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税務調査の事前通知

2025-05-14
税制度

税務署から税務調査を実施するとの連絡が来た事例を参考に、税務調査の事前通知に関して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 参考事例

東京で飲食業を営むXさんのもとに、新宿税務署から、8月1日午前9時頃より、所得税に関する調査を行う旨の連絡が来ました。
突然の連絡に不安に思い、知り合いから弁護士に相談してみてはどうかと言われ、法律相談に訪れました(事例はフィクションです。)。

2 税務調査における事前通知

税務調査とは、たとえば、確定申告した内容に誤りがないのか、誤りがあるのであれば本来納めるべき税金を納めるようにするために、納税義務者等に対し、質問をしたり、資料の提示・提出を求めたりすることをいいます(国税通則法[以下、「法」といいます。]74条の2以下)。
税務調査を行うにあたって、税務署長等は、税務署職員等に税務調査を行わせる場合には、原則として、あらかじめ、対象となる納税義務者に対し、一定の事項(税務調査を開始する日時や場所、調査の目的や調査の対象となる税目など)を通知するものとされています(法74条の9第1項)。
これは、事前に通知をし、抜き打ち的な調査をさせないことで、税務調査までに準備させる機会を与えようという考え方に基づくものです。
事前通知につきましては、国税庁のホームページも参照してください。
https://www.nta.go.jp/information/other/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm

3 事前通知が来てから税務調査までにできること

管轄の税務署から通知が来た場合、通知を受けた側としては、次のようなことをすることが考えられます。

まず、通知において日時が指定されるわけですので、業務や私生活に支障が出ないように、スケジュールを調整することが考えられます。
場合によっては、税務署に対し、日程を別の日に変更してもらうように相談することも考えられます。

また、帳簿等の準備をすることも重要です。
当たり前かもしれませんが、仮に、脱税をしており、事前通知があったからといって隠蔽工作をする機会をもらったわけではありません。
しかし、調査がスムーズに実施されるように、提示が求められそうな資料をまとめておいたり、こちらから説明する際に必要な資料を準備しておくことは重要です。

さらに、そうした準備とも関係しますが、税理士などの税務代理人がいない場合には、税務代理人を就けたり、税務調査に立ち会わせたりすることも考えられます。
税務調査の事前通知は、一定の場合には、納税義務者ではなく、税務代理人に対して行えば足りるとされています(法74条の9第5項)ところ、参考事例においては、Xさん本人に通知があり、まだ税理士などがいないことが想定されます。
税務調査において、税務署側に、適切な説明を行うことで、あらぬ疑いをかけられることを防ぐことができます。
このとき、より法律的な説明が必要になる場合には、税理士ではなく弁護士(あるいは両方)をつけ、税務調査に対応していくということが考えられます。

4 最後に

ここまで説明してきたように、税理士や弁護士を税務調査に関与させていくということが考えられます。
しかし、そもそも、仮に脱税をしてしまっていた場合において、今後、どのような手続が予想されるのか、税務調査で終わらず刑事裁判となる可能性があるのか、そうした可能性があるとしてもどのような対応をしていくか、早い段階でアドバイスを受けておくというのも重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。税務調査の事前通知が来た、脱税をしたかもしれない、国税庁から告発され刑事事件化するかもしれないと不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【報道解説】法人税法等違反で東京国税局査察部が告発 脱税事件と刑事手続について

2025-05-07
告発

法人税法等に違反したという理由で東京国税局査察部が告発を行った事件報道について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

報道内容

架空の外注費を計上し,法人税など約6100万円を脱税したとして,東京国税局査察部が法人税法違反などの容疑で,都内のイベント企画会社と同社代表取締役を東京地検に告発した。関係者によると,同社は2023年8月期までの3年間で,約1億8000万円の所得を隠し,法人税など約4600万円を脱税した疑いが持たれている。また,20年9月~23年8月,消費税など約1500万円を脱税し,約400万円の還付を受けた疑いもある。同社と取引のない法人や実在しない人物の名義で請求書を捏造し,架空の外注費を計上していた。代表者は取材に対し,「(脱税は)悪いことだと分かっていたが,会社の運営資金のためにやらざるを得なかった。既に修正申告や納付は済ませている」と話した。

(時事通信 令和7年4月9日付記事 一部改変
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025040900611&g=soc)

事案解説

本件では,架空の外注費計上という典型的な手法で法人税等の脱税が行われています。脱税額は4000万円を超えており,金額的にも国税局による告発ラインにあがっていると考えられます。また,国税局が重点案件として調査対象としている,消費税の不正還付も問題とされています。

脱税事件と刑事手続

いわゆる脱税事件では,税務署が主体となる税務調査や,国税局による査察調査が行われます。税務調査や査察調査の段階で終了した場合は,刑事事件となることはありません。
これに対して,査察調査を終えた国税局が検察庁に告発を行った場合,刑事手続に移行することになります。捜査として検察官による取調べが行われるほか,場合によっては逮捕がされることもあります。検察官が起訴に踏み切った場合は刑事裁判となり,有罪の場合は懲役刑や多額の罰金刑が言い渡されます。

刑事手続を回避するためには

逮捕や起訴を伴う刑事手続に移行してしまうと,それまでの査察調査とは比較にならないほどの不利益を被ることになります。そのため,税務調査や査察調査にとどまっている段階で,早期に刑事事件の対応に詳しい弁護士へ相談や依頼を行う必要があります。
報道内容によると,代表取締役は脱税の事実を認めて修正申告を済ませているようですが,ここにも刑事手続におけるリスク回避のヒントがあります。例えば,脱税の事実を認めていることは,反省の態度を示すことになりますし,修正申告や予納を行うことにもつながります。脱税額にもよりますが,事実を認めていることは証拠隠滅の可能性にも関わるため,告発後の逮捕リスクを低減させる事情になります。
もちろん,ケースによっては脱税となるか否かを争わざるを得ない場合もあると思いますが,その主張が法的に通る見込みがあるかどうかは,早い段階で弁護士に相談しておくことが肝要です。
修正申告や予納の事実も,逮捕リスクの低減につながります。報道事案では既に告発がされていますが,脱税の手法や額によっては,早期に修正申告や予納を済ますことで,告発そのものを回避できるケースもあります。

早期対応がリスク回避につながります

ここまで述べたとおり,脱税事件として刑事手続へ移行することを回避するポイントは複数存在します。大切なことは,脱税となってしまうかどうかについて自ら判断してしまうのではなく,専門家の意見を確認することです。金額等の事情から告発や起訴も見込まれる事件については,税理士に加えて刑事事件に詳しい弁護士からも助言を得ることが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,脱税事件での相談を初回無料で行っています。WEBによる遠隔相談にも対応しておりますので,査察調査等が始まってしまった場合は,弊所へご相談ください。
(https://datsuzei-bengoshi.com/soudan/)

法人税脱税手口の傾向と分析

2025-04-30
告発

前回まで東京国税局が法人税法違反で告発した事例を過去10年間分見てきましたが、今回はそこから見えてくる脱税の手口と傾向について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

脱税の手口

過去10年の告発事例を通じて、脱税の手口は概ね「売上の除外(収入隠し)」と「架空経費・架空原価の計上」に大別できます。建設業や不動産業では下請代金の循環取引や架空発注による原価水増し、IT・サービス業では架空外注費の計上による利益圧縮が典型です。現金商売の業種(クラブ、飲食店など)では売上の一部を現金でプールして申告しない手口も根強く、実際「鬼滅の刃」制作会社の事件ではカフェ売上を金庫に隠匿する古典的手法で多額の所得を隠していました。

告発が多い業種

業種的には、不正が発覚・告発された件数が多いのは不動産業、建設業、クラブ・バー経営などで、2015年度の全国データでも「建設業15件」「不動産業12件」「クラブ・バー7件」が上位を占めました。東京国税局管内でも不動産・建設関連の告発が目立ち、土地取引や受注工事を巡る所得隠しが後を絶たない状況です。一方で近年はIT企業やコンテンツ産業(アニメ制作会社など)も告発事例が散見され、脱税の摘発対象が新分野にも広がっていることがわかります。

脱税額の規模

脱税額の規模について見ると、1件あたりの脱税額は平均で数千万円から1億円程度です。平成27年度には全国平均で約9,700万円(告発分)でしたが、その後若干減少しつつも、おおむね1件あたり1億円前後で推移しています。東京国税局管内では令和4年度の告発事案1件あたり脱税額が9,100万円と全国平均(8,800万円)よりやや高く、首都圏ゆえに金額の大きな悪質事例が多いことを示唆します。実際にここ数年でも脱税額1億円超の案件が複数摘発されており、金額規模の大きな脱税への査察強化がうかがえます。

処分の状況

処分の状況については、東京国税局査察部が告発に踏み切るのは悪質かつ多額の事案に限られるため、告発後は原則起訴(刑事裁判)されています。令和元年度のデータでは告発案件の起訴率は約85%に達し、起訴された場合の有罪率はほぼ100%(執行猶予付き判決を含め、全件有罪)となっています。実刑判決が出るケースもあり、例えば平成27年度に一審判決があった133件のうち2件では実刑判決(懲役刑)が科されています。悪質な法人税ほ脱に厳しい姿勢です。不起訴となるケースは極めて珍しく、東京国税局では1991年以降ほとんど例がありません。

総括

総じて、この10年間で東京国税局管内の法人税法違反による告発事例は「伝統的な手口による脱税の摘発」が中心ですが、告発件数は景気動向や社会状況で増減しつつも概ね毎年数十件規模で推移しています。不動産・建設業等の常連業種に加え、新興業種にもメスが入る傾向が見られ、脱税手口もより巧妙化・多様化していると言えます。しかし、国税当局も近年は消費税の不正還付や国際的租税回避スキームなど時流に即した重点分野に対して調査を強化しており、悪質なほ脱には継続して刑事告発を行う方針が示されています。その抑止効果もあってか、直近では脱税総額自体は一時期より低水準に抑えられています。いずれにせよ、「申告納税制度を揺るがす悪質な脱税者には一罰百戒をもって臨む」という東京国税局査察部の姿勢は一貫しており、今後も様々な業種・手口の脱税事案が告発される可能性があります。適正な申告納税の重要性を再認識させるこれらの事例は、経営者にとって他山の石と言えるでしょう。

過去10年の東京国税局が法人税法違反で告発した件数と主な事例②

2025-04-23
告発

東京国税局が過去10年間に法人税法違反で告発した件数や主な事例に関して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。今回は令和になって以降の主な告発事例について取り上げます。

2019年(令和元年度)

法人税法違反の告発件数は29件と増加しました。景気拡大に伴い脱税額も大型化する傾向が見られ、この年は2億円規模の脱税事件が発生しています。例えば、投資用不動産の販売コンサル会社などが2016年7月期~2018年7月期に架空の仕入れ計上で約4億9400万円の所得を隠し、法人税と地方法人税あわせ約1億1,900万円を免れた事件では、東京国税局が同社と経営者らを告発し、その後東京地検特捜部が在宅起訴しました。手口は架空の商品の仕入計上による所得圧縮で、不動産関連業者による典型的な脱税スキームでした。

2020年(令和2年度)

告発件数はやや減少し22件でしたが、有名企業の脱税事件が明るみに出ました。人気アニメ「鬼滅の刃」の制作会社と社長が、2015年と2017~2018年分の売上を帳簿上少なく見せかける手口で約4億4600万円の所得を隠し、法人税約1億1,000万円と消費税約2,900万円を脱税したとして2020年に東京国税局から告発されました。具体的には、アニメ関連カフェ等4店舗の売上金の一部を社長自宅の金庫に保管し申告しないという方法で、不正資金は作品制作資金にも流用されていたとされています。本件は起訴後に社長が法人税法違反罪などを認め、東京地裁で懲役1年8月・執行猶予3年、法人に罰金3,000万円の有罪判決となりました。

2021年(令和3年度)

告発件数は12件と大きく減少しました。コロナ禍で強制調査の着手自体が減った影響とみられますが、それでも悪質な事案は存在します。渋谷区のIT企業役員(インターネット広告代理店経営)が架空外注費を計上して約1億9,000万円もの法人税を脱税した事件では、東京国税局が法人税法違反容疑で告発し話題となりました。同氏は複数の関連会社間で架空取引を装い経費を水増ししており、脱税により得た資金は個人の預金等に留保されていたとみられます。告発後、当局の調査への協力や修正申告が行われたものの、最終的には起訴され有罪判決は免れませんでした。

2022年(令和4年度)

法人税法違反での告発件数は21件に増加しました。手口を見ると、引き続き架空経費計上や売上除外が中心ですが、新たな業種での発覚もあります。東京国税局は2022年6月、ITシステム開発会社とその代表者を、架空の業務委託費計上によって2019~2021年の3年間で約2億1,100万円の所得を隠し法人税約5,100万円を脱税した容疑で告発しました。代表者は取引先名義の偽造請求書を作成して支出を装っており、不正資金は高級時計の購入などに充てられていました。本件は告発発表後、代表者が「申告・納税をほぼ済ませた」とコメントし謝罪する異例の展開となりましたが、悪質性は高く起訴に至ったとみられます。

2023年(令和5年度)

東京国税局管内では約20~25件程度の法人税法違反告発があった模様です(査察全体の告発件数41件のうち約6割が法人税法違反との推計)。業種では引き続き不動産業やIT関連業のほか、国際的な租税回避事案も取り沙汰されています。この年の注目事例として、東京国税局が2023年に大手予備校元社長を約5億7千万円の所得無申告(法人役員報酬の隠匿)で告発した事件や、海外取引を利用した所得隠し事案などが挙げられます。

2024年(令和6年度)

現時点で公表されている情報は限定的ですが、2024年初までに判明した事例として、東京国税局が不動産会社による架空の有価証券売却損計上による法人税約5,100万円の脱税容疑を告発したことが報じられています(告発日は2025年2月26日付)。近年はこのように巧妙な経済取引を装った手口も散見されており、引き続き厳正な査察が行われています。

過去10年の東京国税局が法人税法違反で告発した件数と主な事例①

2025-04-16
告発

東京国税局が過去10年間に法人税法違反で告発した件数や主な事例に関して、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。今回は告発件数の推移と平成30年度までの主な告発事例を取り上げます。

東京国税局による告発件数の推移

東京国税局査察部(いわゆるマルサ)が法人税法違反で検察庁に告発した法人は、過去10年間で毎年20~30件前後にのぼります。2019年度には37件と近年最多水準となり、コロナ禍の影響を受けた2021年度には12件まで減少しましたが、2022年度は41件中21件が法人税法違反事案で再び増加しています。以下、各年の主な告発事例をまとめます。

2015年(平成27年度)

法人税法違反の告発は20件前後とみられます。例えば、不動産業者による架空経費計上で約1億円の所得を隠し、法人税約2,400万円を脱税したケースがあり、東京国税局が不動産会社実質経営者を法人税法違反容疑で告発しました。手口は架空の外注費や経費を計上して所得を圧縮する典型的なものです。告発後、この事案は極めて異例ながら不起訴処分となり(起訴猶予)、東京国税局で告発後に不起訴になったのは約26年ぶりと報じられています
(通常、告発事案はほぼ必ず起訴されています)。

2016年(平成28年度)

告発件数は20件程度で、大口の脱税事件がいくつか告発されています。この年は不動産投資会社グループによる大規模な架空経費計上が発覚しました。東京・中央区の不動産会社など関連2社とその実質オーナーの男性が、架空の業務委託費を計上する手口で約8,400万円の法人税を免れた疑いで告発されています。取引先やダミー会社に一旦支払ったように装い、その資金をキックバックさせる循環取引で所得を隠したもので、不動産業界の悪質な脱税事例として取り上げられました。

2017年(平成29年度)

告発件数は20件弱とみられます。業種別では建設・不動産関連が目立ちました。例えば、土木工事業者が売上の一部を除外し3年間で約3,800万円の法人税を免れた事件や、不動産会社が架空経費によって法人税約5,100万円を脱税した事件などが報じられています。手口はいずれも売上除外や架空経費計上で所得を簿外にプールする古典的なものでした。これらは後に起訴され、裁判で有罪判決が下っています。

2018年(平成30年度)

法人税法違反での告発は18件でした。主な事例の一つに、東京都下水道局から下水管調査業務を受注していた都内の関連会社グループ5社が、売上を一部申告せず2015~2018年に計約1億2,800万円の法人税等を脱税した事件があります。東京国税局はこれら5社と関係者を告発し、隠匿した所得の一部は役員報酬名目で流用されていたと指摘されました。手口は売上除外による所得隠しで、公共事業受注企業による脱税として問題視されました。なお、この年には六本木の高級クラブ元経営者が所得税・消費税約1億円を脱税した事件もありましたが、こちらは法人ではなく個人事業の所得隠し事案です。

日本の輸出事業における消費税還付③

2025-04-09
税制度

輸出事業における消費税還付について、その仕組みなどを複数回にわたって紹介します。3回目の今回は業種による消費税還付の状況や特別なケースの紹介、不正に消費税還付を受けたことにより告発を受けた事例の紹介などを行います。

業種による消費税還付の状況

①製造業の場合
メーカーの場合、製品を海外に輸出すれば売上に対する消費税は0%ですが、生産に必要な原材料費や設備投資には国内で消費税を支払います。輸出比率が高い製造業者ほど、支払った消費税額が預かった消費税額を上回りやすく、多額の還付を受ける傾向があります。
実際、日本を代表する自動車メーカー等の大企業は毎年巨額の消費税還付を受けており、2022年度には輸出大企業上位20社で合計約1兆9千億円もの消費税が国から還付されたとの推計もあります。
②貿易会社の場合
貿易会社でも、例えば、国内メーカーから商品を税込仕入して輸出すれば、仕入時の消費税分が丸ごと還付対象となります。貿易業者にとって消費税還付は重要な資金源とも言え、適切な手続きによりキャッシュフローを確保することができます。
③サービス業の場合
サービス業においても、提供先が海外(非居住者)でサービスの消費が国外で完結する場合は輸出免税が適用されます。
国際通信サービス、国際輸送サービス、海外法人向けのコンサルティングやエンジニアリング、ソフトウェア・デザインの提供、特許やライセンス供与などは非居住者に対する役務提供として消費税が免税になります。
その結果、国内で要した人件費以外の経費(オフィス賃料や機器購入費用など)に含まれる消費税の還付を受けられます。例えば日本のIT企業が海外企業と契約して開発サービスを提供する場合、売上に消費税は発生しませんが、国内で購入したパソコンやソフトウェア、通信費等の消費税は全て控除・還付されます。
一方、旅行業やホテル業など訪日外国人相手のサービスは、そのサービス提供が日本国内で行われ直接便益を享受させるもののため免税にならず、通常通り課税となります。
このようにサービス業でも取引の性質によって消費税の扱いが異なり、国外向けサービスを主とする事業者は輸出産業同様に還付を受けるケースがあります。

特別なケース

特別なケースや過去の事例としては、事業構造や取引形態に起因する消費税還付があります。例えば、設立初年度に巨額の設備投資を行った場合です。工場建設や大型機械の購入などで一時的に多額の消費税を支払うと、売上が立つ前でもその分の消費税は還付申告により取り戻すことができます。実際、赤字や経費過多の場合、預かった消費税より支払った消費税が多くなり還付を受けられます。
また、不動産業でオフィスビル等を購入したケースでは、購入時に支払った消費税がテナントへの課税賃貸料収入より大きければ還付となります。不動産の用途によっては課税売上が見込めず本来控除できないケースもあるため、一部では還付を得る目的で物件の用途変更を行うようなスキームが問題視されたこともあります。この分野について税制改正で調整措置が講じられ、意図的な還付取得を防ぐルールが整備されています。

日本の国税局の告発事例

消費税還付制度を悪用した不正行為に対しては、国税庁が厳しい姿勢で臨んでいます。国税庁によれば、不正は年々巧妙化しており、国税局は消費税還付申告に対する調査を強化しています。
近年明らかになった大規模不正の一例に、調剤薬局チェーンによる架空取引を利用した消費税不正還付事件があります。
このケースでは、処方箋医薬品販売が主で本来は非課税売上(社会保険診療)となる薬局グループが、グループ内で実態のない医薬品売買をでっち上げ、課税売上割合を意図的に引き上げていました。
課税売上割合を水増しすることで、本来控除できないはずの非課税売上対応仕入に係る消費税まで控除し、結果として約16億円もの消費税を不正に還付申告していたのです。
この不正は札幌国税局が関連会社の調査で疑いを掴み、大阪国税局東京国税局と連携した広域調査によって発覚しました。
グループ企業は追徴課税として重加算税を含む約23億円を修正申告し、国税当局から告発される事態となっています。
国税庁全体で見ても、この大阪国税局管内の事例は規模が突出しており、当局が不正還付に警鐘を鳴らす契機となりました。
他にも架空の輸出取引を装った不正還付の事例があります。例えば2019年12月23日の津地方裁判所の判決では、ある企業が存在しない輸出免税売上と架空の課税仕入を計上し、不正に消費税還付を受けていた事実が認定されています。
このように、実際には輸出していないにもかかわらず書類を偽装して還付金を騙し取る手口は過去にも発生しており、国税当局は偽装された輸出許可証や取引請求書の発見に努めています。
不正還付が発覚した場合、消費税法違反(偽りその他不正行為による還付受領)として告発され、裁判で有罪となれば重い罰則が科されます。加えて、追徴税として重加算税が付されるなど経済的不利益も非常に大きくなります。
国税局は近年、還付申告に対する審査を一層厳格化しています。特に高額還付が継続する輸出企業や、不自然な取引を含む申告には重点的に実地調査を実施し、不正の摘発に力を入れています。
国税庁の統計でも還付申告に対する調査件数や追徴事例が報告されており、不正抑止の効果もあってか年々不正件数自体は横這いから微減傾向にあります。
いずれにせよ、正当な輸出取引に基づく還付は適法に受けられますが、虚偽の還付申請は高確率で発覚し告発リスクを伴うことに留意すべきです。適切な範囲で消費税還付制度を利用しつつ、法令遵守のもと健全な資金繰りに役立てることが重要です。

日本の輸出事業における消費税還付②

2025-04-02
税制度

輸出事業における消費税還付について、その仕組みなどを複数回にわたって紹介します。2回目の今回は消費税還付の対象となる事業者や取引の要件、還付受取の方法や期間などについて紹介します。

対象となる事業者の要件

①課税事業者であること
消費税還付を受けられる事業者は、課税事業者に限られます
免税事業者の場合、消費税の申告義務がないため、たとえ輸出取引があっても仕入税額の還付を受けることはできません。
輸出を行う企業・事業者であれば、規模が小さく基準売上高1000万円以下でも、必要に応じて課税事業者選択届出を提出し課税事業者となることで還付申請が可能となります。
これは、輸出で仕入税額が多額になる場合、還付を受けられるよう自主的に課税事業者になる選択が有利となるためです(届出を適用する課税期間開始前日までに提出)。
②仕入税額控除の適用要件を満たすこと
還付を受けるには課税売上に対する仕入税額控除の適用要件を満たす必要があります。具体的には、帳簿及び適格請求書(インボイス)等の保存要件を満たし、課税仕入れについて適法に税額控除できる状態であることが重要です(2023年10月以降インボイス制度開始により、適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件)。
輸出免税となる売上であっても、帳簿・証憑不備で仕入税額控除が否認されると結果的に還付も受けられなくなるため注意が必要です。

対象となる取引

輸出取引の種類については、商品の国外輸送による販売だけでなく、国外向けの役務提供や無形資産の譲渡も含まれます
例えばメーカーが製品を海外顧客に直接販売するケース、商社が国内商品を買い付けて海外に輸出するケース、ソフトウェア企業が海外法人にソフトを提供するケースなどが該当します。これらはいずれも法律上は課税取引扱いで免税となるため、それに要した仕入や経費の消費税は全額控除・還付対象となります。
一方、非課税取引(例:国内の医療、教育、住宅の賃貸、金融など)や不課税取引(給与支払い、寄附など)はそもそも課税対象外であり、対応する仕入税額は控除できません。
輸出取引は非課税ではなく「課税対象だが税率0%」という位置付けのため、国内課税取引と同様に仕入税額控除が可能である点が大きな特徴です。
したがって、輸出売上を有する事業者は、たとえ売上に消費税がかからなくても課税事業者でありさえすれば仕入税額の還付を受けられます
ただし事業者によっては、課税売上と非課税売上が混在する場合もあります。例えば国内で医薬品販売(社会保険診療は非課税)と輸出販売を併営するようなケースでは、非課税売上に対応する部分の仕入税額は控除できないため、その部分は還付対象外となります。
このように、還付を受けられる仕入税額はあくまで課税売上(輸出を含む)に紐づく部分のみである点に留意が必要です。

還付の受け取りの方法や期間

①還付金の受け取り方法
還付金の受け取り方法は、申告時に指定した銀行口座への振込か、ゆうちょ銀行・郵便局窓口での受領の2通りがあります。
一般には口座振込が利用されますが、口座名義は申告者本人または納税管理人名義である必要があります。
②還付金が振り込まれるまでの期間
消費税還付が振り込まれるまでの期間は、申告から概ね1~2か月程度が一般的な目安です。
税務署による申告内容の確認や書類チェックにある程度時間を要するため、還付金の入金完了まで数週間から数ヶ月かかるのが通常です。
ただし、電子申告(e-Tax)を利用した場合は処理が迅速化される傾向があり、早ければ提出後2~3週間で還付されるケースもあります。
実際、繁忙期でない時期にe-Taxで申告書を送信すれば1か月以内に振り込まれる例も報告されています。
一方、2月~3月の確定申告シーズンは事務処理が立て込むため、通常より時間がかかる可能性があります。
資金繰り上、還付金を早めに受け取りたい場合は、できるだけ早期に申告手続きを行い、e-Taxを活用するのが望ましいでしょう。
還付額が継続的に発生する輸出業者では、資金繰りの観点から還付を迅速に受けるための制度活用も有効です。例えば課税期間の短縮特例を利用すると、通常1年ごとの課税期間を四半期毎や月毎に区切って申告できるため、還付発生時期を早めることができます(適用には事前に「課税期間特例選択届出書」を提出し2年間の継続適用が必要です)。

申告期限を徒過した場合の不利益

申告期限は厳守する必要があります。法人の場合、課税期間(事業年度)終了日の翌日から2ヶ月以内が確定申告の法定期限であり、これを過ぎると期限後申告となります。期限後申告でも還付自体は受けられますが、その場合税務上いくつかの不利益があります。
①還付加算金の計算起点の繰り下がり
還付加算金(税務署から支払われる利息相当額)の計算起点が繰り下がります。
通常、適法な期限内申告で還付となった場合、申告期限の翌日から還付される日までの期間について年利により算出した還付加算金が支払われます国税通則法第58条)。
税務署側の処理遅延については、法律上、還付申告に対する還付金は速やかに支払うものとされています。万一、税務署の事情で大幅に還付が遅れる場合には、その期間に応じた還付加算金が付されます。
実務上は申告から1~2ヶ月程度で還付されることがほとんどですが、仮に調査が長引く等で還付が遅れた場合でも、納税者には一定の利息補填がなされる仕組みです。
しかし期限後申告で還付を受ける場合、加算金の起算日は本来の期限ではなく、課税期間終了後2ヶ月経過日や申告書提出日の属する月末などに修正されます。
その結果、期限内申告に比べて遅延した期間分の利息が付かなくなる(事実上、還付が遅れるだけ損をする)ことになります。
ペナルティ
また、期限後申告そのものに対して無申告加算税などのペナルティが課される可能性もあります。
以上から、還付を確実かつ有利に受けるためには申告期限内に正確な申告を行うことが重要です。

日本の輸出事業における消費税還付①

2025-03-26
税制度

輸出事業における消費税還付について、その仕組みなどを複数回にわたって紹介します。初回は消費税還付の仕組みや消費税還付を受けるための要件、申請の手続などについて紹介します。

消費税還付の仕組み

日本の消費税は「仕入れに係る消費税額」を「売上に係る消費税額」から差し引いて納付額を計算する仕組みです。
輸出取引は消費税法上 輸出免税(税率0%)の対象となるため、海外への商品販売や国外向けサービス提供には消費税が課税されません。
したがって輸出売上には消費税が発生しない一方、国内で仕入れや経費に支払った消費税(入力税額)は控除可能であり、売上に係る消費税額より仕入れに係る消費税額の方が大きい場合、その差額が還付されます。
例えば、輸出売上200万円(税抜)に対する消費税0円と、仕入150万円(税抜)に対する消費税15万円では、15万円の還付を受けられます。

消費税還付を受けるための条件

消費税還付を受けるにはいくつかの条件があります。
①課税事業者であること
課税事業者であることが必要です。
前々年度の課税売上高が1000万円以下の事業者(免税事業者)は原則として消費税の納税義務がなく、消費税申告を行わないため還付も受けられません。ただし、免税事業者でも「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる選択をすれば還付申請が可能です。
新設法人も原則初年度は免税事業者ですが、資本金1000万円以上など一定の場合は最初から課税事業者となります。
原則課税で申告計算していること
原則課税で申告計算(課税期間中の課税売上げに係る消費税額-課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額=消費税額)していることも条件です。消費税の簡易課税制度を適用(課税期間中の課税売上げに係る消費税額に、事業区分に応じた一定の「みなし仕入率」を掛けた金額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなして、納付する消費税額を計算)している場合、実額に基づく仕入税額控除が行えず還付を受けられないためです。
③確定申告で還付申告を行うこと
還付を受けるためには該当期間について確定申告で還付申告を行うことが前提となります。
④輸出免税に該当する売上であること
取引面では、輸出免税に該当する売上であることが必要です。
輸出免税の適用範囲には、例えば「日本国内から海外への商品の輸出」「国際運送や国際通信」「非居住者への特許や著作権など無形財産権の提供」「非居住者への役務提供」などが含まれます。
これら輸出取引に該当する売上であれば税率0%となり、対応する仕入税額の還付を受けられます。
ただし非居住者相手のサービスでも、日本国内で直接便益を受けるもの(例:国内での宿泊・飲食提供など)は輸出取引とみなされず課税対象です。
なお、輸出免税の適用を受けるにはその取引が輸出であることを証明する書類を備えることが求められます。

申請手続きや必要書類

消費税の還付は所轄税務署への消費税確定申告を通じて申請します。法人の場合、事業年度終了日の翌日から2か月以内(個人事業主は翌年3月31日まで)に確定申告書を提出する必要があります。
還付申告の際には、以下の書類を提出します。
消費税及び地方消費税の確定申告書(主たる申告用紙)
付表2「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」(売上高に占める課税売上割合や控除仕入税額を計算する明細)
消費税の還付申告に関する明細書(還付となる理由や取引ごとの売上・仕入明細を記載した書類)
確定申告書に還付額を計算の上で提出すると、税務署による内容確認を経て還付金の支払い決定がなされます。
輸出取引による還付を申告する場合、輸出売上に対応する還付額と国内売上に対する納付額をまとめて申告することになるため、輸出事業と国内事業の両方がある場合は申告書上で相殺計算する点に注意が必要です。

還付申告の証拠書類の用意

還付申告の証拠書類として、輸出取引であることを示す資料を準備・保管する必要があります。
輸出する商品のケースでは税関の輸出許可書(税関長の証明付き)を用意しなければなりません。
20万円以下の少額輸出で通常郵便物を使う場合は、日本郵便が発行する引受証明書(品名・数量・価額の記載されたもの)が証拠書類となります。
サービス提供や無形資産の提供など物品以外の輸出取引では、契約書など取引内容と国外提供であることを示す書面が必要です。
これらの書類は申告時に提出を求められる場合もあるため、輸出許可証や契約書類の原本を手元に保管しておくことが重要です。
特に輸出代行業者が輸出手続きを代行した場合でも、自社が還付を受けるには輸出許可書等の原本保管と所定の通知手続きを行う必要があります。
なお、輸出免税の証拠書類や帳簿は7年間の保存義務があります。
消費税の還付申告を行うと、原則として税務署による税務調査や審査の対象となります。
還付申告額が大きい場合や内容に不明点がある場合には、書面照会や実地調査によって輸出の実態や仕入控除の妥当性が確認されます。不備や誤りがあれば還付は認められません。
そのため、日頃から取引証憑の整備や正確な帳簿記録を行い、還付申告に備えることが大切です。

【報道解説】2億7千万円脱税疑い3人告発 相続で名古屋国税局

2025-03-19
告発

相続した財産のうち現金を除外する方法で相続税約2億7千万円を免れた疑いで名古屋国税局から名古屋地方検察庁に告発を受けたという報道をもとに、相続税の計算などについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

報道の内容

相続財産から現金を除外して相続税約2億7千万円を脱税したとして、名古屋国税局は6日、相続税法違反の疑いで、いずれも名古屋市の会社役員、A氏と長男のB氏、次男のC氏を名古屋地検に告発したと発表した。昨年12月13日付。
国税局によると、3人は令和3年1月に死亡した男性の妻子として財産を相続。財産のうち、現金5億5300万円を除外する方法で、相続税約2億7千万円を免れた疑いがあるとしている。
関係者によると、現金の一部を除いた金額を税理士に伝え、申告していたという。
(産経新聞産経WEST令和7年2月6日の記事https://www.sankei.com/article/20250206-PJHUOXYWXJNATEO4LOSFT2JVNU/より一部改変)

相続税とは

人が亡くなると、その亡くなった人の配偶者や子供などに相続が発生します。
相続は亡くなった人の財産や負債(債務)などを、配偶者や子供などに引き継ぐことを言います。
そして、この相続した財産については、相続税が課せられる場合があります。
相続税の課税対象となるのは、亡くなった人から各相続人等が相続や遺贈などにより取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える財産です。
この相続税の課税対象となる金額を「課税遺産総額」といいます。
課税遺産総額を算出するには、相続や遺贈などにより取得した遺産総額から葬式費用や債務などを差し引いた遺産額に贈与を受けていた財産を加味した金額(「正味の遺産額」といいます)を算出し、そこから「基礎控除額」を差し引いて算出します。
基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式で導かれます。
たとえば、亡くなった人に配偶者と子供が2人いた場合、配偶者と子ども2人の合計3人が法定相続人となるため、3000+600×3=4800となり、4800万円が基礎控除額となります。

相続税の計算

課税遺産総額を算出したら、いよいよ具体的に誰がどれくらいの相続税を納めないといけないのかを計算していきます。
各相続人の相続税を計算するには以下の方法によります。

課税遺産総額法定相続分通りに取得したものと仮定して、それに税率を適用して各法定相続人別に税額を計算します。ここで計算された税額の合計額が相続税の総額です。
法定相続分とは、民法が定めている相続人ごとの相続する割合のことで、たとえば、先ほどの配偶者と子ども2人がいる場合であれば、法定相続分は配偶者が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつ相続することになります。

②相続税の総額を、各相続人等が実際に取得した正味の遺産額の割合に応じて按分します。

③②から配偶者の税額軽減のほか、各種の税額控除を差し引いて、実際に収める税額を計算します。
※配偶者の税額軽減とは、配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が1億6000万円までか、配偶者の法定相続分相当額までであれば、配偶者には相続税はかからないという制度です。 なお、配偶者控除を受けるためには、相続税の申告書の提出が必要です。また、正味の遺産額のうち仮装又は隠蔽されていた部分は、配偶者の税額軽減の対象とはならないため、注意が必要です。

報道をもとに実際に計算してみる

それでは、これまでの話を前提として、報道にある現金5億5300万円を妻と子ども2人が相続したと仮定して実際に相続税を計算してみましょう。ここでは、5憶5300万円を課税遺産総額とし、それぞれ法定相続分にしたがって相続したとして計算していきます。

①相続税の総額の計算
法定相続分は、妻が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ということになるため、課税遺産総額の5億5300万円を法定相続分にしたがって按分すると、妻が2億7650万円子どもがそれぞれ1億3825万円となります。
法定相続分に応じた取得金額にそれぞれの税率をかけていくと、妻については2億円を超え3億円以下となっているので、税率は45%です。そのため、2億7650万円×0.45(45%)=1億2442万5000円となります。そして、ここから控除額(累進課税なので控除額が発生)2700万円を控除して、妻は9742万5000円が法定相続分にしたがった税額となります。
子供については、1億円を超え2億円以内なので、税率は40%です。そのため、1億3825万円×0.4(40%)=5530万円となります。そしてここから控除額1700万円を控除して、3830万円が税額となります。
そのため、相続税の総額は1億7402万5000円となります。

②実際に取得した正味の遺産額の割合で按分
今回は、法定相続分で実際にも相続したと仮定するので、①で計算した通り、妻は9742万5000円、子どもはそれぞれ3830万円が税額となります。

③配偶者税額軽減の適用
そして、妻については配偶者なので配偶者税額軽減の適用を受けることができ、今回は法定相続分で相続しているため、妻については法定相続分相当額である9742万5000円が軽減される結果、妻は納めるべき税金額は0円となります。
したがって、今回の場合には、子ども2人がそれぞれ3830万円を納めることで相続税の納付は完了するということになります。
もっとも、配偶者税額軽減を適用するには妻も相続税の申告書を提出する必要がありますので、納めるべき税金が0円であったとしても、妻も子供たちと一緒に確定申告をしておく必要があります。

報道の事例との比較

ここで、報道によれば、免れたと疑われている相続税の額は総額約2億7000万円とされており、先ほど計算した相続税の総額よりも多くなっています。
これは、相続税の税率が法定相続分に応じた取得金額によって変動するため、もし現金を除外していなければ50%や55%といった高い税率がかけられる財産を取得していたと考えられます。
そのため、除外した現金を入れて計算をし直した場合には、より多くの相続税を払う必要があり、報道と先ほど計算した税額に開きがあると考えられます。
また、妻については、現金除外をしている部分について仮想又は隠ぺいしていたといえるため、配偶者税額軽減の適用を受けることができなくなってしまいます。

相続が発生した場合には

相続が発生した場合、お葬式などでバタバタすることになり、なかなか相続税の申告まで気が回らないこともあると思います。
しかし、相続税の申告については、相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が死亡した日)の翌日から10か月以内に被相続人の住所地の所轄税務署に申告・納税をする必要があります。
また、今回紹介した相続税の計算はあくまでも基本的なものであり、様々な軽減制度などもありますので、相続税を計算したり申告する場合には、専門家である税理士や弁護士に相談して、計算や申告を代わりに行ってもらうのがよいでしょう。
相続税の計算については、国税庁のホームページでも紹介されていますので、詳しくはこちらhttps://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_5.htm#haigushakojoもご覧ください。

【制度解説】更正処分に不満があるときには

2025-03-12
税制度

更正処分に不満がある場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 国税に関する処分に不満があるときには

たとえば、個人事業主Aさんが、確定申告をしたところ、その申告書の記載が法律に従っていないとして、税務調査を受け、その後、税務署から更正通知書というものが届きました。
更正通知書には、ごく簡単にいえば、既に行った税務申告に関し、法に照らし適切な税金にどれくらい足りない(または余分)などといったことが記載されています。
Aさんは、自身に届いた更正通知の内容に、不満がある場合、「不服申立て」を行ったり、「税務訴訟」を起こすことができます。

2 不服申立て、税務訴訟の違い

国税に関する処分について、納得がいかない場合、「不服申立て」を行うことができます。
ごく簡単にいえば、税務署長等に、再検討するように申立てをすることをいいます。
これに対し、「税務訴訟」とは、その呼び方からも想像できるように、更正処分の取消しなどを、裁判所に判断してもらうことを求めることをいいます。

不服申立てにおいては、処分の違法性だけではなく、不当性を争うことができます
これに対し、税務訴訟では、処分の違法性のみを争うことができるにとどまります。

そこで、Aさんとしては、更正処分のうち、どのような部分に不満があり、それが処分の違法性として構成できるのか、不当性として構成できるにとどまるのか、はたまた、違法性、不当性いずれも認められないかを判断する必要があり、ここに、税理士や税理士業務を行うことができる弁護士が介入する余地があります。

3 不服申立前置主義

税務訴訟は、原則として、不服申立て(正確には、「審査請求」)を行い、その判断を受けた上でのみ起こすができるとされており、これは不服申立前置主義と呼ばれます(国税通則法115条1項)。
なお、不服申立前置主義にも一定の例外があります。

先ほど説明したような、処分の違法性や不当性といった実体上の問題だけではなく、手続上の問題もあります。

また、税務訴訟においては、自身で対応するか、弁護士に依頼する必要もあります。
こうした手続に関しての問題についても、事案に応じて、どのような手続を選択するか、適切に判断する必要があります。

4 最後に

更正処分がなされ、それに対して不満がある場合、その主張が認められる可能性がどれほどあるのか、どのような手続を選択するべきかなど様々な点について、税理士や弁護士のアドバイスが必要になってきます。
また、更正処分はあくまで適切な税金を納めていないことに対するペナルティであることに対し、事案によっては更正処分とは別に、脱税事件として刑事処分を科される可能性があるものもあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。更正処分を受けたので今後のことを聞きたい、脱税事件として取り扱われる可能性があるのかどうか不安に思っているという方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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