このページの目次
高級クラブの代表者がホステスらの給与から源泉徴収した所得税を申告していなかったとして国税局から告発されたという報道をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
報道の内容
大阪の繁華街、北新地で高級クラブを経営する代表が、ホステスなどから徴収した所得税を納めず、およそ8600万円を脱税した疑いで大阪国税局から告発されたことが関係者への取材で分かりました。
告発されたのは、大阪の北新地で3つの高級クラブを経営する代表です。
関係者によりますと、3つの店舗に在籍していたホステスやスタッフの給与から源泉徴収した所得税を申告しなかった疑いがあるということです。
大阪国税局は令和5年12月までの1年余りで、およそ8600万円を納めずに脱税したとして、代表を所得税法違反の疑いで大阪地方検察庁に告発しました。
NHKの取材に対し、代表は「脱税で得た金は、事業の過程で生じた借金の返済に使った。すでに一部の納税は、済ませている」とコメントしています。
(NHK 関西 NEWS WEB 令和7年2月12日の記事 https://www3.nhk.or.jp/kansainews/20250212/2000091615.html より一部改変)
源泉徴収とは
特定の所得については、その所得の支払の際に支払者が所得税を徴収して納付する源泉徴収制度が採用されています。
この源泉徴収制度は、①給与や利子、配当、税理士報酬などの所得を支払う者が、②その所得を支払う際に所定の方法により所得税額を計算し、③支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付するというものです。
所得税は本来、所得を得た者が自ら確定申告をして納付するものですが、給与など特定の所得については、給与を支払う者が給与を支払う際に所得税額分を差し引いて給与を支払い、差し引いた(徴収した)所得税額分については、給与を支払った者が代わりに納付することになっています。
今回の報道の例でみると、高級クラブの代表者が給与をホステスに支払う際、所得税額分を給与から差し引いて(徴収して)、残りの給与をホステスに支払っており、徴収した所得税額分はまとめて代表者が確定申告の上で納付する必要がありました。
不納付加算税
源泉徴収した所得税を納期限までに納めていないと、不納付加算税が課せられます。
正当な理由がある場合には、不納付加算税は課せられませんが、そうではない場合、原則として10%の不納付加算税が課せられることになります。
また、仮装や隠ぺいがあったような悪質と評価できる場合には、不納付加算税に代えて重加算税が課せられることになります。
重加算税は35%と非常に割合が高くなっています。
告発されると
今回の報道では、大阪国税局から大阪地方検察庁に告発がなされています。
告発とは、刑事処罰をもとめて捜査機関に訴え出る事です。
脱税事件の場合には、国税局の査察調査を受けたのちに、刑事処罰を求めることが相当と判断された場合に、地方検察庁に告発がなされます。
一般の刑事事件とは違い、初期の捜査から警察ではなく検察庁が捜査を行うことになります。
また、告発をされた場合、起訴率は約8割となっており、起訴された場合の有罪率は100%となっています。
刑事裁判では、懲役刑のほかに、罰金刑も併科されることがほとんどです。
そのため、本来納めるべきであった本税やペナルティとしての加算税のほか、罰金についても支払っていかなければならなくなり、脱税をして得た利益を全て吐き出させるような式身になっています。
専門家へ早めの相談を
脱税事件は、税務調査、査察調査、刑事事件としての捜査、刑事裁判という流れを通常たどります。
申告漏れなどがある場合には、税務調査など早めの段階から税理士や弁護士といった専門家に相談して、しっかりと対応していくことで、その後の査察調査や告発などを避けることが出来る可能性が高まります。
脱税をしてしまっているかもしれないなど、不安がある方は早めに専門家に相談しましょう。