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所得税法違反による脱税で実刑判決となった事例②

所得税法違反で実刑判決を受けた事例を紹介するとともに、実刑判決を避けるためにはどうしたらよいかを弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説していきます。全3回のうち、2回目の今回は、実刑判決になった事例や実刑と執行猶予を分ける基準となるような事例について紹介します。
事例②: ネット販売収入を無申告 – 虚偽の住民登録で所在隠し
大阪地方裁判所 令和2年9月14日判決(第6刑事部)は、インターネット上の物品販売業で得た事業所得を申告せず脱税した被告に対し、懲役1年および罰金800万円の判決を言い渡しました。
被告人は個人事業主(ネット通販業者)で、売上を無申告のまま所得税を免れただけでなく、居住地を偽装する目的で虚偽の住民登録まで行っていました。
確定申告を一切せず所在をくらますこの手口により、納税義務の追及を長期間逃れようとした悪質性が認定されています。
裁判所は「納税者としての規範意識が極めて低く、計画的かつ悪質」と断じていますが、被告人に前科がないこと、加算税を含めた全額の納税を終えていることを考慮され、執行猶予が付されています。
なお、判決では罰金不納の場合の労役場留置(罰金未納により労役場で服役する期間)についても言及されており、経済的にも厳しい姿勢が示されています。
被告人の職業はネット通販業で比較的若年の個人事業者と推測されますが、裁判所は「申告納税制度の根幹を揺るがす犯行」として強い非難を表明しています。
事例③: 巨額の所得隠し – 銀座ビルオーナーに懲役4年
脱税額が桁違いに大きい場合、初犯でも実刑が避けられないことがあります。
その典型例が、東京地方裁判所 平成30年11月20日判決で有罪となった東京・銀座のビルオーナーの事件です。
被告人(当時86歳)は繁華街ビルのオーナー収入などで約10億6000万円もの所得を隠し、法人税法違反の罪に問われました(※個人オーナーでしたが、ビル収入を管理する法人を通じて納税を免れた可能性があります)。
裁判所は「極めて巧妙かつ長期にわたる犯行で、悪質性が顕著」として、被告人に対し懲役4年および罰金2億4000万円の実刑判決を宣告しました(検察の求刑は懲役5年・罰金3億円)。
この量刑は近年の所得税・法人税ほ脱事案としては最長クラスであり、被告人が高齢であったにもかかわらず実刑が選択された点で注目されます。
判決理由では、「被告人はビル収益の大半を申告せず、架空の経費計上など巧みな手段で巨額の税負担を免れてきた。その犯情の悪質さは強い非難に値し、社会的影響も看過できない」と指摘されました。
被告人は高齢ゆえ体調面を酌む余地もあり得ましたが、それ以上に10億円超という脱税規模と納税義務軽視の態度が重視され、実刑は避けられませんでした。
なお、この事件では法人名義での犯行でしたが、実質的経営者である被告人個人に懲役刑が科されています。
被告人はビル経営以外にも資産家として多額の収入があったと見られますが、公判では明確な弁解はなく、最終的に追徴課税分も含め莫大な納税を迫られることになりました。
家族にとっても資産差押え等の経済的影響は免れず、社会的信用の失墜という代償も非常に大きい事例です。
事例④: 架空経費で所得圧縮 – ブリーダー親子に有罪判決(執行猶予付き)
実刑判決の例ではありませんが、悪質な所得隠し手口として参考になるのが、ペットブリーダー業を営む親子による脱税事件です。
こちらは新潟地方裁判所 令和4年10月7日判決(報道発表日ベース)で、親子それぞれに有罪判決が言い渡されています。
被告人は父(ブリーダー経営者)と娘(事業手伝い)で、コロナ禍のペットブームに乗って売上が急増したにもかかわらず、その所得約1億6000万円を意図的に申告せず、犬猫の餌代を架空計上するなどの方法で経費を水増しし、結果的に約6100万円もの所得税を免れたとされています。
国税当局の査察により告発され、両被告は逮捕・起訴されました。
その後の裁判で、新潟地裁は父親に懲役1年・執行猶予3年・罰金1500万円、娘に懲役10か月・執行猶予3年(罰金なし)という判決を言い渡しています。
判決理由では、親子が役割を分担し組織的に脱税の指示と実行を行った点、コロナ禍の特需による利益をほぼ丸ごと隠ぺいした点などから「刑事責任は重い」と指摘されています。
「餌代の架空計上」という手口は比較的単純ながら巧妙で、売上規模の拡大に比例して脱税額も巨額となった悪質な事案でした。
しかし本件では、執行猶予が付されています。
考えられる理由として、両被告人が起訴事実を大筋で認め反省の態度を示したこと、起訴後にある程度の修正申告や追納の意思を示した可能性、そして前科がなかった点が挙げられます。
実際、裁判官は「脱税額は甚大で強い非難に値する」としつつも、高齢の父親が初犯であること、娘も従属的立場だったこと、そして何より犯行を認めていることを考慮し、両名に対する実刑は避けました(いずれも執行猶予3年)。
このように、脱税額が1億円未満規模でも刑事告発・有罪判決に至ること、また執行猶予付きとはいえ経営者本人に懲役刑と高額の罰金が科され社会的制裁を受けることがお分かりいただけるでしょう。
被告人らの職業は中小規模のブリーダー経営者とその家族従業員であり、「自分たちは大企業ではないから大丈夫」という油断があったのかもしれません。
しかし結果的に信用を失い、多額の追徴課税(重加算税含む)や罰金支払いに追われることになりました。
~次回は、実刑判決を避けるためにはどうすればいいのかなどについて解説します~
所得税法違反による脱税で実刑判決となった事例①

所得税法違反で実刑判決を受けた事例を紹介するとともに、実刑判決を避けるためにはどうしたらよいかを弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説していきます。3回に分けて解説していきますので、第1回の今回は所得税法違反の概要と実刑判決に至るポイントを解説します。
所得税法違反の概要
所得税の申告を意図的にせず税金を免れる行為(無申告ほ脱)や、虚偽の申告で所得を少なく見せる行為(過少申告ほ脱)は犯罪であり、悪質な場合には懲役刑(実刑)が科されることがあります。
近年は、自営業者や副業収入を得る個人による所得隠しも増えており、「自分は大丈夫」と油断していると刑事告発・起訴されるケースも少なくありません。
実際、令和5年度(2023年)には脱税事件の有罪判決83件中9件で実刑判決が言い渡されており、実刑となった場合の懲役期間は平均1年3か月(15.6か月)、中には懲役4年の重い判決が下った例もあります。
以下、無申告または過少申告による脱税で実刑に至った主な事例を、判決年月日・裁判所、脱税額、手口の悪質性、判決内容、被告人の属性、反省状況などに着目して紹介します。
脱税で実刑判決に至るポイント(悪質性と量刑の傾向)
脱税事件の量刑は、単純な申告漏れ(過失)か意図的な所得隠し(故意犯)かで大きく異なります。
意図的な脱税が明らかになると、国税局査察部(マルサ)による強制調査を経て検察庁に告発され、刑事裁判で懲役刑・罰金刑が科されることになります。
所得税法では、偽の領収証を用いるなど不正行為による脱税(ほ脱罪)に「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(併科も可)」を、単なる無申告でも故意に納税を免れた場合(単純無申告ほ脱)に「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」を科すと規定しています。
初犯か再犯か、脱税額や手口の巧妙さ、犯行期間、さらには犯行後の対応(修正申告や納税、反省の態度など)によって、執行猶予付き判決になるか実刑(猶予なし)となるかが左右されます。
一般に、脱税額が巨額であったり、長年にわたる計画的な犯行、偽装工作(架空経費の計上や名義口座の利用など)が認められると「悪質性が高い」と判断され、起訴後の対応によっては実刑判決が選択されます。
特に過去に税務指摘を受けても改善せず繰り返した場合や、税理士など専門家ぐるみの組織的犯行では厳罰が下りやすい傾向があります。
一方で、起訴後に速やかに修正申告を行い、脱税分の納税(本税や重加算税)を完納または一部納付した場合や、犯行を認め深く反省している場合には、裁判所が情状を考慮し執行猶予を付すケースも少なくありません。
以下の事例でも、各被告人の悪質性と情状が量刑に大きく影響している点に注目してください。
事例①: FX取引利益を無申告 – 前科執行猶予中の再犯で懲役刑
近年話題となったのが、FX(外国為替証拠金取引)による利益を無申告のまま隠し続け、実刑判決に至ったケースです。
令和4年度の国税庁「査察の概要」にも掲載された事例で、被告人は過去に所得税法違反で有罪(執行猶予付き)となったにもかかわらず、執行猶予期間中に再び多数の他人名義口座でFX取引を行い、その利益について一度も確定申告書を提出しませんでした。
こうした悪質な常習犯である点が重視され、国税当局は告発を決断。裁判所も「所得税の申告納税制度を軽視し、極めて悪質」と判断し、懲役1年4か月の実刑判決を言い渡しました(※罰金刑も併科)。
判決年月日や管轄裁判所は公表資料では明示されていませんが、本件は令和4年中に地裁レベルで言い渡されたものです。
被告人は個人投資家(副業的にFX取引を行っていた者)と思われ、前科がありながら犯行を繰り返した点に強い非難が集まりました。
なお、犯行態様も極めて巧妙で、数十もの口座を使った所得秘匿工作は「偽りその他不正の行為」にあたる悪質性が高い事案といえます。判決においては、被告人に有利な情状はほとんど認められず、執行猶予は付与されませんでした。
~次回は実刑判決になった事例などを紹介します~
【制度解説】消費税などを脱税したとされ起訴された役員

法人税や消費税を脱税したとして在宅起訴された会社役員に関する報道における、主に消費税法違反の点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 報道の内容
令和7年6月27日付で、次の報道がなされていました。
「福岡市で建築関連会社を経営していた役員が、自身が関わる複数の会社で架空の外注費を計上し、所得を隠すなどして法人税や消費税およそ1億4700万円を脱税したなどとして、福岡地方検察庁に在宅起訴されました。」
「福岡地方検察庁によりますと、2021年までの3年間に福岡市の建築関連などの3つの会社の所得を隠し、法人税や消費税などおよそ1億4700万円を脱税したほか、消費税など330万円の還付を不正に受けたとして、法人税法違反などの罪に問われています。
3つの会社はいずれも」当該「役員が業務を統括し、架空の外注費を計上するなどしていたということで、福岡国税局が福岡地検に告発していました。
検察は認否について明らかにしていません。」
NHK NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/fukuoka-news/20250627/5010028720.html(令和7年6月27日)
2 消費税法違反について
報道によりますと、告発された薬院が、会社の所得を隠し、法人税や消費税を脱税したとされています。
消費税とは、たとえば、日本国内において、事業者が行った資産の譲渡等(ここには、役務(サービス)の提供も含まれます。)に対して課されるものです。
今回のような建築関係の会社ですと、たとえば、壁を塗装するというサービスを提供する際に、その対価として代金を受け取ることになりますが、そこに、消費税が課されることになります。
しかし、たとえば、その壁を塗装するというのを、別の会社に外注した場合、外注した会社は、外注費(ここにも消費税が発生します)を払うことに加え、上記のように、消費税も支払わないといけないことになりそうです。
このようにいわば2重に払うことになるのを防ぐために、その外注費に含まれていた税額(仕入税額などと呼ばれます。)は控除、つまり、その分の税金は、本来支払うべき消費税から差し引かれ、支払わなければならない消費税も減るということになります。
報道の会社は、架空の外注費を計上していたということですので、本来、差し引かれるべきではない金額も差し引いていたことで脱税をしているのではないかと扱われているものと思われます。
3 消費税法違反として起訴された場合、今後どうすべきか
報道のように、消費税法違反として起訴された場合、まずは、事実関係を確認する必要があります。
外注費が架空のものであったのか、仮にそうだったとして、架空ものを計上している認識があったのかなど、様々な点を確認する必要があります。
また、仮に、架空の外注費を計上し、その認識もあった場合、本来納めるべき税金に加え、ペナルティとして納めるべき税金というのが発生します。
そこで、納めるべき税金を納めていくことを検討する必要がありますが、会社に潤沢な資産があれば別ですが、納めるべき税金を直ちに全部納めることができないとなると、どの税金から納めていくべきかということを検討する必要があります。
報道のように脱税をしたとして起訴された場合であっても、その後、検討すべき事項、対応すべき事柄は多くありますので、その点については、弁護士のアドバイスをもとに進めていく必要があります。
4 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。法人税違反や消費税違反で起訴された方、その他脱税に関して不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
消費税不正還付事案の紹介と対応④(4/4)

消費税の不正還付事案について、手口や告発事例、不正が発覚した場合の対応などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がシリーズで解説します。
最終回、第4回目の今回は、税務調査の流れと不正が疑われた際の対応について解説します。
税務調査の流れ
税務調査は、納税申告内容の正確性を確認するために税務署等が行う検査です。消費税の還付申告を行う事業者は特に注意が必要で、申告内容に不審な点があれば調査の対象となる可能性があります。調査は大きく分けて2段階あります。
①任意調査(通常の税務調査)
まずは税務署による任意の調査が行われます。調査官から帳簿や請求書の提出を求められたり、ヒアリングを受けたりする形で進みます。還付申告の場合、特に仕入れや輸出の記録について詳細に確認されるでしょう。
ここで事実と異なる申告が見つかった場合、修正申告を求められ追徴課税(加算税を含む)を受けることになります。
重要なのは、この段階ではまだ刑事手続きではないため、調査官の質問等には可能な限り誠実に対応し、不審を持たれる行為(記録の廃棄、改ざんなど)は絶対にしないことです。
仮に申告ミスや誤りに気付いた場合は、調査が本格化する前に自主的に修正申告を行い不足税額を納付することで、重加算税の免除や告発の回避につながる場合もあります。「うっかりミス」と「悪質な仮装・隠蔽」では当局の対応も大きく異なりますので、意図的な不正でなくとも迅速に正す姿勢が肝心です。
②強制調査(査察調査)
調査の結果、悪質な仮装・隠蔽が疑われ、金額も大きい場合には、税務署レベルから国税局査察部(マルサ)に案件が引き継がれ、刑事告発を見据えた強制調査が行われます。
査察調査では裁判所の令状に基づき家宅捜索や帳簿・PCの押収などの強制力をもった調査が実施され、関係者に対する取り調べも行われます。
この段階に至った場合、基本的に事件は刑事告発→起訴へ進む前提で調査が行われます。一年間にわたる内偵・強制調査の末に告発となるケースもあり、調査期間中は関係者は長期間に及ぶプレッシャーに晒されることになります。
不正が疑われたときに取るべき対応
まず第一に「証拠隠しや虚偽説明は厳禁」です。
不正の事実をごまかそうとして帳簿を改ざん・廃棄したり、関係者に口裏合わせを指示したりすれば、かえって仮装・隠蔽の意図を明白に示すこととなり、情状は悪化します。調査官からの質問には事実関係を確認しつつ慎重に答える必要がありますが、自身で判断が難しい場合はその場で無理に断定せず、「後日資料を提出させてください」など柔軟に対応しましょう。
任意調査の段階で専門家の助言を受けることも検討すべきです。税理士や弁護士は、調査官とのやり取りに同席したり資料提出の代理をしたりといったサポートが可能で、適切な対応によって調査官の心証を害さず誤解を解く助けとなります。
もし既に査察部による強制調査に入ってしまった場合は、速やかに弁護士に連絡することが肝要です。強制調査では逮捕・起訴の可能性が現実味を帯びるため、以降は刑事弁護の視点で戦略を立てる必要があります。自宅や事務所への家宅捜索が入った時点で、「これは単なる税務調査ではなく刑事事件になるかもしれない」と覚悟し、すぐに刑事弁護に明るい弁護士に相談してください。
弁護士の役割と早期相談の重要性
消費税の不正還付に関する疑いをかけられた場合、早期に弁護士に相談することが極めて重要です。不正還付は単なる税務上の違反にとどまらず、刑事事件へと発展する可能性が高い性質を持ちます。特に査察(マルサ)の強制調査が入った段階では、もはや専門家の助力なしに適切に対応することは困難です。
何より大切なのは早めの段階で相談することです。査察が入った段階から弁護士に相談し今後の対応を協議・準備しておけば、逮捕や起訴を避けたいという要望に沿って適切な対策を打つことができます。
逆に対応が後手に回ると、取り調べで不利な供述をしてしまったり、押収された証拠に適切な反論ができなかったりと、防御が難しくなります。「もしかするとまずいことをしてしまったかもしれない」「税務署から問い合わせが来ている」「周囲で同様の調査が入った」という段階でも、疑いがあるなら一刻も早く専門家に相談するのが得策です。
弁護士は依頼者の権利と利益を守るプロフェッショナルです。不正還付の疑いをかけられた場合、事実関係の如何にかかわらず、独断で動くのではなく必ず専門家の力を借りてください。それが、最終的にリスクを最小限に抑え、企業経営や人生を立て直すための第一歩となります。
まとめ
以上、消費税の不正還付の典型的手口から具体例、処罰の内容、そして発覚時の対応まで詳しく説明しました。不正還付は一時的に資金繰りを潤すように見えても、発覚すれば取り返しのつかない損失とリスクを招きます。適正な申告と納税が企業経営の大前提であり、万が一にも疑わしいスキームに手を出さないことが肝要です。万一、「これはもしかして…」と後になって気付いた場合や、税務署から問い合わせや調査の連絡が来た場合には、できるだけ早く信頼できる専門家(税理士・弁護士)に相談し、適切な対応をとってください。それが自身と会社を守る最善の策と言えるでしょう。
消費税不正還付事案の紹介と対応③(3/4)

消費税の不正還付事案について、手口や告発事例、不正が発覚した場合の対応などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がシリーズで解説します。
第3回目の今回は、不正還付が発覚した場合のペナルティ(刑事罰・行政処分)について解説します。
不正還付が発覚した場合のペナルティ①追徴課税
不正還付が明るみに出た場合、極めて厳しいペナルティが科されます。
まず、騙し取った還付金は全額返還させられるのは当然として、追徴課税として重加算税などの加算税が課されます。重加算税とは、納税者が仮装・隠ぺい(意図的な事実の偽装や記録の隠蔽)によって税金を免れようとした場合に科される最も重いペナルティ税で、本来納めるべき税額の35%(重加算税率は原則35%ですが、期限後申告や無申告の場合は40%とされる場合があります。また消費税の還付申告に係る特例措置として加算税率引上げが行われた時期もあります。具体的な適用税率は違反時期の法令によります。)が追加で課されます。
例えば実際にあった架空輸出事件では、不正還付額約3,300万円に対し重加算税を含む追徴税額が約4,400万円と公表されており、重加算税だけで約1,100万円(元の不正額の約33%)が上乗せされている計算になります。過少申告加算税(10~15%)などと異なり、重加算税は「仮装・隠蔽」という明確な不正行為があった場合に適用されるため、企業にとって大きな痛手となります。
不正還付が発覚した場合のペナルティ②刑事罰
次に、悪質なケースでは刑事罰が科される可能性があります。
国税局の査察調査によって「告発相当」と判断された事案では、検察庁に告発され、加害者(法人および経営者等)は刑事裁判にかけられます。
消費税法には脱税や不正受還付に対する罰則規定があり、「偽りその他不正の行為」により消費税を免れたり不正に還付を受けた者は「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(もしくはその両方)」に処せられると定められています。これは他の税法違反(法人税法・所得税法等)と同等であり、刑法上の詐欺罪(10年以下の懲役)にも匹敵する非常に重い刑罰です。
実際に、不正還付事件で経営者が逮捕・起訴され、有罪判決を受けた例も数多くあります。多くの場合、初犯で追徴税も納付済みであれば執行猶予付き判決となるケースが見られますが、悪質度や金額によっては実刑判決が言い渡されます。
平成30年度には消費税不正還付事件で代表者に懲役4年6月の実刑が科された例が報告されており、令和4年度にも査察事案全体で3名が実刑判決、うち1件は他の犯罪と合わせ懲役6年の重い実刑判決となっています。
不正還付が発覚した場合のペナルティ③行政処分
さらに、行政上の処分も考えられます。
免税店(輸出物品販売場)の許可を受けている事業者がその制度を悪用した場合、免税販売許可の取消という処分を受ける可能性があります。
例えば前述の免税店不正に関する報道では、東京国税局が虚偽の免税販売をしていた約10店舗の免税店許可を一斉に取り消したことが伝えられています。
許可取消になれば免税販売(外国人向け消費税免税販売)業務は続けられなくなり、事業継続に大打撃となります。
また、不正行為が明るみに出ることで企業名の公表や報道により社会的信用を喪失し、取引先や顧客からの信頼も失うでしょう。場合によっては経営破綻に至るリスクもあります。
続きは第4回で
このように、不正還付が発覚すれば経済的制裁から刑事罰、営業上の許可取消、信用失墜に至るまで多方面の深刻なペナルティを受けることになります。不正は絶対に割に合わないばかりか、経営者自身の人生や会社の存続をも脅かしかねません。
次回第4回(最終回)では、税務調査などの調査の流れと、不正還付を疑われた場合の対応について解説します。
消費税不正還付事案の紹介と対応②(2/4)

消費税の不正還付事案について、手口や告発事例、不正が発覚した場合の対応などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がシリーズで解説します。
第2回目の今回は、国税庁による告発事例を紹介します。
国税庁や各国税局は、不正還付を行った事案について積極的に刑事告発(検察庁に告発)し、その内容を報道発表等で公表しています。以下に、実際に発覚した不正還付の事例をいくつか取り上げ、その手口等を紹介します。
架空の革製品輸出で消費税還付を詐取した事例
大阪国税局は2024年2月、輸出免税制度を悪用して消費税約3,300万円の還付金を不正受給したとして、神戸市の元貿易業の男性を消費税法違反などの疑いで神戸地方検察庁に告発しました。
この男性は、2020年1月〜2022年12月に国内で仕入れた革製品をあたかも海外に輸出したように装い、架空の輸出取引を申告して還付金を受け取っていた疑いがあります。追徴税額(本税と重加算税を含む)は約4,400万円に上り、不正還付額(約3,300万円)を大きく上回る額を徴収されています。
これは架空輸出を用いた典型的な不正還付事件であり、国税局査察部の調査により発覚・告発に至ったものです。
パワーストーン架空仕入れスキームによる還付未遂事件
大阪国税局は令和4年度に、複数企業が共謀したパワーストーン仕入れを装う不正還付未遂事件を告発しています。
この事件では、B社ほか数社が不正指南者の指示のもと、各社の代表者から高額なパワーストーンを購入したと偽り、架空の課税仕入れを計上して還付申告を行っていました。
還付が成功すれば国庫から多額の消費税が騙し取られるところでしたが、税務当局がスキームを解明し、法人および代表者、さらに黒幕である指南役までを含め刑事告発しています。
これは、複数の事業者とブローカー的存在が組んだ組織的脱税スキームの一例であり、国税庁が「重点事案」として対処したケースです。
偽装化粧品輸出(実態は飲料水)による巨額不正還付事件
東京国税局が調査したある事件では、東京都内の化粧品卸売会社が複数の輸出代行業者と結託し、実際には市販のミネラルウォーターを高級化粧品に偽装して巨額の輸出取引を装う手口が発覚しました。
この会社は「約2年間で総額370億円相当の高級化粧品を仕入れて輸出業者へ販売した」と虚偽申告し、輸出業者側は「その化粧品を香港に輸出した」として消費税の還付を受けていたのです。
しかし税務調査の結果、実際に取引されていたのは市価が僅かなボトル飲料水であり、売買記録や請求書類はすべて架空と判明しました。
東京国税局はこの会社に対し約35億円もの追徴課税(還付された消費税約30億円+重加算税等)を行い、共謀した輸出業者約10社にも合計9億円の追徴課税処分を下しました。
この事件は刑事告発に関する報道はありませんが、関与事業者は免税店の許可取消や厳しい行政処分も受けています。
実際、東京国税局は2023年2月までに同様の不正を行っていた都内の免税店約10店舗の免税販売許可を剥奪する処分を行っています。
その他の事例
上記以外にも、免税店で架空の外国人客に大量購入させたよう装うケース、輸出用の中古車台数を水増しして申告した中小企業の事件(2016~18年で約1.39億円の不正還付、2021年に名古屋地検が社長ら逮捕)など、不正還付の事例は全国で報告されています。
いずれも共通するのは、「実態のない取引」を作り出すことで消費税の計算構造を逆手に取り、還付という形で税金を不正に入手しようとする点です。
国税当局はこうした事案に対し、精密な取引追跡や帳簿類の押収・解析を駆使して実態解明を行い、悪質性が高いと判断すれば積極的に刑事告発しています。
続きは第3回で
今回は消費税不正還付に関して国税局が実際に告発した事例を紹介しました。
第3回では、不正還付が発覚した場合のペナルティについて解説します。
消費税不正還付事案の紹介と対応①(1/4)

消費税の不正還付事案について、手口や告発事例、不正が発覚した場合の対応などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がシリーズで解説します。
第1回目は、消費税不正還付の概要と、よくある不正還付の手口について、解説します。
消費税の不正還付とは?
消費税の不正還付とは、本来受け取る資格のない消費税の還付金を、虚偽の申告など不正な手段によってだまし取る行為です。
消費税は事業者が売上に係る消費税(預かった消費税)から仕入れに係る消費税(支払った消費税)を差し引いて納税し、不足があれば還付を受けられる仕組みです。
例えば、事業が赤字の場合や大きな設備投資をした場合、そして輸出取引を行う場合(輸出免税)には、支払った消費税が預かった消費税より多くなり、差額の還付を受けられます。
しかし、この制度を悪用して虚偽の取引をでっち上げ、本来は発生していない仕入税額控除(事業者が課税売上に係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除できる制度のこと。仕入れや経費で支払った消費税を差し引けるため、輸出取引のように売上の消費税が少ない場合は還付(払いすぎた税の返還)を受けることができる。)を水増しすることで還付金を騙し取る事例が後を絶ちません。
国税庁もこのような不正受還付事案は「いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案」であると位置付けており、重点的に摘発しています。平成30年度(2018年度)には過去5年で最多の6件・総額14億円規模の消費税不正還付事案を告発し、消費税不正還付事件で懲役4年6月の実刑判決が言い渡された例もあります。
近年も摘発件数は増加傾向にあり、令和4年度(2022年度)は16件もの不正還付事案が刑事告発されるなど、国税当局は厳しい姿勢で臨んでいます。
よくある不正還付の手口
消費税の不正還付は、主に仕入税額控除制度や輸出免税制度といった仕組みの盲点を突いて行われます。典型的な手口をいくつか紹介します。
①架空の輸出取引をでっち上げる(輸出免税の悪用)
輸出取引は消費税が課税されないため(輸出免税制度)、輸出業者は国内で仕入れた商品の消費税分を国から還付してもらえます。
この仕組みを悪用し、実際には存在しない輸出を装って還付を受けるケースがあります。
例えば、事業者が架空の輸出売上を計上し、本当は国内で消費されている商品を「海外に販売した」ことにして消費税の免税を受ける手口です。実際に、大阪国税局が告発した事例では、日用品の輸出販売等を行うA社が、不正協力者と共謀し、存在しない化粧品の仕入れをでっち上げ(架空の課税仕入れ)た上で、それら化粧品を輸出物品販売場(免税店)で外国人観光客に販売したように見せかけることで架空の免税売上を計上し、不正に消費税の還付申告を行っていました。
近年では、偽造した書類や他人のパスポート情報まで利用し、同じ高級腕時計を何度も輸出したように偽装する、あるいはコンビニの商品について偽のパスポート情報で免税販売記録を作成するといった巧妙なケースも発覚しています。これらはいずれも存在しない輸出(または免税販売)を装って仕入税額控除を受け、還付金を騙し取ろうとする悪質な手口です。
②架空の仕入取引を計上する(仕入税額控除の水増し)
もう一つ多い手口は、架空の仕入をでっち上げて支払った消費税を水増しし、還付額を吊り上げる方法です。
消費税の仕入税額控除とは、仕入や経費にかかった消費税額を売上にかかる消費税額から控除できる制度のことです。
不正行為者は、この控除額を大きく見せるために実際には購入していない商品を購入したことにし、偽造請求書や架空の領収書を用いて虚偽の申告を行います。
例えば、不正指南役の人物が複数の法人に「パワーストーンを仕入れたことにせよ」と指示し、各社が代表者個人からパワーストーンを購入したかのように仮装取引を行って架空の課税仕入れを計上したケースがあります。このケースでは、還付を受けようとした複数法人とその代表者だけでなく、スキームを考案した指南役まで含めて国税庁に告発されました。
また、キャッシュレス決済端末の販売会社が、仕入れた端末の台数を水増しして申告することで約2,400万円もの不正還付を受けていた疑いが明らかになっています。
このように架空仕入れによる水増しは、単独の会社でも行われますが、時には複数の事業者がグルになって架空の売買ネットワークを作り上げ、大規模な不正還付スキームに発展することもあります。
続きは第2回で
今回は消費税不正還付の概要とよくある手口について解説しました。
第2回では、国税庁による消費税不正還付の告発事例を紹介します。
【報道解説】法人税法違反等の容疑で弁護士が逮捕

法人税法等に違反した疑いで,東京地検特捜部が法律事務所代表の弁護士を逮捕した事件報道について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
報道内容
架空の経費を計上して約2700万円を脱税したとして,東京地検特捜部は弁護士の男性を法人税法違反などの容疑で逮捕した。認否は明らかにされていない。特捜部によると,同弁護士は自身が代表を務める都内の法律事務所の業務に関し,架空の業務委託費を計上するなどして2017年12月期と19年12月期の法人所得約1億1100万円を隠し,法人税と地方法人税計約2700万円を免れた疑い。同弁護士の法律事務所では債権回収を請け負っており,関係者によると,架空計上したのは債権回収の相談電話に関する業務委託費という。
(朝日新聞 令和6年11月15日付記事 一部改変)
https://www.asahi.com/articles/ASSCH1DFVSCHUTIL00GM.html
事案解説
本件では,法人税法違反等を理由に東京地検特捜部が関係者の逮捕に踏み切っています。架空の業務委託費を計上するという,脱税のスキームそのものはそれほど珍しいものではありませんが,本来は法律の専門家として高度の遵法姿勢が求められる弁護士に脱税の疑いが生じ,逮捕にまで至ったという点が大きな特徴といえます。
脱税事件と逮捕
法人税法をはじめとする各種税法に違反した脱税事件では,本件のように逮捕がされることがあります。もっとも,あらゆる脱税が刑事事件と扱われるわけではありません。主として税務署が対応する税務調査や国税局による査察調査の段階では刑事事件化はしていないため,逮捕されることもありません。
他方,査察調査を行った国税局が検察庁に対して告発を行って以降は,刑事事件として取扱われます。本件のように関係者が逮捕されることもありますし,検察官が起訴判断を行った場合は,刑事裁判を受けることにもなります。刑事裁判で有罪判決が言い渡されてしまうと,関係者への懲役刑や法人への多額の罰金が刑罰として科せられます。
脱税事件で逮捕されやすいケース
国税局から検察庁への告発がされて刑事事件となった場合でも,逮捕されるケースとそうでないケースに分かれます。明確な線引きがあるわけではありませんが,脱税額や脱税に及んでいた期間,脱税スキームの悪質さ等の事情によって逮捕のリスクは変わってきます。これらの事情は,検察官に起訴されて刑事裁判となった際に実刑判決が言い渡されるか否かについても影響してきます。
その他の事情として,脱税を行った主体によっても逮捕リスクは変わり得ます。本件のように,高度の遵法姿勢が求められる弁護士が脱税の主体となった場合も,逮捕リスクは高くなると考えられます。類似のケースとして,税務の専門家である税理士が脱税スキームに加担していたケースで,逮捕にとどまらず実刑判決が言い渡された裁判例も存在します。
脱税事件で逮捕されないか不安な場合は
ここまで述べたとおり,脱税事件で逮捕がされるか否かは,様々な事情によって決まることになります。もっとも,脱税に関与してしまった場合,逮捕リスクがあるか否かを自ら判断するのは困難です。そのため,専門家の判断や助言は欠かせません。
税務の専門家である税理士に相談することももちろんですが,逮捕の可能性は刑事手続に関わるものであるため,法律の専門家である弁護士による判断も極めて重要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,脱税事件での相談を初回無料で行っています。WEBによる遠隔相談にも対応しておりますので,脱税事件を理由に逮捕がされないかご不安な場合は,是非とも弊所までご相談ください。早期の対応が逮捕リスク自体を回避することにもつながります。
(https://datsuzei-bengoshi.com/soudan/)
法人税脱税事件の実刑判決事例紹介

日本では脱税事件の有罪率は極めて高いものの、多くは執行猶予付き判決にとどまり、実刑(執行猶予なしの懲役刑)が言い渡されるのは脱税額が巨額であったり常習性がある場合です。法人税に関する脱税で実刑判決に至った代表的な事例を、概要と判決内容・量刑理由とともに紹介します。
銀座「丸源ビル」オーナーによる10億円超の法人税脱税事件(2018年)
事件概要: かつて「銀座の不動産王」と呼ばれた「丸源ビル」オーナーは、自身が社長を務めていたビル管理会社のテナント賃貸収入の一部を除外する手口で、2011~2013年の3年間に計約35億円の所得を隠し、法人税約10億6000万円を免れたとして起訴されました。被告人は初公判で全面否認し、公判中に弁護団を何度も交代するなど長期裁判となりました。
判決内容: 東京地方裁判所は被告人に対し懲役4年及び罰金2億4000万円の実刑判決を言い渡しました(求刑は懲役5年・罰金3億円)。判決理由で裁判長は、「脱税規模は極めて大きく、所得隠しの手口も巧妙。被告は売上や経費を自身の思うままに操作し、納税義務をないがしろにした」と被告人の犯行態度を厳しく非難しました。巨額かつ悪質な脱税であること、起訴後も反省や納税が見られなかったことが実刑・長期懲役の主因となりました。
税理士による法人税脱税ほう助事件(2020年)
事件概要: 税理士で会社社長の被告人は、首都圏の2社が所得隠しを行って法人税の納付を免れた際、その事実を知りながら自らの管理する会社名義の口座に架空名目の資金を入金させる方法で脱税を手助けしました。具体的には、2社が計上した架空の雑損失や不動産手数料の支払いを装って、被告人の会社口座に資金を迂回入金させることで、両社の所得隠しを容易にしていたとされます。被告人は過去にも同様の法人税法違反ほう助で有罪判決(執行猶予付き)を受けており、その執行猶予期間中に再び本件犯行に及んでいました。
判決内容: 東京地方裁判所で判決が言い渡され、被告人に懲役10か月および罰金800万円の刑が科されました。全国で初めて法人税法違反のほう助犯に対して実刑判決が出たケースでもあります。量刑理由としては、過去の前科があり執行猶予中の再犯だった悪質性が決定的でした。裁判所は「一度有罪判決を受けながら再び脱税ほう助に及んだ点は看過できない」として、再犯抑止の観点から実刑が相当と判断したものとみられます。
まとめ
国税庁の公表データによれば、近年の脱税事件で実刑判決にまで至るケースは毎年数件程度です。例えば令和5年度中に一審判決があった脱税事件83件では、うち9人(約11%)が実刑判決を受けています。実刑となる懲役期間の平均は約16ヶ月で、最長は前述の銀座ビルオーナー事件の懲役4年でした。一般に「ほ脱額が合計3億円を超える場合には、全額納付していても実刑判決となる場合が多い」とも言われており、巨額・悪質な脱税には厳罰が科される傾向があります。実刑判決が確定すればただちに服役が必要となり、執行猶予付き判決と比べて社会的制裁も一層深刻なものとなります。 脱税を疑われた場合には、早期に弁護士に相談し、実刑判決という重い判決を受けることがないように活動してもらいましょう。
【事件解説】東京国税局が投資セミナー企画会社と同社の代表取締役を告発

投資セミナー企画会社と同社の代表取締役を東京国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件の概要
法人税と地方法人税計約2900万円を脱税したとして、東京国税局査察部が、投資セミナー企画会社であるA社と同社の代表取締役であるB氏を法人税法違反などの疑いで東京地検に告発したことが、令和7年4月24日、関係者の取材でわかりました。
関係者によりますと、A社はB氏が講師を務める受講料100万円の「投資家育成講座」を開催。B氏は、複数のユーチューブチャンネルも運営しており、登録者は計約470万人に上っていました。
同社は、受講料の一部を休業中の関連会社の預金口座に振り込ませ、売上を過少申告し、2022年9月までの2年間で、約1億2000万円の所得を隠し、法人税、地方法人税計約2900万円を脱税した疑いがあります。脱税で得た資金は暗号資産や株の購入などに充てていたとのことです。
(2025年4月24日、時事通信社会部の記事より。一部改変)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025042400551&g=soc
本事件では、法人税だけでなく、地方法人税も脱税したという疑いで東京地検に告発がなされています。
地方法人税とは
法人税と異なり、地方法人税については聞いたことがないという方の多いのではないかと思います。
地方法人税と聞くと、地方に納める税金のように聞こえますが、この税金は国に納めるものです。法人が地方法人税創設以前に地方公共団体に納めていた法人住民税のうち、その一部は国に納税するように変更されました(平成26年度税制改正において創設)。これが地方法人税です。
もともとは、消費税を増税するとモノがたくさん売れる大都市部ほど、地方消費税の税収が増えます。そうすると、ますます地方との税収格差が広がってしまうということから、自治体間で税収にばらつきが生れないように、地方税である法人住民税の一部を国が集めて、地方に再分配することにしたのが地方法人税なのです。したがって、地方法人税として徴収した税金は国から各自治体に分配する地方交付税の原資に直接組み入れられます。
このように地方法人税が創設されたものの、あくまで法人住民税の一部の納付先が地方公共団体ではなく、国に変更されたにすぎませんから、トータルでは法人の税負担が増えるということはありません。
企業が法人税の確定申告を行ったら、同時に地方法人税の確定申告も完了する仕組みになっています。
現在、地方法人税の税率改正によって、令和元年10月1日以降に開始する事業年度から地方法人税は法人税額の10.3%になっています。
まとめ
今回は、実際報道されている事件をもとに、解説しました。
既に述べましたように、法人税と地方法人税とは一体のものであり、法人税の脱税が疑われれば、本件のように同時に地方法人税の脱税も疑われるという関係にあります。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
ひとたび告発された場合には、起訴される可能性は極めて高率です。したがって、本件のような事案の場合、国税局の査察部の査察調査が入った時点で、早急に弁護士に相談して告発を避けるための活動をしていくべきです。 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で承っていますので、早急にお問い合わせください。
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