Archive for the ‘消費税・相続税’ Category
【制度解説】盗品の被害額の表示は消費税を含むのか?
盗品の被害額について、事例を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 事例
ある日の深夜,某有名時計店で侵入盗の被害がありました。
犯人は,3人の外国人グループで,大胆にもお店のドアの施錠を破壊し,店内のディスプレに展示されていた高級腕時計をごっそり盗んでいきました。そのお店は民間の警備会社の機械警備が設置されており,犯人グループが侵入すると直ちに発報。しかし,警備員や警察官が駆け付けたときは,時既に遅し・・・,店内はもぬけの殻・・・。その後,警察の必死の捜査で,犯人グループの1人が逮捕され,他の犯人が検挙されないまま起訴されることとなりました。
犯人が盗んだ腕時計の中で,最も高級なものは,本体価格300万円の外国製の高級腕時計でした。当然,起訴状には,高級腕時計が被害品としてあげられていたのですが,その起訴状の公訴事実をよく見ると「被告人は,共犯者らと共謀の上,・・・・高級腕時計(販売価格330万円)を窃取したものである。」
と記載されていました。
犯人達の盗んだ高級腕時計は,確か300万円。ということは,販売価格の330万円のうち,30万円は消費税です。
しかし,盗難品の被害額の表示には消費税を含むのでしょうか?
2 消費税のしくみ
消費税の課税の対象になるのは,資産の譲渡等の場合です。
資産の譲渡等というのは,皆さんが消費者として毎日のように買物をするのがその典型です。
今回は、盗難被害に遭ったこの高級腕時計を例にして,消費税の仕組みをみていきましょう。
まず,高級腕時計の製造業者をA、問屋業者をB、小売業者をC、消費者をDとします。
製造業者Aが原価100万円の高級腕時計1個を製造し,これを問屋業者Bに売った場合,BがAに10万円の消費税を支払い,Aがこの10万円をBから一旦預かり消費税として納税します。次に,Bが100万円の仕入原価に利益分として100万円を乗せ,高級腕時計を200万円で売ると,消費税は20万円となり,CがこれをBに支払いますが,Bが消費税として納税する額は10万円です。これは,仕入原価100万円にかかる消費税10万円分は,仕入税額控除という税額控除を受けることになっているからです。ですからBはCから20万円を消費税として受け取っても,納税する額は10万円でいいわけです。これはつまり,Aから高級腕時計を仕入れる時点でBがAに支払っている消費税分であり,Aはその消費税を納税済みであり,その分は,最終的に消費者Dに転嫁される性質のものと考えればよいわけです。
そして,小売業者Cが200万円で仕入れた高級腕時計について,さらに100万円の利益を上乗せして300万円で消費者Dに売ると,消費税の最終負担者であるDが消費税として30万円をCに支払い,Cがその内,仕入れ時にBに支払った消費税額20万円を仕入税額控除して,10万円を納税すればよいことになります。
こうして取引の段階ごとに課税していくことを多段階課税方式といいます。
3 盗難被害に遭った高級腕時計の消費税はどうなるのか
既に述べた消費税の仕組みでわかるとおり、通常であれば、消費者が最終負担者として消費税の30万円を負担するわけですが、紹介した事案のような高級腕時計は、盗難に遭ったため、消費税の最終負担者である消費者はいません。
このように消費者のいない盗難は,消費税法上、買物のような資産の譲渡等には当たらないので,そもそも消費税が課税されないとされています。これを不課税といいます。そうすると、さきほどの消費税の仕組みの解説で出てきた小売業者のCは、本来、消費者から預かるはずであった30万円のうち10万円の消費税は納税する必要がなくなります。また、消費税法の基本通達(第11章第2節課税仕入の範囲11-2-9)では、課税仕入れのうち、盗難にあった物については、仕入税額控除をすることができるとされています。つまり、小売業者Cは、問屋業者Bに支払った仕入税額の20万円を控除することができるのです。ですから、最終的にCは、盗難にあった高級腕時計の消費税を負担しなくて済むということになるわけです。
4 それでも、盗難品の被害額には消費税が含まれる?
お話ししたように,盗品の場合,消費税は不課税となりますし、小売業者Cは、盗品に係る仕入税額は控除できるので、盗まれた高級腕時計の実被害額は300万円のはずです。
ただ,令和3年4月1日以降、商品の値札に取引価格を表示する際に,消費税額を含めた価格を表示する総額表示(内税表示)が義務付けられるようになり、消費税込みの額が販売価格となるのが当然となりましたし、捜査実務上、被害額の特定は販売価格によるとされていることから、盗難品の被害額を消費税込みの販売価格としているようです。 ご紹介した事例であれば、実際の盗難被害にあった腕時計の本体価格は300万円であり、それこそが実損害額であるはずなのに、誰も負担することのない消費税を含めた販売価格が被害額として表示されるのは、犯人に不利に被害額が大きくなるようで、いささか違和感を覚えますが、起訴状記載の公訴事実にしても、判決書の罪となるべき事実としても、被害品の記載の後にカッコ書きで「(販売価格330万円)」と表示されるのであり、販売価格とのことわりがあることからして、その実態として、被害の実額が300万円であるという認定はされているのでしょうから、消費税が含まれた被害額の認定としても、量刑上、被告人に不利な影響を与えることはないということになるのでしょう。
【事件解説】大阪国税局が不動産会社と同会社の実質的経営者を告発
大阪市西区の不動産会社と同会社の実質的経営者を大阪国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件の概要
権利関係が複雑な土地を安く買い取って売却する際、入居者を立ち退かせるための業務委託料を架空計上し、法人税など計約7200万円を脱税したとして、大阪国税局が、大阪市西区の不動産会社であるA社と同会社の実質的経営者であるB氏を大阪地方検察庁に告発しました。告発容疑は、2022年7月までの1年間に、立ち退きに必要な業務委託料として架空の外注費を計上して約2億400万円の所得を隠し、法人税約5200万円を脱税した疑いであり、他にも消費税約2000万円の不正還付を受けた疑いがあります。B氏は、取材に対して「悪いことをしたと反省している。」と語り、既に修正申告済みということです。
(2024年10月2日、千葉日報の記事より。一部改変)
https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20241002/1283003
消費税の不正受還付と国の対応
本事件では、脱税行為の一つとして架空外注費の計上がまず挙げられていますが、注目すべきは、消費税約2000万円の不正還付を受けた疑いもある点です。
消費税は、取引の各段階で課税され、商品やサービスなどの最終消費者が実質的に負担する仕組みです。消費税法では、事業者は「仕入税額控除方式」により消費税を納税するシステムが採られており、これは、事業者が売上の際に受領した消費税をそのまま納税するのではなく、原材料や商品を仕入れた際に支払った消費税額を控除した金額を納税するシステムです。そして、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げを上回る場合には、還付を受けることができます(消費税法52条1項)。
消費税不正受還付はこの仕組みを悪用したものであり、たとえば、そもそも消費税の課税仕入れの対象とならない従業員給与の一部を消費税の課税仕入れの対象となる外注費に仮装し、架空の請求書を作成するなどの方法によって課税仕入れに係る消費税額を過大に計上し、不正に還付を受けるなどの事案がみられるところです。
近年、消費税の仕組みを悪用した不正受還付事案が相次いでおり、国税庁によると、平成29年から令和3年度までの5年間の消費税不正受還付事案の告発件数は計57件であり、不正受還付額は計35億9000万円にのぼっています。
国税庁が発表した令和5年度査察の概要によっても、国税庁は、消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であるとして、不正受還付事案への対応を重点課題として位置付け、引き続き積極的に告発してゆくとありますので、注意が必要です。
刑事手続
B氏は、法人税法違反などの疑いで刑事告発を受けています。
刑事告発を受けた検察庁は、B氏を被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。
最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。
また、起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
国税局が令和6年に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和5年度中の判決件数83件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。
最後に
既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。ですから、脱税に関与してしまったという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが極めて重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。
【報道解説】転売が疑われる客に対する免税販売
転売が疑われる客に対して免税販売したとして大阪国税局から医薬品店が指摘を受けたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1 報道の内容
「ドラッグストア『ダイコクドラッグ』の大阪にある複数の店舗が、転売目的が疑われる中国人観光客に不適切な免税品の販売を繰り返していたと大阪国税局から指摘され、店舗を経営する2つの会社があわせておよそ3億円を追徴課税されていたことが関係者への取材で分かりました。」
「免税品を国内での転売目的が疑われる客に販売することは認められていませんが、関係者によりますと、大阪の繁華街ミナミにあるダイコクドラッグの複数の店舗では、中国人観光客に対して、スーツケースに入りきらないほどの量の化粧品や医薬品などを免税価格で販売していたことが大阪国税局の税務調査で確認されたということです。
国税局は、転売目的が疑われる客に免税販売を繰り返し、2019年から2年にわたって消費税の申告漏れがあったと指摘し、2社に過少申告加算税を含めてあわせておよそ3億円を追徴課税しました。
店舗には日本に住む案内役の中国人に連れられた観光客がたびたび訪れていたということで、不適切な免税販売の売り上げは30億円にのぼるとみられています。
親会社の『ダイコク』は修正申告と納付は済ませたとしたうえで『国税局の指摘を真摯(しんし)に受け止め、現在はルールにのっとった販売を行っています』としています。」
NHK「ダイコクドラッグ 転売疑いの客に免税販売か 国税局が追徴課税」(2024年6月4日)より抜粋
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240604/k10014470241000.html
2 免税店とは
物品の譲渡やサービスの提供が国内における取引であっても、その物品が輸出され、あるいはそのサービスの提供が国外で行われる場合には、それに対する消費税は免除されます。
その一環として、輸出物品販売場(これが免税店です。)において、日本に居住していない者に一定の物を販売する場合にも、消費税が免除されます。
免税店として販売しようとする場合、税務署に申請をし、許可をもらう必要があります。
3 転売目的の販売について
免税店においては、日本に居住していない者に対し「通常生活の用に供する物品」を販売する場合に、消費税が免許されています。
つまり、事業用又は販売(転売)用として購入することが明らかな場合には、免税販売対象外となります。
そこで、報道された会社は、転売目的が疑われる者に対する販売について、免税取引だとして、その分については消費税がかからないとして、申告したことが申告漏れとされたため、追徴課税がなされています。
4 修正申告について
報道された会社は、「修正申告と納付は済ませた」としています。
修正申告とは、事後的に納税者自ら従前の確定申告の内容を是正する手続をいいます。
そして、修正申告した上で、追徴課税も含めて納付を済ませたということであれば、税金に関する対応は基本的に済んでいるということになります。
もっとも、ここで注意して欲しいのは、上記のような税金に関する対応と、企業や代表者等が刑事責任を問われるかどうかは全く別の問題です。
国税庁より告発が行われ、刑事責任が問われるかどうかは、脱税した金額や脱税の方法などを考慮して、検察官が起訴するかどうかを判断し、裁判所がどのような刑罰に科するかを決定します。
そのような手続の中で修正申告が考慮される事情だとしても、修正申告をしたことで何もお咎めがないかと言われると別問題だということには注意が必要です。
5 最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、消費税法違反など多数の事件を取り扱っています。脱税をしたかもしれない、税務調査を受けることになった、国税庁から告発され刑事事件化するかもしれないなど不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
リバースチャージ方式とは
消費税のリバースチャージ方式について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
消費税の課税対象
消費税法第4条によると、①国内において、②事業者が行った、③資産の譲渡等について消費税の課税対象とする旨規定されています。
そして、同法2条によると、ここでいう資産の譲渡等とは、事業として、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供とされています。
従来、国外事業者が行う電子書籍や広告の配信などを行う役務の提供については、消費税の課税対象ではなかったもの
以前は、インターネットを介して電子書籍や広告の配信などを行う役務の提供が、国内取引に当たるか否かの判断は、役務の提供にかかる事務所の所在地が国内にあるか否かで判断することとされていました。
その結果、同じコンテンツを配信する場合であっても、役務の提供にかかる事務所が国内にある場合には国内取引として消費税が課税され、外国にある場合には消費税が課されないことになっていました。
これでは、事業者間で競争条件に大きな差が生じてしまいます。
リバースチャージ方式による消費税の課税関係について
上記のような不公平を是正するため、2015年10月から、消費税法が改正され、電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引を「電気通信利用役務の提供」と定義し、国境を越えた事業者間の電気通信利用役務の提供にかかる消費税の課税においては、リバースチャージ方式が導入されました。
リバースチャージ方式とは、簡単に言うと、「支払った側」が消費税を納付する方式です。私達が、サービスを購入した際に支払う消費税については、税金を払っているという感覚はあるものの、実際に税金を国に納付しているのは、サービスを提供した(売った)側です。「リバース」とは日本語に訳すと「反対の」という意味であり、すなわち、リバースチャージ方式がとられれば、サービスを提供した(売った)側とは反対のサービスを受けた(購入し支払った)側が消費税を国に納付するということになるのです。
リバースチャージ方式が導入された結果、国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、サービスの提供者(売手)ではなく、サービスの受け手(買手)である国内事業者に消費税を課されることになり、これによって、外国の事務所からの配信であっても役務の受け手が国内に所在していれば、国内取引として消費税が課されることになりました。
リバースチャージ方式での申告・納税が必要な事業者
リバースチャージ方式は、全ての事業者に適用されるわけではありません。
経過措置により、一般課税制度により申告する場合で課税売上高割合が95%未満である事業者にのみ、リバースチャージ方式による申告と納税が必要になります。
最後に
リバースチャージ方式は、一般の方には、複雑でわかりにくい方式といえます。しかし、消費税といえども、税を課される事業者が申告・納税しなければ、税金の問題が生じ、税務署に把握されれば、無申告についてのペナルティを別途受ける可能性があります。
また、仮装隠ぺいなど悪質性が高いと判断された場合には、無申告加算税に代えて重加算税が課せられます。
さらに、納税が遅れると、その期間に応じた「延滞税」の支払いが求められます。
納めるべき税額が大きい場合、刑事告発されることも考えられます。
申告・納税しなければならないのにしていない方は、早めに税理士や弁護士といった専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。
アンダーバリュー取引は脱税です
輸入時のアンダーバリュー取引について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
アンダーバリュー取引とは
財務省貿易統計によると、2022年の日本の輸出入総額は、輸出が約98兆1736億1千万円、輸入が約118兆5031億5千万円で、輸出入ともに過去最多となりました。
輸入貨物の場合、関税や消費税がかかります。アンダーバリュー取引とは、輸入時に実際の取引価格よりも安い価格で税関に申告し、関税や消費税を安く抑えようとする不正な取引のことです。
関税や消費税は、申告価格に対して課せられます。そのため、仮に真実の売買契約では、商品の単価を10ドルで契約し、輸入者は、輸出者に対してその金額を支払うにもかかわらず、輸出者の請求書(インボイス)に商品は8ドルと記載してあり、その価格で輸入申告すれば、差額である2ドルには関税や消費税がかからないことになります。
アンダーバリュ―取引は法律に違反する行為である
実際の取引価格を故意に偽って申告することは明らかな虚偽申告であり、脱税です。このような事態は通常考えられないのではないかとの疑問もあろうかと思います。しかし、貿易取引は、商慣習の異なる国との間の取引なので、国によっては、このようなアンダーバリュー取引がまかり通っている国もあり、そのような国から輸入する場合、なかには、輸出者が輸入者のことを思って好意でアンダーバリューのインボイスを送ってくる可能性があるので要注意です。
財務省によると、令和4事務年度に輸入者に対して行われた税関の事後調査によると、申告漏れ等に係る追徴税額は約98億1千万円(前事務年度比152.1%)であり、そのうち主な申告漏れ等の事例としてアンダーバリュー取引が指摘されているところです(税関が行う事後調査とは、輸入者の場合、輸入された貨物に係る申告・納税が適正に行われているか否かを調査するために税関職員が個別に訪問し、帳簿や書類等の確認を行う調査のことをいいます。)。
また、輸入者が、たとえインボイスの記載価格が実際の取引価格よりも低い価格と気づかずに申告した場合でも、税関にみつかれば過少申告として加算税が課されたりすることになります。こうした事態を避けるためには、実際の取引価格とインボイスに記載された価格を正確に合わせ、正しい価格の申告をすることを徹底する必要があります。もし、申告後にアンダーバリューに気付いたときには、すぐに修正申告をしましょう。
逆に、自社が輸出者であり、海外の輸入者から、「アンダーバリューのインボイスを発行して欲しい。」と言われる可能性もあります。しかし、このようなアンダーバリュー取引は、いずれの国でも違法ですから、相手の要求に応ずれば、違法行為に加担することになります。したがって、きっぱりと断ることが必要です。
アンダーバリュー取引であることが発覚した場合
アンダーバリュー取引であることは、税務調査が入ったときにほぼ確実にばれます。インボイス等は、税務調査において確認しやすい書類だからです。
アンダーバリュー取引であることが発覚したときには、不足分の関税や消費税に加え、過少申告加算税と延滞税が課されます。
また、仮装隠ぺいなど悪質性が高いと判断された場合には、過小申告加算税に代えて重加算税が課せられます。
アンダーバリュー取引を行っていた会社としてブラックリストに上げられ、今後の通関の際には、厳しいチェックが入ることになります。
さらに、納める額が大きく、悪質な輸入者であることが判明した場合、脱税事件として刑事事件として告発されることもあります。その場合、起訴されれば懲役刑や罰金刑を受ける可能性があります。
最後に
申告・納税しなければならないのにしていない方は、早めに税理士や弁護士といった専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。
【制度解説】通告処分とは
通告処分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
そもそも通告処分とは何でしょうか
通告処分とは、間接国税の犯則事件(租税法に関する事件のことであり、個々の租税の賦課、徴収及び納付に直接関連する犯罪のことです。)で、情状が罰金以下の刑に相当する場合に、刑事手続きに先行して行われる一種の行政処分です。すなわち、通告処分は、刑事訴訟手続によらない行政上の科刑に代わる手続といえます。この処分は、かつては、国税犯則取締法に定められていましたが、現在は、国税通則法(2018年4月1日施行)に定められています。なお、関税法にも同様の規定が置かれており、間接国税扱いする地方税にも、この通告処分が適用になります。
ここで、間接税とは、税金を負担する人と税金を納める人が異なる税金のことであり、間接税の代表として消費税がありますが、租税犯則手続上、間接国税として取り扱われる消費税は、課税貨物に課される消費税です。
また、酒税やたばこ税等も租税犯則手続上、間接国税として取り扱われます。
通告処分に基づく納付を履行すれば、検察官による起訴を免れることができる。
通告処分において重要なことは、課税庁が罰金などに相当する金額などを通告し、納税者がそれを履行すれば検察官に告発しないとされていること、すなわち、その場合には、検察官による起訴を免れるという点です。
国税通則法上、国税局長・税務署長は、租税に関する犯則事件の調査により犯則の心証を得たときには、その理由を明示して、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額並びに書類送達ならびに差押物件の運搬・保管に要した費用を、指定の場所に納付すべき旨を通告しなければならないとされています。
通告処分を受けた犯則者は、それを履行するか否かは自由です。しかし、通告を受けた翌日から20日以内に履行しなかった場合、検察官に告発されます。
また、通告しても履行する資力がないときや、悪質な脱税など情状が懲役刑にあたると認められるときには、通告処分をせずに直に通告されます。
なお、所得税や法人税など税金を負担する人と税金を納める人が一致する直接税の犯則事件の場合、通告処分は適用されません。したがって、この場合、直ちに検察官に告発されます。何故、直接国税と区別して間接国税にだけ通告処分が認められているかですが、間接国税の犯則事件は直接国税の場合と比べると件数が多く、通常の刑事事件によるより、行政による簡便な手続による方が犯則者の利益にかなうため、と説明されています。
通告処分の手続
通告処分は、通告書を作成し、これを犯則者に送達することによって行われます。通告書には犯則の理由、罰金に相当する金額、没収に該当する物件、追徴金に相当する金額並びに書類送達ならびに差押物件の運搬・保管に要した費用を明示し、指定の場所に納付するように書面で通告することになっています。通告処分は、通告書が犯則者に送達されたときに効力を生じます。
通告処分の問題点
行政権が、通告処分により、刑事訴訟手続によらない行政上の負担を課すことは、実質的に裁判を受ける権利を制限することにならないかという問題があります。この点は、最高裁の判例があり、最高裁は、通告処分の履行は、犯則者の自由意思に任されており、履行を拒否して、犯則事実の有無を裁判所で争うことができるので、裁判を受ける権利(憲法32条)を侵害していないとしています(最判昭和47.4.20・民集26巻3号507頁)。
最後に
脱税が発覚した場合、消費税等について通告処分に基く納付をすれば、検察官による告発・起訴を免れることができます。脱税について、刑事事件化するのを免れる方法などについてお悩みの方は、すぐに弁護士に相談しましょう。
【制度解説】相続時精算課税という制度を知っていますか?どのような制度かについてメリットとデメリットを解説
相続時精算課税とはどのような制度かについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がメリットとデメリットを解説します。
相続税
相続時精算課税とは何やら難しそうな言葉ですが、相続税の申告納付方法の一つと考えてもらえばよいでしょう。
通常、相続税は、どなたかが亡くなったときに、その亡くなった方(被相続人といいます。)の財産を相続により取得した配偶者や子供など(相続人といいます。)に対して、その取得した財産の価格に応じて課される税金です。
民法という法律に、「相続は死亡によって開始する。」と定められていますが(民法882条)、相続税は、まさに、この被相続人の死亡をきっかけとして、その死亡時の被相続人の遺産総額から基礎控除を経て課税遺産総額を出し、この課税遺産総額に対し法定相続人ごとの法定相続分に対して相続税額が算出されてこれを合算した相続税の総額に対して各相続人の遺産取得割合に応じた相続税額が算出さ
れ、これを各相続人が申告納付することになるわけです。(国税庁HP「相続税の計算」参照)
贈与税
他方、被相続人などになりうる立場の人(被相続人等といいます。)が、亡くなる前に、相続人など(相続人等といいます。)となりうる立場の人にあらかじめ財産を渡すことを贈与といいますが、これにも贈与税という税金がかかります。贈与は、被相続人が亡くなる前にその財産の一部を相続人等に渡しているわけですから、見方をかえれば、被相続人等が生きている間の相続の前倒しともいえるわけです。
そうすると、被相続人が亡くなる前に、相続人等に対して多くの財産を贈与すると、それだけ被相続人等の遺産総額が減って、結局、相続税の総額もそれだけ減ってしまうことになります。このような相続税の負担における不公平を解消するため、こうした贈与については贈与税が課せられることされており、そのような意味から贈与税は、相続税をおぎなう税金という意味で、相続税の補完税という言い方もされています(こうした贈与税の性質から、単独の贈与税法という法律ではなく、相続税法の中に定められており、一税法二目と呼ばれています。)
このように相続税と補完関係にある贈与税ですが、相続税に比べると、基礎控除が110万円と低額であり、税率がとても高いことから、従来は税負担の重い贈与を避けて、相続の機会、つまり被相続人等が死亡するのを待って資産の移転が行われてきました。
しかし、超高齢化社会を迎え始めている現在のわが国においては、これを放置していては、高齢者の保有する資産活用は滞り、日本経済の活性化のためにも好ましいものではなりません。そこで、創設されたのが、相続時精算課税制度です。(国税庁HP「財産をもらったとき」参照)
相続時精算課税のメリットとデメリット
この制度は、特定の関係にある贈与者(被相続人等)と受贈者(相続人等)と間で、贈与を行うに当たり、贈与税の申告とともに相続時精算課税選択届出書を提出すると、贈与額のうち2500万円(特別控除)に110万円(基礎控除)を加えた2610万円が控除されます。
つまり、年間2610万円までの贈与であれば贈与税は課されないのです。ただこの制度は、贈与時に課税されないということであり、相続が発生した後は、贈与した財産を相続財産に合算して相続税が計算されますので、結果的には贈与税が課せられないだけで、相続税は科せられますので、直接的に節税になるというものではありません。しかしながら、本来の相続財産を、相続が開始される前に、贈与税の負担を軽くしてこれを必要とする若い世代に有効に活用させることができるという意味ではとても意義のあるものです。
少し注意すべき点としては、一度、相続時精算課税制度を利用とするとあとで変更ができなくなることのほかに、一定の小規模宅地について相続税評価額を最大80パーセントまで減額できる小規模宅地等の特例が利用できなくなることなどのデメリットもあります。
平成27年に、相続税の基礎控除額が「5000万円+1000万円×法定相続人数」から「3000万円+600万円×法定相続人数」に大幅に減額されました(「相続税はややこしい?②」も参照)。核家族化が進み法定相続人自体が少ない中で、ある程度の金融資産を持ちこれに不動産を加えるとあっというまに基礎控除額を超えるケースは、今や一般のサラリーマンや個人事業主に広がっているといっても過言ではないでしょう。こうした中で、相続時精算課税制度などは、これからますますもって欠かせない節税対策の智恵となることでしょう。
【インボイス制度がはじまりました!】
本年10月からインボイス制度が実施されました。
いまさらながら、インボイス制度とはどういうものか再確認してみましょう。
インボイスとは何か?
インボイスとは、日本語では「適格請求書」と言われます。これは、一定の商品の取引に際し、「売手から買手に対し、正確な適正税率、消費税額等を伝えるための手段」とされ、従来の請求書に
①事業者(売手)の登録番号
②適用税率
③税率ごとに区分した消費税額
の3つを要件として追加して記載した請求書のことを言います。
このインボイスは、請求書であり、売手側が買手側に発行することになります。すると、買手側にはどのような効果が生じるのでしょうか。
買手のメリット
買手は、このインボイスをなくすことなく保存することにより、税申告時に「仕入税額控除」を受けることができるのがメリットです。
「仕入税額控除」とは、インボイスの中には、上記のとおり③消費税額が記載されており、買手は、この消費税額含めた仕入代金額を売上金から差し引くことにより、課税対象となる収益が消費税額分だけ低くなることから納税額が抑えられるという仕組みになっています。
具体例では
たとえば、100万円の原料を消費税込みの110万円としてインボイスを受け取った買手は、製品として200万円の売上金を得た場合に、200万円-110万円=90万円(収益)となります。これに対し、同じ原料をインボイスの登録事業主でない売手から仕入れて200万円で売り上げた場合、仕入れ代金が消費税込みで110万円であったとしてもインボイスでない一般の請求書の場合には「仕入税額控除」として10万円を計上することができず収益は、200万円-100万円=100万円となり、消費税分の所得控除が受けられないことになります。
これが買手のメリットとなります。
また、インボイス発行者、受領者に共通するメリットとして、消費税の取扱の簡素化、迅速化につながるメリットもあるでしょう。
免税事業者の場合には?
申告期間の売上が1000万円以下の事業者は、たとえ、取引先から消費税額を受け取っていても、売上が1000万円以下ならば、免税事業者として消費税の申告は要りません。
では、1000万円前後の売上の場合、インボイスを発行する登録事業者として登録すべきか、免税事業者のままでいるかが悩ましい事業者の場合はどうなるでしょうか。
登録すると原則として、インボイスを発行できることとなり、買手がそのインボイスを受け取り、「仕入税額控除」を受けることができ、良好な取引先として取引を継続してくれることにつながるでしょう。
これに対し、登録せず免税事業者のままでいるならば、自身の消費税申告は確かに不要となりえますが、インボイスを発行できないことから、買手に「仕入税額控除」を不適用ならしめることから、取引先として敬遠されてしまいます。その結果、取引先を失いかねず、結局、総売上の減少を招きかねないおそれがあります。また、ひとたび登録事業者となった場合、1000万円以下の売上であったとしても、登録から2年間は免税事業者に戻ることができません。
経営戦略
果たして、ご自身の場合にも、業種、経営資金力、売上高、消費税の納付の要否、マーケッティング、取引先関係を踏まえた上、インボイスの登録事業者となる途を選ぶかどうか熟慮を要するところです。
もし、迷われたなら、弁護士、税理士に相談することをお勧めします。
金密輸が発覚すると厳しい処罰も
金密輸について、発覚するとどのような処罰が考えられるのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1.金密輸に関係する犯罪
金密輸の事例としては、東南アジアなどで金を買い付け、日本に持ち帰って買い取り業者に売るというものがあります。
海外で購入したものを日本に持ち帰ることは輸入に当たるといえますが、金を日本に持ち帰る場合には、注意が必要です。
①重量が1キログラムを超える金の地金(純度90%以上)又は②ほかのお土産と合わせて20万円を超える金の地金を携帯輸入する場合には、事前に税関で申告する必要があります。
このような場合に、無申告で日本に持ち帰ると、「関税法違反」として処罰の対象となります。
関税法違反となる場合には、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金またはその両方の刑罰が科せられる可能性があります。
また、日本で売買することによって得た利益については、所得となります。
この場合に問題となるのは、消費税法、所得税法、地方税法です。
金を売った利益が所得となるため、所得税や住民税の確定申告が必要になりますし、売った場合には消費税の納税義務も生じます。
そのため、確定申告をしていなかったり、消費税の納付をしていない場合には、消費税法違反や所得税法違反、地方税法違反という罪に問われてしまう可能性があります。
この場合の罰則は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその併科となっています。
2.手続きの流れ
金の密輸が疑われる場合、税関から通報され警察の捜査が開始されることもありますが、税務調査によって発覚する場合もあります。
税務調査は、所得隠しの疑いがあったりする場合に、確定申告の内容が適切かどうかを見極めるために行われるもので、任意調査です。
しかし、この税務調査で所得隠しが明るみになり、意図的に所得を隠していて悪質性が高かったり、無申告にかかる税額が多額に上ったりした場合には、国税局の査察調査を受けることになります。
査察調査は、強制調査として行われ、刑事告発を視野に行われます。
国税局査察部が会社などに立ち入り、必要な資料などを強制的に押収して聴き取り調査などを行います。
その後、刑事告発するかどうかが検討され、刑事告発すべきとなった場合には、検察庁に対して告発がなされ、以後は刑事事件として捜査を受けることになります。
多くの場合には逮捕されて捜査を受けることになり、その後刑事裁判を受けることになります。
刑事裁判では、有罪無罪のほか、有罪の場合には実刑か執行猶予判決か、罰金をいくら併科すべきかが決められます。
このように、脱税を疑われる場合には、税務調査から査察調査、刑事事件手続まで発展する可能性があります。
3.どのように対処すべきか
税務署の税務調査が入った場合には、まずは専門家に相談することをおすすめします。
なぜ税務調査が入ったのかを専門家である税理士や弁護士とともに検討して、査察調査に発展したり、刑事事件化してしまう可能性があるのかを確認してもらいましょう。
場合によっては、修正申告などで十分対応することが可能です。
しかし、査察調査や刑事事件に発展する可能性がある場合には、より慎重な対応が必要です。
告発をされないために、修正申告を行い未納の税額を早急に収めたり、聴き取り調査に対してきちんと対応したりできるかが重要となってきます。
また、刑事事件となって捜査を受けることになった場合には、逮捕されないための活動や不起訴獲得に向けた活動、さらには刑事裁判に対する準備なども早い段階から行っていくことが必要です。
特に査察調査が入った場合には、告発率は70%程度と言われていますので、刑事事件化を見据えて刑事事件に強い弁護士にも相談し、どのように対処していくべきか確認していくべきでしょう。
金密輸の場合には、悪質性が高いとして、比較的長期の懲役刑が科される可能性もありますし、併せて利益の3割程度の罰金刑も科される可能性があります。
刑罰とは別に、本来納めるべきであった税額に重加算税などの追徴課税も課せられることになるため、金銭的なペナルティが非常に重いものになります。
早期に弁護士や税理士などの専門家に相談して対応していきましょう。
一人親方とインボイス
令和5年10月1日からインボイス制度が始まります。今回は個人事業主である一人親方がインボイス制度によってどのような影響を受けるのかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
インボイス制度とは
インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、買い手が仕入税額控除の適用のために、原則として売り手から交付を受けたインボイス(適格請求書)を保存する必要があり、売り手は、インボイスを交付するために事前にインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)の登録を受ける必要があり、登録を受けると、課税事業者として消費税の申告が必要となる制度です。
仕入税額控除とは
仕入税額控除とは、売り上げの税額から仕入や経費の消費税額を差し引いて納付する消費税額を算出することができる制度です。
納付する消費税額(納付税額)=売り上げの消費税額(売上税額)-仕入や経費の消費税額(仕入税額)という計算式で計算することになります。
インボイス制度が開始すると、仕入税額控除にはインボイスの保存が必要になるので、インボイスがなければ仕入税額控除ができないことになります。
具体例
仕入先(材料業者)から12,100円(うち消費税相当額1,100円)で材料を仕入れたA社(製造業者)が、16,500円(うち消費税相当額1,500円)でB社(小売業者)に製品を販売し、B社が消費者に19,800円(うち消費税相当額1,800円)で製品を販売した場合
①A社がインボイス発行事業者の場合
A社がB社にインボイスを交付し、B社が交付を受けたインボイスを保存して仕入額控除を行えば、
B社の売り上げ税額である1,800円から、A社からの仕入税額である1,500円を差し引いた300円がB社の納付税額となります。
②A社がインボイス発行事業者でない場合
B社は仕入税額控除ができないため、1,800円が納付税額となります。
※ただし、令和5年10月~令和8年9月までは仕入税額の80%、令和8年10月~令和11年9月までは仕入税額の50%が控除できる経過措置があります。
例えば、令和5年11月にインボイスがない取引をした場合、B社は売り上げ税額の1,500円の80%にあたる1,200円を控除することができるので、1,800-1,200=600円が納付税額となります。
インボイス制度が一人親方にあたえる影響
一人親方は個人事業主です。
個人事業主の場合、前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合には、消費税を納める義務が免除されています。
このような消費税の納税義務を免除されている事業者のことを「免税事業者」と呼びます。
しかし、インボイスを交付するためにはインボイス発行事業者となる必要があり、インボイス発行事業者は課税事業者となります。
すなわち、消費税を納税する義務がある事業者ということになり、免税事業者ではなくなります。
インボイス制度により取引に影響が生じると考えられるのは、売上先の事業者が仕入税額控除をしようとする場合に、インボイスの保存が必要とされる場合です。
売上先が消費者や免税事業者である場合には、仕入税額控除を行わないため、インボイスの保存を必要とせず、インボイス制度が始まったからといって影響はありません。
また、売上先事業者が簡易課税制度(前々年の課税売上高が5000万円以下の事業者で、届け出をしている場合には、仕入税額控除をみなし仕入れ率によって計上することができる制度)を採用している場合にもインボイスの保存が不要なので、影響はないといえます。
それ以外の場合には、仕入税額控除のためにインボイスの保存が必要とされるため、取引先からインボイスの交付を求められた場合に、インボイスが交付できないと取引を打ち切られてしまう可能性があります。
そのため、免税事業者のままであるべきか、インボイス発行事業者となり課税事業者となるべきかは取引先との関係によって検討すべきです。
一応、免税事業者からインボイス発行事業者となった場合には、令和5年10月1日~令和8年9月30日までの課税期間については、「2割特例」が適用されます。
「2割特例」とは、納付する消費税額を売上税額の2割とする制度で、インボイスの保存が不要となっています。
しかし、期間が定まっていることと、インボイスの保存が不要とはいえ、インボイス発行事業者となることが前提とされている制度ですので、特例適用期間経過後は通常通り課税されてしまうことになるため、注意が必要です。
一人親方の方は
インボイス制度という新しい制度により、これまで免税事業者として活動していた個人事業主である一人親方は、取引先の選択などで大きな影響を受けてしまう可能性があります。
これまでの売り上げや取引先との取引条件などをインボイス制度が始まる前にしっかりと見直し、インボイス発行事業者となるべきかどうかを慎重に検討すべきです。
また、これまで消費税を納税していなかった場合、今後は消費税を納税しなければならなくなる可能性があるため、確定申告についての知識も必要です。
制度開始が間近に迫っている今、専門家にアドバイスをもらうなどして、自分はどうすればいいのか検討しましょう。