Author Archive
暗号資産と課税

暗号資産(資金決済法の改正で令和2年5月1日より呼称が仮装通貨から暗号資産に変更されました。)取引によって生じた利益は、課税対象となるでしょうか。暗号資産取引によって生じた利益に対する課税について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
Aさんは、今年の4月にビットコイン(4ビット)を200万円で購入しました。その後、ビットコインが値上がりしたので、12月に240万円で売却しました。Aさんは、ビットコインも資産であり、その売却による所得は譲渡所得と考え、また、50万円の特別控除額を控除すると所得は0円になるので、確定申告をする必要はないと考えています。この考えは正しいのでしょうか。
(フィクションです)
解説
譲渡所得にいうところの資産は、他人に譲渡することができる有形、無形の資産を全て含むます。そうすると、ビットコインは、流通し、取引されていることから考えても、資産であることは明白であるように思えます。
しかしながら、現在の国税庁の見解は以下のようになっており、暗号資産取引については注意が必要です。
「問 暗号資産取引により生じた利益は、所得税法上の何所得に区分されますか。
答 暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。
暗号資産取引により生じた損益は、邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益と認められますので、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。
ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合には、次の所得に区分されます。
・暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合・・・原則として事業所得
・暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合・・・原則として雑所得(業務に係る雑所得)
なお、暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合、例えば、事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産を使用した場合には、事業所得に区分されます。」
【令和5年12月25日に国税庁が公表した「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)】
国税庁の見解によると、Aさんは、確定申告をしなければならない。
仮装通貨取引による雑所得には、総合課税が適用されます。
また、仮装通貨の取引では源泉徴収は行われないため、納税者自ら確定申告という手続きを通じて税務署へ申告する必要があります。
本件の事例で,仮にAさんが会社員だった場合でも、仮装通貨取引による利益が20万円を超えるときには確定申告を行う必要があります。
暗号資産取引による所得について確定申告をしていない場合
暗号資産取引では、確定申告が必要であるのに、申告を忘れていたり、申告漏れがあった場合には、確定申告期限前であれば直ちに、申告漏れのない確定申告を行ってください。確定申告後であれば修正申告をする必要があります。
これを怠っていれば、税務調査の対象となり、申告をしていない金額が大きくなれば査察調査の対象となって、更に悪質性が高いと判断されれば刑事事件に発展してしまう場合もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。 初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。
【報道解説】配信で受け取った金銭が収益になる

確定申告をせずに所得税を脱税したとして刑事告発されたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 報道の内容
確定申告をせず所得税およそ7800万円を脱税したとして、神奈川県大和市の女性が東京国税局から刑事告発されました。その女性は、自身をモデルとした成人向け動画を有料の会員制サイトなどで配信し、収益を得ていたとのことです。
引用:NEWSポストセブン(令和6年11月26日配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ed1c0225aaef59e09b4c1066872c9215a9a94afa
2 所得税法違反について
個人の所得に対しては、所得税という税金が課されています。
所得があった者については、原則として、自ら税務署に申告し、納めるべき税金の額を確定させる、確定申告を行う必要があります。
どのようなものが所得に該当するかは、法律で定められていますが、今回、紹介した報道において、刑事告発された女性は、自身をモデルとした成人向け動画を有料の会員制サイトなどで配信し、収益を得ていたとされています。
この配信活動が事業とみなされ、そこから生じた事業所得であると判断されたため、所得税が課されるにもかかわらず、確定申告をせず、納めるべき税金を納めていないことから所得税法違反として、刑事告発されたものと考えられます。
3 どのような金銭が事業所得に当たるのか
昨今、一般の方も、インターネットで動画や音声を配信するということが身近になっており、その際、何らかの金銭を受け取るということもあると思います。
では、配信活動に伴って受け取った金銭が「事業所得」に当たるでしょうか。
「事業」とは、自己の計算と危険において営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動をいいます。
そうすると、たとえば、一度、ネット配信を行い、その際に、金銭を受け取ったというのであれば、多くの場合、「事業」に当たらないと考えられます。
もっとも、注意すべきなのは、回数が少なければ「事業」に当たらないというわけではなく、たとえば、元々、インフルエンサーのような活動をしており、それに付随してネット配信をした際に、金銭を受け取った場合、「事業」性が認められる場合もあると考えられますので、「事業」の該当性に関しては、活動の規模と態様、相手方の範囲など、様々な事情を考慮して判断する必要があります。
なお、受け取った金銭が事業所得に当たらないとしても、その他の所得としてとして課税対象になる場合がありますので、注意が必要です。
4 弁護活動について
ネット配信の際に受け取った金銭について、確定申告をしていない場合、まずは、事業所得に当たるものかどうかを判断する必要があり、弁護士からのアドバイスを受けることが有益です。
その上で、所得として計上し、申告することが必要だと考えられる場合には、改めて申告する必要があります。
その際には、税理士と協力するといった動き方も考えられます。
また、報道においては、刑事告発されているため、今後、刑事裁判にかけられる可能性があります。
事案にもよりますが、先に自ら申告し、納税していくということは、刑事裁判を回避できるかどうかにも繋がる可能性がありますし、仮に、刑事裁判になったとしても、有利な事情として考慮されます。
5 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。ネット配信で金銭を受け取ったがそれを申告していない方や、所得税法違反で既に刑事告発された方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
【報道解説】アダルトサイトで自撮り動画を配信した女性を脱税疑いで刑事告発

東京国税局が、アダルトサイトで自撮り動画を配信して2億円を超える収入を得ていた女性を、所得税法違反の疑いで刑事告発したという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
報道の内容
自身が出演するアダルト動画を配信していた女性が確定申告せず、所得税およそ7800万円を脱税したとして、東京国税局に刑事告発されました。
東京国税局から刑事告発されたのは、神奈川県大和市の動画配信業をしている女性Aです。
A氏は、自身が出演するアダルト動画を動画配信サイトやSNSに配信するなどして収益を得ていましたが、関係者によりますと、A氏はおととしまでの3年間にあわせておよそ2億1300万円の所得を得ましたが、確定申告をせず、所得税およそ7800万円を脱税した疑いがもたれています。
脱税で得た金を自分名義の口座に貯めていたとみられていて、A氏はJNNの取材に「国税局からの指導に従い、修正申告の上、納税を済ませた」「今後は税理士指導の下、厳正な申告・納税を行う」としています。
(令和6年11月26日ヤフーニュースhttps://news.yahoo.co.jp/articles/8552aec05358f04e877c1993788e5e5072819e6cより、一部改変)
ネット配信によって得た利益
動画配信サイトやSNSの普及で、自分で撮影した動画などを配信し、それによって利益を得ることが誰でも簡単に行えるようになってきました。
ネット配信によって利益を得る方法には、①アフィリエイト(広告)収入、②スーパーチャットなどの投げ銭、③動画販売などがあります。
このうち、①アフィリエイト収入については、YouTubeなどの動画配信サイトで広告が流れることがありますが、そういった広告を動画に入れることによって企業から収入を得る方法が挙げられます。
②スーパーチャットなどいわゆる「投げ銭」と呼ばれるものは、動画配信中に動画の閲覧者から金銭やアイテムなどを送金する仕組みです。代表例としては、やはりYouTubeのスーパーチャット(スパチャ)が挙げられます。
③動画販売については、顧客から要望を直接募って、要望に沿った動画を撮影して販売する方法だけでなく、会員制など有料のコンテンツとして動画を配信し、会員になった人にのみ動画を公開する方法も含まれます。
こういったネット配信によって得た収入は、当然所得となりますので、確定申告が必要です。
ネット配信では、サイト登録者数や閲覧者数が目で見てはっきりわかるため、誰がどれくらいの収入を得ているのか推測が立ちやすく、目を付けられやすいといえます。
そして、ネット配信での金銭のやり取りは、銀行口座を利用したものが多いため、一度目を付けられると、証拠まで一気に押さえられてしまうことも特徴といえます。
所得税法違反
ネット配信によって得た利益は、所得となり、個人で配信している方の場合には、所得税の確定申告が必要になります。
ちなみに、企業や団体に所属して動画配信をしている出演者の場合には、企業などに雇われているという形態であれば、サラリーマンと同じ扱いになる可能性もあるため、その場合には会社から給料をもらっていることになるため、源泉徴収がされているので、確定申告を別途行う必要はありません。
所得税の確定申告をするにあたっては、経費を差し引いた所得(課税所得)を申告する必要があります。
ここでの経費は、たとえば、動画撮影や配信に使用するために購入した機材の購入費などがあたります。
所得税の申告を怠っていた場合には、税務調査や査察調査を受ける可能性があります。
所得の額が少額である場合には、税務調査で申告漏れを指摘された部分について、修正申告を行って納税することで終了する場合が多いですが、所得の額が多かったり、意図的に所得隠しをしているなど悪質性が高いと判断された場合には、査察調査に進むこともありえます。
査察調査が入ったら
査察調査に進んでしまった場合、重加算税などの重いペナルティが課せられるだけでなく、刑事告発されて刑事事件になってしまう可能性も高くなります。
査察調査は、約1年近く行われることもあり、その中で、申告されていない税額がいくらか、なぜ申告していなかったのか、悪質性が高いといえるかなどが調査されます。
所得税の場合、申告していない税額が3000万円を超えると、刑事告発されることが多いといえます。
刑事告発された場合には、検察庁が捜査を行い、場合によっては逮捕されてしまうこともあります。
そして、だいたい80%くらいの確率で起訴され、刑事裁判になった場合には、100%有罪になっています。
刑事裁判で有罪となった場合には、懲役刑以外にも罰金刑が一緒に下されることがほとんどで、罰金の額は脱税額の20~30%くらいとなっています。
Aさんの場合
今回報道されているAさんの場合には、3年間で2億円を超える収入を得ていたにも関わらず申告をしていなかったので、8000万円近い所得税を免れていたことになります。
脱税の金額が大きかったため、査察調査の上で刑事告発されたと考えられます。
今後、Aさんは検察庁で捜査を受け、起訴される可能性があります。
報道によれば、すでに修正申告と納税を済ませているということですので、この点が考慮されれば、不起訴となる可能性もありますが、刑事告発をする際には、国税局と検察庁との間で協議が行われており、協議の結果、刑事処分が相当と判断された場合に告発がされるので、起訴される可能性は高いといえるでしょう。
起訴された場合、Aさんは納税まで済ませているということですので、執行猶予判決となる可能性が非常に高いと言えます。
しかし、罰金刑も受けることになる可能性が高く、1500万円くらいの罰金が科せられる可能性があります。
弁護士に依頼して、不起訴に向けて検察官と交渉してもらったり、刑事裁判で刑罰が軽くなるような活動をしてもらうことが大事です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回相談は無料ですので、ネット配信でお困りの方は一度ご相談ください。
【事件解説】大阪国税局が不動産会社と同会社の実質的経営者を告発

大阪市西区の不動産会社と同会社の実質的経営者を大阪国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件の概要
権利関係が複雑な土地を安く買い取って売却する際、入居者を立ち退かせるための業務委託料を架空計上し、法人税など計約7200万円を脱税したとして、大阪国税局が、大阪市西区の不動産会社であるA社と同会社の実質的経営者であるB氏を大阪地方検察庁に告発しました。告発容疑は、2022年7月までの1年間に、立ち退きに必要な業務委託料として架空の外注費を計上して約2億400万円の所得を隠し、法人税約5200万円を脱税した疑いであり、他にも消費税約2000万円の不正還付を受けた疑いがあります。B氏は、取材に対して「悪いことをしたと反省している。」と語り、既に修正申告済みということです。
(2024年10月2日、千葉日報の記事より。一部改変)
https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20241002/1283003
消費税の不正受還付と国の対応
本事件では、脱税行為の一つとして架空外注費の計上がまず挙げられていますが、注目すべきは、消費税約2000万円の不正還付を受けた疑いもある点です。
消費税は、取引の各段階で課税され、商品やサービスなどの最終消費者が実質的に負担する仕組みです。消費税法では、事業者は「仕入税額控除方式」により消費税を納税するシステムが採られており、これは、事業者が売上の際に受領した消費税をそのまま納税するのではなく、原材料や商品を仕入れた際に支払った消費税額を控除した金額を納税するシステムです。そして、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げを上回る場合には、還付を受けることができます(消費税法52条1項)。
消費税不正受還付はこの仕組みを悪用したものであり、たとえば、そもそも消費税の課税仕入れの対象とならない従業員給与の一部を消費税の課税仕入れの対象となる外注費に仮装し、架空の請求書を作成するなどの方法によって課税仕入れに係る消費税額を過大に計上し、不正に還付を受けるなどの事案がみられるところです。
近年、消費税の仕組みを悪用した不正受還付事案が相次いでおり、国税庁によると、平成29年から令和3年度までの5年間の消費税不正受還付事案の告発件数は計57件であり、不正受還付額は計35億9000万円にのぼっています。
国税庁が発表した令和5年度査察の概要によっても、国税庁は、消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であるとして、不正受還付事案への対応を重点課題として位置付け、引き続き積極的に告発してゆくとありますので、注意が必要です。
刑事手続
B氏は、法人税法違反などの疑いで刑事告発を受けています。
刑事告発を受けた検察庁は、B氏を被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。
最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。
また、起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
国税局が令和6年に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和5年度中の判決件数83件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。
最後に
既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。ですから、脱税に関与してしまったという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが極めて重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。
【制度解説】企業会計と税務会計(法人税法22条)

公正処理基準について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説
1 はじめに
法人税法22条は、法人の所得計算に関する基本的な規定であり、4項には、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」によって計算されるものと規定されています。この公正処理基準の意義、制度趣旨、問題点、裁判例についてみていきましょう。
2 意義と制度趣旨
法人税は、国の税収のうち、所得税、消費税とともに国の財政収入の根幹を担うことから、当然のように公明正大な処理がなされなければなりません。
具体的には、企業会計と税務処理が連動して円滑な処理がなされるよう両者の連携が図られること、明確な一定の基準に従った企業会計の処理により、税務調査、税務査察の際に国税当局との間に生じるおそれのある争いをできるだけ少なくし、税務行政の効率化を最大限に引き出すこと、社会のグローバル化に従い企業会計の国際化に資することで、企業の海外取引や海外への展開を促進し企業自体のグローバル化を円滑に実現すること、といった要請があります。
これらはいずれも税金の計算を目的とする税務会計と、企業の資産状況を報告する企業会計とのズレを可能な限り少なくし、税と資産をその金額面において正確かつ明朗に計算できるようにするのが目的であり制度の趣旨です。
3 公正処理基準の問題点
公正処理基準には抽象性から次のような問題性があります。
多種多様な企業の会計処理に普遍的に妥当させようとすることから、いきおい基準自体が「一般に公正妥当」(法人税法22条4項)という定め方をせざるを得ないことから、規定自体の抽象性や具体的な判断基準が不明確なため、会計処理の具体的金額の特定に関し、解釈の余地が生じることとなります。当然、企業は税額の少なくなるような会計処理をし、税務当局はこれに反する立場をとることから解決困難なアポリアを生じることも少なくなく、その解決のために最終的には訴訟による決着を待つことになります。
4 裁判例
公正処理基準に関する裁判例は数多く存在し、次のような例があります。
交際費に関し、①支出の相手方が、事業に関係ある者等であり、②支出の目的が親睦の度を密にして取引関係を円滑な進行を図るものであることとともに、③接待、供応、慰安、贈答に類する行為であることの三要件が必要であるとした例(平成15年東京高等裁判所判決、萬有製薬事件)
株式償却により、償却株式が譲渡されたその評価額を収益として計上することは、当然の帰結であり、払戻限度超過額を収受することが、旧商法上許されないとしても直ちにその収益性を否定することはできないとした例(平成26年東京高等裁判所判決、日産自動車事件)
以上は企業と税務当局とのし烈な争いの結果出された判決です。いずれも今後の税務会計の具体的基準として先例拘束性があると考えられるため、同種の会計処理に当たっては留意が必要となります。
5 まとめ
企業会計における公正処理基準は、法人税法における重要な概念であり企業会計と税務会計の連携を図る上で不可欠な役割を果たしています。
税務処理に当たっては、先例の有無に留意するとともに、公正を旨とし疑義を生じたときには税務査察の任意手続段階おいてなど、税務当局との折衝により妥当な解決を得られる場合があります。これは、その時点で折り合わずに訴訟まで発展するなどの負担をコストの大幅削減にもなるなど迅速な解決に向かわせる方法として有効となりますし、税法上のペナルティも回避可能となるなどその機能が期待されるものといっていいでしょう。
【事例解説】所得税法違反の共犯者として裁判に!

所得税法違反の共犯者として刑事裁判にかけられた事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します(事例はフィクションです。)。
1 参考事例
Xさんは、福岡県内にある建設業を営むAさんのもとで、経理として働いていました。
Xさんは、Aさんから、経理に関してはほとんど全て任されており、確定申告も実質的には全てXさんが行っていました。
Xさんは、Aさんの指示のもと、架空の経費を計上し、過少に所得を申告し、その結果、Aさんは所得税を数千万円免れていました。
なお、Xさんは、Aさんの脱税に関し、一切、直接的な利益を受け取っていませんでした。
Xさんは、逮捕はされませんでしたが、Aさんと共犯(法律上は共同正犯)であるとして、所得税法違反で刑事裁判にかけられることになり、弁護士に相談することにしました。
(参考裁判例:新潟地方裁判所令和6年6月5日判決・令和6年(わ)第47号)
2 所得税法違反について
そもそも所得税は、所定の期間における収益から必要経費を控除した額(これが所得になります。)に対して課される税金です。
参考事例において、Aさんは、この必要経費をかさ増しすることによって、低い所得を申告した上で、その所得に課される税金のみを納めているため、所得税法違反となります(所得税法238条1項)。
3 Xさんの立ち位置について
参考事例において、Xさんは、所得税法違反の共犯、つまり一緒になったとして刑事裁判にかけられています。
もっとも、XさんとAさんの関係性は、実際には、Aさんから半ば強制的にさせられたのか、Xさん自身も何かしらの利益を受け取っていたのか、そもそもXさんは脱税について認識がなかったのかなど、事業者(会社も同様)によって様々なものが想定されます。
参考事例のような共犯事件においては、多かれ少なかれこの点が問題となる事案がほとんどです。
4 弁護活動について
そこで、Xさんとしては、どのような立ち位置だったのか、それを法律的にはどのような説明をしていくべきなのかを慎重に検討すべきです。
そして、Xさんがどのような説明をしていくべきかは、参考事例のように裁判になった後ではなく、捜査を受ける段階から問題となります。
ですので、Xさんとしては、Aさんに税務調査が入るなどして、今後、脱税の容疑がかけられる可能性が出てきた段階で、弁護士に相談し、今後、取調べなどでどのように説明していくか、アドバイスを受ける必要があります。
上に挙げた新潟地裁の判決においても、Xさんのような立ち位置の人に対し、その「関与なくしては成り立たなかった」として、懲役刑が科され、執行猶予が付されています。
5 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。脱税の共犯に疑われているなどで不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
中小企業と知的財産権の税務

知的財産権は、中小企業にとって、自社の技術やブランド力を保護し、競合他社との差別化を図る上で非常に重要な資産です。しかし、特許を取得したり、商標登録を行ったりする際には、様々な税務上の問題が伴います。このブログでは、中小企業の経営者が知っておくべき、知的財産権に関する税務の基礎知識を解説するとともに、より実践的な視点から、税金対策や経営戦略に役立つ情報を提供します。
特許を取得する際の税金
(1)研究開発費の税制優遇
研究開発税制の活用: 研究開発税制は、企業の研究開発活動を促進するために設けられた制度です。中小企業は、この制度を活用することで、法人税額から一定割合の控除を受けることができます。
優遇を受けるための要件: 研究開発費の定義や、控除を受けるための要件は複雑です。税理士と連携し、自社の研究開発活動が制度の対象となるか、どの程度の控除が受けられるかなどを事前に確認することが重要です。
その他の優遇措置: 研究開発費の損金算入の繰延べや、特許取得にかかる費用の一部を損金算入できる制度など、様々な優遇措置があります。
(2)特許取得費用
無形固定資産としての計上: 特許取得費用は、無形固定資産として計上され、その耐用年数に応じて償却していきます。
耐用年数の設定: 特許の存続期間だけでなく、その特許の経済的耐用年数を考慮して、適切な耐用年数を設定することが重要です。
償却方法: 定額法や定率法など、様々な償却方法があります。自社の状況に合わせて最適な方法を選択しましょう。
(3)特許権の譲渡
譲渡所得の課税: 特許権を譲渡した場合、その対価は譲渡所得として課税されます。
譲渡所得の計算: 譲渡所得は、譲渡対価から取得費を控除して計算されます。
特許権の評価: 特許権の評価は、専門的な知識が必要となります。税理士に相談し、適切な評価額を算定してもらいましょう。
商標登録にかかる税金
無形固定資産としての計上: 商標登録費用も、無形固定資産として計上され、特許権と同様に償却していきます。
商標権の評価: 商標権の評価は、特許権と同様に専門的な知識が必要となります。
商標権の利用による収入: 商標権を利用して、ライセンス料やロイヤリティ収入を得た場合は、その収入は事業所得として課税されます。
知的財産権の利用による収入と税金
事業所得としての課税: 特許権や商標権を利用して得られるライセンス料やロイヤリティ収入は、事業所得として課税されます。
事業所得の計算: 事業所得は、収入から必要経費を控除して計算されます。
必要経費の範囲: 必要経費には、人件費、賃借料、消耗品費など、事業を行うために直接的に必要となる経費が含まれます。
知的財産権に関する消費税
課税仕入れ: 知的財産権の譲渡や使用権の許諾は、原則として課税仕入れに該当し、消費税が課税されます。
非課税取引: 一定の要件を満たす場合は、非課税取引として消費税が課税されないことがあります。
免税取引: 小規模事業者など、一定の要件を満たす場合は、免税取引として消費税が課税されないことがあります。
中小企業が知っておくべきこと
税制の複雑性: 知的財産権に関する税制は複雑で、常に変更される可能性があります。
専門家への相談: 税務に関する専門家(税理士など)に相談することが大切です。
記録の保存: 経費に関する書類は、税務調査に備えて大切に保管しましょう。
税制優遇の活用: 研究開発税制などの税制優遇制度を積極的に活用しましょう。
国際的な税務: 海外で知的財産権を利用する場合、国際的な税務についても考慮する必要があります。
まとめ
中小企業が知的財産権を活用するためには、税務に関する知識をしっかりと理解しておくことが重要です。税制は複雑ですが、適切な手続きを行うことで、税負担を軽減し、事業の発展に繋げることができます。税理士などの専門家と連携し、自社の状況に合わせた最適な税務対策を検討しましょう。
【制度解説】定額減税について

定額減税について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1制度の概要
定額減税は、一定額を所得税額から控除するという制度です。これは、物価高騰による国民生活への影響を緩和し、経済活動を活性化させることを目的としています。所得税法、地方税法が改正され、令和6年6月から実施されることとなりました。
2対象者、減税額
年間所得が、一定額(原則1805万円以下、給与収入のみの場合2000万円以下)以下の個人を対象としています。団体や法人は対象となりません。
減税額は、納税者及びその配偶者または扶養親族1人につき、原則として年間4万円(所得税3万円、住民税1万円)です。
3制度の趣旨はおおむね3つ
①物価高騰対策: 近年、世界的な物価高騰が続いており、家計への負担が増大していま
す。定額減税は、この物価高騰による家計への圧迫を軽減し、国民生活の安定に寄与
することを目的としています。
②経済活性化: 税負担を軽減することで、個人の消費意欲を高め、経済活動を活性化さ
せる効果が期待されています。
③所得格差の是正: 低所得層ほど、物価高騰の影響を強く受けやすいため、定額減税
は、所得格差の是正にも貢献すると考えられています。
4いつまで継続するのか
では、定額減税はいつまで続くのでしょうか。
現時点では、定額減税の制度がいつまで継続されるのかは明確にされていません。一般的に、このような税制上の優遇措置は、経済状況や社会情勢の変化に応じて、その期間や対象が変更されることがあります。
5家計への影響
定額減税は、一定の所得以下の個人に対して、所得税額が減額されるため、手取り額が増えることになります。これにより、消費意欲が高まり、経済活動が活性化することが期待されています。
国民経済の安定と好況の維持が期待されることから、家計へ潤いを与え生活への活力が生じやすくなります。
6今後の展望
経済的弱者(低所得者層)への支援を強化し、所得格差を是正することが実質的な社会生活上の平等実現にとり重要であり、国民への給付行政の円滑化を図ること、そのため、課税行政が一般に法律による必要があるところ、生き物といわれる国の経済情勢や社会状況の変化に応じて、迅速な立法等による税制の柔軟な運用の要請があることとを両立し、他方で税収減による財政面との均衡点を模索するといった国政上の現実的問題
をクリアする政策の実現が急務となります。
7一提言
国民一般にとり、減税は歓迎すべき制度といえるでしょう。他方、経済のグローバル化が急速に進み、一般家庭の家計においても、ドル円の為替レートの影響を受ける昨今において、今後は、国際経済の流れに乗り、税制をも踏まえた上手な所得の管理が必要となることでしょう。皆様の家庭に定額減税の恩恵がもたらされんことを。
節税、租税回避行為、脱税の違い

節税、租税回避行為、脱税の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
節税とは
節税とは、税法が予定している通常の契約形態ないし法形式等を使うことにより、したがって、法の趣旨・目的に反することなく税負担の軽減を図る行為です。たとえば、必要経費を適切に計上するなどして税金を減らすことは、税法によって認められた行為ですので節税にあたり問題ありません。むしろ、余分な税金を支払えば資金繰りに窮してしまうことにもなりかねず、節税は積極的に行っていくべきものです。
租税回避行為とは
租税回避行為とは、私法上有効な契約形態ないし法形式等を選択することによって、税法が定める課税要件を充足する事実を回避する行為をいいます。
後で説明する脱税が、課税される要件がありながらこれを隠す行為であるのに対して、租税回避行為は、課税要件となる事実の隠匿は行っていないが、法の趣旨・目的に反して税負担の軽減を図る行為です。
この点、税の世界はあくまで「租税法律主義」、すなわち法律に定められていないのに税を徴収されることはないというのが大前提です。
たとえば、かつては海外にある財産を海外居住者へ贈与する場合、贈与税がかかりませんでした。その時代に、受贈者を海外に住まわせた上で国外財産を贈与し、贈与罪を免れた事案において、最高裁は租税法律主義のもと、国の追徴課税処分を取り消しました(最高裁平成23年2月18日判決)。
憲法30条は、国民は法律の定めるところによってのみ納税の義務を負うと規定し、同法84条は、課税の要件は法律に定めなければならないことを規定しています。納税は国民に義務を課するものであるところからして、この租税法律主義の下で課税要件は明確なものでなければならず、これを規定する条文は厳格な解釈が要求されるのです。一般的な法感情の観点からしますと違和感もあるでしょうが、租税法律主義に則った最高裁のこの判決はやむを得ないものと言えるでしょう。もっとも、租税回避行為は、租税法律主義を形式的に適用する限りでは許容されるとしても、法の抜け穴を突いて、課税を免れようとする行為です。公平な課税の観点から問題とされるグレーゾーンに位置する行為とされ、お勧めできるものではありません。
脱税とは
脱税とは、課税される要件があるにも関わらず、これを故意に隠して、課税を免れようとする行為をいいます。
例えば、売上を意図的に除外したり、架空の経費を計上するなどにより、所得を圧縮する行為は脱税です。
この点、所得税法は「偽りその他不正の行為」により所得税を免れ、または所得税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると規定しています(所得税法238条1項)。その他の税目にも同様の規定があります(法人税法159条1項、相続税法68条1項、消費税法64条1項等)。
このように脱税は刑事罰の対象となり、国税局査察部が調査(犯則調査)を行います。脱税は違法行為なので完全にアウトの行為といえます。
脱税と重加算税の関係
納税者が「隠蔽又は仮装」を行った場合には重加算税が賦課されます(国税通則法68条)。この点、「偽りその他不正の行為」と「隠蔽又は仮装」とは大部分が重なり合うものと考えられています。したがって、脱税として刑事罰の対象となり処罰されるときには、重加算税を課された上で処罰されるのが通常です。
最後に
申告・納税しなければならないのにしていない方は、早めに税理士や弁護士といった専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。 初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。
【事件解説】東京国税局が光学部品会社と同社の社員(実質経営者)を告発

光学部品会社と同社の社員(実質経営者)を東京国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。(前回と同じ事件の補足解説)
事件の概要
売上げを正しく計上せず脱税したとして、東京国税局査察部が、光学部品会社であるA社と同社の社員(実質経営者)であるB氏を法人税法違反の疑いで東京地検に告発したことがわかりました。告発は、2024年5月31日付けです。
関係者によりますと、A社は、医療用の光学部品を香港に輸出するなどして利益をあげていましたが、受け取った売上代金の一部をB氏からの借入金の返済を装って、A社の口座からB氏の個人口座に送金するなどしていたとのことです。この方法で2023年3月期までの3年間で計約2億1500万円の所得を隠し、約5200万円を脱税した疑いがあります。隠した所得はB氏が自宅兼社屋の購入に充てたり、預金したりしていたとみられています。
(2024年9月19日、朝日新聞DIGITALの記事より。一部改変)
刑事告発
本事件では、法人税法違反の疑いで東京地検に告発がなされています。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。https://datsuzei-bengoshi.com/datuzei_kokuhatu/
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
場合によっては、被疑者を逮捕して身体拘束をしながら取り調べなどを行います。
そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定します。
国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は最近では約8割から9割の高率です。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
告発の基準について
告発の基準は、公にされていません。この点、かつては、実務の運用として、法人税法違反や所得税法違反の場合、一般的には1億円以上の脱税をしたことが、告発の条件とされているともいわれていました。
しかし、本事案がまさにその場合にあたるといえますが、脱税した金額が1億円に満たないものであっても、売上の一部について借入金として計上する偽装工作を施すなど、脱税の手段が悪質である場合やほ脱率(実際の税額に占める脱税額の割合のことです。)が高く、実際の利益に比較して、ほとんど税金を納めていないような場合などの場合には、告発に至る場合があるので注意が必要です。
最後に
今回は、実際報道されている事件をもとに、解説をしました。
既に述べましたように、ひとたび刑事告発を受けると、極めて高い割合で起訴に至っています。そのため、本事案のような場合、国税局査察部の査察調査が入った時点、あるいは、査察調査が入ることが確実にわかった時点で早急に弁護士に相談して告発を避けるための活動をしていくことが重要になります。 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で承っていますので、早急にお問い合わせください。
« Older Entries Newer Entries »
