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【報道解説】法人税法違反で東京地検に告発

2024-10-17
報道

法人税法違反で東京地検に告発されたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。


1 報道の内容


法人税約5200万円を脱税したとして、東京国税局が、医療機器関連会社(東京都八王子市)と同社の実質経営者を法人税法違反容疑で東京地検に告発したことがわかった。
関係者によると、同社は医療機器の設計などを手がけ、中国や香港に輸出するなど企業向けに販売していたが、売り上げの一部を除外する手口で、2023年3月期までの3年間で計約2億1500万円の所得を隠した疑い。実質経営者からの借入金の返済を装い、同社の口座から実質経営者の個人口座に送金するなどしていたという。隠した所得は実質経営者が自宅の購入費などに充てたとみられる。

読売新聞オンラインの記事より引用
https://news.yahoo.co.jp/articles/7b9835089f4e377362655b5e1793dda96a3ecb05


2 法人税法違反について


報道では、告発された会社は、売上の一部を除外する方法で、3年間で約2億1500万円の所得を隠した疑いがあるとされています。
法人税は、法人の各事業年度の所得の金額にかかる税金です。
そして、その所得とは、法人の、一定期間における収益から、それを得るのに必要な費用を控除する方法で計算されます。
報道で告発された会社は、この収益を、本来申告すべき金額よりも低い金額で申告しており、それが法人税に違反するとして告発されたものと思われます。


3 告発されるとどうなるか


報道では、会社と実質的経営者が東京地検(東京地方検察庁)に告発されたとされています。
これは、今後、会社と実質的経営者が刑事責任を問われる可能性がある立場になったことを意味します。
法人税違反の場合、主に、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金またはその併科が課される可能性があります。
ここで注意するべきなのは、本来納めるべき税金を納めなかったために納める必要がある追徴課税と刑事処分は全く別もので、前者をきちんと納めたから後者を課される可能性がないというものではないということです。


4 今後とうすべきか・弁護活動


報道にある実質的経営者は、今後、刑事事件として取調べを受けることが予想されます。
そもそも脱税をしていない、脱税だと思わなかったなど無実を主張していく場合だけではなく、仮に、脱税したこと自体に争いがなくとも、脱税に至った経緯や、他に実質的に利益を得ている者や主導した者がいるかどうかなど、どのような刑事処分となるかという点に影響が出る事情もありますので、しっかりと取調べの対応をする必要があり、弁護士のアドバイスが必要になります。
また、事案によっては身体拘束を受ける可能性があるものもあります。
その場合には、早期に釈放ができないか検討したり、弁護士が接見(面会)をし、取調べのアドバイスをする必要があります。
さらに、たとえば、追徴課税も含めて本来納めるべき税金を納めることを検討することも必要です。


5 最後に


弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。国税庁から告発され刑事事件化するかもしれない、脱税をした件で検察官から呼び出されていて不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【事例解説】「頂き女子りりちゃん」控訴審判決 脱税事件としての解説

2024-10-12
判決

脱税事件を起こしてしまった場合、延滞税や各種加算税(https://datsuzei-bengoshi.com/zei/)が課せられるほか、検察官に起訴されて刑事裁判となった場合は、高額の罰金も命じられます。しかし、脱税事件で科せられるのは金銭的なペナルティだけではありません。脱税事件も刑事事件である以上、懲役刑も言い渡されます。
今回は、著名な報道事例を脱税事件の観点から取り上げるとともに、脱税事件の中でも実刑判決が言い渡されるリスクが高い類型を解説していきます。

【報道事例】


頂き女子りりちゃん」を名乗り、男性から恋愛感情を悪用して1億円以上をだまし取るなどの罪に問われた女の控訴審で、名古屋高裁は9月30日、懲役8年6カ月を言い渡しました。「頂き女子りりちゃん」こと被告は、マッチングアプリなどで知り合った男性3人から、恋愛感情を悪用して合わせて1億5500万円余りをだまし取った罪などに問われていました。(9月30日付ヤフーニュースの記事より引用。一部修正)。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9618fbcd5705bf2e78160cee498398f2332b556b

【事例解説】


本事例は著名な詐欺事件として報道されていましたが、各種税法に違反した脱税事件でもあります。被告は詐欺によって得た金銭を税申告していなかったため、所得税法違反も起訴罪名に加えられています。
いわゆるパパ活(頂き女子もその一類型といえます)では、お金のやりとりが個人間にとどまるため,適切な税申告を欠きやすいという問題点があります。ケースによっては、かなりの額のお金が動くため、個人であっても税務調査を受けてしまう可能性があります。報道事例の被告のように、詐欺罪などの別件で捜査が始まり、併せて税務調査も行われて脱税が発覚してしまうケースもあり得ます。
本件は、いわゆる頂き女子が被告になっただけでなく、脱税事件として実刑判決が言い渡されたことも注目すべき点です。なお、一審判決では懲役9年、罰金800万円の実刑判決が言い渡されていました(名古屋地判令和6年4月22日)。
控訴審では懲役6月分の減刑がされていますが,報道によりますと、被告が第三者を介して被害者に損害賠償を行ったこと等がその理由のようです。

【脱税事件で実刑になりやすいケースとは】


脱税事件として起訴され刑事裁判となっているケースは毎年のようにありますが、執行猶予がつかず、そのまま服役することになる実刑判決が言い渡されるケースは、必ずしも多くはありません。
報道事例のケースで実刑判決が言い渡された理由としては、主に次の2点が原因と考えられます。まず1つ目は脱税額の高さです。脱税事件は国家の徴税権を侵害することを原因に処罰されます。このことはあまりに自明なため触れていない裁判例も多いですが、松山地判令和4年2月3日のように、比較的近時の裁判例でも、法の趣旨について言及しているものもあります。そのため、脱税額が高額になるほど、実刑判決が言い渡される可能性が高くなります。
逋脱税額の高さが原因となり実刑判決が言い渡されたケースとしては、東京地判平成30年11月20日(実刑懲役4年。逋脱所得は約35億4300万円。逋脱税額は約10億6000万円)などがあります。
これに対して報道事例では、逋脱税額はそこまで高額ではないものの(逋脱所得は約1億5500万円。逋脱額は約4000万円)、法人ではなく個人の所得税としての脱税なので、高額な部類に入るとはいえます。
もう1つは、脱税以外の別罪が問題になるケースです。報道事例では,刑法犯である詐欺罪及び詐欺幇助でも起訴されています。前科等がない初犯での脱税事件では、逋脱税額が億単位になることで実刑も視野に入りますが、詐欺罪の場合は、百万円単位の被害額でも実刑が言い渡される傾向にあります。
報道事例では、脱税事件としては極端に高額な逋脱税額とはいえませんが、詐欺事件としてはかなり高額の被害額であるため、長期の実刑が言い渡されたと考えられます。

【事件解説】千葉で国税徴収法違反(滞納処分免脱)事件で有罪判決

2024-10-02
判決

千葉県銚子市で発生した国税徴収法違反(滞納処分免脱)事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が詳しく解説します。

事件の概要

千葉県銚子市所在のゴム製品の製造販売会社が税の滞納処分の執行を免れようと会社の財産約1億6200万円を隠匿したという国税徴収法違反(滞納処分免脱)事件について、令和6年9月4日に、千葉地方裁判所で、懲役1年6月、執行猶予3年、罰金50万円の判決言渡しがなされましたhttps://www.chiba-tv.com/plus/detail/202406100583
この事件の手口は、2017年7月から2023年8月までの間、取引3社に対し、受け取る代金およそ1億6200万円を自分以外の口座に入金させて、その会社の財産を隠匿したというものでした。

滞納処分の手続

そもそも、税金は、納税義務を具体化し、その納付すべき税額を確定させる課税処分があり、その課税処分によって確定した税額が納期限までに完納されない場合に、税債権の強制的実現を図る徴収手続きである滞納処分が実行されていくというプロセスをたどります。
課税処分により具体的な税額が確定し、その納期限が1日でも過ぎれば滞納の状態となります。そして税務署から督促状が届き、電話や文書による納税の催促の連絡がきます。それでも無視していると、預貯金や不動産などが差し押さえられた上、差し押さえられた資産が換金されて滞納した税金に充当されていきます。
このとき、滞納処分には自力執行力があるので、差押に当たっては、裁判所の判決や令状などは一切必要ありません

今回の事件のポイント

ただ、滞納処分とは言え、差押ができるのはあくまで納税義務者名義の資産ということになります。
今回の事件では、ここに目を付けたのです。つまり、取引先の会社に、納税義務者の名義ではない別名義の口座に売り上げなどの代金を振り込んでもらったのです。
本来は、それらの代金は、納税義務者の資産のはずですが、納税義務者の名義と異なる名義の口座に売り上げなどの代金が振り込まれたため、滞納処分によっても直ちにそれらの資産を差し押さえることができなくなっていたのです。
これこそまさに資産の隠匿であり、滞納処分を逃れるための違法な行為ということになります。
このような行為は、これに共謀又は加担するなどした取引先の裏付け捜査、振込がなされた別名義の口座の金の動きなどを調べることによりその全容が明らかにされていきます。
そして、このような行為に対しては、3年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金、又は併科される処罰を受けることになります。

滞納処分に関する事件に関与してしまったら

こうした事件を起こしてしまった、あるいは加担してしまった、国税局の調査が入った、検察の捜査が始まったなどの場合、国税当局や検察がどのような証拠をどこまで収集できたか、また、それらの証拠収集の適法性などに問題がないかなど事実認定上の又は法律上の高度で専門的な判断を要します
こうした事件の公判に対応していくためには、これらのことに精通した弁護士に依頼することが必要となります。

あいち刑事事件総合法律事務所には、これらのことに精通した弁護士が多数在籍しております。このような事態にいたったときは、是非、弊所にご相談ください。

【告発事例】いわゆる「つまみ申告」を行って所得を秘匿した事案

2024-09-25
告発

大阪国税局が発表した令和5年度査察の概要に紹介されている、いわゆる「つまみ申告」を行って所得を秘匿した事案について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

Aは、大阪市城東区において医療コンサルタント業を営んでいる者であり、医療コンサルタントとして、調剤薬局を開設できる場所の選定や交渉などにより、多額のコンサルタント収入を得ていたにもかかわらず、殊更過少な申告、いわゆる「つまみ申告」をして所得を秘匿し、所得税を免れていました。
脱税額は約8200万円であり、隠した所得は預金に充てていました。

つまみ申告とは

二重帳簿を作成するなどの典型的な「隠蔽・仮装」工作を行うことなく、場合によっては正確な所得金額など示す帳簿書類を備えていながら、所得金額や収入金額の一部のみを故意につまみ出し、つまみ出した過少な所得金額などを申告書に記載して提出することです。
今回の事例では、医療コンサルタント業を営む者として多額のコンサルタント収入を得ていたにもかかわらず、いわゆるつまみ申告を行ったもので悪質性が高いと評価されたこと、脱税額自体も多額であることなどで、告発されたものと思われます。

告発されるとどうなるか

刑事告発を受けた検察庁は、Aさんを被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。
最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。
また、起訴された場合には、刑事裁判が始まりますが、国税局が令和6年に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和5年度中の判決全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。

そのほか

つまみ申告の場合、最初から真実の所得金額を隠蔽し、税務調査があれば、さらに隠蔽工作することを考えていることが多いので、税務調査でつまみ申告と判断されれば、「隠蔽、仮装」を行ったとされ、重加算税が課せられる場合が多いことにも注意が必要です。つまみ申告について、国税通則法68条1項に定める重加算税の賦課要件に該当されるとされた事例として最高裁平成6年11月22日判決があります。

最後に

既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。そのため、脱税に関与してしまったという場合には、早急に脱税事件に精通した弁護士に相談、依頼して刑事告発を避けるための活動をしていくのが重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に精通した弁護士が多数在籍していますので、刑事告発を避けるには、是非、弊社にご相談ください。

【事例解説】取引先からの不正なキックバック

2024-09-11
キックバック

取引先から不正なキックバックを得ていたとして追徴課税を課された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 参考事例

福岡市博多区で、建設業を営む自営業者Xは、取引先から不正にキックバックを受けていたところ、今度、税務調査を行う旨の通知が来て、脱税が発覚するのではないか、発覚した場合にはどうすればいいのか不安になり、弁護士に相談することにしました。なお、Xには、数千万円の追徴課税がなされる可能性があります(事例はフィクションです)。
(参考となる報道)
https://www.asahi.com/articles/ASS2F5WRGS2FUTIL01T.html

2 キックバックとは


キックバックとは、支払った代金の全部または一部を、発注した担当者に返還することをいいます。
参考事例において、Xは、たとえば、とある工事を500万円で外注しました(外注費)が、その取引先に対し、請求書の金額を1000万円とし、水増しした半分の250万円を現金で交付させるなどしていたことが考えられます。
このようなことをしたXは、所得を、本来申告すべき金額より過少に申告していたことになり(いわゆる所得隠しです。)、所得税法などに違反しているといえます。


3 これからXに起こり得ることとは


Xは、所得を、本来申告すべき金額より過少に申告していたとして、その差額についての所得税などだけではなく、過少申告加算税や延滞税といった追徴課税がなされ、それらを納付することを求められることが予想されます。
しかしそれにとどまらず、脱税した金額や、脱税の方法の悪質性などによっては、国税局から検察庁へ告発がなされ、Xは、今後、刑事事件として、捜査を受けることが考えられます。


4 Xに対する弁護活動


参考事例では、Xは、税務調査を受けている段階であると考えられます。
そこで、弁護士が介入し、税務調査において、適切な対応をし、あらぬ疑いまでかけられないようにすることが必要になります。
また、先ほど説明したように、Xには追徴課税がなされることが予想されます。
そこで、早い段階で、本来申告すべきだった内容で修正申告をした上で、追徴課税まで支払っていくということが考えれます。
もっとも、すぐにすべてを納税できるほど資金がない場合もありますので、どの税金から納めるのがいい方法なのか検討する必要があり、そこには弁護士や税理士といった専門家のアドバイスが必要になってきます。
そして、Xには刑事事件として捜査を受ける可能性がありますが、早期に修正申告、納税まで完了した場合には、国税局に刑事告発をしないよう交渉していくことも考えられます。
仮に刑事事件化してしまった場合であっても、通常の刑事事件ではなく、脱税事件としての特殊性がありますので、それを踏まえた弁護活動が求められます。


5 最後に


弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、多数の脱税事件を取り扱っています。税務調査の通知が来た、国税庁から告発され刑事事件化するかもしれないと不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【報道解説】転売が疑われる客に対する免税販売

2024-09-04
報道

ドラッグストアが追徴課税を受けた事件の報道をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 報道の内容

「ドラッグストア『ダイコクドラッグ』の大阪にある複数の店舗が、転売目的が疑われる中国人観光客に不適切な免税品の販売を繰り返していたと大阪国税局から指摘され、店舗を経営する2つの会社があわせておよそ3億円を追徴課税されていたことが関係者への取材で分かりました。」

「免税品を国内での転売目的が疑われる客に販売することは認められていませんが、関係者によりますと、大阪の繁華街ミナミにあるダイコクドラッグの複数の店舗では、中国人観光客に対して、スーツケースに入りきらないほどの量の化粧品や医薬品などを免税価格で販売していたことが大阪国税局の税務調査で確認されたということです。

国税局は、転売目的が疑われる客に免税販売を繰り返し、2019年から2年にわたって消費税の申告漏れがあったと指摘し、2社に過少申告加算税を含めてあわせておよそ3億円を追徴課税しました。

店舗には日本に住む案内役の中国人に連れられた観光客がたびたび訪れていたということで、不適切な免税販売の売り上げは30億円にのぼるとみられています。
 
親会社の『ダイコク』は修正申告と納付は済ませたとしたうえで『国税局の指摘を真摯(しんし)に受け止め、現在はルールにのっとった販売を行っています』としています。」

NHK「ダイコクドラッグ 転売疑いの客に免税販売か 国税局が追徴課税」(2024年6月4日)より抜粋
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240604/k10014470241000.html

2 免税店とは

物品の譲渡やサービスの提供が国内における取引であっても、その物品が輸出され、あるいはそのサービスの提供が国外で行われる場合には、それに対する消費税は免除されます。
その一環として、輸出物品販売場(これが免税店です。)において、日本に居住していない者に一定の物を販売する場合にも、消費税が免除されます。

免税店として販売しようとする場合、税務署に申請をし、許可をもらう必要があります。

3 転売目的の販売について

免税店においては、日本に居住していない者に対し「通常生活の用に供する物品」を販売する場合に、消費税が免許されています。
つまり、事業用又は販売(転売)用として購入することが明らかな場合には、免税販売対象外となります。
そこで、報道された会社は、転売目的が疑われる者に対する販売について、免税取引だとして、その分については消費税がかからないとして、申告したことが申告漏れとされたため、追徴課税がなされています。

4 修正申告について

報道された会社は、「修正申告と納付は済ませた」としています。
修正申告とは、事後的に納税者自ら従前の確定申告の内容を是正する手続をいいます。
そして、修正申告した上で、追徴課税も含めて納付を済ませたということであれば、税金に関する対応は基本的に済んでいるということになります。

もっとも、ここで注意して欲しいのは、上記のような税金に関する対応と、企業や代表者等が刑事責任を問われるかどうかは全く別の問題です。
国税庁より告発が行われ、刑事責任が問われるかどうかは、脱税した金額や脱税の方法などを考慮して、検察官が起訴するかどうかを判断し、裁判所がどのような刑罰に科するかを決定します。
そのような手続の中で修正申告が考慮される事情だとしても、修正申告をしたことで何もお咎めがないかと言われると別問題だということには注意が必要です。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、消費税法違反など多数の事件を取り扱っています。脱税をしたかもしれない、税務調査を受けることになった、国税庁から告発され刑事事件化するかもしれないなど不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【事件解説】大阪国税局が大阪の会社、元税理士らを告発

2024-08-28
告発

大阪府摂津市内の害虫駆除などの業務を営む会社と同会社の前社長、加えて元税理士を大阪国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

大阪府摂津市内の害虫駆除や建築工事などを営むA会社の前社長Bが、架空の経費を計上して所得を少なく申告し、約1億4100万円を脱税したとして、大阪国税局は、A会社と前社長Bを法人税法違反などの疑いで大阪地方検察庁に告発しました。Bは、顧問税理士から指南を受けて、下請けの会社に架空の工事費を計上して会社の所得を少なく見せかけ、令和3年までの3年間で約3億8900万円の所得を隠していたことが大阪国税局の調査で明らかになりました。脱税で得た金について、Bは自らのマンションの購入資金にあてていたということです。
また、顧問税理士だったCも指南の見返りに得た約9400万円の収入を申告せず,約3400万円を脱税したとして所得税法違反の疑いで告発されました。
BとCはいずれも申告を修正し、納税を済ませたということです。
(2024年7月3日、関西NEWS WEBの記事より。一部改変)
https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240703/2000085653.html

刑事手続

Bさんは、法人税法違反などの疑いで刑事告発を受けています。
また、Cさんも所得税法違反の疑いで刑事告発を受けています。
刑事告発を受けた検察庁は、Bさん、Cさんを被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。
最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。
国税局の査察部が、調査を遂げた後、検察官と国税局の間で会議(この会議を告発要否勘案協議会といいます。)が設けられます。起訴率が高いのは、同会議で告発するかどうかの判断がなされ、検察官によって告発を受理することが認められた時間だけが、実際に告発に至っているという実情があるからです。
なお、今回の報道では、Bさん、Cさんは既に修正申告を済ませているとされています。
修正申告とは、確定申告で過小な申告を行っていた場合に、正しい内容に修正して申告するものです。告発された後、検察官が起訴するか否かを決めますが、その判断に際し、既に修正申告をしているかどうかということは重要な事実になります。

起訴された場合

起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
国税局が令和6年に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和5年度中の判決件数83件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。
有罪となった場合、多くの場合、執行猶予付きの判決が下されますが、懲役刑のみならず、罰金刑が課される場合もあります。
罰金の額は、法人税や所得税の場合、脱税額の20~30パーセントであるのが通常であり、本事例において、Bさんは、約1億4000万円の税金を免れたということから、3000~4000万円くらいの罰金額が予想されます。また、Cさんは、約3400万円の税金を免れたということから、700から1000万円くらいの罰金額が予想されます。

最後に

今回は、実際報道されている事件をもとに、解説しました。
脱税に関与してしまったという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが重要と考えられます。既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があるからです。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。

【報道解説】貸付金を業務委託費と装って法人税等を免れた事件

2024-07-24
脱税捜査

貸付金を業務委託費と装い、法人税法違反などで起訴された報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 報道の内容

横浜地検特別刑事部は16日(注:令和6年7月16日)、貸付金を業務委託費と称して法人税など約3200万円を脱税したとして、法人税法違反などの罪で、建築工事会社(横浜市西区)の代表取締役らを在宅起訴した。法人としての同社も起訴した。

 他に起訴されたのは、事務機器販売会社の元実質的経営者、別の脱税事件で起訴、公判中。

 起訴状によると、2人は共謀して、事務機器販売会社社への貸付金を業務委託費と装って、2021年5月期の所得約1億1900万円を隠し、法人税と地方法人税計約3200万円を免れたとしている。

(個人情報保護のため、一部改変しています)

引用:Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/bdc9012bb2b2666cf857177609adc3b3143856aa?source=rss

2 スキーム(仕組み)について

法人税は、法人の各事業年度の所得に課せられる税金です。
法人の各事業年度の所得の金額は、その事業年度の益金(ごく簡単にいえば、利益のことです。)の額から、その事業年度の損金(ごく簡単にいえば、費用や損失などです。)の額を控除した金額とされます(法人税法22条1項)。

報道では、起訴された代表取締役が、貸付金を業務委託費と装ったとされています。
本来、貸付金(債権)は、会社の資産(なお、厳密には、元本部分が資産であり、利息は益金に含まれます。)に計上する必要があります。つまり、基本的には法人税の金額に影響はでないはずです。
しかし、これを費用として計上することにより、その事業年度の損金が増え、結局、法人の所得額が少なくなることになり、それに対して課される法人税も少なくなるため、脱税に当たるというものだと考えられます。

なお、地方法人税は、法人税を基準に算出されますので、法人税を脱税すれば、地方法人税も脱税することになるのが通常です。

3 発覚するきっかけとは

報道された事件において、発覚した経緯ははっきりとは分かりませんが、貸し付けていた会社が別の脱税事件で起訴、公判中(裁判中)とのことですので、その貸し付け先の会社に対する捜査や税務調査などで発覚した可能性があります。

このように、自身に対するものではなく、第三者に税務調査などが入った結果、自身にも行われる税務調査を反面調査といいます。
仮に脱税をしてしまった場合、自身に対する税務調査が入らないから発覚しないということはないことに注意が必要です。

4 仮に脱税をしてしまったら

仮に脱税をしてしまった場合、逮捕や起訴されるかどうか、どのような刑事処分を受けるかは、脱税した金額やその方法、同種前科の有無など様々な事情を考慮する必要があります。

しかし、脱税をしている以上、本来すべきであった申告をし(修正申告と呼ばれます。)、納めるべきであった税金に加え、制裁として課される税金を納めていく必要があります。
事案にもよりますが、そうした取り組みを、早期にすることで、逮捕や起訴を回避できる場合もあり、また、最終的な刑事処分に関しても有利に影響するものと思われます。
このような修正申告に関しては、基本的には税理士に対応してもらうことになりますが、より法律的な知識が必要になる場面などでは、弁護士と税理士が協力して行っていくという方法も考えられます。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、法人法違反など多数の事件を取り扱っています。脱税をしたかもしれない、税務調査を受けることになった、国税庁から告発され刑事事件化するかもしれないなど不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

【事件解説】名古屋国税局が「頂き女子りりちゃん」を告発

2024-06-26
報道

いわゆる「頂き女子りりちゃん」を名古屋国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

恋愛感情に付け込んで男性をから得た詐取金を税務申告せず、約4000万円を脱税したとして、名古屋国税局は、いわゆる「頂き女子りりちゃん」ことA氏を所得税法違反容疑で名古屋地検に刑事告発しました(2024年1月31日付け発表)。
A氏は、SNS上で「頂き女子りりちゃん」を名乗り、中年男性に対して「困窮している」などと嘘をついて金銭的な支援を受ける方法を発信。名古屋地検は、2021年3月~2023年8月に、この方法で複数の男性から1億5000万円以上をだまし取ったなどとして詐欺、詐欺幇助の罪で、先にA氏を起訴しており、A氏は公判中でした。名古屋国税局によると、A氏が得た詐取金のうち2021年~2022年に得た詐取金計約1億1000万円分が告発の対象となり、A氏は、同詐取金の税務申告を怠ったことで、所得税約4000万円を免れた疑いがあるとのことです。A氏は、脱税で得たとされる資金はホストクラブなどに使っていました。
2024年1月31日、朝日新聞デジタルの記事より。一部改変)

詐欺によって得た利益も課税対象になるか

犯罪等違法な手段で金銭を得たとした場合、正直に税の申告をする者などいないように思われます。しかし、A氏がだまし取った金銭は所得に該当します。
この点、所得税基本通達36-1は、「法36条1項に規定する『収入金額とすべき金額』又は『総収入金額に算入すべき金額』は、その収入の基因となった行為が適法であるか否かを問わない」と規定しており、今回のように犯罪によって得た利益も適法な手段で得た利益と同様に所得と見なされるからです。
A氏は、だまし取った金銭をホストクラブで費消しているとのことであり、納税できない可能性が高いですが、お金がないからといって脱税が許されるというものではありません。

刑事告発後の経過について

本事件では、所得税法違反で名古屋地検に告発がなされています。
告発された後、本件脱税事件も起訴され、A氏は、2024年3月15日の公判期日で、脱税事件の起訴内容を認めました。そして、この日、A氏は、検察官から懲役13年及び罰金1200万円を求刑され、同年4月22日、名古屋地裁は、A氏に対して懲役9年及び罰金800万円の実刑判決を言い渡しました(もっとも、その後、A氏が控訴したことで判決はまだ確定していません)。
本件は、詐欺罪の被害額が大きいため、詐欺罪だけでも実刑の事案ですが、脱税以外にも立件された事件がある場合、他に立件された事件が本件のように脱税と密接に関連するケースでは、そうでないケースと比較してより犯情が悪くなります。したがって、脱税にプラスして脱税に密接に関連する事件が立件された場合、事件全体の量刑が実刑となる可能性が高くなるといえます。常に法律を遵守し、適法な手段で利益を得、適正に納税することが大切であることはいうまでもありません。

罰金の額は、脱税額の20~30パーセントであるのが通常

本件では、A氏に対し、罰金800万円が言い渡されています。詐欺罪には、懲役刑しかなく罰金刑はありませんので、この罰金800万円は、脱税の事件に関してのものです。
脱税の金額約4000万円に対して罰金額800万円が言い渡されており、罰金額が脱税の金額の約20パーセントであることから、通常の量刑の相場に沿った罰金額だといえます。

刑事告発を受けたら

脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
告発を受けた場合には刑事手続が開始されます。刑事事件に強い弁護士に依頼をすることで、不起訴を勝ち取れたり、刑事裁判の結果が軽くなる可能性が出てきます。

【事件解説】東京国税局が不動産会社の実質経営者と公認会計士を告発

2024-04-10
報道

港区白金の再開発事業にからみ不動産業者の実質経営者と公認会計士を東京国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

不動産の売買で得た所得を隠し、約1億700万円を脱税したとして、東京国税局査察部は、不動産会社A社(東京都港区、解散)の実質経営者B氏と関与税理士だった公認会計士C氏を法人税法違反の疑いで東京地検に告発していたことがわかった。
関係者によると、A社は港区白金の再開発事業にからむ不動産取引などで多額の利益を上げたが、架空の経費を計上するなどの方法で、2021年8月期までの2年間に計約4億3700万円の所得を隠し、法人税約1億700万円を脱税した疑いがある。
隠した所得は、実質経営者B氏の口座や実質経営者B氏が代表取締役を務める別法人の金庫で管理していたとみられ、公認会計士C氏は、不正と知りながらA社の税務業務を担っていたという。
取材に対し、実質経営者B氏は、「国税局の指導に従い、修正申告を済ませた。今後は適切に申告納税する。」と答え、公認会計士C氏は「職業会計人としての責任を感じている。」と答えたという。
(2024年1月29日、読売新聞オンラインの記事より。一部改変)

法人税は法人の所得に課される税金

本事件の実質経営者B氏は、不動産業を営んでいたということですが、免れた税金は法人税となっています。
所得税も法人税も、同じく、「所得」に対する課税です。すなわち、法人税は、法人の「所得」税です。
所得の金額は、具体的には益金の額から損金の額を控除した金額のことになります。

名義上の代表者と実質経営者の違いとは

法人税法において、名義上の代表者と実質経営者の違いは重要です。ここでは、それぞれの役割と脱税に対する処罰について説明します。
名義上の代表者は、法人の登記簿の役職であり、会社法やその他の法令に基づいて選任された役員です。名義上の代表者は、法人の経営に直接関与せず、法人の名義を借りているだけである場合があります。
実質経営者は、法人の実際の経営に従事しており、その意思決定に大きな影響力を持っている者です。実質経営者は、法人の利益や財務に直接的に関与しています。
脱税行為に対する処罰は、名義上の代表者と実質経営者とでは異なります。実質経営者が脱税を行った場合、法人の経営に直接的に関与しているため、脱税額によっては、処罰される可能性があります。一方名義上の代表者の場合、法人の経営に実質的に関与している場合であれば処罰される可能性がありますが、法人の名義を借りているだけの場合、処罰の対象となることは少ないです。

刑事告発

本事件では、法人税法違反で東京地検に告発がなされています。
脱税の方法には種々ありますが、本件では、架空の経費を計上し、実際の経費より多い経費にみせかけるなどの方法で、所得を少なくして脱税をしていたと考えられます。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。
告発は、基本的に脱税をしてしまった人や会社が所在する地域を管轄する地方検察庁に対して行われます。
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定しますが、国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は約80%くらいといわれています。
なお、今回の報道では、既に修正申告を済ませているとされています。
修正申告とは、確定申告で過小な申告を行っていた場合に、正しい内容に修正して申告するものです。告発された後、検察官が起訴するか否かを決めますが、その判断に際し、既に修正申告をしているかどうかということは重要な事実です。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
多くの場合、法人の実質経営者等には執行猶予付きの判決が下されますが、懲役刑のみならず、罰金刑が課される場合もあります。
罰金の額は、法人税や所得税の場合、脱税額の20~30パーセントであるのが通常であり、本事例では、約1億700万円の法人税を免れたということから、2000~3000万円くらいの罰金額が予想されます。

刑事告発を受けたら

脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
告発を受けた場合には刑事手続が開始されます。刑事事件に強い弁護士に依頼をすることで、不起訴を勝ち取れたり、刑事裁判の結果が軽くなる可能性が出てきます。

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