過去10年の東京国税局が法人税法違反で告発した件数と主な事例①

告発

東京国税局が過去10年間に法人税法違反で告発した件数や主な事例に関して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。今回は告発件数の推移と平成30年度までの主な告発事例を取り上げます。

東京国税局による告発件数の推移

東京国税局査察部(いわゆるマルサ)が法人税法違反で検察庁に告発した法人は、過去10年間で毎年20~30件前後にのぼります。2019年度には37件と近年最多水準となり、コロナ禍の影響を受けた2021年度には12件まで減少しましたが、2022年度は41件中21件が法人税法違反事案で再び増加しています。以下、各年の主な告発事例をまとめます。

2015年(平成27年度)

法人税法違反の告発は20件前後とみられます。例えば、不動産業者による架空経費計上で約1億円の所得を隠し、法人税約2,400万円を脱税したケースがあり、東京国税局が不動産会社実質経営者を法人税法違反容疑で告発しました。手口は架空の外注費や経費を計上して所得を圧縮する典型的なものです。告発後、この事案は極めて異例ながら不起訴処分となり(起訴猶予)、東京国税局で告発後に不起訴になったのは約26年ぶりと報じられています
(通常、告発事案はほぼ必ず起訴されています)。

2016年(平成28年度)

告発件数は20件程度で、大口の脱税事件がいくつか告発されています。この年は不動産投資会社グループによる大規模な架空経費計上が発覚しました。東京・中央区の不動産会社など関連2社とその実質オーナーの男性が、架空の業務委託費を計上する手口で約8,400万円の法人税を免れた疑いで告発されています。取引先やダミー会社に一旦支払ったように装い、その資金をキックバックさせる循環取引で所得を隠したもので、不動産業界の悪質な脱税事例として取り上げられました。

2017年(平成29年度)

告発件数は20件弱とみられます。業種別では建設・不動産関連が目立ちました。例えば、土木工事業者が売上の一部を除外し3年間で約3,800万円の法人税を免れた事件や、不動産会社が架空経費によって法人税約5,100万円を脱税した事件などが報じられています。手口はいずれも売上除外や架空経費計上で所得を簿外にプールする古典的なものでした。これらは後に起訴され、裁判で有罪判決が下っています。

2018年(平成30年度)

法人税法違反での告発は18件でした。主な事例の一つに、東京都下水道局から下水管調査業務を受注していた都内の関連会社グループ5社が、売上を一部申告せず2015~2018年に計約1億2,800万円の法人税等を脱税した事件があります。東京国税局はこれら5社と関係者を告発し、隠匿した所得の一部は役員報酬名目で流用されていたと指摘されました。手口は売上除外による所得隠しで、公共事業受注企業による脱税として問題視されました。なお、この年には六本木の高級クラブ元経営者が所得税・消費税約1億円を脱税した事件もありましたが、こちらは法人ではなく個人事業の所得隠し事案です。

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