犯罪で得た利益も課税される? 犯罪発覚時に脱税まで問われるリスクと、不正アクセス事件の対処法を解説

税金とお金

犯罪によって得たお金は、もともと違法な利益なのだから税金はかからないと考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、日本の所得税実務では、収入の原因となった行為が適法かどうかは問わないとされており、違法行為で得た利益であっても課税対象となる可能性があります。

そのため、詐欺横領不正アクセス電子計算機使用詐欺などの事件が発覚すると、刑事事件としての捜査だけでなく、無申告所得隠しの問題まで一気に表面化することがあります。
国税庁は令和5年度、悪質な脱税事案101件を検察庁に告発しており、無申告事案不正受還付事案も重点対象にしています。

1.犯罪による利益も課税対象となるのか

所得税法には「所得」の一般定義が明文で置かれていませんが、実務上は広く経済的利益を所得として把握する考え方が採られています。
国税庁の所得税基本通達36-1も、「収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない」と示しています。

そのため、詐欺でだまし取った金銭、横領で取得した金銭、不正アクセス電子計算機使用詐欺で得た利益なども、現実に経済的利益を得ていれば課税対象になる可能性があります。
したがって、詐欺で得た利益についても、確定申告が必要になり得ます。

2.事例

例えば、投資話を装って知人から多額の金銭を預かり、これを遊興費などに費消した事例を考えてみましょう。

会社員のAさん(35歳)は、知人らに対して「海外の未公開株に投資すれば、3か月で元本の1.5倍になる。」「確実に利益が出る案件で、すでに多くの人が参加している。」などと説明し、出資を募っていました。
しかし、Aさんには実際に未公開株の購入ルートはなく、投資先となる事業も存在していませんでした。
Aさんは、最初から集めた金銭を自分の生活費や遊興費に充てるつもりで、知人のBさんに対し「5000万円を出資すれば、短期間で大きな利益が得られる。」と話し、現金5000万円を振り込ませました。
Aさんは、Bさんから受け取った5000万円について、投資に回したように見せかけるため、しばらくの間は「今は運用中です。」「配当は来月に入ります。」などと虚偽の説明を続けていました。
その一方で、実際にはその金銭を高級飲食店での飲食代、風俗店の利用代、ブランド品の購入費などの遊興費に費消していました。

この事例では、詐欺によって得た利益についても申告が必要になり得ること、さらに、無申告加算税重加算税延滞税の問題が生じ得ることが分かります。

また、実際の国税庁公表資料でも、令和5年度の査察では、アフィリエイト事業による収入を得ながら虚偽の契約書を準備するなどして所得を隠し、確定申告書を提出しなかった無申告事案が告発されています。
さらに、知人や親族名義の預金口座を使って所得を隠匿したタトゥースタジオ経営者の無申告事案や、架空の輸出免税売上を計上した消費税不正受還付事案も公表されています。

つまり、犯罪や不正行為が発覚した場面では、口座、契約書、売上資料、スマートフォン、関係者供述などから、税務上の問題まで連鎖的に明らかになることがあるのです。

3.一時所得か雑所得かで問題が変わる

違法収入が課税対象になるとしても、確定申告では、その利益をどの所得区分で整理するのかが問題になります。
詐欺による利益が一時所得なのか雑所得なのかによって、課税所得の計算に大きな違いが出ることがあります。

一般に、偶発的・一回的な利得として整理される余地がある一方、反復継続して利益を上げていた場合には雑所得などとして扱われる可能性があり、税額に大きな差が生じることがあります。
実際の処理は、行為の内容、反復性、継続性、必要経費の有無などを踏まえて個別に判断されるため、自己判断は危険です。

4.犯罪が発覚すると脱税も見つかるのはなぜか

刑事事件の捜査が始まると、警察や検察は、口座履歴、送金記録、スマートフォン、クラウドデータ、SNSのやり取り、パソコン内資料、関係者供述などを集中的に調べます。
その過程で、事件の利益がどこへ流れたのか、誰の名義の口座を使ったのか、どの程度の収入があったのかが見えてくるため、無申告所得隠しも把握されやすくなります。

警察庁も、フィッシングを利用した不正送金事件について、首謀者ら31人を不正アクセス禁止法違反電子計算機使用詐欺等で検挙した事例を公表しており、こうした事件では資金移動の流れの解明が重要になります。
さらに、国税庁の査察概要では、無申告事案を重点対象として積極的に告発しており、令和5年度は無申告事案16件を告発しています。

犯罪の捜査で見つかった資料や資金の流れが、税務調査や査察につながることは十分あり得ます。
「刑事事件だけ対応すればよい」と考えて放置すると、後から税法違反まで加わり、処分が重くなるおそれがあります。

5.無申告加算税・重加算税・延滞税のリスク

無申告が見つかった場合、本税だけで終わるとは限りません。
国税通則法では、期限後申告等に対して無申告加算税が課され、税額の大きさや経緯によって割合が変わります。
また、仮装や隠ぺいがあると、無申告加算税に代えて重加算税が課されることがあり、無申告事案に対する重加算税の税率は40%です。
さらに、納付が遅れれば延滞税もかかります。

国税庁によれば、令和8年中の延滞税は、納期限から2か月までが年2.8%2か月経過後が年9.1%です。
昔の説明では7.3%や14.6%という原則税率だけが紹介されることがありますが、実際には特例基準割合により変動するため、最新の数字で確認する必要があります。

6.不正アクセスやハッキングが絡む場合の対処法

自分や家族が、不正アクセスフィッシング電子計算機使用詐欺などに関与した疑いを持たれている場合には、まず新たなアクセスや送金、アカウント操作を直ちにやめることが大切です。
そのうえで、端末の初期化、チャット履歴の削除、アプリの消去、ログの改ざん、暗号資産や預金の移動などを独断で行わないようにしてください。
こうした行為は、証拠隠滅と評価される危険があり、後の弁護にも不利になり得ます。
早い段階で弁護士に相談し、どの資料を保全し、どの説明をすべきかを整理することが重要です。

一方で、被害者側として「アカウントが乗っ取られた」「サイトが改ざんされた」という場合には、警察庁は、ログイン履歴やアクセスログ等を保存したうえで、警察やサイバー犯罪相談窓口へ相談するよう案内しています。

令和7年の不正アクセス行為の認知件数は7,190件で、前年より約34.2%増加しており、不正アクセス後の行為としてはインターネットバンキングでの不正送金等が最も多いと公表されています。
ハッキング事案では、刑事責任だけでなく、被害弁償、民事責任、税務問題まで広がることがあるため、初動対応の遅れは危険です。

7.事務所紹介

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺横領電子計算機使用詐欺不正アクセス禁止法違反などの刑事事件について、早期の弁護活動を重視しています。

犯罪収益が問題となる事件では、被害者対応、示談交渉、取調べ対応だけでなく、収益の流れや申告状況の確認も重要になります。
特に、事件発覚後は、刑事事件と税務問題が同時並行で進むことがあり、初動を誤ると不利な資料が積み上がるおそれがあります。
ご本人はもちろん、ご家族が突然の捜査や呼出しを受けた場合でも、できるだけ早く弁護士へ相談することをおすすめします。

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