
このページの目次
【はじめに】
自社名義や代表者名義で暗号資産(仮想通貨)取引を行い、うまく経理処理ができていないまま時間がたってしまった法人は少なくありません。しかし、暗号資産は国税当局が重点的に監視している分野であり、「少額だから」「海外取引所だからばれない」と考えて申告漏れを放置すると、後になって多額の追徴課税や刑事告発に発展するおそれがあります。
本記事では、法人が暗号資産で申告漏れをした場合にどのようなリスクがあるのか、税務調査から刑事事件化までの流れと、早期にとるべき対応のポイントについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
中小IT企業のX社は、代表者個人名義の口座を使いながら暗号資産で受注代金の一部を受け取っていました。しかし、価格変動の大きさや記帳の煩雑さから、経理担当者は一時的な管理表だけで済ませ、決算書や申告書には反映していませんでした。
数年後、税務署が取引所からの情報提供や銀行口座の動きを手がかりに調査を行い、売上計上漏れと評価される多額の申告漏れを指摘しました。税務調査では、代表者や経理担当者が取引の経緯や管理方法について詳しく聴取され、保存していなかったデータの有無まで確認されました。
その結果、本税に加えて重加算税や延滞税が課され、悪質性が高いと判断されれば、代表者個人について法人税法違反での告発も検討される状況となりました。
(事例はフィクションであり、実在の依頼者、その他個人、会社、団体とは一切関係ありません。)
【法人税法上の取扱いと「申告漏れ」「脱税」の違い】
暗号資産取引による利益は、法人では原則として法人税の課税対象となり、決算書に計上したうえで確定申告をする必要があります。
本来計上すべき売上や利益をうっかり漏らした状態が、一般的に「申告漏れ」と呼ばれるものです。この場合でも、後から発覚すれば追加で本税に加算税や延滞税が課されることがあります。
一方、申告自体をしていない場合は「無申告」となり、悪質と判断されれば、より重い無申告加算税の対象になります。
さらに、帳簿を二重につくる、取引履歴を削除するなど、意図的に事実を隠したり仮装したりした場合は「脱税」に当たるおそれがあります。このような仮装隠ぺい行為があると、重加算税という高率のペナルティのほか、刑事告発につながるリスクも高まります。
暗号資産の経理処理を曖昧にしたまま放置すると、単なるミスと見てもらえず、脱税と評価される危険がある点に注意が必要です。
【税務調査から刑事告発に至るまでの流れ】
暗号資産の申告漏れが疑われると、まず税務署による税務調査が行われます。
税務調査は、任意の質問や帳簿閲覧を中心とする「任意調査」と、令状に基づき強制的に捜索・差押えを行う「強制調査(査察)」に大きく分かれます。
いわゆるマルサとは、この強制調査を担当する国税局査察部のことです。調査の中で仮装・隠ぺいが疑われると、調査官は詳細な質問応答記録書を作成し、取引の経緯や意図を確認します。その結果、悪質な脱税と判断されれば、国税当局から検察庁に告発が行われ、代表者らが法人税法違反などの容疑で捜査・起訴される可能性があります。
また、刑事手続と並行して多額の追徴課税が行われるため、経営へのダメージは極めて大きくなります。
【代表者・経理担当者に生じる民事・刑事上の責任】
代表者や経理担当者は、暗号資産の申告漏れが発覚した場合、会社だけでなく自らも責任を負う可能性があります。
法人税は会社に課税されますが、故意に脱税を指示したり、仮装隠ぺいに関与したりすると、法人税法違反の共犯として刑事責任を問われるおそれがあります。
また、役員には会社に対する善管注意義務があり、税務リスクを軽視して放置した場合、株主や会社から損害賠償請求を受けるリスクもあります。
経理担当者についても、上司の指示とはいえ明らかに不自然な処理に加担すれば、調査段階から事情聴取を受け、最悪の場合には刑事責任の対象となり得ます。さらに、刑事事件化すると前科や逮捕といった個人の人生への影響に加え、取引停止や金融機関からの信用低下など、会社全体にも深刻な打撃が及びます。
【発覚後の早期対応でダメージを抑えるポイント】
暗号資産の申告漏れに気付いた段階で、まず行うべきは取引履歴の整理です。
取引所の履歴データやウォレットの送受信記録を保存し、いつ・いくら・どのような取引をしたのかを一覧できるようにします。このとき、不利だからといってデータを削除したり改ざんしたりすると「隠ぺい行為」と評価され、重加算税や刑事告発のリスクを一気に高めてしまいます。
次に、税理士や弁護士など専門家と連携し、修正申告や自主的な申告を行うかどうかを検討します。自主的に誤りを正した場合、加算税が軽減されることがあり、悪質性の評価にも影響します。すでに税務署から連絡や税務調査の予告を受けている場合でも、事前に事実関係を整理し、誰がどのような判断で処理してきたのかを把握しておくことで、調査対応のダメージを最小限に抑えやすくなります。
【今後の防止策】
今後は、
・事業用と個人用のウォレット・口座を分けること
・取引ごとの用途(売上か、投資か、立替か)をメモしておくこと
・取引所から定期的にCSVデータをダウンロードして保管すること
・決算期だけでなく月次で評価損益を確認する体制を作ること
などが重要です。
また、暗号資産を扱うと決めた時点で、最初から暗号資産に詳しい税理士・弁護士に関与してもらうことで、思わぬ申告漏れや脱税認定のリスクを大きく減らすことができます。
【最後に】
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・経済事件を中心に取り扱う弁護士事務所です。暗号資産に関する申告漏れや脱税が疑われる事案など、法人や経営者の方が直面する税務刑事事件にも対応しています。
代表者や経理担当者の事情を丁寧に伺い、どこまでが単なるミスで、どこからが脱税と評価され得るのかを整理し、取るべき対応方針をわかりやすく説明いたします。また、法人名や取引関係への影響を考慮し、守秘義務を徹底したうえで、報道リスクや取引先への対応についても実務的なアドバイスを行います。初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。
