Author Archive

輸出業における消費税還付の仕組みと告発事例解説~消費税還付制度の仕組みと不正還付事件について弁護士が解説します~

2026-01-22

輸出業における消費税還付の仕組みと告発事例解説

告発

日本の輸出業における消費税還付の仕組みや手続、各業種ごとの特徴や告発事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がまとめて解説します。

還付の仕組みと条件

日本の消費税は「仕入れに係る消費税額(仮払消費税)」を「売上に係る消費税額(仮受消費税)」から差し引いて納付額を計算する仕組みです​。
輸出取引は消費税法上 輸出免税(税率0%)の対象となるため、海外への商品販売や国外向けサービス提供には消費税が課税されません。​
したがって輸出売上には消費税が発生しない一方、国内で仕入れや経費に支払った消費税は控除可能であり、仮受消費税より仮払消費税の方が大きい場合、その差額が還付されます。​
例えば、輸出売上300万円(税抜)に対する消費税0円と、仕入200万円(税抜)に対する消費税20万円では、20万円の還付を受けられます。​

消費税還付を受けるにはいくつかの条件があります。まず課税事業者であることが必要です​。
前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者(免税事業者)は原則として消費税の納税義務がなく、消費税申告を行わないため還付も受けられません​。(ただし、免税事業者でも「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる選択をすれば還付申請が可能です​)。
新設法人も原則初年度は免税事業者ですが、資本金1,000万円以上など一定の場合は最初から課税事業者となります​。

次に原則課税で申告計算していることも条件です。消費税の簡易課税制度を適用している場合、実額に基づく仕入税額控除が行えず還付を受けられないためです​。

また、還付を受けるためには該当期間について確定申告で還付申告を行うことが前提となります​。
取引面では、輸出免税に該当する売上であることが必要です​。
輸出免税の適用範囲には、例えば「日本国内から海外への商品の輸出」「国際運送や国際通信」「非居住者への特許や著作権など無形財産権の提供」「非居住者への役務提供」などが含まれます​。
ただし非居住者相手のサービスでも、日本国内で直接便益を受けるもの(例:国内での宿泊・飲食提供など)は輸出取引とみなされず課税対象です​。
これら輸出取引に該当する売上であれば税率0%となり、対応する仕入税額の還付を受けられます。なお、輸出免税の適用を受けるにはその取引が輸出であることを証明する書類を備えることが求められます​(詳細は後述)。

申請手続きや必要書類

消費税の還付は所轄税務署への消費税確定申告を通じて申請します。法人の場合、事業年度終了日の翌日から2か月以内(個人事業主は翌年3月31日まで)に確定申告書を提出する必要があります​。

還付申告の際には、以下の書類を提出します​。
・消費税及び地方消費税の確定申告書(主たる申告用紙)​
・付表2「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」(売上高に占める課税売上割合や控除仕入税額を計算する明細)​
・消費税の還付申告に関する明細書(還付となる理由や取引ごとの売上・仕入明細を記載した書類)

確定申告書に還付額を計算の上で提出すると、税務署による内容確認を経て還付金の支払い決定がなされます。輸出取引による還付を申告する場合、輸出売上に対応する還付額と国内売上に対する納付額をまとめて申告することになるため、輸出事業と国内事業の両方がある場合は申告書上で相殺計算する点に注意が必要です​。

還付金の受け取り方法は、申告時に指定した銀行口座への振込か、ゆうちょ銀行・郵便局窓口での受領の2通りがあります​。
一般には口座振込が利用されますが、口座名義は申告者本人または納税管理人名義である必要があります​。

還付申告の証拠書類として、輸出取引であることを示す資料を準備・保管する必要があります。輸出する商品のケースでは税関の輸出許可書(税関長の証明付き)を用意しなければなりません​。
20万円以下の少額輸出で通常郵便物を使う場合は、日本郵便が発行する引受証明書(品名・数量・価額の記載されたもの)が証拠書類となります​。
サービス提供や無形資産の提供など物品以外の輸出取引では、契約書など取引内容と国外提供であることを示す書面が必要です​。

これらの書類は申告時に提出を求められる場合もあるため、輸出許可証や契約書類の原本を手元に保管しておくことが重要です​。

特に輸出代行業者(商社やフォワーダー)が輸出手続きを代行した場合でも、自社が還付を受けるには輸出許可書等の原本保管と所定の通知手続きを行う必要があります​(詳細は後述の特記事例参照)。
なお、輸出免税の証拠書類や帳簿は7年間の保存義務があります​。

消費税の還付申告を行うと、原則として税務署による税務調査や審査の対象となります​。
還付申告額が大きい場合や内容に不明点がある場合には、書面照会や実地調査によって輸出の実態や仕入控除の妥当性が確認されます。不備や誤りがあれば還付は認められません​。
そのため、日頃から取引証憑の整備や正確な帳簿記録を行い、還付申告に備えることが大切です。還付額が継続的に発生する輸出業者では、資金繰りの観点から還付を迅速に受けるための制度活用も有効です。例えば課税期間の短縮特例を利用すると、通常1年ごとの課税期間を四半期毎や月毎に区切って申告できるため、還付発生時期を早めることができます​(適用には事前に「課税期間特例選択届出書」を提出し2年間の継続適用が必要です)。
また電子申告(e-Tax)を活用すれば処理期間が短縮され、還付までの時間が大幅に早まる傾向があります​。
実際、書面申告では還付まで1~2か月かかるケースでも、e-Taxなら3週間程度で振込まれる例もあります​。

対象となる取引や事業者の要件

消費税還付を受けられる事業者は、前述の通り課税事業者に限られます​。
免税事業者の場合、消費税の申告義務がないため、たとえ輸出取引があっても仕入税額の還付を受けることはできません。輸出を行う企業・事業者であれば、規模が小さく基準売上高1,000万円以下でも、必要に応じて課税事業者選択届出を提出し課税事業者となることで還付申請が可能となります​。
これは、輸出で仕入税額が多額になる場合、還付を受けられるよう自主的に課税事業者になる選択が有利となるためです(届出を適用する課税期間開始前日までに提出)。 また、還付を受けるには課税売上に対する仕入税額控除の適用要件を満たす必要があります。具体的には、帳簿及び適格請求書(インボイス)等の保存要件を満たし、課税仕入れについて適法に税額控除できる状態であることが重要です(2023年10月以降インボイス制度開始により、適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件)。輸出免税となる売上であっても、帳簿・証憑不備で仕入税額控除が否認されると結果的に還付も受けられなくなるため注意が必要です。 輸出取引の種類については、前述したように商品の国外輸送による販売だけでなく、国外向けの役務提供や無形資産の譲渡も含まれます​。
例えばメーカーが製品を海外顧客に直接販売するケース、商社が国内商品を買い付けて海外に輸出するケース、ソフトウェア企業が海外法人にソフトを提供するケースなどが該当します。これらはいずれも法律上は課税取引扱いで税率0%(免税)となるため、それに要した仕入や経費の消費税は全額控除・還付対象となります​。

一方、非課税取引(例:国内の医療、教育、住宅の賃貸、金融など)や不課税取引(給与支払い、寄附など)はそもそも課税対象外であり、対応する仕入税額は控除できません​。
輸出取引は非課税ではなく「課税対象だが税率0%」という位置付けのため、国内課税取引と同様に仕入税額控除が可能である点が大きな特徴です​。
したがって、輸出売上を有する事業者は、たとえ売上に消費税がかからなくても課税事業者でありさえすれば仕入税額の還付を受けられます​。
ただし事業者によっては、課税売上と非課税売上が混在する場合もあります。例えば国内で医薬品販売(社会保険診療は非課税)と輸出販売を併営するようなケースでは、課税売上割合に応じて仕入税額控除額が按分計算されます。非課税売上に対応する部分の仕入税額は控除できないため、その部分は還付対象外となります​。
このように、還付を受けられる仕入税額はあくまで課税売上(輸出を含む)に紐づく部分のみである点に留意が必要です。

特定の業種やケースに関する情報

輸出に携わる業種では消費税還付が日常的に発生します。典型的なのは製造業や商社(貿易業)です。メーカーの場合、製品を海外に輸出すれば売上に対する消費税は0%ですが、生産に必要な原材料費や設備投資には国内で消費税を支払います。輸出比率が高い製造業者ほど、支払った消費税額が預かった消費税額を上回りやすく、多額の還付を受ける傾向があります​。

実際、日本を代表する自動車メーカー等の大企業は毎年巨額の消費税還付を受けており、2022年度(令和4年度)には輸出大企業上位20社で合計約1兆9千億円もの消費税が国から還付されたとの推計もあります​。
上位にはトヨタ自動車(日用品・部品の輸出が多い)や日産自動車、本田技研工業といった自動車メーカーが名を連ね、単独で数千億円規模の還付を受けた企業もあります(例:トヨタは約5,300億円)​。
これらは輸出取引に係る仕入税額が巨額になるためで、制度上当然の結果ではありますが、その規模の大きさからニュースになることもあります​。

商社や専門の貿易会社でも、国内で商品を仕入れて海外に転売するビジネスモデルでは恒常的に還付超過(仕入時に支払う消費税の方が輸出売上の仮受消費税より多い)が発生します。例えば、国内メーカーから商品を税込仕入して輸出すれば、仕入時の10%消費税分が丸ごと還付対象となります。貿易業者にとって消費税還付は重要な資金源とも言え、適切な手続きによりキャッシュフローを確保することができます​。

サービス業においても、提供先が海外(非居住者)でサービスの消費が国外で完結する場合は輸出免税が適用されます​。
例えば国際通信サービス、国際輸送サービス、海外法人向けのコンサルティングやエンジニアリング、ソフトウェア・デザインの提供、特許やライセンス供与などは非居住者に対する役務提供として消費税が免税(0%)になります​。
その結果、国内で要した人件費以外の経費(オフィス賃料や機器購入費用など)に含まれる消費税の還付を受けられます。例えば日本のIT企業が海外企業と契約して開発サービスを提供する場合、売上に消費税は発生しませんが、国内で購入したPCやソフトウェア、通信費等の消費税は全て控除・還付されます。一方、旅行業やホテル業など訪日外国人相手のサービスは、そのサービス提供が日本国内で行われ直接便益を享受させるもののため免税にならず、通常通り課税となります​(つまり還付ではなく消費者から預かった消費税を納付する立場)。

このようにサービス業でも取引の性質によって消費税の扱いが異なり、国外向けサービスを主とする事業者は輸出産業同様に還付を受けるケースがあります。 特別なケースや過去の事例としては、事業構造や取引形態に起因する消費税還付があります。例えば、設立初年度に巨額の設備投資を行った場合です。工場建設や大型機械の購入などで一時的に多額の消費税を支払うと、売上が立つ前でもその分の消費税は還付申告により取り戻すことができます。実際、赤字や経費過多の場合、預かった消費税より支払った消費税が多くなり還付を受けられます​。

また、不動産業でオフィスビル等を購入したケースでは、購入時に支払った消費税がテナントへの課税賃貸料収入より大きければ還付となります。不動産の用途によっては課税売上が見込めず本来控除できないケースもあるため、一部では還付を得る目的で物件の用途変更を行うようなスキームが問題視されたこともあります(住宅貸付は非課税のため、購入後に課税事業への転用を経て還付を受ける手法など)。この分野について税制改正で調整措置が講じられ、意図的な還付取得を防ぐルールが整備されています。【※注: 不動産に係る調整仕入税額制度(課税資産の譲渡等の割合が著しく変動した場合の調整)】 取引形態の特殊例として、輸出代行業者の利用があります。メーカー等が直接海外顧客に販売せず、国内の輸出代行業者(商社)に販売して輸出を委託する場合、税関への輸出申告は代行業者名義で行われます。このままではメーカーから見ると国内取引(課税売上)に留まり消費税を納める立場になってしまいかねません​。
しかし、実務上は輸出代行を利用しても輸出免税適用を受ける手続きが用意されています。具体的には、メーカー(輸出者)が輸出許可書等の写しを入手して保管しつつ、代行業者に対し「当該取引は輸出免税の適用を受けない」旨の通知(国税庁様式「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」)を送付します​。
代行業者はその連絡一覧表のコピーを自社の申告時に添付し、当該取引について自社では輸出免税を請求しないことを税務署に明らかにします​。

こうした措置により、実質的な輸出者であるメーカー側でその取引を免税売上として扱い、仕入税額の還付を受けることが可能となります​。
このような対応は輸出代行を頻繁に利用する業種(中小メーカーなど)では重要で、適切に手続きをしないと消費税の二重計算や還付漏れが発生し得るので注意が必要です。

日本の国税局の告発事例

消費税還付制度を悪用した不正行為に対しては、国税当局が厳しい姿勢で臨んでおり、実際に告発(刑事訴追)された事例も報告されています。国税庁の発表によれば、2023年度だけで消費税の不正還付により16件の告発が行われており、不正還付額は総額約4億5,400万円に上りました​。
こうした不正は年々巧妙化しており、国税局は消費税還付申告に対する調査を強化しています​。
近年明らかになった大規模不正の一例に、調剤薬局チェーンによる架空取引を利用した消費税不正還付事件があります​。

このケースでは、処方箋医薬品販売が主で本来は非課税売上(社会保険診療)となる薬局グループが、グループ内で実態のない医薬品売買をでっち上げ、課税売上割合を意図的に引き上げていました​。
課税売上割合を水増しすることで、本来控除できないはずの非課税売上対応仕入に係る消費税まで控除し、結果として約16億円もの消費税を不正に還付申告していたのです​。
この不正は札幌国税局が関連会社の調査で疑いを掴み、大阪国税局や東京国税局と連携した広域調査によって発覚しました​。
グループ企業は追徴課税として重加算税を含む約23億円を修正申告し、国税当局から告発される事態となっています​。
国税庁全体で見ても、この大阪国税局管内の事例は規模が突出しており、当局が不正還付に警鐘を鳴らす契機となりました​。

他にも架空の輸出取引を装った不正還付の事例があります。例えば2019年12月23日の津地方裁判所の判決では、ある企業が存在しない輸出免税売上と架空の課税仕入を計上し、不正に消費税還付を受けていた事実が認定されています​。

このように、実際には輸出していないにもかかわらず書類を偽装して還付金を騙し取る手口は過去にも発生しており、税務当局は偽装された輸出許可証や取引請求書の発見に努めています。不正還付が発覚した場合、消費税法違反(偽りその他不正行為による還付受領)として告発され、裁判で有罪となれば重い罰則が科されます。加えて、追徴税として本税に最大40%の重加算税が付されるなど経済的不利益も非常に大きくなります​。

国税局は近年、還付申告に対する審査を一層厳格化しています。特に高額還付が継続する輸出企業や、不自然な取引を含む申告には重点的に実地調査を実施し、不正の摘発に力を入れています。国税庁の統計でも還付申告に対する調査件数や追徴事例が報告されており、不正抑止の効果もあってか年々不正件数自体は横這いから微減傾向にあります​。
いずれにせよ、正当な輸出取引に基づく還付は適法に受けられますが、虚偽の還付申請は高確率で発覚し告発リスクを伴うことに留意すべきです。適切な範囲で消費税還付制度を利用しつつ、法令遵守のもと健全な資金繰りに役立てることが重要です。

『京都新聞DIGITAL』にコメントが掲載されました

2026-01-07

『京都新聞DIGITAL』にコメントが掲載されました

新聞

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部所属の山本弁護士(京都弁護士会所属)が「バイトテロ」について『京都新聞DIGITAL』の取材を受けました。
記事内ではバイトテロにより成立するおそれのある犯罪や、いかにバイトテロを防ぐかなどについてコメントしています。

山本弁護士によるコメントは『京都新聞DIGITAL』12月29日配信の『「悪評一瞬で広まる」京都発の有名ラーメンチェーンで「バイトテロ」 同業者は警戒「落城3秒の時代」』にて掲載されています。

山本弁護士が取材を受けた『京都新聞DIGITAL』の記事はこちらからご覧いただけます。
※プレミアムコンテンツ該当記事です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は全国に12か所事務所を構える刑事事件に精通した法律事務所です。
(事務所の所在地はこちらからご確認ください。)
弊所では脱税事件の弁護実績が豊富な事務所として、専門の弁護士に加え、元裁判官、元検察官、元会計検査院の官房審議官など、脱税事件の専門知識が豊富な弁護士がチームとなって対応しています。
査察案件や脱税事件は、他の刑事事件や行政事件とは手続・内容・担当機関が全く異なり、その責任の有無や刑罰の重さは国税局による告発以前の対応や逮捕直後の対応に大きく左右されるなど、脱税事件に精通した弁護士による専門的な弁護活動が必要になってきます。
弊所では無料法律相談を行っていますので、査察案件や脱税事件でお困りの方はお気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

無料法律相談のご予約は
☎0120-631ー881
https://datsuzei-bengoshi.com/inquiry/
で受け付けています。

飲食店における源泉徴収漏れ

2025-10-29
源泉徴収漏れ

飲食店において源泉徴収漏れが発覚した場合のリスクについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

源泉徴収とは

源泉徴収とは、企業が従業員の給与から所得税に当たる部分を差し引いて、企業が従業員の代わりに所得税を国に収める制度のことを言います。

源泉徴収制度の目的は、従業員の所得税の申告漏れを防ぐことにあります。

企業に勤めている従業員の方は、この源泉徴収制度により所得税が納められているため、基本的には自分で確定申告をして所得税を納める必要がありません

源泉徴収の仕組み

源泉徴収制度は、企業が従業員の代わりに従業員の所得税の計算や申告をするものです。

そのため、納税義務者は企業ということになります。

源泉徴収の対象となるのは、基本的に企業から支払われる給与所得です。

その他には、退職金や株の配当金なども源泉徴収の対象になります。

源泉徴収されているかどうかは、企業から交付される給与明細をご覧いただくと、所得税などが差し引きされていると思いますので、給与から差し引きされている場合には源泉徴収が行われていると判断することができます。

この源泉徴収された税金部分(源泉所得税)は、企業が毎月国に納税しています。

飲食業は、税務調査が入りやすい業種であり、しかも調査は突然行われることが多い。

飲食業は、税務調査が入りやすい業種の一つです。その理由としては、現金商売が多いため、売上の除外や過少申告のリスクが高いこと、日々の仕入れが頻繁に発生し、食材や備品の購入を現金で行うことも多いため、仕入れの計上漏れが起こりやすいことなどが挙げられます。

また、飲食業に対する税務調査は、無予告で突然行われることが多いといえます。税務調査が行われる場合、課税庁は、納税義務者に対し、あらかじめ、調査を開始する日時・場所、調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等を通知しなければならないとされています(国税通則法74条の9・1項)。このように、税務調査が行われる場合には、課税庁から事前連絡があるのが原則です。

しかし、飲食業の場合、現金商売が多いため、事前連絡なしで、いきなり店舗に調査官が訪れるケースもあり得ます。現金商売の場合、事前に通知をすることで、その時だけ現金の調整をされてしまうと、税務調査に出向く意味がなくなってしまうからです。

このような無予告調査は、法律で認められている調査であり、課税庁は、被調査者である納税義務者の申告や過去の調査実績、事業内容などから、違法または不当な行為を容易にし、正確な所得や税額などの把握を困難にするおそれ、その他調査の遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、事前通知を要しない、とされています(国税通則法74条の10)。

飲食店において源泉徴収漏れが発覚した場合のリスクについて

飲食店の経営者にとっても、従業員の給与等から所得税を天引きして納税する源泉徴収は日常業務の一環です。

しかし、源泉徴収義務は法律上の徴収義務であるだけに、源泉徴収漏れが生じた場合、その影響はかなり深刻です。飲食店業は、そもそも税務調査が入りやすい業種であることは既にお話しましたが、飲食店に税務調査が入り、源泉徴収漏れが発覚した場合、単なる経理処理上のミスでは済まされず、追徴課税や延滞税はもちろん、悪質な場合には刑事責任まで問われるリスクもあります。

飲食店で頻発する源泉徴収漏れとは

飲食店では、アルバイト従業員に対する給与等の支払いについて源泉所得税の徴収漏れが生じやすいと言われています。

多くの飲食店がアルバイトやパートを雇用していますが、毎月継続して給与を支払っている以上、源泉徴収を行わなければならないことは正規の従業員と変わりありません。しかるに、アルバイトやパートの場合、源泉徴収をする必要はないと誤解して源泉所得税が徴収漏れとなっているケースが多々見受けられます。

また、家族経営等の小規模飲食店の場合、アルバイト従業員に対する給与を手渡ししており、源泉所得税の天引きを失念していたケース等もあります。

税務調査で源泉徴収漏れを指摘された場合の一般的な流れ

源泉徴収漏れというのは、本来納付すべき税額に不足が生じている事態ですので、その不足分については延滞税及び加算税(不納付加算税)が課されます。また、税務調査の結果、隠蔽又は仮装工作によるものと判断された場合には、通常の加算税に代えて重加算税が賦課されます。重加算税は、不納付加算税を賦課する代わりに、本来納めるべき税額の35%もの高率で賦課される税金です。

刑事手続

源泉徴収漏れが発覚した場合、一般的な納付税額の過少の場合には、本来の納税額の納付に加えて、各種加算税等の納付の手続きを経て終結します。

しかしながら、源泉徴収漏れが単なる偶発的なミスではなく、意図的なもので、不納付額も多額に上るなど悪質な脱税行為と判断された場合には、税務当局は、検察庁に刑事告発を行うことになります。

刑事告発を受けた検察庁は、飲食店の経営者、経理関係者等を被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。

最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。

また、起訴された場合には、刑事裁判が始まります。

国税局が令和7年6月に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和6年度中の判決件数99件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。

最後に 既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。ですから、税務調査を受け、源泉徴収漏れが発覚するかもしれない、あるいは、発覚したという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが極めて重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。

日本の輸出事業における消費税還付

2025-10-15
税制度

輸出事業における消費税還付について、その仕組みや還付を受けるための条件、業種ごとの特殊性や告発事例などを弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

消費税還付の仕組み

日本の消費税は「仕入れに係る消費税額」を「売上に係る消費税額」から差し引いて納付額を計算する仕組みです。
輸出取引は消費税法上 輸出免税(税率0%)の対象となるため、海外への商品販売や国外向けサービス提供には消費税が課税されません。
したがって輸出売上には消費税が発生しない一方、国内で仕入れや経費に支払った消費税(入力税額)は控除可能であり、売上に係る消費税額より仕入れに係る消費税額の方が大きい場合、その差額が還付されます
例えば、輸出売上200万円(税抜)に対する消費税0円と、仕入150万円(税抜)に対する消費税15万円では、15万円の還付を受けられます。

消費税還付を受けるための条件

消費税還付を受けるにはいくつかの条件があります。
①課税事業者であること
課税事業者であることが必要です。
前々年度の課税売上高が1000万円以下の事業者(免税事業者)は原則として消費税の納税義務がなく、消費税申告を行わないため還付も受けられません。ただし、免税事業者でも「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる選択をすれば還付申請が可能です。
新設法人も原則初年度は免税事業者ですが、資本金1000万円以上など一定の場合は最初から課税事業者となります。
②原則課税で申告計算していること
原則課税で申告計算(課税期間中の課税売上げに係る消費税額-課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額=消費税額)していることも条件です。消費税の簡易課税制度を適用(課税期間中の課税売上げに係る消費税額に、事業区分に応じた一定の「みなし仕入率」を掛けた金額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなして、納付する消費税額を計算)している場合、実額に基づく仕入税額控除が行えず還付を受けられないためです。
③確定申告で還付申告を行うこと
還付を受けるためには該当期間について確定申告で還付申告を行うことが前提となります。
④輸出免税に該当する売上であること
取引面では、輸出免税に該当する売上であることが必要です。
輸出免税の適用範囲には、例えば「日本国内から海外への商品の輸出」「国際運送や国際通信」「非居住者への特許や著作権など無形財産権の提供」「非居住者への役務提供」などが含まれます。
これら輸出取引に該当する売上であれば税率0%となり、対応する仕入税額の還付を受けられます。
ただし非居住者相手のサービスでも、日本国内で直接便益を受けるもの(例:国内での宿泊・飲食提供など)は輸出取引とみなされず課税対象です。
なお、輸出免税の適用を受けるにはその取引が輸出であることを証明する書類を備えることが求められます。

申請手続きや必要書類

消費税の還付は所轄税務署への消費税確定申告を通じて申請します。法人の場合、事業年度終了日の翌日から2か月以内(個人事業主は翌年3月31日まで)に確定申告書を提出する必要があります。
還付申告の際には、以下の書類を提出します。
消費税及び地方消費税の確定申告書(主たる申告用紙)
付表2「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」(売上高に占める課税売上割合や控除仕入税額を計算する明細)
消費税の還付申告に関する明細書(還付となる理由や取引ごとの売上・仕入明細を記載した書類)
確定申告書に還付額を計算の上で提出すると、税務署による内容確認を経て還付金の支払い決定がなされます。
輸出取引による還付を申告する場合、輸出売上に対応する還付額と国内売上に対する納付額をまとめて申告することになるため、輸出事業と国内事業の両方がある場合は申告書上で相殺計算する点に注意が必要です。

還付申告の証拠書類の用意

還付申告の証拠書類として、輸出取引であることを示す資料を準備・保管する必要があります。
輸出する商品のケースでは税関の輸出許可書(税関長の証明付き)を用意しなければなりません。
20万円以下の少額輸出で通常郵便物を使う場合は、日本郵便が発行する引受証明書(品名・数量・価額の記載されたもの)が証拠書類となります。
サービス提供や無形資産の提供など物品以外の輸出取引では、契約書など取引内容と国外提供であることを示す書面が必要です。
これらの書類は申告時に提出を求められる場合もあるため、輸出許可証や契約書類の原本を手元に保管しておくことが重要です。
特に輸出代行業者が輸出手続きを代行した場合でも、自社が還付を受けるには輸出許可書等の原本保管と所定の通知手続きを行う必要があります
なお、輸出免税の証拠書類や帳簿は7年間の保存義務があります。
消費税の還付申告を行うと、原則として税務署による税務調査や審査の対象となります。
還付申告額が大きい場合や内容に不明点がある場合には、書面照会や実地調査によって輸出の実態や仕入控除の妥当性が確認されます。不備や誤りがあれば還付は認められません。
そのため、日頃から取引証憑の整備や正確な帳簿記録を行い、還付申告に備えることが大切です。

対象となる事業者の要件

①課税事業者であること
消費税還付を受けられる事業者は、課税事業者に限られます。
免税事業者の場合、消費税の申告義務がないため、たとえ輸出取引があっても仕入税額の還付を受けることはできません。
輸出を行う企業・事業者であれば、規模が小さく基準売上高1000万円以下でも、必要に応じて課税事業者選択届出を提出し課税事業者となることで還付申請が可能となります。
これは、輸出で仕入税額が多額になる場合、還付を受けられるよう自主的に課税事業者になる選択が有利となるためです(届出を適用する課税期間開始前日までに提出)。
②仕入税額控除の適用要件を満たすこと
還付を受けるには課税売上に対する仕入税額控除の適用要件を満たす必要があります。具体的には、帳簿及び適格請求書(インボイス)等の保存要件を満たし、課税仕入れについて適法に税額控除できる状態であることが重要です(2023年10月以降インボイス制度開始により、適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件)。
輸出免税となる売上であっても、帳簿・証憑不備で仕入税額控除が否認されると結果的に還付も受けられなくなるため注意が必要です。

対象となる取引

輸出取引の種類については、前述したように商品の国外輸送による販売だけでなく、国外向けの役務提供や無形資産の譲渡も含まれます
例えばメーカーが製品を海外顧客に直接販売するケース、商社が国内商品を買い付けて海外に輸出するケース、ソフトウェア企業が海外法人にソフトを提供するケースなどが該当します。これらはいずれも法律上は課税取引扱いで免税となるため、それに要した仕入や経費の消費税は全額控除・還付対象となります。
一方、非課税取引(例:国内の医療、教育、住宅の賃貸、金融など)や不課税取引(給与支払い、寄附など)はそもそも課税対象外であり、対応する仕入税額は控除できません。
輸出取引は非課税ではなく「課税対象だが税率0%」という位置付けのため、国内課税取引と同様に仕入税額控除が可能である点が大きな特徴です。
したがって、輸出売上を有する事業者は、たとえ売上に消費税がかからなくても課税事業者でありさえすれば仕入税額の還付を受けられます。
ただし事業者によっては、課税売上と非課税売上が混在する場合もあります。例えば国内で医薬品販売(社会保険診療は非課税)と輸出販売を併営するようなケースでは、非課税売上に対応する部分の仕入税額は控除できないため、その部分は還付対象外となります。
このように、還付を受けられる仕入税額はあくまで課税売上(輸出を含む)に紐づく部分のみである点に留意が必要です。

還付の受け取りの方法や期間

①還付金の受け取り方法
還付金の受け取り方法は、申告時に指定した銀行口座への振込か、ゆうちょ銀行・郵便局窓口での受領の2通りがあります。
一般には口座振込が利用されますが、口座名義は申告者本人または納税管理人名義である必要があります。
②還付金が振り込まれるまでの期間
消費税還付が振り込まれるまでの期間は、申告から概ね1~2か月程度が一般的な目安です。
税務署による申告内容の確認や書類チェックにある程度時間を要するため、還付金の入金完了まで数週間から数ヶ月かかるのが通常です。
ただし、電子申告(e-Tax)を利用した場合は処理が迅速化される傾向があり、早ければ提出後2~3週間で還付されるケースもあります。
実際、繁忙期でない時期にe-Taxで申告書を送信すれば1か月以内に振り込まれる例も報告されています。
一方、2月~3月の確定申告シーズンは事務処理が立て込むため、通常より時間がかかる可能性があります。
資金繰り上、還付金を早めに受け取りたい場合は、できるだけ早期に申告手続きを行い、e-Taxを活用するのが望ましいでしょう。
還付額が継続的に発生する輸出業者では、資金繰りの観点から還付を迅速に受けるための制度活用も有効です。例えば課税期間の短縮特例を利用すると、通常1年ごとの課税期間を四半期毎や月毎に区切って申告できるため、還付発生時期を早めることができます(適用には事前に「課税期間特例選択届出書」を提出し2年間の継続適用が必要です)。

申告期限を徒過した場合の不利益

申告期限は厳守する必要があります。法人の場合、課税期間(事業年度)終了日の翌日から2ヶ月以内が確定申告の法定期限であり、これを過ぎると期限後申告となります。期限後申告でも還付自体は受けられますが、その場合税務上いくつかの不利益があります。
①還付加算金の計算起点の繰り下がり
還付加算金(税務署から支払われる利息相当額)の計算起点が繰り下がります。
通常、適法な期限内申告で還付となった場合、申告期限の翌日から還付される日までの期間について年利により算出した還付加算金が支払われます(国税通則法第58条)。
税務署側の処理遅延については、法律上、還付申告に対する還付金は速やかに支払うものとされています。万一、税務署の事情で大幅に還付が遅れる場合には、その期間に応じた還付加算金が付されます。
実務上は申告から1~2ヶ月程度で還付されることがほとんどですが、仮に調査が長引く等で還付が遅れた場合でも、納税者には一定の利息補填がなされる仕組みです。
しかし期限後申告で還付を受ける場合、加算金の起算日は本来の期限ではなく、課税期間終了後2ヶ月経過日や申告書提出日の属する月末などに修正されます。
その結果、期限内申告に比べて遅延した期間分の利息が付かなくなる(事実上、還付が遅れるだけ損をする)ことになります。
②ペナルティ
また、期限後申告そのものに対して無申告加算税などのペナルティが課される可能性もあります。
以上から、還付を確実かつ有利に受けるためには申告期限内に正確な申告を行うことが重要です。

業種による消費税還付の状況

①製造業の場合
メーカーの場合、製品を海外に輸出すれば売上に対する消費税は0%ですが、生産に必要な原材料費や設備投資には国内で消費税を支払います。輸出比率が高い製造業者ほど、支払った消費税額が預かった消費税額を上回りやすく、多額の還付を受ける傾向があります。
実際、日本を代表する自動車メーカー等の大企業は毎年巨額の消費税還付を受けており、2022年度には輸出大企業上位20社で合計約1兆9千億円もの消費税が国から還付されたとの推計もあります。
②貿易会社の場合
貿易会社でも、例えば、国内メーカーから商品を税込仕入して輸出すれば、仕入時の消費税分が丸ごと還付対象となります。貿易業者にとって消費税還付は重要な資金源とも言え、適切な手続きによりキャッシュフローを確保することができます。
③サービス業の場合
サービス業においても、提供先が海外(非居住者)でサービスの消費が国外で完結する場合は輸出免税が適用されます。
国際通信サービス、国際輸送サービス、海外法人向けのコンサルティングやエンジニアリング、ソフトウェア・デザインの提供、特許やライセンス供与などは非居住者に対する役務提供として消費税が免税になります。
その結果、国内で要した人件費以外の経費(オフィス賃料や機器購入費用など)に含まれる消費税の還付を受けられます。例えば日本のIT企業が海外企業と契約して開発サービスを提供する場合、売上に消費税は発生しませんが、国内で購入したパソコンやソフトウェア、通信費等の消費税は全て控除・還付されます。
一方、旅行業やホテル業など訪日外国人相手のサービスは、そのサービス提供が日本国内で行われ直接便益を享受させるもののため免税にならず、通常通り課税となります。
このようにサービス業でも取引の性質によって消費税の扱いが異なり、国外向けサービスを主とする事業者は輸出産業同様に還付を受けるケースがあります。

特別なケース

特別なケースや過去の事例としては、事業構造や取引形態に起因する消費税還付があります。例えば、設立初年度に巨額の設備投資を行った場合です。工場建設や大型機械の購入などで一時的に多額の消費税を支払うと、売上が立つ前でもその分の消費税は還付申告により取り戻すことができます。実際、赤字や経費過多の場合、預かった消費税より支払った消費税が多くなり還付を受けられます。
また、不動産業でオフィスビル等を購入したケースでは、購入時に支払った消費税がテナントへの課税賃貸料収入より大きければ還付となります。不動産の用途によっては課税売上が見込めず本来控除できないケースもあるため、一部では還付を得る目的で物件の用途変更を行うようなスキームが問題視されたこともあります。この分野について税制改正で調整措置が講じられ、意図的な還付取得を防ぐルールが整備されています。

日本の国税局の告発事例

消費税還付制度を悪用した不正行為に対しては、国税庁が厳しい姿勢で臨んでいます。国税庁によれば、不正は年々巧妙化しており、国税局は消費税還付申告に対する調査を強化しています。
近年明らかになった大規模不正の一例に、調剤薬局チェーンによる架空取引を利用した消費税不正還付事件があります。
このケースでは、処方箋医薬品販売が主で本来は非課税売上(社会保険診療)となる薬局グループが、グループ内で実態のない医薬品売買をでっち上げ、課税売上割合を意図的に引き上げていました。
課税売上割合を水増しすることで、本来控除できないはずの非課税売上対応仕入に係る消費税まで控除し、結果として約16億円もの消費税を不正に還付申告していたのです。
この不正は札幌国税局が関連会社の調査で疑いを掴み、大阪国税局や東京国税局と連携した広域調査によって発覚しました。
グループ企業は追徴課税として重加算税を含む約23億円を修正申告し、国税当局から告発される事態となっています。
国税庁全体で見ても、この大阪国税局管内の事例は規模が突出しており、当局が不正還付に警鐘を鳴らす契機となりました。
他にも架空の輸出取引を装った不正還付の事例があります。例えば2019年津地方裁判所の判決では、ある企業が存在しない輸出免税売上と架空の課税仕入を計上し、不正に消費税還付を受けていた事実が認定されています。
このように、実際には輸出していないにもかかわらず書類を偽装して還付金を騙し取る手口は過去にも発生しており、国税当局は偽装された輸出許可証や取引請求書の発見に努めています。
不正還付が発覚した場合、消費税法違反(偽りその他不正行為による還付受領)として告発され、裁判で有罪となれば重い罰則が科されます。加えて、追徴税として重加算税が付されるなど経済的不利益も非常に大きくなります。
国税局は近年、還付申告に対する審査を一層厳格化しています。特に高額還付が継続する輸出企業や、不自然な取引を含む申告には重点的に実地調査を実施し、不正の摘発に力を入れています。
国税庁の統計でも還付申告に対する調査件数や追徴事例が報告されており、不正抑止の効果もあってか年々不正件数自体は横這いから微減傾向にあります。
いずれにせよ、正当な輸出取引に基づく還付は適法に受けられますが、虚偽の還付申請は高確率で発覚し告発リスクを伴うことに留意すべきです。適切な範囲で消費税還付制度を利用しつつ、法令遵守のもと健全な資金繰りに役立てることが重要です。

投げ銭は贈与?税金は?

2025-10-01
税制度

投げ銭(スーパーチャット)は贈与でしょうか?税金はかかるのでしょうか?その疑問に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がお答えします。

投げ銭(スーパーチャット)とは

投げ銭という言葉は、もともと路上パフォーマーなどのパフォーマンスに対して、観客がパフォーマー側が準備した集金箱などに金銭を投げ入れる行為のことを指していました。
映画などで大道芸人が演技が終わった後にシルクハットなどを観客に差し出してそこに観客からお金を入れてもらう場面を見たことがあるのではないでしょうか?

しかし、インターネットが普及した現在においては、「投げ銭」の意味も変化しています。
今回取り上げる「投げ銭」とは、インターネットでの配信などに対して、視聴者やファンなどがオンラインで送金する行為を言います。
YouTubeではスーパーチャット(スパチャ)と言われていますが、これも代表的な「投げ銭」と言えるでしょう。
「投げ銭」のシステムは、オンライン上で金銭を送金する以外にも、有料ギフトを購入し送るなどの方法もあり様々ですが、いずれも配信者を金銭面で支援しているという面で共通しています。

投げ銭は贈与か?

投げ銭は贈与でしょうか?
贈与とは、無償で金銭等を譲渡する(譲り受ける)行為をいいます。
そのため、インターネット配信をしている人が何もパフォーマンスなどをしていないのに、投げ銭をされた場合には贈与に当たるといえるかもしれません。

しかし、ほとんどの場合、なにがしかのパフォーマンスを配信し、そのパフォーマンスに対して投げ銭が行われています。
そうすると、対価性が認められることになり、もはや「贈与」ということはできなくなります。
この場合、投げ銭で得た利益は「所得」として申告する必要があります。

贈与か所得かは納税の段階で非常に大きな違いが出てきます。
「贈与」の場合、贈与税の申告が必要となりますが、1年間に得た贈与の額が110万円を超えていなければ申告する必要がありません。
一方「所得」の場合には、基本的に20万円を超えている場合には確定申告が必要となります。

投げ銭の所得は何所得か?

投げ銭が「所得」になるとして、その所得の種類が問題となります。
すなわち「事業所得」か「雑所得」かです。

この点、基本的には「事業所得」となると考えられます。
たとえば、YouTuberの方などは動画配信を仕事として行っており、その動画配信を通じて「投げ銭」を得ていることになるので、仕事=事業によって得た収入と考えられます。
つまり、なにがしかの事業若しくは反復継続性のある行為によって得た利益は「事業所得」となると考えられます。

一方、一般の方が趣味でアップした動画などについては、「雑所得」となる可能性の方が高いと言えます。
反復継続性がなかったり、その行為によって利益を得ることを目的としているとはいえないからです。

投げ銭による所得の申告漏れが発覚したケース

ライブ配信者(ライバー)が投げ銭による所得を申告せず、国税局から多額の追徴課税を受けた実例について、以下の引用記事を基に解説します。

事件の概要

あるアプリでトークのライブ配信を行っていた女性が、大阪国税局から約2100万円の追徴課税を受けた。「ライバー」は、アイテムやギフトなどと呼ばれる視聴者からの投げ銭を主な収益源としているが、この投げ銭ももちろん課税の対象となる。しかし、女性は、4年分の投げ銭1億1900万円もの所得を一切申告していなかった。女性は「忙しくて確定申告をしていなかった」という趣旨の説明をしたという。
(令和6年12月10日付goo blog記事より抜粋。大元の記事(FNN)はリンク切れ)
https://blog.goo.ne.jp/kaikeinews/e/5615dce16ebd35a9daf30e832548790d

投げ銭(スーパーチャット)はYouTubeなどが有名ですが、引用記事のように各種トークアプリでも広く実装された機能といえます。投げ銭の額が大きくなるほど、無申告だった場合の加算税の負担も大きくなり、ケースによっては重加算税が課されたり、脱税事件として刑事処罰の対象となったりもします。

投げ銭の確定申告

事業所得に当たる場合、総収入から経費や控除額を引いたものが課税対象の金額となります。

ここで、青色申告か白色申告かによって、控除額が異なります。
たとえば、個人事業主で開業届を提出し青色申告承認申請をしている場合、青色申告をすることができます。
青色申告では最高55万円(令和元年以前は65万円)を控除することができます。

投げ銭は履歴が残るため、税務調査が入ると申告漏れが発覚しやすいといえます。
投げ銭が贈与になるのか事業所得になるのかわからない、所得になるのに贈与として申告していて心配という方は専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では無料の法律相談を実施していますので、税務調査・査察調査が入ったという方は一度お問い合わせください。

YouTubeの収入は確定申告が必要?

2025-09-17
税制度

YouTubeでの収入は確定申告が必要か、確定申告しないとバレるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

YouTubeでの収入

YouTubeに動画をアップして広告収入を得ているYouTuber(ユーチューバー)は、近年子供のなりたい職業ランキングに登場するなど一般的になりつつあります。
また、新型コロナの影響により、YouTubeで動画を配信して収入を得ている方も増えてきています。
そんなユーチューバーの方は、一部の有名な方々を除くと、ほとんどがYouTubeから広告収入を得ていると思います。
広告収入についても、所得税の申告が必要となるのは当然です。
もっとも、広告収入のすべてに所得税が課せられるのではなく、収入から必要経費や控除額を差し引いた残りが所得税の申告が必要となる「所得」となります。
そのため、収入の額が控除される額(基礎控除は48万円)以下の場合には「所得」がないということになり、申告は不要となります。

YouTubeでの収入は税務署にバレる?

YouTubeなどのインターネットを利用している取引については、国税庁が積極的に調査を実施しています。
国税庁が発表している「インターネット取引を行っている個人の調査状況」という資料によれば、平成29年度におけるインターネット取引の実地調査件数は2015件で、コンテンツ配信やネット広告に関する件数は274件を占めています。
また、国税庁は「電子商取引監視チーム」を配置し、インターネット取引を中心に扱う専門官が監視を強化しています。
このように、インターネット取引については、国税庁が常に目を光らせている分野といえます。

そして、YouTubeの収入については、
①再生回数が表示される
②広告収入は電子送金される
ということから税務署はユーチューバーが収入をどれくらい得ているのか把握しやすいといえます。
再生回数が多く、相当程度の広告収入を得ているはずなのに、確定申告がなされていないと税務署が調査に入ることになります。

確定申告を怠ったYouTuberが実際に追徴課税を受けたケース

確定申告を行なわなかったことが国税局に発覚し、多額の無申告加算税を支払うことになった実例について、以下の引用記事を基に解説します。

事件の概要

動画をユーチューブに投稿し、その報酬などとして約3600万円を得ていた男性が、確定申告をしていなかったとして、関東信越国税局の税務調査を受けた。重加算税を含む約700万円を追徴課税されたという。男性はかつて会社員だった。当初、国税局に対して「確定申告が必要なことを知らなかった」という趣旨の説明をしていたという。さらに追及を受けた男性は、意図的に申告をしなかったことを認めた。国税関係者は「確信的な無申告だったのに、それを隠そうとする。言い逃れの典型例だ」と指摘する。
(令和5年3月11日付朝日新聞オンラインの記事より抜粋)
https://www.asahi.com/articles/ASR3B3W07R36UTIL00P.html

引用記事によりますと、国税局は男性が税務調査への対応策を事前に調べていた事実も掴んでいたようです。先ほど述べたとおり、YouTuberの収入は国税局からすれば容易に捕捉することができるため、ごまかしは効きません。自分だけは大丈夫と思わずに、適切な確定申告を行うことが求められます。

YouTubeの収入を確定申告していないと

YouTubeの収入を確定申告していないと「無申告加算税」が課せられることになり、確定申告をしていた場合よりも多くの税金を支払わなければならなくなります。
また、意図的に確定申告をせず所得を隠していたということになれば、「重加算税」の対象となってしまう場合もあります。
さらに、無申告には刑罰も定められているため、金額や悪質性によっては、刑事裁判にかけられてしまう可能性もあります。

バレないから大丈夫と安易に考えていると、急に税務署が調査にうやって来て、多額の課税がなされる場合があります。
また、チャンネルの継続が難しくなる可能性もありますので、確定申告を忘れてしまっていたという方は、早めに専門家に相談して修正申告などをしていきましょう。

キャバ嬢が現金で受け取ったお金も申告が必要

2025-09-03
告発

キャバクラの従業員に対して税務調査が入る可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 お店に対する税務調査から発覚することが多い

キャバクラをはじめとする水商売と呼ばれる仕事については税務調査が入りやすい職種といえます。
そうした仕事では、大きなお金が動くため、きちんと税金を納めていないのではないかと国税局が注意をしていると考えられます。
では、仮に、キャバ嬢が脱税していた場合、どのようにして、それが発覚するのでしょうか。
税金に関する調査として、税務調査という言葉と聞いたことがあると思います。
その名のとおり、適切な税金が納められているのか、その前提として、どれくらいの売上や経費があったのかなどを調査するものです。
キャバ嬢本人に対する税務調査ではなくとも、お店に対する税務調査の中でキャバ嬢の申告漏れが発覚することも多いです。https://www.asahi.com/articles/ASND85W01ND8PTIL012.html

2 現金手渡しだから大丈夫というわけではない!

給料を現金手渡しで受け取っているから、その給料については大丈夫ではないかと思っている方もいると思いますが、実際にはそうではありません。
先ほど説明したように、お店に対する税務調査が行われることがありますが
仮に、キャバ嬢に対する給与を現金手渡しとしているお店であっても、
その調査の中で、お店からキャバ嬢に対し、いつ、いくらの給与を支払った記録が出てきた場合には
そのキャバ嬢がその給与を申告しているかどうかが調査
されることになります。
また、仮に、お客さんから現金を受け取っていた場合においても
そのお客さんや他の従業員から、そのことを密告され、結果的に、そのキャバ嬢も調査の対象とされることに繋がります。
ですので、現金を手渡しで受け取っているから、税金については申告せずとも大丈夫だという認識は間違っているといえます。

3 現金で受け取ったお金を申告しないとどうなるの

仕事の対価として受け取ったお金については、所得として申告し、そこに所得税がかかってくると考えられます。
また、お客さんから、お店を通さず個人的に受け取っていた場合には、贈与として、贈与税がかかってくることが考えられます。https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2024/12/04/kiji/20241204s00041000295000c.html?page=1
ですので、それぞれ適切に、税金として申告する必要があり、そのようにしないことで余計に税金がかかり
最終的に自身にとって不利な結果になることがあります。
また、税金を納めるということだけで済まず、さらに刑事事件となる可能性もあります。
申告していない税金の額が高かったり、長期間に渡って申告をしていなかったりした場合には、
税務調査にとどまらず、国税局による査察、そして、検察官への刑事告発がなされ、最終的に刑事裁判にかけられるということもありえます。
刑事裁判となるのは悪質性が高いようなケースですので、すぐにそうなるわけではありませんが
やはりまずは適切な税金を納めていく必要があります。

4 適切な税金を納めていくためには

適切な税金を納めていくため、まずは、税理士に相談することが重要です。
お店でお願いしている税理士がいることもありますので、お店の人に相談してみるというのもいいと思います。
また、税務調査や査察など、さらに手続が進んでいった場合、税理士だけではなく、弁護士が介入していく必要があるかもしれません。
先ほど言及した刑事裁判は悪質性が高いようなケースですので、税金に関するトラブルとしては、どちらかというと少ないものですが
早めに対応することで、その後の手続きを回避できる場合があるかもしれません。

架空外注費で法人税脱税

2025-08-20
手口

法人税の脱税について、事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

建設会社の代表者であるAさんは、下請けの個人事業主に虚偽の請求書を発行させ、架空の外注費を支払ったことにして経費を水増しして計上し、個人事業主からキックバックを受けていました。

この方法で1億円を超える所得を隠していたAさんは、大阪国税局の査察調査を受け、法人税3000万円を脱税したとして、法人税法違反の罪で大阪地方検察庁に告発されてしまいました。

(実際の事件をもとにしたフィクションです)

建設業(建設会社)で起こりやすい水増し請求

建設業でよくみられる不正に水増し請求があります。水増し請求は、下請けが元受けに対し、実際にかかった工事金額よりも多額の金額を請求するものです。工事金額を上乗せする方法としては、人工の数を増やしたり、材料費を上乗せする方法が多く見受けられます。

本事例における脱税の方法

事例のAさんは、下請けの個人事業主に実際にかかった費用よりも高額である虚偽の請求書を発行させ、水増しした外注費を支払って計上し、その後個人事業主からキックバックを受けています。

Aさんがキックバックを受けた金銭は、Aさんの収入(所得)となるため、Aさんにはキックバックを受けた金額に応じて所得税の確定申告をする必要があります。

Aさんが、所得税の確定申告をしていなかった場合には、Aさんが所得税の脱税をしていることになるのは、わかりやすいと思います。

しかし、今回の事例では、Aさんは法人税法違反の罪で告発されています。

法人税とは法人つまり会社が得た収益に対してかかる税金です。

キックバックをAさん個人ではなく、Aさんの建設会社が受けていた場合には、会社の収益といえるため、キックバックの部分は法人税の対象になり、確定申告をしなければ法人税の脱税になるでしょう。

では、キックバックはあくまでもAさん個人が受けていた場合はどうでしょうか。

この場合、問題となるのは、水増しした外注費を計上しているところとなります。

今回の事例では、外注費については、個人事業主に支払われています。

しかし、支払われている外注費のうち水増しされた外注費は本来であれば支払われない経費ということになります。

そうすると、水増しされた外注費の部分については、経費計上してはいけない部分ということになります。

そのため、会社が得た収入から架空の外注費を経費として差し引いて確定申告していた場合には、本来であればその架空経費の部分は差し引いてはいけない部分となるため、架空経費の部分も含めて課税対象金額に含まれることになります。

そして、架空経費の部分については、確定申告から漏れていることになるため、過少申告をしていたということになります。

架空外注費の計上はばれやすい。

架空外注費の計上は、企業の所得を意図的に減らし、納めるべき税金を少なくする目的で行われることが多いため、税務署は重大な不正行為とみなしています。そのため、外注費については特に注意深くチェックされます。

本事例の場合、キックバックの要求を受けた下請けの側としては、その水増しした金銭を出金する際の会計処理に困ってしまい、やむなく架空仕入れなどの架空の経費を計上したりします。

そのような状態のところに税務調査が入った場合、その架空の経費について追及されれば、簡単に不正加担が発覚してしまいます。このように、税務署が申告者本人だけでなく、その取引先にも調査の確認を行い、取引の事実を確認する方法を反面調査といいます。

法人税脱税のペナルティ

Aさん及びAさんの会社が受ける脱税のペナルティについては、大きく分けて①加算税、②刑事罰の二つが考えられます。

加算税

Aさんの会社の場合には、過少申告をしていたことになるので、過少申告加算税が課せられることになります。

過少申告加算税は、新たに納めることになった税金の10%(新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%)が加算されます。

もっとも、Aさんの場合には、架空経費の計上という悪質性が高い方法によって過少申告をしているということが言えるので、過少申告加算税ではなく、重加算税が課せられる可能性が高いです。

重加算税は、過少申告加算税の基礎となる税額の35%に相当する金額が課されることになります。

刑事罰

Aさんは告発を受けているので、今後は刑事事件としての捜査や裁判を受けていくことになります。

統計上、最近では告発された事件の約80から90%は起訴されています。

今回の事例では、偽りその他不正の行為により法人税を免れたといえるため、罰則は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科」となります(法人税法159条1項)。

ちなみに、罰金の額については、脱税額が1000万円を超える場合には、脱税額まで罰金の上限額を引き上げることができるとされています(同条2項)。

また、今回の事例では、会社代表者であるAさんが行っているので、会社に対しても罰金刑が科せられることになります(同法163条1項)。

そのため、起訴される場合にはAさんだけではなく、Aさんの会社も併せて起訴されることになります。

法人税脱税を疑われた場合の対応

法人税の脱税を疑われた場合には、まず実際に脱税といわれるような行為をしていたかどうかを自分たちでも調査しておく必要があります。

そして、税務調査などの調査では、脱税とはならないという根拠を示していくことが必要です。

もし、脱税に当たる行為をしていた場合には、それが意図的なものかどうかが重要なポイントとなります。

単なる申告漏れなどの場合には、脱税額が高額であったとしても査察や告発を免れることができる場合があります。

その場合でも、調査に対してどのように答えていくかが非常に大切になるので、早めに専門家に相談して方針を決めたうえで、調査に臨みましょう。

また、早めに修正申告をして納税義務を果たすことも、処分を軽くするために必要な行為です。

税理士や弁護士などに依頼して、修正申告をして、早めに納税をしましょう。

もっとも、脱税方法が悪質であるとか脱税期間が長かったり脱税額が高額であったりした場合には、告発までされる可能性が高くなります。

特に脱税額が3000万円を超える場合には、多くの事件が告発されていますので、刑事裁判を見据えて税理士だけではなく弁護士にも早めの段階から関与してもらっておくと安心です。 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心に扱っているので、刑事事件化を見据えた弁護活動も行えます。早めにご相談ください。

【事件解説】大阪国税局が道路舗装会社を告発

2025-08-06
告発

奈良県香芝市の道路舗装会社と同会社の会長、同会社の経理責任者を大阪国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

架空の外注費を計上する方法で、法人税を脱税したとして、大阪国税局が、奈良県香芝市の道路舗装会社(A建設)と同会社の会長B、同会社の経理責任者C(Bの妻)を奈良地検に告発しました。告発容疑は、Bら2人が、2023年8月期までの3年間に、約1億8600万円の所得を隠し、法人税約4700万円を脱税した疑いであり、関係者によると、A建設は、高速道路の舗装など公共工事を数多く受注し業績を上げていましたが、Bら2人は、複数の取引先に協力を依頼し、仕事を発注したように装っていたほか、実在しない企業名を書いた虚偽の領収書を作成し、外注費として計上していたとのことです。不正に得た資金は、土地の購入などに充てていました。

Bら2人は、取材に対して「修正申告をし、納税も済ませた。今後は適切に申告納税する。」と語っています。

(2025年4月28日、ニュース、毎日新聞より。一部改変)

https://home.kingsoft.jp/news/news/mainichi/20250427k0000m040081000c.html?from=content

建設業者による脱税事件は後を絶たない。

本件は、建設会社の会長及び経理責任者が敢行した脱税事件です。

建設業は、国税庁が毎年6月に公表する査察の概要の業種別告発件数のランキングで常にトップか上位にランクインされており、国税局も目を光らせて監視しています。

査察調査は、通常の税務調査の後、実施される場合もありますが、建設業は、そもそも税務調査が入りやすい業種とも言われています。

建設業に税務調査が入りやすい理由としては、長期間の工事が多く、工事期間が決算期をまたいで長期に渡ることもあるため、工事の振り分けによる売り上げのごまかしなどが行われやすいこと、1件当たりの工事金額が大きいため、売上金額が大きい分納税額も大きくなるという傾向があり、納税額が大きくなると申告内容にミスがあった場合に納税額への影響が大きくなるため、特に厳しく税務調査が実施される傾向があること、人件費と外注費が十分に線引きされておらず、社会保険料や労働保険料の支払いを免れるために、本来ならば人件費として計上すべき費用を外注費として計上する悪質な業者もいること、などが挙げられます。

刑事手続

Bら2人は、法人税法違反の疑いで刑事告発を受けています。

刑事告発を受けた検察庁は、Bらを被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。

最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。

また、起訴された場合には、刑事裁判が始まります。

国税局が令和7年6月に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和6年度中の判決件数99件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。

建設業者による脱税は、建設業許可が取り消されるリスクもある。

建設業者による脱税では、刑事処罰を受けることとは別に建設業許可の取り消しのリスクもあることに注意が必要です。問題となるのは建設業許可の取り消し事由のなかの欠落要件についてです。建設業者の場合、廃業や営業をやめる場合を除くと、欠落要件に該当して許可が取り消されるケースが最も多くなっています。

法人税法違反の場合,Bら個人の法定刑は、10年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金、又はこれを併科する、となっています。

建設業法によると、建設業者が脱税を敢行した場合、欠落要件のなかの、(個人の場合)個人事業主本人、支配人、支店長や営業所長などの政令で定められた使用人、(法人の場合)代表取締役などの取締役、顧問や相談役、議決権を5%以上有する株主、支店長や営業所長などの政令で定められた使用人が、拘禁刑に処せられて、その刑の執行の終了日又は執行を受けることがなくなった日から5年以上経過していない者に該当する場合があります。

この場合には、建設業法によって、建設業の許可が必ず取り消さることになるため、例えば、建設会社の代表取締役が脱税を敢行した場合、起訴されて拘禁刑に処せられる可能性が高い場合には、判決が出る以前から、代表者の変更について検討する必要があることになります。

なお、執行猶予自体は、欠落要件に該当するため、執行猶予期間中の者(脱税した者が起訴され拘禁刑に処せられる場合には、このケースが多いと考えられます。)が、建設業の代表者やその他重要な役職に就いていることは建設業許可の取り消し事由の対象となります。その一方で、執行猶予期間が満了すれば、その時点で刑の言い渡しは消滅するので、執行猶予期間が満了していれば欠落要件には該当しないことになります。その期間が終了した日から5年間の経過を待つ必要はありません。

最後に 既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。ですから、脱税に関与してしまったという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが極めて重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。

所得税法違反による脱税で実刑判決となった事例③

2025-07-30
実刑

所得税法違反で実刑判決を受けた事例を紹介するとともに、実刑判決を避けるためにはどうしたらよいかを弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説していきます。全3回のうち、最終回の今回は、実刑判決を避けるためにはどうすればよいのかを中心に解説します。

実刑判決を避けるために重要な「反省」と「納税」

これまで紹介してきた事例から明らかなように、たとえ所得税の無申告・過少申告による脱税であっても、悪質性が高ければ実刑判決が現実のものとなります。
では、逮捕・起訴されてしまった後に実刑を避ける余地はあるのでしょうか。
絶対ではありませんが、裁判で情状が考慮され執行猶予付き判決(実刑回避)となるためには、以下の点が重視されます。

①速やかな納税措置
起訴後でも遅すぎることはありません。可能な限り早く修正申告を行い、免れた税額や加算税の納付に努めることが肝要です。
実際に、ある事件では被告人が脱税分と重加算税を既に納付済みであることが考慮され、懲役刑に執行猶予が付されたケースもあります。
納税義務の履行は反省の具体的な証左として評価されやすく、「社会復帰後も更生して納税を続ける意思あり」と裁判官に示す効果があります。

②深い反省と再発防止の誓約
被告人自身が犯行を認めているか、法廷でどれだけ真摯に謝罪・反省を述べるかも重要です。
脱税額が高額でも全額を納付し関与を認めて猛省していると裁判所が判断すれば、執行猶予を付して更生の機会を与えることがあります。
逆に「バレないと思った」「他にもやっている人がいる」などと言い訳したり反省が見られなかったりすれば、裁判官の心証は悪化し実刑可能性が高まります。

③初犯かつ社会的更生状況
前科がない初犯であること、家族や雇用主など周囲からの支援が期待でき、更生環境が整っていることも情状として有利に働きます。
一般的に前科がなく反省している初犯者は執行猶予となる場合が多い傾向です。
ただし再犯者や、過去に税務署の指摘で修正申告をしたのにまた隠ぺいを繰り返したようなケース(事例①のように前科猶予中の再犯)は極めて厳しく扱われ、執行猶予は期待しにくくなります
また、脱税に関する前科ではなく、たとえば薬物に関する前科などであったとしても、初犯の方に比べると厳しい判断が出やすくなります。
さらに、すでに前科の執行猶予が満了しており、かつ、起訴をされた脱税の期間には含まれていなかったとしても、前科の執行猶予中から脱税行為に手を染めていたという内容が裁判で明らかになった場合には、かなり厳しく判断されることになります。
実際に、弊所で担当した脱税事件では、起訴されたのは直近3年間の脱税でしたが、薬物前科執行猶予中であった6年前にも脱税行為に手を染めていたということが考慮されて、実刑判決を受けた事案があります。この事案では、前科がなければ執行猶予が付けられてもおかしくはありませんでした。
弁護活動としては、上記の点を踏まえて被告人の反省文提出、税務当局との交渉による納税の実施、再発防止策の準備(税理士をつけ修正申告や納税をする誓約等)、家族の監督誓約書の提出などが考えられます。
実際、裁判例を見ても脱税額そのものだけでなく「犯行後にどう対応したか」が量刑に反映されています。巧妙な無申告による所得隠しであっても追徴税を完納したことで執行猶予となっている例もあります。

まとめ

無申告・過少申告による脱税は、「うっかりミス」では済まされない重大な犯罪です。
判決年月日や裁判所名は異なれど、紹介した事例はいずれも悪質な税逃れに対し裁判所が毅然とした態度で臨んだものです。
逮捕された被疑者本人やご家族にとっては大変な精神的負担でしょうが、まずは事実関係を認めた上で専門家(弁護士・税理士)の力を借り、一日も早く適正な納税と再発防止策を講じることが肝要です。
それが結果的に情状酌量につながり、執行猶予獲得や刑の減軽につながる可能性があります。
判決が出るまでのプロセスは苦難ですが、適切な対応次第でその後の人生を立て直す余地は残されています。
「逃れ得た税より失うものの方が大きい」――本記事の事例が示す教訓を胸に、真摯な反省と更生への努力を続けることが何より重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、所得税法違反で告発された方など、刑事裁判になりそうで不安な方の相談を随時受け付けています。
初回のご相談は無料ですので、不安な方は一度弊所までお電話下さい。

« Older Entries

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら