消費税不正還付事案の紹介と対応③(3/4)

刑事事件

消費税の不正還付事案について、手口や告発事例、不正が発覚した場合の対応などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がシリーズで解説します。
第3回目の今回は、不正還付が発覚した場合のペナルティ(刑事罰・行政処分)について解説します。

不正還付が発覚した場合のペナルティ①追徴課税

不正還付が明るみに出た場合、極めて厳しいペナルティが科されます。
まず、騙し取った還付金は全額返還させられるのは当然として、追徴課税として重加算税などの加算税が課されます。重加算税とは、納税者が仮装・隠ぺい(意図的な事実の偽装や記録の隠蔽)によって税金を免れようとした場合に科される最も重いペナルティ税で、本来納めるべき税額の35%(重加算税率は原則35%ですが、期限後申告や無申告の場合は40%とされる場合があります。また消費税の還付申告に係る特例措置として加算税率引上げが行われた時期もあります。具体的な適用税率は違反時期の法令によります。)が追加で課されます。
例えば実際にあった架空輸出事件では、不正還付額約3,300万円に対し重加算税を含む追徴税額が約4,400万円と公表されており、重加算税だけで約1,100万円(元の不正額の約33%)が上乗せされている計算になります。過少申告加算税(10~15%)などと異なり、重加算税は「仮装・隠蔽」という明確な不正行為があった場合に適用されるため、企業にとって大きな痛手となります。

不正還付が発覚した場合のペナルティ②刑事罰

次に、悪質なケースでは刑事罰が科される可能性があります。
国税局の査察調査によって「告発相当」と判断された事案では、検察庁に告発され、加害者(法人および経営者等)は刑事裁判にかけられます。
消費税法には脱税や不正受還付に対する罰則規定があり、「偽りその他不正の行為」により消費税を免れたり不正に還付を受けた者は「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(もしくはその両方)」に処せられると定められています。これは他の税法違反(法人税法・所得税法等)と同等であり、刑法上の詐欺罪(10年以下の懲役)にも匹敵する非常に重い刑罰です。
実際に、不正還付事件で経営者が逮捕・起訴され、有罪判決を受けた例も数多くあります。多くの場合、初犯で追徴税も納付済みであれば執行猶予付き判決となるケースが見られますが、悪質度や金額によっては実刑判決が言い渡されます
平成30年度には消費税不正還付事件で代表者に懲役4年6月の実刑が科された例が報告されており、令和4年度にも査察事案全体で3名が実刑判決、うち1件は他の犯罪と合わせ懲役6年の重い実刑判決となっています。

不正還付が発覚した場合のペナルティ③行政処分

さらに、行政上の処分も考えられます。
免税店(輸出物品販売場)の許可を受けている事業者がその制度を悪用した場合、免税販売許可の取消という処分を受ける可能性があります。
例えば前述の免税店不正に関する報道では、東京国税局が虚偽の免税販売をしていた約10店舗の免税店許可を一斉に取り消したことが伝えられています。
許可取消になれば免税販売(外国人向け消費税免税販売)業務は続けられなくなり、事業継続に大打撃となります。
また、不正行為が明るみに出ることで企業名の公表や報道により社会的信用を喪失し、取引先や顧客からの信頼も失うでしょう。場合によっては経営破綻に至るリスクもあります。

続きは第4回で

このように、不正還付が発覚すれば経済的制裁から刑事罰、営業上の許可取消、信用失墜に至るまで多方面の深刻なペナルティを受けることになります。不正は絶対に割に合わないばかりか、経営者自身の人生や会社の存続をも脅かしかねません。
次回第4回(最終回)では、税務調査などの調査の流れと、不正還付を疑われた場合の対応について解説します。

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