業務上横領と課税の関係とは~犯罪収益であっても課税されるのか、会社側の税務対応も含めて解説~

脱税 逮捕

会社の金銭を管理する立場にある者が、その金銭を私的に流用した場合には、業務上横領罪が問題になります。

もっとも、問題は刑事責任だけにとどまりません。
横領によって得た利益が所得税の課税対象となるのか、会社側で誤った経費処理や売上除外がされていた場合にどのような税務上の不利益が生じるのかも、重要な論点になります。
国税庁は、収入の原因となった行為が適法かどうかを問わず、課税の対象となり得るとの考え方を示しています。

そこで本記事では、業務上横領課税の関係について、個人に対する課税と会社側の税務問題の両面から解説します。

1.業務上横領と課税が同時に問題となる理由

業務上横領とは、業務として預かっている他人の財物を、自分のもののように処分する行為をいいます。
会社の経理担当者、代表者、取締役などが会社資金を私的に使った場合には、刑法上の業務上横領罪が成立する可能性があります。

しかし、問題はそれだけではありません。
税法上は、違法に得た利益であっても、現実に経済的利益を受けていれば課税対象となる余地があります。

そのため、横領した本人には刑事事件だけでなく申告漏れの問題が生じ得ますし、会社側でも経費の誤計上や売上除外により、法人税源泉所得税の問題を指摘される可能性があります。

2.事例

たとえば、会社で経理を担当していた従業員が、現金売上の一部を抜き取り、数回にわたって自己名義の口座へ移していたとします。
さらに、別の場面では、取締役が会社名義のクレジットカードを私的な飲食や買物に使い、その支出を交際費や会議費として処理していたとします。

このような場合、横領した本人には業務上横領罪が問題となるだけでなく、取得した金銭について所得税の申告漏れが生じる可能性があります。

また、会社側でも、本来経費にならない支出を損金算入していたとか、本来計上すべき売上を除外していたとして、過少申告重加算税の問題に発展するおそれがあります。

3.横領で得た利益は所得税の課税対象になる

「犯罪で得たお金なのだから、税金はかからないのではないか」と考える方もいるかもしれません。
しかし、国税庁の所得税基本通達36-1では、「収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない」とされています。
つまり、適法な取引で得た収入か、違法行為によって得た収入かを問わず、現実に経済的利益を受けていれば、所得税の対象となり得るということです。

そのため、業務上横領によって得た金銭も、本人が自由に使える状態に置いていたのであれば、所得として申告が必要になる可能性があります。
業務上横領による利得についても、確定申告が必要となる場合があるため、注意が必要です。

4.一時所得か雑所得かで税負担が変わる

横領による利益が課税対象になるとしても、常に同じ税額になるわけではありません。

問題となるのは、その所得が一時所得に当たるのか、それとも雑所得に当たるのかという点です。
国税庁によれば、一時所得は営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時的な所得をいい、雑所得は他の所得区分に当たらない所得をいいます。

一時所得には特別控除や2分の1課税の仕組みがあるため、雑所得より税負担が軽くなる場合があります。
これに対し、何回にも分けて継続的に着服していたような事案では、雑所得と評価される方向に傾く可能性があります。

どちらに当たるかによって税額に大きな差が生じ得るため、事案ごとの慎重な検討が必要です。

5.会社側では損金算入、役員賞与、売上除外が争点になる

会社側の税務でも、業務上横領は深刻な問題になります。

まず、私的流用された支出を交際費などの名目で経費計上していた場合には、本来損金算入できないものを損金算入していたとして、法人税過少申告が問題になります。

また、代表者や一定の権限を持つ取締役が会社資金を着服した場合には、その金額が役員賞与と認定され、損金不算入となるだけでなく、源泉徴収義務まで問題となることがあります。
さらに、代表者が売上を個人口座へ移し、申告から除外していたような場合には、単なるミスではなく、売上除外による仮装・隠ぺいと評価されやすくなります。

このように、代表者による私的流用は、役員賞与認定や源泉徴収、売上除外の問題と結び付きやすいため、会社としても早期に事実関係を整理する必要があります。

6.無申告加算税、過少申告加算税、重加算税、延滞税に注意

横領した本人が申告をしていなければ、所得税について無申告加算税延滞税が発生する可能性があります。
国税庁のタックスアンサーでも、期限後申告や調査後の申告には無申告加算税がかかり、納付までの期間に応じて延滞税も必要になると案内されています。

また、会社側でも、誤った経費処理や売上除外があれば、過少申告加算税が問題になります。

さらに、仮装・隠ぺいがあったと判断されれば、通常の加算税ではなく重加算税が課されるおそれがあります。
特に、代表者主導の売上除外は悪質と見られやすいため、注意が必要です。

社内で横領が判明した段階で、税務調査が入る前に修正申告を検討することが重要になります。

7.事務所紹介

業務上横領の事案では、被害会社との示談交渉、刑事弁護、返済計画の立案だけでなく、申告漏れ修正申告税務調査対応まで視野に入れた対応が必要になることがあります。
特に、横領した本人の立場では、刑事事件への対応だけを考えていると、後から税務上の問題が大きくなるおそれがあります。

また、会社側でも、社内不正の発覚後にどのように事実関係を整理し、どの時点で修正申告を行うかによって、不利益の大きさが変わることがあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関するご相談を幅広く取り扱っており、業務上横領が発覚した場合の初動対応についてもご相談いただけます。
早い段階で対応方針を整理することが、不利益の拡大防止につながります。

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