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節税、租税回避行為、脱税の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
節税とは
節税とは、税法が予定している通常の契約形態ないし法形式等を使うことにより、したがって、法の趣旨・目的に反することなく税負担の軽減を図る行為です。たとえば、必要経費を適切に計上するなどして税金を減らすことは、税法によって認められた行為ですので節税にあたり問題ありません。むしろ、余分な税金を支払えば資金繰りに窮してしまうことにもなりかねず、節税は積極的に行っていくべきものです。
租税回避行為とは
租税回避行為とは、私法上有効な契約形態ないし法形式等を選択することによって、税法が定める課税要件を充足する事実を回避する行為をいいます。
後で説明する脱税が、課税される要件がありながらこれを隠す行為であるのに対して、租税回避行為は、課税要件となる事実の隠匿は行っていないが、法の趣旨・目的に反して税負担の軽減を図る行為です。
この点、税の世界はあくまで「租税法律主義」、すなわち法律に定められていないのに税を徴収されることはないというのが大前提です。
たとえば、かつては海外にある財産を海外居住者へ贈与する場合、贈与税がかかりませんでした。その時代に、受贈者を海外に住まわせた上で国外財産を贈与し、贈与罪を免れた事案において、最高裁は租税法律主義のもと、国の追徴課税処分を取り消しました(最高裁平成23年2月18日判決)。
憲法30条は、国民は法律の定めるところによってのみ納税の義務を負うと規定し、同法84条は、課税の要件は法律に定めなければならないことを規定しています。納税は国民に義務を課するものであるところからして、この租税法律主義の下で課税要件は明確なものでなければならず、これを規定する条文は厳格な解釈が要求されるのです。一般的な法感情の観点からしますと違和感もあるでしょうが、租税法律主義に則った最高裁のこの判決はやむを得ないものと言えるでしょう。もっとも、租税回避行為は、租税法律主義を形式的に適用する限りでは許容されるとしても、法の抜け穴を突いて、課税を免れようとする行為です。公平な課税の観点から問題とされるグレーゾーンに位置する行為とされ、お勧めできるものではありません。
脱税とは
脱税とは、課税される要件があるにも関わらず、これを故意に隠して、課税を免れようとする行為をいいます。
例えば、売上を意図的に除外したり、架空の経費を計上するなどにより、所得を圧縮する行為は脱税です。
この点、所得税法は「偽りその他不正の行為」により所得税を免れ、または所得税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると規定しています(所得税法238条1項)。その他の税目にも同様の規定があります(法人税法159条1項、相続税法68条1項、消費税法64条1項等)。
このように脱税は刑事罰の対象となり、国税局査察部が調査(犯則調査)を行います。脱税は違法行為なので完全にアウトの行為といえます。
脱税と重加算税の関係
納税者が「隠蔽又は仮装」を行った場合には重加算税が賦課されます(国税通則法68条)。この点、「偽りその他不正の行為」と「隠蔽又は仮装」とは大部分が重なり合うものと考えられています。したがって、脱税として刑事罰の対象となり処罰されるときには、重加算税を課された上で処罰されるのが通常です。
最後に
申告・納税しなければならないのにしていない方は、早めに税理士や弁護士といった専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。 初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。