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【報道解説】転売が疑われる客に対する免税販売

2024-07-17
報道

転売が疑われる客に対して免税販売したとして大阪国税局から医薬品店が指摘を受けたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 報道の内容

「ドラッグストア『ダイコクドラッグ』の大阪にある複数の店舗が、転売目的が疑われる中国人観光客に不適切な免税品の販売を繰り返していたと大阪国税局から指摘され、店舗を経営する2つの会社があわせておよそ3億円を追徴課税されていたことが関係者への取材で分かりました。」

免税品を国内での転売目的が疑われる客に販売することは認められていませんが、関係者によりますと、大阪の繁華街ミナミにあるダイコクドラッグの複数の店舗では、中国人観光客に対して、スーツケースに入りきらないほどの量の化粧品や医薬品などを免税価格で販売していたことが大阪国税局の税務調査で確認されたということです。

国税局は、転売目的が疑われる客に免税販売を繰り返し、2019年から2年にわたって消費税の申告漏れがあったと指摘し、2社に過少申告加算税を含めてあわせておよそ3億円を追徴課税しました。

店舗には日本に住む案内役の中国人に連れられた観光客がたびたび訪れていたということで、不適切な免税販売の売り上げは30億円にのぼるとみられています。
 
親会社の『ダイコク』は修正申告と納付は済ませたとしたうえで『国税局の指摘を真摯(しんし)に受け止め、現在はルールにのっとった販売を行っています』としています。」

NHK「ダイコクドラッグ 転売疑いの客に免税販売か 国税局が追徴課税」(2024年6月4日)より抜粋
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240604/k10014470241000.html

2 免税店とは

物品の譲渡やサービスの提供が国内における取引であっても、その物品が輸出され、あるいはそのサービスの提供が国外で行われる場合には、それに対する消費税は免除されます。
その一環として、輸出物品販売場(これが免税店です。)において、日本に居住していない者に一定の物を販売する場合にも、消費税が免除されます。

免税店として販売しようとする場合、税務署に申請をし、許可をもらう必要があります。

3 転売目的の販売について

免税店においては、日本に居住していない者に対し「通常生活の用に供する物品」を販売する場合に、消費税が免許されています。
つまり、事業用又は販売(転売)用として購入することが明らかな場合には、免税販売対象外となります。
そこで、報道された会社は、転売目的が疑われる者に対する販売について、免税取引だとして、その分については消費税がかからないとして、申告したことが申告漏れとされたため、追徴課税がなされています。

4 修正申告について

報道された会社は、「修正申告と納付は済ませた」としています。
修正申告とは、事後的に納税者自ら従前の確定申告の内容を是正する手続をいいます。
そして、修正申告した上で、追徴課税も含めて納付を済ませたということであれば、税金に関する対応は基本的に済んでいるということになります。

もっとも、ここで注意して欲しいのは、上記のような税金に関する対応と、企業や代表者等が刑事責任を問われるかどうかは全く別の問題です。
国税庁より告発が行われ、刑事責任が問われるかどうかは、脱税した金額や脱税の方法などを考慮して、検察官が起訴するかどうかを判断し、裁判所がどのような刑罰に科するかを決定します。
そのような手続の中で修正申告が考慮される事情だとしても、修正申告をしたことで何もお咎めがないかと言われると別問題だということには注意が必要です。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、消費税法違反など多数の事件を取り扱っています。脱税をしたかもしれない、税務調査を受けることになった、国税庁から告発され刑事事件化するかもしれないなど不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

リバースチャージ方式とは

2024-07-03
消費税

消費税のリバースチャージ方式について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

消費税の課税対象

消費税法第4条によると、①国内において、②事業者が行った、③資産の譲渡等について消費税の課税対象とする旨規定されています。
そして、同法2条によると、ここでいう資産の譲渡等とは、事業として、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供とされています。

従来、国外事業者が行う電子書籍や広告の配信などを行う役務の提供については、消費税の課税対象ではなかったもの

以前は、インターネットを介して電子書籍や広告の配信などを行う役務の提供が、国内取引に当たるか否かの判断は、役務の提供にかかる事務所の所在地が国内にあるか否かで判断することとされていました。
その結果、同じコンテンツを配信する場合であっても、役務の提供にかかる事務所が国内にある場合には国内取引として消費税が課税され、外国にある場合には消費税が課されないことになっていました。
これでは、事業者間で競争条件に大きな差が生じてしまいます。

リバースチャージ方式による消費税の課税関係について

上記のような不公平を是正するため、2015年10月から、消費税法が改正され、電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引を「電気通信利用役務の提供」と定義し、国境を越えた事業者間の電気通信利用役務の提供にかかる消費税の課税においては、リバースチャージ方式が導入されました。
リバースチャージ方式とは、簡単に言うと、「支払った側」が消費税を納付する方式です。私達が、サービスを購入した際に支払う消費税については、税金を払っているという感覚はあるものの、実際に税金を国に納付しているのは、サービスを提供した(売った)側です。「リバース」とは日本語に訳すと「反対の」という意味であり、すなわち、リバースチャージ方式がとられれば、サービスを提供した(売った)側とは反対のサービスを受けた(購入し支払った)側が消費税を国に納付するということになるのです。
リバースチャージ方式が導入された結果、国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、サービスの提供者(売手)ではなく、サービスの受け手(買手)である国内事業者に消費税を課されることになり、これによって、外国の事務所からの配信であっても役務の受け手が国内に所在していれば、国内取引として消費税が課されることになりました。

リバースチャージ方式での申告・納税が必要な事業者

リバースチャージ方式は、全ての事業者に適用されるわけではありません。
経過措置により、一般課税制度により申告する場合で課税売上高割合が95%未満である事業者にのみ、リバースチャージ方式による申告と納税が必要になります。

最後に

リバースチャージ方式は、一般の方には、複雑でわかりにくい方式といえます。しかし、消費税といえども、税を課される事業者が申告・納税しなければ、税金の問題が生じ、税務署に把握されれば、無申告についてのペナルティを別途受ける可能性があります。
また、仮装隠ぺいなど悪質性が高いと判断された場合には、無申告加算税に代えて重加算税が課せられます。
さらに、納税が遅れると、その期間に応じた「延滞税」の支払いが求められます。
納めるべき税額が大きい場合、刑事告発されることも考えられます。
申告・納税しなければならないのにしていない方は、早めに税理士や弁護士といった専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

【事件解説】名古屋国税局が「頂き女子りりちゃん」を告発

2024-06-26
報道

いわゆる「頂き女子りりちゃん」を名古屋国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

恋愛感情に付け込んで男性をから得た詐取金を税務申告せず、約4000万円を脱税したとして、名古屋国税局は、いわゆる「頂き女子りりちゃん」ことA氏を所得税法違反容疑で名古屋地検に刑事告発しました(2024年1月31日付け発表)。
A氏は、SNS上で「頂き女子りりちゃん」を名乗り、中年男性に対して「困窮している」などと嘘をついて金銭的な支援を受ける方法を発信。名古屋地検は、2021年3月~2023年8月に、この方法で複数の男性から1億5000万円以上をだまし取ったなどとして詐欺、詐欺幇助の罪で、先にA氏を起訴しており、A氏は公判中でした。名古屋国税局によると、A氏が得た詐取金のうち2021年~2022年に得た詐取金計約1億1000万円分が告発の対象となり、A氏は、同詐取金の税務申告を怠ったことで、所得税約4000万円を免れた疑いがあるとのことです。A氏は、脱税で得たとされる資金はホストクラブなどに使っていました。
2024年1月31日、朝日新聞デジタルの記事より。一部改変)

詐欺によって得た利益も課税対象になるか

犯罪等違法な手段で金銭を得たとした場合、正直に税の申告をする者などいないように思われます。しかし、A氏がだまし取った金銭は所得に該当します。
この点、所得税基本通達36-1は、「法36条1項に規定する『収入金額とすべき金額』又は『総収入金額に算入すべき金額』は、その収入の基因となった行為が適法であるか否かを問わない」と規定しており、今回のように犯罪によって得た利益も適法な手段で得た利益と同様に所得と見なされるからです。
A氏は、だまし取った金銭をホストクラブで費消しているとのことであり、納税できない可能性が高いですが、お金がないからといって脱税が許されるというものではありません。

刑事告発後の経過について

本事件では、所得税法違反で名古屋地検に告発がなされています。
告発された後、本件脱税事件も起訴され、A氏は、2024年3月15日の公判期日で、脱税事件の起訴内容を認めました。そして、この日、A氏は、検察官から懲役13年及び罰金1200万円を求刑され、同年4月22日、名古屋地裁は、A氏に対して懲役9年及び罰金800万円の実刑判決を言い渡しました(もっとも、その後、A氏が控訴したことで判決はまだ確定していません)。
本件は、詐欺罪の被害額が大きいため、詐欺罪だけでも実刑の事案ですが、脱税以外にも立件された事件がある場合、他に立件された事件が本件のように脱税と密接に関連するケースでは、そうでないケースと比較してより犯情が悪くなります。したがって、脱税にプラスして脱税に密接に関連する事件が立件された場合、事件全体の量刑が実刑となる可能性が高くなるといえます。常に法律を遵守し、適法な手段で利益を得、適正に納税することが大切であることはいうまでもありません。

罰金の額は、脱税額の20~30パーセントであるのが通常

本件では、A氏に対し、罰金800万円が言い渡されています。詐欺罪には、懲役刑しかなく罰金刑はありませんので、この罰金800万円は、脱税の事件に関してのものです。
脱税の金額約4000万円に対して罰金額800万円が言い渡されており、罰金額が脱税の金額の約20パーセントであることから、通常の量刑の相場に沿った罰金額だといえます。

刑事告発を受けたら

脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
告発を受けた場合には刑事手続が開始されます。刑事事件に強い弁護士に依頼をすることで、不起訴を勝ち取れたり、刑事裁判の結果が軽くなる可能性が出てきます。

申告・納付をしないと多くの税金を払わないといけなくなる

2024-06-19
追徴課税

確定申告や税の納付をしない場合に、ペナルティとしてどのような税金を支払う必要があるのかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 附帯税とは

確定申告や税の納付をしない場合、本来納めるべき税(これを本税といいます。)のほかに、ペナルティとして附帯税を納める必要があります。
附帯税とは、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税のことをいいます(国税通則法2条4号)。
なお、このうち、利子税は、ペナルティというよりは、利息のような性質をもつものですので、延滞税と各種加算税がペナルティに当たります。

2 加算税とは

加算税とは、法律で定められた期限内に適正な申告や納付がなされない場合に、本税に加えて賦課されるものです(申告や納付をしなかったことに対するペナルティ)。
法律で定められた期限内に申告はなされたものの税額が過少であった場合に過少申告加算税、申告しなければならない国税でありながら申告すらしなかった場合に無申告加算税、法律で定められた期限内に納付がなされなかった場合に不納付加算税が課されます。
また、そうした申告や納付をしなかった場合において、隠蔽や仮装がある場合に、それぞれの加算税に代えて、さらに重い税率となっている重加算税が課されることになります。

3 加算税が免除されたり減額されたりする場合がある

こうした加算税は、「正当な理由」があるときには、免除されます。
この「正当な理由」は、かなり限定されていて、単に、自身が申告や納付をすべき立場にあったことを知らなかったとしても、「正当な理由」があるわけではありませんが、申告や納付をしなかったことについて、何かしら理由がある場合には、手続の段階にもよりますが、税務署等に交渉していくことが考えられます。
また、そうした「正当な理由」がない場合であっても、調査による更正の予知なくして申告や納付をした場合には、免除されたり、納付すべき加算税が原則的な金額から減額されたりします
調査による更正の予知なくして申告や納付をする場合とは、簡単にいえば、税務調査を受け、申告や納付をすべきであると指摘されそうな立場になる前に、自発的に申告(修正申告など)や納付をする場合です。
最終的には、事案ごとに個別に判断していくしかないですが、申告をすべきかどうかわからない、本来納付すべき税金を納付していないなど不安がある場合には、早い段階で、弁護士や税理士に相談することが必要になってきます。
また、ここで詳しく説明はしませんが、仮に、脱税をし、刑事事件化した場合においても、修正申告をしたかどうかなど一定の事情は、刑事事件においても考慮される対象になってきます。

4 延滞税とは

延滞税とは、法律で定められた期限を過ぎても国税を納付しない納税者に課されるもので、遅延損害金(遅れたことに対するペナルティ)としての性質を持っています。
延滞税にも、加算税とは内容が異なりますが、一定の場合に免除されることになっています。
また、延滞税については、本来納付すべき税金を納付することによって発生しなくなるものですので、こちらも加算税と同様、早い段階で、今後の対応を考える必要性が高いです。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、所得税法違反など多数の事件を取り扱っています。脱税をしたかもしれない、税務調査を受けることになった、国税庁から告発され刑事事件化するかもしれないなど不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

税務調査において黙秘することは許されるのか

2024-06-12
脱税捜査

税務調査を受けた際の対応、特に、税務署職員等からの質問に対して何も話さないということが許されるのかどうかという点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 税務調査とは

税務調査とは、国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の当該職員が、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときに、一定の者に質問したり、事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、その提示・提出を求めることをいいます(国税通則法74条の2)。
所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税の調査において、実際に税務調査を行うのは、基本的に税務署職員です。
税務調査の対象となる者については、たとえば、所得税に関する調査においては、納税義務がある者(あると認められる者等を含む。)だけではなく、取引関係者も含まれます。
納税義務がある本人に対する調査を本人調査といい、取引関係者など本人以外に対する調査を反面調査といいます。

2 黙秘することはできない

税務調査においては、納税義務がある本人やそれ以外の者に対し、調査に必要な質問がなされます。
たとえば、帳簿上、雑費として計上されているものの、それに対応する領収書がない場合、どのような取引なのか、領収書があるのかないのか…などです。
それに対して、経費として認められない、私的な費消だったとしても、領収書がない以上、話しをしなければ、難を逃れることができるのではないかという思いが、頭をよぎることもあると思います。
また、日本国憲法においては、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とされ、いわゆる黙秘権が保障されているので、自身に不利なことを話す必要はないのではないかという思いを抱く人もいると思います。
しかし、結論からいえば、税務調査において、自身に不利な事項だったとしても、黙秘することは許されません。
国税通則法128条2号においては、税務調査における、税務署職員などの「質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者」は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処するとされています。

3 税務調査は任意ではないのか、求められる対応とは

税務調査は、裁判所の令状が不要であることから、刑事手続における逮捕や捜索差押えなどの強制処分ではなく、任意として行われるものです。
もっとも、先ほど説明したように、税務署職員による質問に対し、答弁をしない、つまり黙秘することによって、別途刑罰を科されるおそれがあることから、事実上(間接的であれ)強制的な側面があることも否定できません。
ですので、税務調査の場面において、必要な説明は、適宜していく必要がありますし、それに伴う資料の提示なども必要になってきます。
税務調査においては、依頼している税理士に立ち会ってもらうこともありますが、弁護士を立ち会わせて、適切な説明をしていくということも有益となってきます。
また、税理士のみを立ち会わせるとしても、税理調査における対応に十分な経験がある方が、より適切な対応をすることができるともいえます。
さらに、仮に、脱税をしているということになった場合には、その先の対応まで必要になってきます。

4 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、所得税法違反など多数の事件を取り扱っています。税務調査を受けることになり、税務調査での対応や、刑事事件化する可能性があるのかどうか、今後のことを不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

アンダーバリュー取引は脱税です

2024-06-05
脱税捜査

輸入時のアンダーバリュー取引について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

アンダーバリュー取引とは

財務省貿易統計によると、2022年の日本の輸出入総額は、輸出が約98兆1736億1千万円、輸入が約118兆5031億5千万円で、輸出入ともに過去最多となりました。
輸入貨物の場合、関税や消費税がかかります。アンダーバリュー取引とは、輸入時に実際の取引価格よりも安い価格で税関に申告し、関税や消費税を安く抑えようとする不正な取引のことです。
関税や消費税は、申告価格に対して課せられます。そのため、仮に真実の売買契約では、商品の単価を10ドルで契約し、輸入者は、輸出者に対してその金額を支払うにもかかわらず、輸出者の請求書(インボイス)に商品は8ドルと記載してあり、その価格で輸入申告すれば、差額である2ドルには関税や消費税がかからないことになります。

アンダーバリュ―取引は法律に違反する行為である

実際の取引価格を故意に偽って申告することは明らかな虚偽申告であり、脱税です。このような事態は通常考えられないのではないかとの疑問もあろうかと思います。しかし、貿易取引は、商慣習の異なる国との間の取引なので、国によっては、このようなアンダーバリュー取引がまかり通っている国もあり、そのような国から輸入する場合、なかには、輸出者が輸入者のことを思って好意でアンダーバリューのインボイスを送ってくる可能性があるので要注意です。
財務省によると、令和4事務年度に輸入者に対して行われた税関の事後調査によると、申告漏れ等に係る追徴税額は約98億1千万円(前事務年度比152.1%)であり、そのうち主な申告漏れ等の事例としてアンダーバリュー取引が指摘されているところです(税関が行う事後調査とは、輸入者の場合、輸入された貨物に係る申告・納税が適正に行われているか否かを調査するために税関職員が個別に訪問し、帳簿や書類等の確認を行う調査のことをいいます。)。
また、輸入者が、たとえインボイスの記載価格が実際の取引価格よりも低い価格と気づかずに申告した場合でも、税関にみつかれば過少申告として加算税が課されたりすることになります。こうした事態を避けるためには、実際の取引価格とインボイスに記載された価格を正確に合わせ、正しい価格の申告をすることを徹底する必要があります。もし、申告後にアンダーバリューに気付いたときには、すぐに修正申告をしましょう。
逆に、自社が輸出者であり、海外の輸入者から、「アンダーバリューのインボイスを発行して欲しい。」と言われる可能性もあります。しかし、このようなアンダーバリュー取引は、いずれの国でも違法ですから、相手の要求に応ずれば、違法行為に加担することになります。したがって、きっぱりと断ることが必要です。

アンダーバリュー取引であることが発覚した場合

アンダーバリュー取引であることは、税務調査が入ったときにほぼ確実にばれます。インボイス等は、税務調査において確認しやすい書類だからです。
アンダーバリュー取引であることが発覚したときには、不足分の関税や消費税に加え、過少申告加算税と延滞税が課されます
また、仮装隠ぺいなど悪質性が高いと判断された場合には、過小申告加算税に代えて重加算税が課せられます。
アンダーバリュー取引を行っていた会社としてブラックリストに上げられ、今後の通関の際には、厳しいチェックが入ることになります。
さらに、納める額が大きく、悪質な輸入者であることが判明した場合、脱税事件として刑事事件として告発されることもあります。その場合、起訴されれば懲役刑や罰金刑を受ける可能性があります。

最後に

申告・納税しなければならないのにしていない方は、早めに税理士や弁護士といった専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

脱税工作のために支出金を出していた会社の問題

2024-05-29
不法な利益

脱税工作のための支出金を出していた会社における問題について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

X会社は、架空の経費を計上して所得を秘匿し、法人税を過少に申告しました。X会社は、架空の経費を計上することについて協力した者に手数料を支払っていましたが、この手数料の金額については、損金として所得から控除されると考えていました。

違法な支出も法人所得計算上、損金算入される?

違法な支出、たとえば、架空の経費を計上するため(脱税をするため)に、協力をしてもらった者に支払った手数料(脱税工作金)ついても法人所得計算上、損金算入されるのでしょうか。
この点が争われた事件で、最高裁判所は、「架空の経費を計上して所得を秘匿することは、事実に反する会計処理であり、公正処理基準に照らして否定されるべきものであるところ、右手数料は、架空の経費を計上するという会計処理に協力したことに対する対価として支出されたものであって、公正処理基準に反する処理により法人税を免れるための費用というべきであるから、このような支出を費用又は損失として損金の額に算入する会計処理もまた、公正処理基準に従ったものであるということはできないと解するのが相当である。」として、法人税法22条4項の「公正処理基準」を根拠に損金性を否定しました(最高裁平成6年9月16日第三小法廷決定・刑集48巻6号357頁)。
 本件は、不動産売買等を目的とする被告会社が架空造成費を計上して所得を秘匿し、法人税を過少に申告したとして法人税法違反で起訴された事案です。被告会社は、架空の土地造成工事に関する見積書等を提出するなどして脱税工作に協力した者に支払った「手数料」は被告会社の法人所得計算上、損金として所得から控除されるべきであると主張していたものです。

現在の立法

こうした判例を踏まえて、平成18年度の税制改正で、次のような条文が規定されました。
法人税法55条1項
内国法人が、その所得の金額若しくは欠損金額又は法人税の額の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装すること(以下「隠蔽仮装行為」という。)によりその法人税の負担を減少させ、又は減少させようとする場合には、当該隠蔽仮装行為に要する費用の額又は当該隠蔽仮装行為により生じる損失の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない
この規定ができたことで、現在では、脱税工作金について法人所得計算上、損金算入できないことは明らかになっています。また、法人税法55条は、賄賂を渡すことなどについても、損金算入を認めていません。

条文に記載されていない違法支出について

もっとも、既に述べたように条文に明記されていれば別ですが、条文で損金に算入できないことが明確に記載されていない違法支出については、どうでしょうか。この点、損金算入が認められるか否かについて未だ争いがあるところです。条文が禁止していなければ損金算入できるという考えも成り立つと思います。他方で最高裁平成6年決定のように、法人税法では、その所得金額の計算においては、公正処理基準に従って会計処理を行うとされているので(法人税法22条4項)、公正でなければならないという点を強調すれば、広く一般に違法支出の損金算入は認められないと考えも成り立つと思います。

最後に

法人税法違反があるなどとして刑事事件化した場合には、脱税事件に強い弁護士のサポートが不可欠といえます。課税処分に不服がある場合にはこちらhttps://datsuzei-bengoshi.com/fufukumousitate/
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

【報道解説】単純無申告罪とは

2024-05-22
所得税

単純無申告罪として起訴されたとする報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 報道の内容

 漫画家としての所得を申告せず4700万円を脱税したとして、福岡地検は漫画家池田恵理香容疑者(36)を所得税法違反(単純無申告)で福岡地裁に在宅起訴した。2日付。

 起訴状などによると、池田容疑者は2019年から21年までの3年間で、出版社からの原稿料や印税収入で計約2億6000万円の所得があったが、期限までに確定申告書を提出せず、所得税約4700万円を脱税したとしている。

 関係者によると、池田容疑者はペンネーム「ねこクラゲ」で活動し、月刊誌で連載中の人気漫画「薬屋のひとりごと」の作画を担当している。

引用:読売新聞オンライン「『薬屋のひとりごと』作画の漫画家、4700万円脱税で在宅起訴…2億6000万円申告せず」(2024.4.5)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240405-OYT1T50048/

2 単純無申告罪とは

報道にある、所得税法上の単純無申告罪とは、正当な理由なく納税申告書(確定申告書等)をその提出期限までに提出しないことで成立する犯罪であり、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する(ただし、情状により、その刑を免除することができるとされています)とされています(所得税法241条)。

報道にありますように、収入(報道では原稿料や印税収入)が発生している場合、所定の日までに納税すべき額を確定させるための手続として、確定申告を行う必要があります。
これを怠った場合、単純無申告罪として、処罰の対象となります。

3 確定申告書の提出を怠った場合の対応・注意点・弁護活動

所定の期限までに確定申告書を提出しなかった場合、上記のように刑罰を科される可能性があります。
なお、正当な理由がある場合には、単純無申告罪は成立しないことになりますが、少なくとも確定申告をする必要があることをしらなかったということでは、正当な理由があるということになりません。

それ以外にも、本来納付すべきだった税金に加え、ペナルティとしてかされる税金(延滞税や加算税と呼ばれます。)を納付する義務が生じます。
そこで、確定申告書の提出を怠った場合には、なるべく早期に、自ら正しい申告(修正申告と呼ばれます。)を行い、ペナルティとして課される税金を含めた税金を納めていくという対応が考えられます。

こうした修正申告を早期に行うことによって、(報道のように刑事裁判になった後は)より有利な判決を求めていくことが可能となります。
さらに、報道とは異なり、刑事裁判となる前であれば、本来納付すべき税金の額や申告を怠っていた期間などにもよるとは思いますが、早期に修正申告、納税をすることにより、弁護士が、検察官に対し、不起訴や正式な裁判手続によらずに罰金刑とするように求めていくという動きが考えられます。

もっとも、修正申告をするといっても、事案に応じて様々な検討をする必要があります。
報道においては、所得税のみが問題となっているようですが、それとは異なり、消費税や住民税も問題となるような場合において、すべての税金を、ペナルティとして課されるものも含めて一度に支払うだけのお金がないとき、どの税金を優先して対応していくのか検討する必要があります。
そういった場合においては、弁護士が、刑事事件における見通しなどを踏まえて、場合によっては税理士さんと協力しながら対応していく必要があります。

4 最後に


弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、所得税法違反など多数の事件を取り扱っています。脱税事件の容疑を掛けられ、刑事裁判に掛けられた方、税務署による調査などが入ってしまい不安の方、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

税務調査において事前通知が行われない場合(無予告調査)

2024-05-15
脱税捜査

税務調査において、事前通知が行われない場合もあるのでしょうか、また、その場合、どう対処すべきでしょうか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

税務調査は断れない

納税者の中には、税金を払う必要があるのに全く納税申告をしていない人、あるいは申告はしているものの正しい申告をしていないおそれのある人がいます。課税庁には、こうしたケースの場合、必要に応じて、納税者などに対して質問をし、帳簿書類などを検査する権限が与えられています。このように課税に必要な質問や検査をすることを税務調査といいます。
国税通則法第74条の2~6は、このような質問検査権を定めており、また、同法128条は、質問に対する不答弁、検査の拒否・妨害等については、刑罰が科されることを定めています。したがって、税務調査自体を断ることはできません。
課税庁は、この権限に基づき企業における契約関係や資金の流れ等について詳細な調査を実施することから、本来は、法人税等の課税目的で行われる調査であるにもかかわらず、この調査の過程で、脱税事案のみならず、役職員による横領・背任・詐欺、贈賄等の他の不正行為が発覚することもあります。

事前調査なしの税務調査(無予告調査)

税務調査が行われる場合、課税庁は、納税義務者に対し、あらかじめ、調査を開始する日時・場所、調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等を通知しなければならないとされています(国税通則法74条の9・1項)。このように、税務調査が行われる場合には、課税庁から事前連絡があるのが原則です。
しかし、事前連絡なしで、いきなり会社や店舗に調査官が訪れるケースもあり得ます。このような税務調査を無予告調査といいます。無予告調査は、一般的に現金商売の会社に入りやすいと言われています。たとえば現金商売の場合、事前に通知をすることで、その時だけ現金の調整をされてしまうと、税務調査に出向く意味がなくなってしまうからです。
この無予告調査は、法律で認められている調査であり(国税通則法74条の10)、国税庁が出している税務調査手続きに関するFAQ(一般納税者向け)には、「法令の規定に従い、申告内容、過去の調査結果、事業内容等から、事前通知をすると、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ、又は、その他、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断した場合には、事前通知をしないこともあります。なお、事前通知が行われない場合でも、運用上、調査の対象となる税目、課税期間や調査の目的などについては、臨場後速やかに説明することとしています。」と記載されています。
このように、「事前通知なしの税務調査もあり得る。」ということは頭に入れておく必要があります。

無予告調査の日程変更は場合により可能である

税務調査自体を断ることはできませんが、法律上、やむを得ない事情があれば、日程の変更は可能です(国税通則法74条の9・2項、国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係通達5-6)
ここでいう「やむを得ない事情」とは、典型的には、経営者や経理担当者の入院、家族の葬儀などが該当しますが、「顧問の税理士(あるいは、税法に精通した弁護士)に税務調査の立会を依頼しているが、その人の日程と会わないので今日はその人が立ち会えない。」「調査対応する税理士(あるいは、税法に精通した弁護士)を探す時間が欲しい。」などという事情もやむを得ない事情となり得ると考えられます。
調査のプロである調査官といえども、調査官が言うことが全て正しいとは限らず、事実認定や税法の解釈を誤っていることもあり得ます。このような場合、税務の専門家が立ち会っていれば、事実認定や税法の解釈について適切に反論してもらうことができるなどのメリットがあり、このような反論により税務調査の結果が大きく変わることもあります。
顧問税理士等と無予告で税務調査が入った場合の対処法をあらかじめ話し合っておくのもよいでしょう。

最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

【捜査解説】脱税事件における共謀共同正犯について詳しく解説

2024-05-08
脱税捜査

脱税事件における共謀共同正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が具体例を交えながら詳しく解説します。

共謀共同正犯の具体例

 会社の実質的経営者Aとその会社の名義上の代表取締役で経理を担当していた者Bとの間で法人税の脱税をすることについて概括的な通謀がなされて、その通謀に基づいてBらが虚偽申告などの脱税行為に及んだ場合は、必ずしもAにおいて虚偽申告の内容を逐一認識していなくても、法人税の脱税につき共謀共同正犯が成立します。

共謀共同正犯の捜査

上記事例のように、法人内部において、その事業等の全般にわたって実質的経営者と経理全般を担当している者との間で、共謀の有無を争うということはよくあるケースであり、そのほとんどが、実質的経営者が経理担当者に任せていたので細かいことは知らないなどとする共謀の否認です。
このようなケースでは、検察官は「実質的経営者は、その事業等による年間の所得等を前提に資金繰りや自らの生活設計等を行っているはずであるから、その事業等から生じる所得とこれに対する税額に無関心であるということは極めて希であるはずである。したがって、このような立場の者が経理担当者との共謀を否認するのは、自己の刑事責任を回避しようとしているに過ぎない。」と考えます。
そこで、まずは、実質的経営者が、まさに実質的経営者である証拠として、当該事業等から生ずる所得が同人の利得となっている金の流れについての証拠を確保し、その経営者性を明確にします。
その上で、
⑴経営者に脱税の動機があること、
⑵経営者が税の申告を含む事業遂行上の重要事項について指示・承諾を与えていたこと、
⑶脱税に関して経営者と経理担当者らの利害が共通していたこと、
⑷経営者においても経理担当者らによる個々の不正経理を認容していた状況があること、
⑸経営者も不正経理によって生じた簿外資産の管理・処分等に関与していたこと

などの情況証拠を積み上げていき共謀の事実を認定していきます。

共謀共同正犯を疑われたら

仮に、経理担当者が単独で会社財産を横領するなどして、その結果を隠ぺいするなどのために不正経理をした結果、申告内容に誤りが生じていたような場合であれば、捜査機関に早急に事実関係を説明して対処する必要があります。
また、脱税の指示について概括的にでも経理担当者に指示を出し、その結果について報告を受けていたとなると、個々の具体的な不正経理についての認識が薄くても共謀を争うことは難しい場合もありますので、ケースバイケースで、国税当局や捜査機関に対する対応を考えていく必要があります。
 脱税事件による共謀の成否に関しては、国税当局や検察がどのような証拠をどこまで収集できたか、また、それらの証拠収集の適法性などに問題がないかなど事実認定上の又は法律上の高度で専門的な判断を要します。こうした脱税事件の公判に対応していくためには、これらのことに精通した弁護士に依頼することが必要となります。脱税事件の流れはこちらhttps://datsuzei-bengoshi.com/datuzei_nagare/

 あいち刑事事件総合法律事務所には、これらのことに精通した弁護士が多数在籍しております。このような事態にいたったときは、是非、弊所にご相談ください。

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