com/datuzei_kokuhatu/
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
場合によっては、被疑者を逮捕して身体拘束をしながら取り調べなどを行います。
そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定します。
国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は最近では約8割から9割の高率です。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
告発の基準について
告発の基準は、公にされていません。この点、かつては、実務の運用として、法人税法違反や所得税法違反の場合、一般的には1億円以上の脱税をしたことが、告発の条件とされているともいわれていました。
しかし、本事案がまさにその場合にあたるといえますが、脱税した金額が1億円に満たないものであっても、売上の一部について借入金として計上する偽装工作を施すなど、脱税の手段が悪質である場合やほ脱率(実際の税額に占める脱税額の割合のことです。)が高く、実際の利益に比較して、ほとんど税金を納めていないような場合などの場合には、告発に至る場合があるので注意が必要です。
最後に
今回は、実際報道されている事件をもとに、解説をしました。
既に述べましたように、ひとたび刑事告発を受けると、極めて高い割合で起訴に至っています。そのため、本事案のような場合、国税局査察部の査察調査が入った時点、あるいは、査察調査が入ることが確実にわかった時点で早急に弁護士に相談して告発を避けるための活動をしていくことが重要になります。 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で承っていますので、早急にお問い合わせください。