Archive for the ‘事件別’ Category

【事件解説】大阪国税局が大阪の会社、元税理士らを告発

2025-02-05
告発

大阪市阿倍野区内にある税理士事務所の代表らを大阪国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

大阪阿倍野区にある税理士事務所の代表であるA税理士が、顧問先の2つの会社に脱税を指南し、脱税させたとして、大阪国税局は、A税理士を法人税法違反などの疑いで大阪地方検察庁に告発しました。A税理士は、自己の顧問先に架空の請求書を用意させ、いずれも同じく自己の顧問先である大阪府寝屋川市の空調設備会社であるB会社と大阪市城東区の測量会社であるC会社に架空の外注費を計上させて所得を少なく見せかける手口で、脱税を指南していたということです。

大阪国税局の調査では、1昨年までの3年間で、2つの会社を合わせて計3億円余りの所得を隠し、脱税額は約1億2700円に上るとのことです。Aは、隠した所得の一部を報酬として得ていました。

また、B会社及びC会社の両前社長とも法人としての両会社も脱税した疑いで大阪国税局に告発されました。

(2024年12月4日、THE SANKEI SHIMBUNの記事より一部改変)

https://www.sankei.com/article/20241204-3466LCRGSVOK3CB6UB2P2GC2NQ

税理士が刑事罰の対象になる場合

主犯である納税義務者が脱税犯として処罰の対象になる(査察の対象になる)ような売上除外や架空経費の計上などの実行行為を行った場合に、税理士がそれと知りながら内容虚偽の申告書を作成し提出したような場合、脱税を手助けしたとして脱税幇助犯(刑法62条1項)となる可能性があります。

それを超えて、税理士が、納税義務者と共謀して主体的に脱税行為を行ったり、脱税した税金を山分けしていたら共同正犯者(刑法60条)として、納税義務者と同様に正犯(犯罪の実行者)の責任を負うことになります。

本件におけるA税理士は、自己の顧問先に架空の請求書を用意させるなど、納税義務者と共謀して主体的に脱税行為を行っており、共同正犯者として納税義務者と同等の責任を負う可能性が高いと考えられます。

また、税理士という職業からして、税務に関する専門家として、納税義務の適正な実現を図ることを使命としている(税理士法1条)ため、刑事罰の対象となった場合、一般人以上に厳しい処罰が要請されると考えられます。

最後に

今回は、実際報道されている事件をもとに、解説しました。 納税義務者でなくても他人の脱税に関与してしまったという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが重要と考えられます。ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され(最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。)、かつ、有罪となるという実情があるからです。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。

【報道解説】架空の外注費を計上するなどして刑事告発

2025-01-22
告発

架空の外注費を計上するなどして法人税法などを脱税したとして刑事告発されたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 報道の内容

「佐賀市にある化粧品会社の代表取締役らが、架空の外注費を計上するなどの方法で法人税などおよそ3200万円を脱税したとして、福岡国税局から告発されました。

告発されたのは、佐賀市兵庫北にある化粧品の製造や販売などを行う」会社の代表取締役と、その取引先の役員です。

「福岡国税局によりますと、代表取締役と取引先の役員は共謀して、化粧品会社から取引先への貸付金を架空の外注費として計上するなどの方法で所得を少なく見せかけていた疑いがあるということです。

福岡国税局は令和3年12月までの1年間に1億2700万円あまりの所得を隠し、法人税などおよそ3200万円を脱税したとして、化粧品会社と2人を福岡地方検察庁に告発しました。」

引用:佐賀 NEWS WEB(配信日:令和6年12月25日)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/saga/20241225/5080018634.html

2 法人税法違反

法人税とは、法人の各事業年度の所得に対して課される税金です。
そして、法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とされています(法人税法22条1項)。

報道によると、告発された代表取締役と取引先の役員は、化粧品会社から取引先への貸付金を架空の外注費として計上するなどの方法で所得を少なく見せかけていた疑いがあるとされています。
貸付金は、将来金銭を受け取る権利を表す資産として計上すべきであるにもかかわらず、それを架空の外注費、つまり損金に含まれる費用として計上することによって、所得を少なく見せかけていた疑いがかけられているものと考えられます。

このような脱税行為は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処し、またはこれを併科するとされています(法人税法159条1項)。
また、法人住民税などにも違反することも考えられます。

3 告発

報道によると、化粧品会社、代表取締役、取引先の役員は、福岡国税局から検察庁に告発されていることから、今後、法人税法違反などにより、刑事事件として取り扱われ、取調べや刑事裁判にかけられる可能性があります。

4 弁護活動について

刑事告発されたが、脱税したわけではないと主張していく場合には、今後行われるであろう取調べの中で、事情を説明する必要があり、そこには弁護士のアドバイスが必要になってきます。

また、脱税に該当するとしても、その認識や経緯などを踏まえて、取調べの中で説明していく必要があります。
特に、報道のような共犯事件の場合、誰が言い出したものなのか、役割分担がどうだったのかなどの点も問題となってくるので、適切な対応が必要になります。
さらに、脱税に該当するとすれば、本来納めるべき税金に加え、制裁としてさらに税金(重加算税といいます。)が課されることになると思われますが、それらについて修正申告した上で、率先して納めていくという動き方も考えられます。
そうした税金を納めるだけの資金がある場合にはそれほど問題になりませんが、十分な資金がない場合には、どの税金から、どのような時期に、納めていくかを検討する必要もあり、そこには弁護士によるアドバイスが必要になってくることが考えられます。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。法人税法違反で刑事告発された方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【報道解説】配信で受け取った金銭が収益になる

2024-12-18
報道

確定申告をせずに所得税を脱税したとして刑事告発されたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 報道の内容

確定申告をせず所得税およそ7800万円を脱税したとして、神奈川県大和市の女性が東京国税局から刑事告発されました。その女性は、自身をモデルとした成人向け動画を有料の会員制サイトなどで配信し、収益を得ていたとのことです。
引用:NEWSポストセブン(令和6年11月26日配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ed1c0225aaef59e09b4c1066872c9215a9a94afa

2 所得税法違反について

個人の所得に対しては、所得税という税金が課されています。
所得があった者については、原則として、自ら税務署に申告し、納めるべき税金の額を確定させる、確定申告を行う必要があります。
どのようなものが所得に該当するかは、法律で定められていますが、今回、紹介した報道において、刑事告発された女性は、自身をモデルとした成人向け動画を有料の会員制サイトなどで配信し、収益を得ていたとされています。
この配信活動が事業とみなされ、そこから生じた事業所得であると判断されたため、所得税が課されるにもかかわらず、確定申告をせず、納めるべき税金を納めていないことから所得税法違反として、刑事告発されたものと考えられます。

3 どのような金銭が事業所得に当たるのか

昨今、一般の方も、インターネットで動画や音声を配信するということが身近になっており、その際、何らかの金銭を受け取るということもあると思います。
では、配信活動に伴って受け取った金銭が「事業所得」に当たるでしょうか。
事業」とは、自己の計算と危険において営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動をいいます。
そうすると、たとえば、一度、ネット配信を行い、その際に、金銭を受け取ったというのであれば、多くの場合、「事業」に当たらないと考えられます。
もっとも、注意すべきなのは、回数が少なければ「事業」に当たらないというわけではなく、たとえば、元々、インフルエンサーのような活動をしており、それに付随してネット配信をした際に、金銭を受け取った場合、「事業」性が認められる場合もあると考えられますので、「事業」の該当性に関しては、活動の規模と態様、相手方の範囲など、様々な事情を考慮して判断する必要があります。
なお、受け取った金銭が事業所得に当たらないとしても、その他の所得としてとして課税対象になる場合がありますので、注意が必要です。

4 弁護活動について

ネット配信の際に受け取った金銭について、確定申告をしていない場合、まずは、事業所得に当たるものかどうかを判断する必要があり、弁護士からのアドバイスを受けることが有益です。
その上で、所得として計上し、申告することが必要だと考えられる場合には、改めて申告する必要があります。
その際には、税理士と協力するといった動き方も考えられます。
また、報道においては、刑事告発されているため、今後、刑事裁判にかけられる可能性があります。
事案にもよりますが、先に自ら申告し、納税していくということは、刑事裁判を回避できるかどうかにも繋がる可能性がありますし、仮に、刑事裁判になったとしても、有利な事情として考慮されます。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。ネット配信で金銭を受け取ったがそれを申告していない方や、所得税法違反で既に刑事告発された方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【報道解説】アダルトサイトで自撮り動画を配信した女性を脱税疑いで刑事告発

2024-12-11
報道

東京国税局が、アダルトサイトで自撮り動画を配信して2億円を超える収入を得ていた女性を、所得税法違反の疑いで刑事告発したという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

報道の内容

自身が出演するアダルト動画を配信していた女性が確定申告せず、所得税およそ7800万円を脱税したとして、東京国税局に刑事告発されました。

東京国税局から刑事告発されたのは、神奈川県大和市の動画配信業をしている女性Aです。

A氏は、自身が出演するアダルト動画を動画配信サイトやSNSに配信するなどして収益を得ていましたが、関係者によりますと、A氏はおととしまでの3年間にあわせておよそ2億1300万円の所得を得ましたが、確定申告をせず、所得税およそ7800万円を脱税した疑いがもたれています。

脱税で得た金を自分名義の口座に貯めていたとみられていて、A氏はJNNの取材に「国税局からの指導に従い、修正申告の上、納税を済ませた」「今後は税理士指導の下、厳正な申告・納税を行う」としています。

(令和6年11月26日ヤフーニュースhttps://news.yahoo.co.jp/articles/8552aec05358f04e877c1993788e5e5072819e6cより、一部改変)

ネット配信によって得た利益

動画配信サイトやSNSの普及で、自分で撮影した動画などを配信し、それによって利益を得ることが誰でも簡単に行えるようになってきました。
ネット配信によって利益を得る方法には、①アフィリエイト(広告)収入②スーパーチャットなどの投げ銭③動画販売などがあります。
このうち、①アフィリエイト収入については、YouTubeなどの動画配信サイトで広告が流れることがありますが、そういった広告を動画に入れることによって企業から収入を得る方法が挙げられます。
②スーパーチャットなどいわゆる「投げ銭」と呼ばれるものは、動画配信中に動画の閲覧者から金銭やアイテムなどを送金する仕組みです。代表例としては、やはりYouTubeのスーパーチャット(スパチャ)が挙げられます。
③動画販売については、顧客から要望を直接募って、要望に沿った動画を撮影して販売する方法だけでなく、会員制など有料のコンテンツとして動画を配信し、会員になった人にのみ動画を公開する方法も含まれます。

こういったネット配信によって得た収入は、当然所得となりますので、確定申告が必要です。
ネット配信では、サイト登録者数や閲覧者数が目で見てはっきりわかるため、誰がどれくらいの収入を得ているのか推測が立ちやすく、目を付けられやすいといえます。
そして、ネット配信での金銭のやり取りは、銀行口座を利用したものが多いため、一度目を付けられると、証拠まで一気に押さえられてしまうことも特徴といえます。

所得税法違反

ネット配信によって得た利益は、所得となり、個人で配信している方の場合には、所得税の確定申告が必要になります。
ちなみに、企業や団体に所属して動画配信をしている出演者の場合には、企業などに雇われているという形態であれば、サラリーマンと同じ扱いになる可能性もあるため、その場合には会社から給料をもらっていることになるため、源泉徴収がされているので、確定申告を別途行う必要はありません。

所得税の確定申告をするにあたっては、経費を差し引いた所得(課税所得)を申告する必要があります。
ここでの経費は、たとえば、動画撮影や配信に使用するために購入した機材の購入費などがあたります。

所得税の申告を怠っていた場合には、税務調査や査察調査を受ける可能性があります。
所得の額が少額である場合には、税務調査で申告漏れを指摘された部分について、修正申告を行って納税することで終了する場合が多いですが、所得の額が多かったり、意図的に所得隠しをしているなど悪質性が高いと判断された場合には、査察調査に進むこともありえます

査察調査が入ったら

査察調査に進んでしまった場合、重加算税などの重いペナルティが課せられるだけでなく、刑事告発されて刑事事件になってしまう可能性も高くなります。
査察調査は、約1年近く行われることもあり、その中で、申告されていない税額がいくらか、なぜ申告していなかったのか、悪質性が高いといえるかなどが調査されます。
所得税の場合、申告していない税額が3000万円を超えると、刑事告発されることが多いといえます。
刑事告発された場合には、検察庁が捜査を行い、場合によっては逮捕されてしまうこともあります。
そして、だいたい80%くらいの確率で起訴され、刑事裁判になった場合には、100%有罪になっています。
刑事裁判で有罪となった場合には、懲役刑以外にも罰金刑が一緒に下されることがほとんどで、罰金の額は脱税額の20~30%くらいとなっています。

Aさんの場合

今回報道されているAさんの場合には、3年間で2億円を超える収入を得ていたにも関わらず申告をしていなかったので、8000万円近い所得税を免れていたことになります。
脱税の金額が大きかったため、査察調査の上で刑事告発されたと考えられます。
今後、Aさんは検察庁で捜査を受け、起訴される可能性があります。
報道によれば、すでに修正申告と納税を済ませているということですので、この点が考慮されれば、不起訴となる可能性もありますが、刑事告発をする際には、国税局と検察庁との間で協議が行われており、協議の結果、刑事処分が相当と判断された場合に告発がされるので、起訴される可能性は高いといえるでしょう。
起訴された場合、Aさんは納税まで済ませているということですので、執行猶予判決となる可能性が非常に高いと言えます。
しかし、罰金刑も受けることになる可能性が高く、1500万円くらいの罰金が科せられる可能性があります。
弁護士に依頼して、不起訴に向けて検察官と交渉してもらったり、刑事裁判で刑罰が軽くなるような活動をしてもらうことが大事です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回相談は無料ですので、ネット配信でお困りの方は一度ご相談ください。

【事例解説】所得税法違反の共犯者として裁判に!

2024-11-20
告発

所得税法違反の共犯者として刑事裁判にかけられた事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します(事例はフィクションです。)。

1 参考事例

Xさんは、福岡県内にある建設業を営むAさんのもとで、経理として働いていました。
Xさんは、Aさんから、経理に関してはほとんど全て任されており、確定申告も実質的には全てXさんが行っていました。
Xさんは、Aさんの指示のもと、架空の経費を計上し、過少に所得を申告し、その結果、Aさんは所得税を数千万円免れていました
なお、Xさんは、Aさんの脱税に関し、一切、直接的な利益を受け取っていませんでした。
Xさんは、逮捕はされませんでしたが、Aさんと共犯(法律上は共同正犯)であるとして、所得税法違反で刑事裁判にかけられることになり、弁護士に相談することにしました。
(参考裁判例:新潟地方裁判所令和6年6月5日判決・令和6年(わ)第47号)

2 所得税法違反について

そもそも所得税は、所定の期間における収益から必要経費を控除した額(これが所得になります。)に対して課される税金です。
参考事例において、Aさんは、この必要経費をかさ増しすることによって、低い所得を申告した上で、その所得に課される税金のみを納めているため、所得税法違反となります(所得税法238条1項)。

3 Xさんの立ち位置について

参考事例において、Xさんは、所得税法違反の共犯、つまり一緒になったとして刑事裁判にかけられています。
もっとも、XさんとAさんの関係性は、実際には、Aさんから半ば強制的にさせられたのか、Xさん自身も何かしらの利益を受け取っていたのか、そもそもXさんは脱税について認識がなかったのかなど、事業者(会社も同様)によって様々なものが想定されます。
参考事例のような共犯事件においては、多かれ少なかれこの点が問題となる事案がほとんどです。

4 弁護活動について

そこで、Xさんとしては、どのような立ち位置だったのか、それを法律的にはどのような説明をしていくべきなのかを慎重に検討すべきです。
そして、Xさんがどのような説明をしていくべきかは、参考事例のように裁判になった後ではなく、捜査を受ける段階から問題となります。
ですので、Xさんとしては、Aさんに税務調査が入るなどして、今後、脱税の容疑がかけられる可能性が出てきた段階で、弁護士に相談し、今後、取調べなどでどのように説明していくか、アドバイスを受ける必要があります。
上に挙げた新潟地裁の判決においても、Xさんのような立ち位置の人に対し、その「関与なくしては成り立たなかった」として、懲役刑が科され、執行猶予が付されています。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。脱税の共犯に疑われているなどで不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【事件解説】東京国税局が光学部品会社と同社の社員(実質経営者)を告発

2024-10-23
告発

光学部品会社と同社の社員(実質経営者)を東京国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。(前回と同じ事件の補足解説)

事件の概要

売上げを正しく計上せず脱税したとして、東京国税局査察部が、光学部品会社であるA社と同社の社員(実質経営者)であるB氏を法人税法違反の疑いで東京地検に告発したことがわかりました。告発は、2024年5月31日付けです。

関係者によりますと、A社は、医療用の光学部品を香港に輸出するなどして利益をあげていましたが、受け取った売上代金の一部をB氏からの借入金の返済を装って、A社の口座からB氏の個人口座に送金するなどしていたとのことです。この方法で2023年3月期までの3年間で計約2億1500万円の所得を隠し、約5200万円を脱税した疑いがあります。隠した所得はB氏が自宅兼社屋の購入に充てたり、預金したりしていたとみられています。

(2024年9月19日、朝日新聞DIGITALの記事より。一部改変)

刑事告発

本事件では、法人税法違反の疑いで東京地検に告発がなされています。

ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。https://datsuzei-bengoshi.com/datuzei_kokuhatu/

告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。

場合によっては、被疑者を逮捕して身体拘束をしながら取り調べなどを行います。

そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定します。

国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は最近では約8割から9割の高率です。

起訴された場合には、刑事裁判が始まります。

告発の基準について

告発の基準は、公にされていません。この点、かつては、実務の運用として、法人税法違反や所得税法違反の場合、一般的には1億円以上の脱税をしたことが、告発の条件とされているともいわれていました。

しかし、本事案がまさにその場合にあたるといえますが、脱税した金額が1億円に満たないものであっても、売上の一部について借入金として計上する偽装工作を施すなど、脱税の手段が悪質である場合やほ脱率(実際の税額に占める脱税額の割合のことです。)が高く、実際の利益に比較して、ほとんど税金を納めていないような場合などの場合には、告発に至る場合があるので注意が必要です。

最後に

今回は、実際報道されている事件をもとに、解説をしました。

既に述べましたように、ひとたび刑事告発を受けると、極めて高い割合で起訴に至っています。そのため、本事案のような場合、国税局査察部の査察調査が入った時点、あるいは、査察調査が入ることが確実にわかった時点で早急に弁護士に相談して告発を避けるための活動をしていくことが重要になります。 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で承っていますので、早急にお問い合わせください。

【報道解説】法人税法違反で東京地検に告発

2024-10-17
報道

法人税法違反で東京地検に告発されたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。


1 報道の内容


法人税約5200万円を脱税したとして、東京国税局が、医療機器関連会社(東京都八王子市)と同社の実質経営者を法人税法違反容疑で東京地検に告発したことがわかった。
関係者によると、同社は医療機器の設計などを手がけ、中国や香港に輸出するなど企業向けに販売していたが、売り上げの一部を除外する手口で、2023年3月期までの3年間で計約2億1500万円の所得を隠した疑い。実質経営者からの借入金の返済を装い、同社の口座から実質経営者の個人口座に送金するなどしていたという。隠した所得は実質経営者が自宅の購入費などに充てたとみられる。

読売新聞オンラインの記事より引用
https://news.yahoo.co.jp/articles/7b9835089f4e377362655b5e1793dda96a3ecb05


2 法人税法違反について


報道では、告発された会社は、売上の一部を除外する方法で、3年間で約2億1500万円の所得を隠した疑いがあるとされています。
法人税は、法人の各事業年度の所得の金額にかかる税金です。
そして、その所得とは、法人の、一定期間における収益から、それを得るのに必要な費用を控除する方法で計算されます。
報道で告発された会社は、この収益を、本来申告すべき金額よりも低い金額で申告しており、それが法人税に違反するとして告発されたものと思われます。


3 告発されるとどうなるか


報道では、会社と実質的経営者が東京地検(東京地方検察庁)に告発されたとされています。
これは、今後、会社と実質的経営者が刑事責任を問われる可能性がある立場になったことを意味します。
法人税違反の場合、主に、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金またはその併科が課される可能性があります。
ここで注意するべきなのは、本来納めるべき税金を納めなかったために納める必要がある追徴課税と刑事処分は全く別もので、前者をきちんと納めたから後者を課される可能性がないというものではないということです。


4 今後とうすべきか・弁護活動


報道にある実質的経営者は、今後、刑事事件として取調べを受けることが予想されます。
そもそも脱税をしていない、脱税だと思わなかったなど無実を主張していく場合だけではなく、仮に、脱税したこと自体に争いがなくとも、脱税に至った経緯や、他に実質的に利益を得ている者や主導した者がいるかどうかなど、どのような刑事処分となるかという点に影響が出る事情もありますので、しっかりと取調べの対応をする必要があり、弁護士のアドバイスが必要になります。
また、事案によっては身体拘束を受ける可能性があるものもあります。
その場合には、早期に釈放ができないか検討したり、弁護士が接見(面会)をし、取調べのアドバイスをする必要があります。
さらに、たとえば、追徴課税も含めて本来納めるべき税金を納めることを検討することも必要です。


5 最後に


弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。国税庁から告発され刑事事件化するかもしれない、脱税をした件で検察官から呼び出されていて不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【事例解説】「頂き女子りりちゃん」控訴審判決 脱税事件としての解説

2024-10-12
判決

脱税事件を起こしてしまった場合、延滞税や各種加算税(https://datsuzei-bengoshi.com/zei/)が課せられるほか、検察官に起訴されて刑事裁判となった場合は、高額の罰金も命じられます。しかし、脱税事件で科せられるのは金銭的なペナルティだけではありません。脱税事件も刑事事件である以上、懲役刑も言い渡されます。
今回は、著名な報道事例を脱税事件の観点から取り上げるとともに、脱税事件の中でも実刑判決が言い渡されるリスクが高い類型を解説していきます。

【報道事例】


頂き女子りりちゃん」を名乗り、男性から恋愛感情を悪用して1億円以上をだまし取るなどの罪に問われた女の控訴審で、名古屋高裁は9月30日、懲役8年6カ月を言い渡しました。「頂き女子りりちゃん」こと被告は、マッチングアプリなどで知り合った男性3人から、恋愛感情を悪用して合わせて1億5500万円余りをだまし取った罪などに問われていました。(9月30日付ヤフーニュースの記事より引用。一部修正)。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9618fbcd5705bf2e78160cee498398f2332b556b

【事例解説】


本事例は著名な詐欺事件として報道されていましたが、各種税法に違反した脱税事件でもあります。被告は詐欺によって得た金銭を税申告していなかったため、所得税法違反も起訴罪名に加えられています。
いわゆるパパ活(頂き女子もその一類型といえます)では、お金のやりとりが個人間にとどまるため,適切な税申告を欠きやすいという問題点があります。ケースによっては、かなりの額のお金が動くため、個人であっても税務調査を受けてしまう可能性があります。報道事例の被告のように、詐欺罪などの別件で捜査が始まり、併せて税務調査も行われて脱税が発覚してしまうケースもあり得ます。
本件は、いわゆる頂き女子が被告になっただけでなく、脱税事件として実刑判決が言い渡されたことも注目すべき点です。なお、一審判決では懲役9年、罰金800万円の実刑判決が言い渡されていました(名古屋地判令和6年4月22日)。
控訴審では懲役6月分の減刑がされていますが,報道によりますと、被告が第三者を介して被害者に損害賠償を行ったこと等がその理由のようです。

【脱税事件で実刑になりやすいケースとは】


脱税事件として起訴され刑事裁判となっているケースは毎年のようにありますが、執行猶予がつかず、そのまま服役することになる実刑判決が言い渡されるケースは、必ずしも多くはありません。
報道事例のケースで実刑判決が言い渡された理由としては、主に次の2点が原因と考えられます。まず1つ目は脱税額の高さです。脱税事件は国家の徴税権を侵害することを原因に処罰されます。このことはあまりに自明なため触れていない裁判例も多いですが、松山地判令和4年2月3日のように、比較的近時の裁判例でも、法の趣旨について言及しているものもあります。そのため、脱税額が高額になるほど、実刑判決が言い渡される可能性が高くなります。
逋脱税額の高さが原因となり実刑判決が言い渡されたケースとしては、東京地判平成30年11月20日(実刑懲役4年。逋脱所得は約35億4300万円。逋脱税額は約10億6000万円)などがあります。
これに対して報道事例では、逋脱税額はそこまで高額ではないものの(逋脱所得は約1億5500万円。逋脱額は約4000万円)、法人ではなく個人の所得税としての脱税なので、高額な部類に入るとはいえます。
もう1つは、脱税以外の別罪が問題になるケースです。報道事例では,刑法犯である詐欺罪及び詐欺幇助でも起訴されています。前科等がない初犯での脱税事件では、逋脱税額が億単位になることで実刑も視野に入りますが、詐欺罪の場合は、百万円単位の被害額でも実刑が言い渡される傾向にあります。
報道事例では、脱税事件としては極端に高額な逋脱税額とはいえませんが、詐欺事件としてはかなり高額の被害額であるため、長期の実刑が言い渡されたと考えられます。

【事件解説】千葉で国税徴収法違反(滞納処分免脱)事件で有罪判決

2024-10-02
判決

千葉県銚子市で発生した国税徴収法違反(滞納処分免脱)事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が詳しく解説します。

事件の概要

千葉県銚子市所在のゴム製品の製造販売会社が税の滞納処分の執行を免れようと会社の財産約1億6200万円を隠匿したという国税徴収法違反(滞納処分免脱)事件について、令和6年9月4日に、千葉地方裁判所で、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金50万円の判決言渡しがなされましたhttps://www.chiba-tv.com/plus/detail/202406100583
この事件の手口は、2017年7月から2023年8月までの間、取引3社に対し、受け取る代金およそ1億6200万円を自分以外の口座に入金させて、その会社の財産を隠匿したというものでした。

滞納処分の手続

そもそも、税金は、納税義務を具体化し、その納付すべき税額を確定させる課税処分があり、その課税処分によって確定した税額が納期限までに完納されない場合に、税債権の強制的実現を図る徴収手続きである滞納処分が実行されていくというプロセスをたどります。
課税処分により具体的な税額が確定し、その納期限が1日でも過ぎれば滞納の状態となります。そして税務署から督促状が届き、電話や文書による納税の催促の連絡がきます。それでも無視していると、預貯金や不動産などが差し押さえられた上、差し押さえられた資産が換金されて滞納した税金に充当されていきます。
このとき、滞納処分には自力執行力があるので、差押に当たっては、裁判所の判決や令状などは一切必要ありません

今回の事件のポイント

ただ、滞納処分とは言え、差押ができるのはあくまで納税義務者名義の資産ということになります。
今回の事件では、ここに目を付けたのです。つまり、取引先の会社に、納税義務者の名義ではない別名義の口座に売り上げなどの代金を振り込んでもらったのです。
本来は、それらの代金は、納税義務者の資産のはずですが、納税義務者の名義と異なる名義の口座に売り上げなどの代金が振り込まれたため、滞納処分によっても直ちにそれらの資産を差し押さえることができなくなっていたのです。
これこそまさに資産の隠匿であり、滞納処分を逃れるための違法な行為ということになります。
このような行為は、これに共謀又は加担するなどした取引先の裏付け捜査、振込がなされた別名義の口座の金の動きなどを調べることによりその全容が明らかにされていきます。
そして、このような行為に対しては、3年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金、又は併科される処罰を受けることになります。

滞納処分に関する事件に関与してしまったら

こうした事件を起こしてしまった、あるいは加担してしまった、国税局の調査が入った、検察の捜査が始まったなどの場合、国税当局や検察がどのような証拠をどこまで収集できたか、また、それらの証拠収集の適法性などに問題がないかなど事実認定上の又は法律上の高度で専門的な判断を要します
こうした事件の公判に対応していくためには、これらのことに精通した弁護士に依頼することが必要となります。

あいち刑事事件総合法律事務所には、これらのことに精通した弁護士が多数在籍しております。このような事態にいたったときは、是非、弊所にご相談ください。

【告発事例】いわゆる「つまみ申告」を行って所得を秘匿した事案

2024-09-25
告発

大阪国税局が発表した令和5年度査察の概要に紹介されている、いわゆる「つまみ申告」を行って所得を秘匿した事案について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

Aは、大阪市城東区において医療コンサルタント業を営んでいる者であり、医療コンサルタントとして、調剤薬局を開設できる場所の選定や交渉などにより、多額のコンサルタント収入を得ていたにもかかわらず、殊更過少な申告、いわゆる「つまみ申告」をして所得を秘匿し、所得税を免れていました。
脱税額は約8200万円であり、隠した所得は預金に充てていました。

つまみ申告とは

二重帳簿を作成するなどの典型的な「隠蔽・仮装」工作を行うことなく、場合によっては正確な所得金額など示す帳簿書類を備えていながら、所得金額や収入金額の一部のみを故意につまみ出し、つまみ出した過少な所得金額などを申告書に記載して提出することです。
今回の事例では、医療コンサルタント業を営む者として多額のコンサルタント収入を得ていたにもかかわらず、いわゆるつまみ申告を行ったもので悪質性が高いと評価されたこと、脱税額自体も多額であることなどで、告発されたものと思われます。

告発されるとどうなるか

刑事告発を受けた検察庁は、Aさんを被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。
最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。
また、起訴された場合には、刑事裁判が始まりますが、国税局が令和6年に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和5年度中の判決全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。

そのほか

つまみ申告の場合、最初から真実の所得金額を隠蔽し、税務調査があれば、さらに隠蔽工作することを考えていることが多いので、税務調査でつまみ申告と判断されれば、「隠蔽、仮装」を行ったとされ、重加算税が課せられる場合が多いことにも注意が必要です。つまみ申告について、国税通則法68条1項に定める重加算税の賦課要件に該当されるとされた事例として最高裁平成6年11月22日判決があります。

最後に

既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。そのため、脱税に関与してしまったという場合には、早急に脱税事件に精通した弁護士に相談、依頼して刑事告発を避けるための活動をしていくのが重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に精通した弁護士が多数在籍していますので、刑事告発を避けるには、是非、弊社にご相談ください。

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