Archive for the ‘消費税・相続税’ Category

消費税不正還付事案の紹介と対応②(2/4)

2025-06-18
告発

消費税の不正還付事案について、手口や告発事例、不正が発覚した場合の対応などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がシリーズで解説します。
第2回目の今回は、国税庁による告発事例を紹介します。
国税庁や各国税局は、不正還付を行った事案について積極的に刑事告発(検察庁に告発)し、その内容を報道発表等で公表しています。以下に、実際に発覚した不正還付の事例をいくつか取り上げ、その手口等を紹介します。

架空の革製品輸出で消費税還付を詐取した事例

大阪国税局は2024年2月、輸出免税制度を悪用して消費税約3,300万円の還付金を不正受給したとして、神戸市の元貿易業の男性を消費税法違反などの疑いで神戸地方検察庁に告発しました。
この男性は、2020年1月〜2022年12月に国内で仕入れた革製品をあたかも海外に輸出したように装い架空の輸出取引を申告して還付金を受け取っていた疑いがあります。追徴税額(本税と重加算税を含む)は約4,400万円に上り、不正還付額(約3,300万円)を大きく上回る額を徴収されています。
これは架空輸出を用いた典型的な不正還付事件であり、国税局査察部の調査により発覚・告発に至ったものです。

パワーストーン架空仕入れスキームによる還付未遂事件

大阪国税局は令和4年度に、複数企業が共謀したパワーストーン仕入れを装う不正還付未遂事件を告発しています。
この事件では、B社ほか数社が不正指南者の指示のもと、各社の代表者から高額なパワーストーンを購入したと偽り、架空の課税仕入れを計上して還付申告を行っていました。
還付が成功すれば国庫から多額の消費税が騙し取られるところでしたが、税務当局がスキームを解明し、法人および代表者、さらに黒幕である指南役までを含め刑事告発しています。
これは、複数の事業者とブローカー的存在が組んだ組織的脱税スキームの一例であり、国税庁が「重点事案」として対処したケースです。

偽装化粧品輸出(実態は飲料水)による巨額不正還付事件

東京国税局が調査したある事件では、東京都内の化粧品卸売会社が複数の輸出代行業者と結託し、実際には市販のミネラルウォーターを高級化粧品に偽装して巨額の輸出取引を装う手口が発覚しました。
この会社は「約2年間で総額370億円相当の高級化粧品を仕入れて輸出業者へ販売した」と虚偽申告し、輸出業者側は「その化粧品を香港に輸出した」として消費税の還付を受けていたのです。
しかし税務調査の結果、実際に取引されていたのは市価が僅かなボトル飲料水であり、売買記録や請求書類はすべて架空と判明しました。
東京国税局はこの会社に対し約35億円もの追徴課税(還付された消費税約30億円+重加算税等)を行い、共謀した輸出業者約10社にも合計9億円の追徴課税処分を下しました。
この事件は刑事告発に関する報道はありませんが、関与事業者は免税店の許可取消や厳しい行政処分も受けています。
実際、東京国税局は2023年2月までに同様の不正を行っていた都内の免税店約10店舗の免税販売許可を剥奪する処分を行っています。

その他の事例

上記以外にも、免税店で架空の外国人客に大量購入させたよう装うケース、輸出用の中古車台数を水増しして申告した中小企業の事件(2016~18年で約1.39億円の不正還付、2021年に名古屋地検が社長ら逮捕)など、不正還付の事例は全国で報告されています。
いずれも共通するのは、「実態のない取引」を作り出すことで消費税の計算構造を逆手に取り、還付という形で税金を不正に入手しようとする点です。
国税当局はこうした事案に対し、精密な取引追跡や帳簿類の押収・解析を駆使して実態解明を行い、悪質性が高いと判断すれば積極的に刑事告発しています。

続きは第3回で

今回は消費税不正還付に関して国税局が実際に告発した事例を紹介しました。
第3回では、不正還付が発覚した場合のペナルティについて解説します。

消費税不正還付事案の紹介と対応①(1/4)

2025-06-11
消費税不正還付

消費税の不正還付事案について、手口や告発事例、不正が発覚した場合の対応などについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がシリーズで解説します。
第1回目は、消費税不正還付の概要と、よくある不正還付の手口について、解説します。

消費税の不正還付とは?

消費税の不正還付とは、本来受け取る資格のない消費税の還付金を、虚偽の申告など不正な手段によってだまし取る行為です。
消費税は事業者が売上に係る消費税(預かった消費税)から仕入れに係る消費税(支払った消費税)を差し引いて納税し、不足があれば還付を受けられる仕組みです。
例えば、事業が赤字の場合や大きな設備投資をした場合、そして輸出取引を行う場合(輸出免税)には、支払った消費税が預かった消費税より多くなり、差額の還付を受けられます。
しかし、この制度を悪用して虚偽の取引をでっち上げ、本来は発生していない仕入税額控除事業者が課税売上に係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除できる制度のこと。仕入れや経費で支払った消費税を差し引けるため、輸出取引のように売上の消費税が少ない場合は還付(払いすぎた税の返還)を受けることができる。)を水増しすることで還付金を騙し取る事例が後を絶ちません。
国税庁もこのような不正受還付事案は「いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案」であると位置付けており、重点的に摘発しています。平成30年度(2018年度)には過去5年で最多の6件・総額14億円規模の消費税不正還付事案を告発し、消費税不正還付事件で懲役4年6月の実刑判決が言い渡された例もあります。
近年も摘発件数は増加傾向にあり、令和4年度(2022年度)は16件もの不正還付事案が刑事告発されるなど、国税当局は厳しい姿勢で臨んでいます。

よくある不正還付の手口

消費税の不正還付は、主に仕入税額控除制度や輸出免税制度といった仕組みの盲点を突いて行われます。典型的な手口をいくつか紹介します。
①架空の輸出取引をでっち上げる(輸出免税の悪用)
輸出取引は消費税が課税されないため(輸出免税制度)、輸出業者は国内で仕入れた商品の消費税分を国から還付してもらえます。
この仕組みを悪用し、実際には存在しない輸出を装って還付を受けるケースがあります。
例えば、事業者が架空の輸出売上を計上し、本当は国内で消費されている商品を「海外に販売した」ことにして消費税の免税を受ける手口です。実際に、大阪国税局が告発した事例では、日用品の輸出販売等を行うA社が、不正協力者と共謀し、存在しない化粧品の仕入れをでっち上げ(架空の課税仕入れ)た上で、それら化粧品を輸出物品販売場(免税店)で外国人観光客に販売したように見せかけることで架空の免税売上を計上し、不正に消費税の還付申告を行っていました。
近年では、偽造した書類や他人のパスポート情報まで利用し、同じ高級腕時計を何度も輸出したように偽装する、あるいはコンビニの商品について偽のパスポート情報で免税販売記録を作成するといった巧妙なケースも発覚しています。これらはいずれも存在しない輸出(または免税販売)を装って仕入税額控除を受け、還付金を騙し取ろうとする悪質な手口です。
②架空の仕入取引を計上する(仕入税額控除の水増し)
もう一つ多い手口は、架空の仕入をでっち上げて支払った消費税を水増しし、還付額を吊り上げる方法です。
消費税の仕入税額控除とは、仕入や経費にかかった消費税額を売上にかかる消費税額から控除できる制度のことです。
不正行為者は、この控除額を大きく見せるために実際には購入していない商品を購入したことにし、偽造請求書や架空の領収書を用いて虚偽の申告を行います。
例えば、不正指南役の人物が複数の法人に「パワーストーンを仕入れたことにせよ」と指示し、各社が代表者個人からパワーストーンを購入したかのように仮装取引を行って架空の課税仕入れを計上したケースがあります。このケースでは、還付を受けようとした複数法人とその代表者だけでなく、スキームを考案した指南役まで含めて国税庁に告発されました。
また、キャッシュレス決済端末の販売会社が、仕入れた端末の台数を水増しして申告することで約2,400万円もの不正還付を受けていた疑いが明らかになっています。
このように架空仕入れによる水増しは、単独の会社でも行われますが、時には複数の事業者がグルになって架空の売買ネットワークを作り上げ、大規模な不正還付スキームに発展することもあります。

続きは第2回で

今回は消費税不正還付の概要とよくある手口について解説しました。
第2回では、国税庁による消費税不正還付の告発事例を紹介します。

日本の輸出事業における消費税還付③

2025-04-09
税制度

輸出事業における消費税還付について、その仕組みなどを複数回にわたって紹介します。3回目の今回は業種による消費税還付の状況や特別なケースの紹介、不正に消費税還付を受けたことにより告発を受けた事例の紹介などを行います。

業種による消費税還付の状況

①製造業の場合
メーカーの場合、製品を海外に輸出すれば売上に対する消費税は0%ですが、生産に必要な原材料費や設備投資には国内で消費税を支払います。輸出比率が高い製造業者ほど、支払った消費税額が預かった消費税額を上回りやすく、多額の還付を受ける傾向があります。
実際、日本を代表する自動車メーカー等の大企業は毎年巨額の消費税還付を受けており、2022年度には輸出大企業上位20社で合計約1兆9千億円もの消費税が国から還付されたとの推計もあります。
②貿易会社の場合
貿易会社でも、例えば、国内メーカーから商品を税込仕入して輸出すれば、仕入時の消費税分が丸ごと還付対象となります。貿易業者にとって消費税還付は重要な資金源とも言え、適切な手続きによりキャッシュフローを確保することができます。
③サービス業の場合
サービス業においても、提供先が海外(非居住者)でサービスの消費が国外で完結する場合は輸出免税が適用されます。
国際通信サービス、国際輸送サービス、海外法人向けのコンサルティングやエンジニアリング、ソフトウェア・デザインの提供、特許やライセンス供与などは非居住者に対する役務提供として消費税が免税になります。
その結果、国内で要した人件費以外の経費(オフィス賃料や機器購入費用など)に含まれる消費税の還付を受けられます。例えば日本のIT企業が海外企業と契約して開発サービスを提供する場合、売上に消費税は発生しませんが、国内で購入したパソコンやソフトウェア、通信費等の消費税は全て控除・還付されます。
一方、旅行業やホテル業など訪日外国人相手のサービスは、そのサービス提供が日本国内で行われ直接便益を享受させるもののため免税にならず、通常通り課税となります。
このようにサービス業でも取引の性質によって消費税の扱いが異なり、国外向けサービスを主とする事業者は輸出産業同様に還付を受けるケースがあります。

特別なケース

特別なケースや過去の事例としては、事業構造や取引形態に起因する消費税還付があります。例えば、設立初年度に巨額の設備投資を行った場合です。工場建設や大型機械の購入などで一時的に多額の消費税を支払うと、売上が立つ前でもその分の消費税は還付申告により取り戻すことができます。実際、赤字や経費過多の場合、預かった消費税より支払った消費税が多くなり還付を受けられます。
また、不動産業でオフィスビル等を購入したケースでは、購入時に支払った消費税がテナントへの課税賃貸料収入より大きければ還付となります。不動産の用途によっては課税売上が見込めず本来控除できないケースもあるため、一部では還付を得る目的で物件の用途変更を行うようなスキームが問題視されたこともあります。この分野について税制改正で調整措置が講じられ、意図的な還付取得を防ぐルールが整備されています。

日本の国税局の告発事例

消費税還付制度を悪用した不正行為に対しては、国税庁が厳しい姿勢で臨んでいます。国税庁によれば、不正は年々巧妙化しており、国税局は消費税還付申告に対する調査を強化しています。
近年明らかになった大規模不正の一例に、調剤薬局チェーンによる架空取引を利用した消費税不正還付事件があります。
このケースでは、処方箋医薬品販売が主で本来は非課税売上(社会保険診療)となる薬局グループが、グループ内で実態のない医薬品売買をでっち上げ、課税売上割合を意図的に引き上げていました。
課税売上割合を水増しすることで、本来控除できないはずの非課税売上対応仕入に係る消費税まで控除し、結果として約16億円もの消費税を不正に還付申告していたのです。
この不正は札幌国税局が関連会社の調査で疑いを掴み、大阪国税局東京国税局と連携した広域調査によって発覚しました。
グループ企業は追徴課税として重加算税を含む約23億円を修正申告し、国税当局から告発される事態となっています。
国税庁全体で見ても、この大阪国税局管内の事例は規模が突出しており、当局が不正還付に警鐘を鳴らす契機となりました。
他にも架空の輸出取引を装った不正還付の事例があります。例えば2019年12月23日の津地方裁判所の判決では、ある企業が存在しない輸出免税売上と架空の課税仕入を計上し、不正に消費税還付を受けていた事実が認定されています。
このように、実際には輸出していないにもかかわらず書類を偽装して還付金を騙し取る手口は過去にも発生しており、国税当局は偽装された輸出許可証や取引請求書の発見に努めています。
不正還付が発覚した場合、消費税法違反(偽りその他不正行為による還付受領)として告発され、裁判で有罪となれば重い罰則が科されます。加えて、追徴税として重加算税が付されるなど経済的不利益も非常に大きくなります。
国税局は近年、還付申告に対する審査を一層厳格化しています。特に高額還付が継続する輸出企業や、不自然な取引を含む申告には重点的に実地調査を実施し、不正の摘発に力を入れています。
国税庁の統計でも還付申告に対する調査件数や追徴事例が報告されており、不正抑止の効果もあってか年々不正件数自体は横這いから微減傾向にあります。
いずれにせよ、正当な輸出取引に基づく還付は適法に受けられますが、虚偽の還付申請は高確率で発覚し告発リスクを伴うことに留意すべきです。適切な範囲で消費税還付制度を利用しつつ、法令遵守のもと健全な資金繰りに役立てることが重要です。

日本の輸出事業における消費税還付②

2025-04-02
税制度

輸出事業における消費税還付について、その仕組みなどを複数回にわたって紹介します。2回目の今回は消費税還付の対象となる事業者や取引の要件、還付受取の方法や期間などについて紹介します。

対象となる事業者の要件

①課税事業者であること
消費税還付を受けられる事業者は、課税事業者に限られます
免税事業者の場合、消費税の申告義務がないため、たとえ輸出取引があっても仕入税額の還付を受けることはできません。
輸出を行う企業・事業者であれば、規模が小さく基準売上高1000万円以下でも、必要に応じて課税事業者選択届出を提出し課税事業者となることで還付申請が可能となります。
これは、輸出で仕入税額が多額になる場合、還付を受けられるよう自主的に課税事業者になる選択が有利となるためです(届出を適用する課税期間開始前日までに提出)。
②仕入税額控除の適用要件を満たすこと
還付を受けるには課税売上に対する仕入税額控除の適用要件を満たす必要があります。具体的には、帳簿及び適格請求書(インボイス)等の保存要件を満たし、課税仕入れについて適法に税額控除できる状態であることが重要です(2023年10月以降インボイス制度開始により、適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件)。
輸出免税となる売上であっても、帳簿・証憑不備で仕入税額控除が否認されると結果的に還付も受けられなくなるため注意が必要です。

対象となる取引

輸出取引の種類については、商品の国外輸送による販売だけでなく、国外向けの役務提供や無形資産の譲渡も含まれます
例えばメーカーが製品を海外顧客に直接販売するケース、商社が国内商品を買い付けて海外に輸出するケース、ソフトウェア企業が海外法人にソフトを提供するケースなどが該当します。これらはいずれも法律上は課税取引扱いで免税となるため、それに要した仕入や経費の消費税は全額控除・還付対象となります。
一方、非課税取引(例:国内の医療、教育、住宅の賃貸、金融など)や不課税取引(給与支払い、寄附など)はそもそも課税対象外であり、対応する仕入税額は控除できません。
輸出取引は非課税ではなく「課税対象だが税率0%」という位置付けのため、国内課税取引と同様に仕入税額控除が可能である点が大きな特徴です。
したがって、輸出売上を有する事業者は、たとえ売上に消費税がかからなくても課税事業者でありさえすれば仕入税額の還付を受けられます
ただし事業者によっては、課税売上と非課税売上が混在する場合もあります。例えば国内で医薬品販売(社会保険診療は非課税)と輸出販売を併営するようなケースでは、非課税売上に対応する部分の仕入税額は控除できないため、その部分は還付対象外となります。
このように、還付を受けられる仕入税額はあくまで課税売上(輸出を含む)に紐づく部分のみである点に留意が必要です。

還付の受け取りの方法や期間

①還付金の受け取り方法
還付金の受け取り方法は、申告時に指定した銀行口座への振込か、ゆうちょ銀行・郵便局窓口での受領の2通りがあります。
一般には口座振込が利用されますが、口座名義は申告者本人または納税管理人名義である必要があります。
②還付金が振り込まれるまでの期間
消費税還付が振り込まれるまでの期間は、申告から概ね1~2か月程度が一般的な目安です。
税務署による申告内容の確認や書類チェックにある程度時間を要するため、還付金の入金完了まで数週間から数ヶ月かかるのが通常です。
ただし、電子申告(e-Tax)を利用した場合は処理が迅速化される傾向があり、早ければ提出後2~3週間で還付されるケースもあります。
実際、繁忙期でない時期にe-Taxで申告書を送信すれば1か月以内に振り込まれる例も報告されています。
一方、2月~3月の確定申告シーズンは事務処理が立て込むため、通常より時間がかかる可能性があります。
資金繰り上、還付金を早めに受け取りたい場合は、できるだけ早期に申告手続きを行い、e-Taxを活用するのが望ましいでしょう。
還付額が継続的に発生する輸出業者では、資金繰りの観点から還付を迅速に受けるための制度活用も有効です。例えば課税期間の短縮特例を利用すると、通常1年ごとの課税期間を四半期毎や月毎に区切って申告できるため、還付発生時期を早めることができます(適用には事前に「課税期間特例選択届出書」を提出し2年間の継続適用が必要です)。

申告期限を徒過した場合の不利益

申告期限は厳守する必要があります。法人の場合、課税期間(事業年度)終了日の翌日から2ヶ月以内が確定申告の法定期限であり、これを過ぎると期限後申告となります。期限後申告でも還付自体は受けられますが、その場合税務上いくつかの不利益があります。
①還付加算金の計算起点の繰り下がり
還付加算金(税務署から支払われる利息相当額)の計算起点が繰り下がります。
通常、適法な期限内申告で還付となった場合、申告期限の翌日から還付される日までの期間について年利により算出した還付加算金が支払われます国税通則法第58条)。
税務署側の処理遅延については、法律上、還付申告に対する還付金は速やかに支払うものとされています。万一、税務署の事情で大幅に還付が遅れる場合には、その期間に応じた還付加算金が付されます。
実務上は申告から1~2ヶ月程度で還付されることがほとんどですが、仮に調査が長引く等で還付が遅れた場合でも、納税者には一定の利息補填がなされる仕組みです。
しかし期限後申告で還付を受ける場合、加算金の起算日は本来の期限ではなく、課税期間終了後2ヶ月経過日や申告書提出日の属する月末などに修正されます。
その結果、期限内申告に比べて遅延した期間分の利息が付かなくなる(事実上、還付が遅れるだけ損をする)ことになります。
ペナルティ
また、期限後申告そのものに対して無申告加算税などのペナルティが課される可能性もあります。
以上から、還付を確実かつ有利に受けるためには申告期限内に正確な申告を行うことが重要です。

日本の輸出事業における消費税還付①

2025-03-26
税制度

輸出事業における消費税還付について、その仕組みなどを複数回にわたって紹介します。初回は消費税還付の仕組みや消費税還付を受けるための要件、申請の手続などについて紹介します。

消費税還付の仕組み

日本の消費税は「仕入れに係る消費税額」を「売上に係る消費税額」から差し引いて納付額を計算する仕組みです。
輸出取引は消費税法上 輸出免税(税率0%)の対象となるため、海外への商品販売や国外向けサービス提供には消費税が課税されません。
したがって輸出売上には消費税が発生しない一方、国内で仕入れや経費に支払った消費税(入力税額)は控除可能であり、売上に係る消費税額より仕入れに係る消費税額の方が大きい場合、その差額が還付されます。
例えば、輸出売上200万円(税抜)に対する消費税0円と、仕入150万円(税抜)に対する消費税15万円では、15万円の還付を受けられます。

消費税還付を受けるための条件

消費税還付を受けるにはいくつかの条件があります。
①課税事業者であること
課税事業者であることが必要です。
前々年度の課税売上高が1000万円以下の事業者(免税事業者)は原則として消費税の納税義務がなく、消費税申告を行わないため還付も受けられません。ただし、免税事業者でも「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になる選択をすれば還付申請が可能です。
新設法人も原則初年度は免税事業者ですが、資本金1000万円以上など一定の場合は最初から課税事業者となります。
原則課税で申告計算していること
原則課税で申告計算(課税期間中の課税売上げに係る消費税額-課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額=消費税額)していることも条件です。消費税の簡易課税制度を適用(課税期間中の課税売上げに係る消費税額に、事業区分に応じた一定の「みなし仕入率」を掛けた金額を課税仕入れ等に係る消費税額とみなして、納付する消費税額を計算)している場合、実額に基づく仕入税額控除が行えず還付を受けられないためです。
③確定申告で還付申告を行うこと
還付を受けるためには該当期間について確定申告で還付申告を行うことが前提となります。
④輸出免税に該当する売上であること
取引面では、輸出免税に該当する売上であることが必要です。
輸出免税の適用範囲には、例えば「日本国内から海外への商品の輸出」「国際運送や国際通信」「非居住者への特許や著作権など無形財産権の提供」「非居住者への役務提供」などが含まれます。
これら輸出取引に該当する売上であれば税率0%となり、対応する仕入税額の還付を受けられます。
ただし非居住者相手のサービスでも、日本国内で直接便益を受けるもの(例:国内での宿泊・飲食提供など)は輸出取引とみなされず課税対象です。
なお、輸出免税の適用を受けるにはその取引が輸出であることを証明する書類を備えることが求められます。

申請手続きや必要書類

消費税の還付は所轄税務署への消費税確定申告を通じて申請します。法人の場合、事業年度終了日の翌日から2か月以内(個人事業主は翌年3月31日まで)に確定申告書を提出する必要があります。
還付申告の際には、以下の書類を提出します。
消費税及び地方消費税の確定申告書(主たる申告用紙)
付表2「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」(売上高に占める課税売上割合や控除仕入税額を計算する明細)
消費税の還付申告に関する明細書(還付となる理由や取引ごとの売上・仕入明細を記載した書類)
確定申告書に還付額を計算の上で提出すると、税務署による内容確認を経て還付金の支払い決定がなされます。
輸出取引による還付を申告する場合、輸出売上に対応する還付額と国内売上に対する納付額をまとめて申告することになるため、輸出事業と国内事業の両方がある場合は申告書上で相殺計算する点に注意が必要です。

還付申告の証拠書類の用意

還付申告の証拠書類として、輸出取引であることを示す資料を準備・保管する必要があります。
輸出する商品のケースでは税関の輸出許可書(税関長の証明付き)を用意しなければなりません。
20万円以下の少額輸出で通常郵便物を使う場合は、日本郵便が発行する引受証明書(品名・数量・価額の記載されたもの)が証拠書類となります。
サービス提供や無形資産の提供など物品以外の輸出取引では、契約書など取引内容と国外提供であることを示す書面が必要です。
これらの書類は申告時に提出を求められる場合もあるため、輸出許可証や契約書類の原本を手元に保管しておくことが重要です。
特に輸出代行業者が輸出手続きを代行した場合でも、自社が還付を受けるには輸出許可書等の原本保管と所定の通知手続きを行う必要があります。
なお、輸出免税の証拠書類や帳簿は7年間の保存義務があります。
消費税の還付申告を行うと、原則として税務署による税務調査や審査の対象となります。
還付申告額が大きい場合や内容に不明点がある場合には、書面照会や実地調査によって輸出の実態や仕入控除の妥当性が確認されます。不備や誤りがあれば還付は認められません。
そのため、日頃から取引証憑の整備や正確な帳簿記録を行い、還付申告に備えることが大切です。

赤字と消費税

2025-01-29
税制度

赤字企業でも、消費税を納税する義務があるのでしょうか。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

間接税と直接税

まず、今回の質問について述べる前提として、税金には間接税と直接税の2つがあります。間接税は、納税義務者(税金を国や地方自治体へ納める義務がある人)と担税者(税金を負担する人)が異なるもので、消費税がその代表で、そのほか酒税等があります。一方、直接税は、納税義務者と担税者が同じであり、法人税、所得税等が挙げられます。

赤字でも消費税の納税義務はある。

今回問題となっている「赤字企業でも納税義務があるのか」という質問に対する回答は、結論から述べると、赤字でも消費税の納税義務はあるということになります。たとえば、会社が支払う税金の場合、消費税は、法人自体が負担するものと思いがちです。しかし、実際には、消費税は、商品やサービスを購入する消費者が負担するものなのです。

もっとも、商品を購入するたびに、税務署に申告するのは煩雑で面倒であり、そのため法人や個人事業主が消費者から消費税を預かって、「代わりに」納税するしくみになっています。消費税が納税義務者と担税者が異なる間接税であるというのは、そういう意味です。

商品やサービスの価格を設定する際には、消費税分の金額を上乗せするのが通常でしょうが、この場合、法人や個人事業主は、消費者が支払うべき税金を預かっている状態なのです。したがって、赤字であるかどうかは、消費税の納税義務があるかどうかとは関係ないことになります。

消費税について確定申告をしていない場合

消費税で、確定申告が必要であるのに、申告を忘れていたり、申告漏れがあった場合には、確定申告期限前であれば直ちに、申告漏れのない確定申告を行ってください。確定申告後であれば修正申告する必要があります。とりわけ、企業が赤字の場合、経営者によっては、消費税を払わなくてよいと勘違いしている人も実際おられますので、要注意です。消費税については、その意味を正しく理解し、税額についてきちんと把握しておく必要があります。その結果、消費税を払い過ぎている場合には、消費税の還付を受けられる場合もあります。

一方、申告をしていない金額が大きくなれば査察調査の対象となって、更に悪質性が高いと判断されれば刑事事件に発展してしまう場合もあります。 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。 初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

【制度解説】盗品の被害額の表示は消費税を含むのか?

2025-01-08
税制度

 盗品の被害額について、事例を参考に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 事例

ある日の深夜,某有名時計店で侵入盗の被害がありました。

犯人は,3人の外国人グループで,大胆にもお店のドアの施錠を破壊し,店内のディスプレに展示されていた高級腕時計をごっそり盗んでいきました。そのお店は民間の警備会社の機械警備が設置されており,犯人グループが侵入すると直ちに発報。しかし,警備員や警察官が駆け付けたときは,時既に遅し・・・,店内はもぬけの殻・・・。その後,警察の必死の捜査で,犯人グループの1人が逮捕され,他の犯人が検挙されないまま起訴されることとなりました。

犯人が盗んだ腕時計の中で,最も高級なものは,本体価格300万円の外国製の高級腕時計でした。当然,起訴状には,高級腕時計が被害品としてあげられていたのですが,その起訴状の公訴事実をよく見ると「被告人は,共犯者らと共謀の上,・・・・高級腕時計(販売価格330万円)を窃取したものである。」

と記載されていました。

 犯人達の盗んだ高級腕時計は,確か300万円。ということは,販売価格の330万円のうち,30万円は消費税です。

 しかし,盗難品の被害額の表示には消費税を含むのでしょうか?

2 消費税のしくみ

消費税の課税の対象になるのは,資産の譲渡等の場合です。

資産の譲渡等というのは,皆さんが消費者として毎日のように買物をするのがその典型です。

今回は、盗難被害に遭ったこの高級腕時計を例にして,消費税の仕組みをみていきましょう。

まず,高級腕時計の製造業者をA、問屋業者をB、小売業者をC、消費者をDとします。

製造業者Aが原価100万円の高級腕時計1個を製造し,これを問屋業者Bに売った場合,BがAに10万円の消費税を支払いAがこの10万円をBから一旦預かり消費税として納税します。次に,Bが100万円の仕入原価に利益分として100万円を乗せ,高級腕時計を200万円で売ると,消費税は20万円となり,CがこれをBに支払いますが,Bが消費税として納税する額は10万円です。これは,仕入原価100万円にかかる消費税10万円分は,仕入税額控除という税額控除を受けることになっているからです。ですからBはCから20万円を消費税として受け取っても,納税する額は10万円でいいわけです。これはつまり,Aから高級腕時計を仕入れる時点でBがAに支払っている消費税分であり,Aはその消費税を納税済みであり,その分は,最終的に消費者Dに転嫁される性質のものと考えればよいわけです。

そして,小売業者Cが200万円で仕入れた高級腕時計について,さらに100万円の利益を上乗せして300万円で消費者Dに売ると,消費税の最終負担者であるDが消費税として30万円をCに支払い,Cがその内,仕入れ時にBに支払った消費税額20万円を仕入税額控除して,10万円を納税すればよいことになります。

こうして取引の段階ごとに課税していくことを多段階課税方式といいます。

3 盗難被害に遭った高級腕時計の消費税はどうなるのか

既に述べた消費税の仕組みでわかるとおり、通常であれば、消費者が最終負担者として消費税の30万円を負担するわけですが、紹介した事案のような高級腕時計は、盗難に遭ったため、消費税の最終負担者である消費者はいません。

このように消費者のいない盗難は,消費税法上、買物のような資産の譲渡等には当たらないので,そもそも消費税が課税されないとされています。これを不課税といいます。そうすると、さきほどの消費税の仕組みの解説で出てきた小売業者のCは、本来、消費者から預かるはずであった30万円のうち10万円の消費税は納税する必要がなくなります。また、消費税法の基本通達(第11章第2節課税仕入の範囲11-2-9)では、課税仕入れのうち、盗難にあった物については、仕入税額控除をすることができるとされています。つまり、小売業者Cは、問屋業者Bに支払った仕入税額の20万円を控除することができるのです。ですから、最終的にCは、盗難にあった高級腕時計の消費税を負担しなくて済むということになるわけです。

4 それでも、盗難品の被害額には消費税が含まれる?

お話ししたように,盗品の場合,消費税は不課税となりますし、小売業者Cは、盗品に係る仕入税額は控除できるので、盗まれた高級腕時計の実被害額は300万円のはずです。

ただ,令和3年4月1日以降、商品の値札に取引価格を表示する際に,消費税額を含めた価格を表示する総額表示(内税表示)が義務付けられるようになり、消費税込みの額が販売価格となるのが当然となりましたし、捜査実務上、被害額の特定は販売価格によるとされていることから、盗難品の被害額を消費税込みの販売価格としているようです。 ご紹介した事例であれば、実際の盗難被害にあった腕時計の本体価格は300万円であり、それこそが実損害額であるはずなのに、誰も負担することのない消費税を含めた販売価格が被害額として表示されるのは、犯人に不利に被害額が大きくなるようで、いささか違和感を覚えますが、起訴状記載の公訴事実にしても、判決書の罪となるべき事実としても、被害品の記載の後にカッコ書きで「(販売価格330万円)」と表示されるのであり、販売価格とのことわりがあることからして、その実態として、被害の実額が300万円であるという認定はされているのでしょうから、消費税が含まれた被害額の認定としても、量刑上、被告人に不利な影響を与えることはないということになるのでしょう。

【事件解説】大阪国税局が不動産会社と同会社の実質的経営者を告発

2024-12-04
告発

大阪市西区の不動産会社と同会社の実質的経営者を大阪国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件の概要

権利関係が複雑な土地を安く買い取って売却する際、入居者を立ち退かせるための業務委託料を架空計上し、法人税など計約7200万円を脱税したとして、大阪国税局が、大阪市西区の不動産会社であるA社と同会社の実質的経営者であるB氏を大阪地方検察庁に告発しました。告発容疑は、2022年7月までの1年間に、立ち退きに必要な業務委託料として架空の外注費を計上して約2億400万円の所得を隠し、法人税約5200万円を脱税した疑いであり、他にも消費税約2000万円の不正還付を受けた疑いがあります。B氏は、取材に対して「悪いことをしたと反省している。」と語り、既に修正申告済みということです。

(2024年10月2日、千葉日報の記事より。一部改変)

https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20241002/1283003

消費税の不正受還付と国の対応

本事件では、脱税行為の一つとして架空外注費の計上がまず挙げられていますが、注目すべきは、消費税約2000万円の不正還付を受けた疑いもある点です。

消費税は、取引の各段階で課税され、商品やサービスなどの最終消費者が実質的に負担する仕組みです。消費税法では、事業者は「仕入税額控除方式」により消費税を納税するシステムが採られており、これは、事業者が売上の際に受領した消費税をそのまま納税するのではなく、原材料や商品を仕入れた際に支払った消費税額を控除した金額を納税するシステムです。そして、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げを上回る場合には、還付を受けることができます消費税法52条1項)。

消費税不正受還付はこの仕組みを悪用したものであり、たとえば、そもそも消費税の課税仕入れの対象とならない従業員給与の一部を消費税の課税仕入れの対象となる外注費に仮装し、架空の請求書を作成するなどの方法によって課税仕入れに係る消費税額を過大に計上し、不正に還付を受けるなどの事案がみられるところです。

近年、消費税の仕組みを悪用した不正受還付事案が相次いでおり、国税庁によると、平成29年から令和3年度までの5年間の消費税不正受還付事案の告発件数は計57件であり、不正受還付額は計35億9000万円にのぼっています。

国税庁が発表した令和5年度査察の概要によっても、国税庁は、消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であるとして、不正受還付事案への対応を重点課題として位置付け、引き続き積極的に告発してゆくとありますので、注意が必要です。

刑事手続

B氏は、法人税法違反などの疑いで刑事告発を受けています。

刑事告発を受けた検察庁は、B氏を被疑者として取調べ、その後起訴するか否かを決めることになります。

最近では、刑事告発されると約8割から9割の高率で起訴されるに至っています。

また、起訴された場合には、刑事裁判が始まります。

国税局が令和6年に発表した資料によると、査察事件の第1審判決の状況は、令和5年度中の判決件数83件全てが有罪であり、有罪率は100%となっています。このことから一旦起訴されると有罪となる可能性は極めて高いのが実情です。

最後に

既にお話しましたように、ひとたび刑事告発をされてしまうと、極めて高い確率で起訴され、かつ、有罪となるという実情があります。ですから、脱税に関与してしまったという場合には、早急に弁護士に相談して刑事告発を避けるための活動をしていくのが極めて重要と考えられます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談を無料で行っていますので、気軽に早急にお問合せください。

【報道解説】転売が疑われる客に対する免税販売

2024-07-17
報道

転売が疑われる客に対して免税販売したとして大阪国税局から医薬品店が指摘を受けたという報道について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1 報道の内容

「ドラッグストア『ダイコクドラッグ』の大阪にある複数の店舗が、転売目的が疑われる中国人観光客に不適切な免税品の販売を繰り返していたと大阪国税局から指摘され、店舗を経営する2つの会社があわせておよそ3億円を追徴課税されていたことが関係者への取材で分かりました。」

免税品を国内での転売目的が疑われる客に販売することは認められていませんが、関係者によりますと、大阪の繁華街ミナミにあるダイコクドラッグの複数の店舗では、中国人観光客に対して、スーツケースに入りきらないほどの量の化粧品や医薬品などを免税価格で販売していたことが大阪国税局の税務調査で確認されたということです。

国税局は、転売目的が疑われる客に免税販売を繰り返し、2019年から2年にわたって消費税の申告漏れがあったと指摘し、2社に過少申告加算税を含めてあわせておよそ3億円を追徴課税しました。

店舗には日本に住む案内役の中国人に連れられた観光客がたびたび訪れていたということで、不適切な免税販売の売り上げは30億円にのぼるとみられています。
 
親会社の『ダイコク』は修正申告と納付は済ませたとしたうえで『国税局の指摘を真摯(しんし)に受け止め、現在はルールにのっとった販売を行っています』としています。」

NHK「ダイコクドラッグ 転売疑いの客に免税販売か 国税局が追徴課税」(2024年6月4日)より抜粋
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240604/k10014470241000.html

2 免税店とは

物品の譲渡やサービスの提供が国内における取引であっても、その物品が輸出され、あるいはそのサービスの提供が国外で行われる場合には、それに対する消費税は免除されます。
その一環として、輸出物品販売場(これが免税店です。)において、日本に居住していない者に一定の物を販売する場合にも、消費税が免除されます。

免税店として販売しようとする場合、税務署に申請をし、許可をもらう必要があります。

3 転売目的の販売について

免税店においては、日本に居住していない者に対し「通常生活の用に供する物品」を販売する場合に、消費税が免許されています。
つまり、事業用又は販売(転売)用として購入することが明らかな場合には、免税販売対象外となります。
そこで、報道された会社は、転売目的が疑われる者に対する販売について、免税取引だとして、その分については消費税がかからないとして、申告したことが申告漏れとされたため、追徴課税がなされています。

4 修正申告について

報道された会社は、「修正申告と納付は済ませた」としています。
修正申告とは、事後的に納税者自ら従前の確定申告の内容を是正する手続をいいます。
そして、修正申告した上で、追徴課税も含めて納付を済ませたということであれば、税金に関する対応は基本的に済んでいるということになります。

もっとも、ここで注意して欲しいのは、上記のような税金に関する対応と、企業や代表者等が刑事責任を問われるかどうかは全く別の問題です。
国税庁より告発が行われ、刑事責任が問われるかどうかは、脱税した金額や脱税の方法などを考慮して、検察官が起訴するかどうかを判断し、裁判所がどのような刑罰に科するかを決定します。
そのような手続の中で修正申告が考慮される事情だとしても、修正申告をしたことで何もお咎めがないかと言われると別問題だということには注意が必要です。

5 最後に

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税事件に強い弁護士が所属し、消費税法違反など多数の事件を取り扱っています。脱税をしたかもしれない、税務調査を受けることになった、国税庁から告発され刑事事件化するかもしれないなど不安に感じていらっしゃる方は、初回の相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

リバースチャージ方式とは

2024-07-03
消費税

消費税のリバースチャージ方式について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

消費税の課税対象

消費税法第4条によると、①国内において、②事業者が行った、③資産の譲渡等について消費税の課税対象とする旨規定されています。
そして、同法2条によると、ここでいう資産の譲渡等とは、事業として、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供とされています。

従来、国外事業者が行う電子書籍や広告の配信などを行う役務の提供については、消費税の課税対象ではなかったもの

以前は、インターネットを介して電子書籍や広告の配信などを行う役務の提供が、国内取引に当たるか否かの判断は、役務の提供にかかる事務所の所在地が国内にあるか否かで判断することとされていました。
その結果、同じコンテンツを配信する場合であっても、役務の提供にかかる事務所が国内にある場合には国内取引として消費税が課税され、外国にある場合には消費税が課されないことになっていました。
これでは、事業者間で競争条件に大きな差が生じてしまいます。

リバースチャージ方式による消費税の課税関係について

上記のような不公平を是正するため、2015年10月から、消費税法が改正され、電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引を「電気通信利用役務の提供」と定義し、国境を越えた事業者間の電気通信利用役務の提供にかかる消費税の課税においては、リバースチャージ方式が導入されました。
リバースチャージ方式とは、簡単に言うと、「支払った側」が消費税を納付する方式です。私達が、サービスを購入した際に支払う消費税については、税金を払っているという感覚はあるものの、実際に税金を国に納付しているのは、サービスを提供した(売った)側です。「リバース」とは日本語に訳すと「反対の」という意味であり、すなわち、リバースチャージ方式がとられれば、サービスを提供した(売った)側とは反対のサービスを受けた(購入し支払った)側が消費税を国に納付するということになるのです。
リバースチャージ方式が導入された結果、国外事業者から事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合、サービスの提供者(売手)ではなく、サービスの受け手(買手)である国内事業者に消費税を課されることになり、これによって、外国の事務所からの配信であっても役務の受け手が国内に所在していれば、国内取引として消費税が課されることになりました。

リバースチャージ方式での申告・納税が必要な事業者

リバースチャージ方式は、全ての事業者に適用されるわけではありません。
経過措置により、一般課税制度により申告する場合で課税売上高割合が95%未満である事業者にのみ、リバースチャージ方式による申告と納税が必要になります。

最後に

リバースチャージ方式は、一般の方には、複雑でわかりにくい方式といえます。しかし、消費税といえども、税を課される事業者が申告・納税しなければ、税金の問題が生じ、税務署に把握されれば、無申告についてのペナルティを別途受ける可能性があります。
また、仮装隠ぺいなど悪質性が高いと判断された場合には、無申告加算税に代えて重加算税が課せられます。
さらに、納税が遅れると、その期間に応じた「延滞税」の支払いが求められます。
納めるべき税額が大きい場合、刑事告発されることも考えられます。
申告・納税しなければならないのにしていない方は、早めに税理士や弁護士といった専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を中心として扱っていますが、税法についても知識のある弁護士がそろっています。
初回の相談は無料ですので、一度ご相談にお越しください。

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