Archive for the ‘その他税法違反’ Category

【捜査解説】脱税事件における共謀共同正犯について詳しく解説

2024-05-08
脱税捜査

脱税事件における共謀共同正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が具体例を交えながら詳しく解説します。

共謀共同正犯の具体例

 会社の実質的経営者Aとその会社の名義上の代表取締役で経理を担当していた者Bとの間で法人税の脱税をすることについて概括的な通謀がなされて、その通謀に基づいてBらが虚偽申告などの脱税行為に及んだ場合は、必ずしもAにおいて虚偽申告の内容を逐一認識していなくても、法人税の脱税につき共謀共同正犯が成立します。

共謀共同正犯の捜査

上記事例のように、法人内部において、その事業等の全般にわたって実質的経営者と経理全般を担当している者との間で、共謀の有無を争うということはよくあるケースであり、そのほとんどが、実質的経営者が経理担当者に任せていたので細かいことは知らないなどとする共謀の否認です。
このようなケースでは、検察官は「実質的経営者は、その事業等による年間の所得等を前提に資金繰りや自らの生活設計等を行っているはずであるから、その事業等から生じる所得とこれに対する税額に無関心であるということは極めて希であるはずである。したがって、このような立場の者が経理担当者との共謀を否認するのは、自己の刑事責任を回避しようとしているに過ぎない。」と考えます。
そこで、まずは、実質的経営者が、まさに実質的経営者である証拠として、当該事業等から生ずる所得が同人の利得となっている金の流れについての証拠を確保し、その経営者性を明確にします。
その上で、
⑴経営者に脱税の動機があること、
⑵経営者が税の申告を含む事業遂行上の重要事項について指示・承諾を与えていたこと、
⑶脱税に関して経営者と経理担当者らの利害が共通していたこと、
⑷経営者においても経理担当者らによる個々の不正経理を認容していた状況があること、
⑸経営者も不正経理によって生じた簿外資産の管理・処分等に関与していたこと

などの情況証拠を積み上げていき共謀の事実を認定していきます。

共謀共同正犯を疑われたら

仮に、経理担当者が単独で会社財産を横領するなどして、その結果を隠ぺいするなどのために不正経理をした結果、申告内容に誤りが生じていたような場合であれば、捜査機関に早急に事実関係を説明して対処する必要があります。
また、脱税の指示について概括的にでも経理担当者に指示を出し、その結果について報告を受けていたとなると、個々の具体的な不正経理についての認識が薄くても共謀を争うことは難しい場合もありますので、ケースバイケースで、国税当局や捜査機関に対する対応を考えていく必要があります。
 脱税事件による共謀の成否に関しては、国税当局や検察がどのような証拠をどこまで収集できたか、また、それらの証拠収集の適法性などに問題がないかなど事実認定上の又は法律上の高度で専門的な判断を要します。こうした脱税事件の公判に対応していくためには、これらのことに精通した弁護士に依頼することが必要となります。脱税事件の流れはこちらhttps://datsuzei-bengoshi.com/datuzei_nagare/

 あいち刑事事件総合法律事務所には、これらのことに精通した弁護士が多数在籍しております。このような事態にいたったときは、是非、弊所にご相談ください。

【捜査解説】損益計算法による立証(いわゆるPL立証)について詳しく解説

2024-05-01
脱税捜査

損益計算法によるPL立証について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が具体例を交えながら詳しく解説します。

損益計算法による立証(PL立証)とは

 損益計算法による立証、いわゆるPL立証は、課税対象期間に発生した収益とこれに関する費用・損失について、親告金額と対ししてその増差計算をすることにより、その期間における逋脱所得金額を計算する方法です。
この方法によると所得の発生源が個別的に表示され、逋脱所得の成り立ちが明らかになりますが、取引の原資記録としての契約書や売上伝票等が破棄されたり、それらの電子データが改ざんされたりしていると、それらを補完する資料がなければ正確な損益計算を行って逋脱所得額を算出することは困難になります。
ですから、PL立証は収益と費用等の全容を確定できる証拠が存在することによって可能となるものなのです。
基本的には、
⑴  正規の決算書類データ等が残されている場合
⑵  裏帳簿データなど実際の取引が判明する書類等が残っている場合
⑶  帳簿書類等のデータが完全になくとも、それと同程度に立証が可能な証拠が残っている場合
⑷  間接証拠の積み上げにより収益と費用等を合理的に推計できる場合

においてPL立証が可能とされています。

修正損益計算書とは

PL立証においては、実際の所得金額を表す損益計算書と申告所得金額を表す損益計算書とを組み合わせて、各勘定科目ごとに脱漏部分を表示する一覧的な損益計算書を作成して逋脱所得額を計算しています。捜査実務では、このような損益計算書を修正損益計算書と呼んでいます。
この修正損益計算書は、起訴後、検察官の冒頭陳述で逋脱所得の内容をなす個々の勘定科目の内訳を記載した逋脱所得の内容説明及び税額の算出過程を示す穂脱税額計算書とともに公判に提出され、これに基づいて立証が行われます。

脱税事件で捜査を受けた場合には

 脱税事件で起訴された場合、一般事件と比べ、上記のとおり、検察側の立証は、非常に専門的で技術的なものになります。こうした高度な専門性・技術性を要する脱税事件の公判に対応していためには、これらのことに精通した弁護士に依頼することが必要となります。刑事事件の流れはこちらhttps://datsuzei-bengoshi.com/muzai/

 あいち刑事事件総合法律事務所には、これらのことに精通した弁護士が多数在籍しております。このような事態にいたったときは、是非、弊所にご相談ください。

不正軽油は脱税!

2023-09-06

不正軽油について、なぜ脱税にあたるのか、どのような罰則があるのかについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

不正軽油とは

不正軽油とは、都道府県の承認を受けずに軽油に灯油や重油等を混ぜた油などをいいます。
不正軽油は、製造することや販売することはもとより、不正軽油と知って購入することや使用することも禁止されており、罰則があります。
不正軽油は脱税行為であるだけでなく、大気汚染の原因となったり、人体への悪影響を及ぼしたり、石油製品販売業・運輸業・建設業等の公正な市場競争を阻害したり、エンジンの不具合・損傷の原因となったりするため、各都道府県では抜き打ち調査を実施したりするなど、厳しく規制しています。

不正軽油は脱税目的

不正軽油は脱税目的で製造販売されています。
なぜ脱税になるのでしょうか。

軽油の引き取り、販売、消費した場合には、「軽油引取税」を納税する必要があります。
軽油引取税は、地方税の一種で、1キロリットル当たり32,100円の税率が定められています。
軽油の販売業者は、軽油の元売り業者から軽油を引き取る際に引き取った軽油の量に応じた軽油引取税に当たる金額を元売り業者に支払う必要があり、元売り業者が毎月末日までに前月分を取りまとめて税務署に申告し納税することになります。
軽油販売業者は、販売する軽油に軽油引取税分を上乗せした金額で消費者に販売していきます。

そこで、軽油販売業者は、引き取った軽油に軽油引取税のかからない重油などを混ぜた不正軽油を製造し、不正軽油を「軽油」として販売する際に軽油引取税を全量に適用した上乗せした金額で販売することにより、混ぜた重油分にかかる軽油引取税額分について利益を受けることができます。
この方法により、本来であれば、納めるべき軽油引取税を免れているということができます。

不正軽油に関する罰則

不正軽油に関しては様々な罰則が設けられています。
軽油引取税の脱税 10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金
②混和軽油の製造等の承認を受ける義務違反 10年以下の懲役又は1000mン円以下の罰金(法人併科あり)
不正軽油と知って保管又は運搬、販売、購入した場合 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(法人併科あり)
④不正軽油に使われると知って原材料・薬品・資金・土地・建物・車両・機械等を提供、運搬した場合 7年以下の懲役又は700万円以下の罰金(法人併科あり)

不正軽油を製造販売した場合には、脱税としての刑事罰を受けるだけでなく、その他の罰則によっても処罰を受ける可能性があります。
また、不正軽油と知って購入した場合にも罪に問われることになりますので、安いからといって安易に不正軽油に手を出さないようにしましょう。

不正軽油に関係してしまったら

不正軽油については、各都道府県が抜き打ち調査を実施したり、啓発活動を実施するなど積極的に撲滅に動いている事案です。
不正軽油に関係してしまった場合には、刑事事件に発展する可能性も高いので、税金関係だけではなく刑事事件全般に強い専門家に早急に相談することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件を中心に扱っている事務所ですので、不正軽油に関しても丁寧にサポート差し上げます。

輸入と税金

2023-05-24

貿易取引においても税金がかかってきます。今回は輸入にかかる税金について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

輸入品と税金

輸入品に課される税金として主なものは
①関税
②消費税
があります。
①関税には、法律に基づいて設定されている税率(国定税率)と条約に基づいて設定されている税率があります。
国定税率は、関税定率法と関税暫定措置法によって定められています。
②消費税には、国税としての消費税と、地方消費税があります。

税額の計算

①関税の税率計算
原則として輸入申告時の貨物の価格又は数量を課税標準とします。
課税標準額に対して、品目ごとに規定された関税率を乗じた金額が課税される関税の額となります。
物品の種類(素材や材質、製造方法)や輸入元の国・地域、用途によっても関税率が変わってきます。
また、無税とされている(関税率が0%)品目も多くあり、全体の約34%は無税品となっています。

②消費税の税率計算
消費税(10%)は、内国消費税(7.8%)と地方消費税(2.2%)に分けられます。
内国消費税は、CIF価格(端数処理前)と端数処理後の関税額の合計(千円未満切り捨て)に対して課税されます(100円未満切り捨て)。
地方消費税は、内国消費税額の78分の22に当たる額(100円未満切り捨て)です。
また、輸入品のうち飲食料品(外食・酒類を除く)については、軽減税率の対象となるため、消費税率が8%となるものもあります。
この場合には、内国消費税が6.24%、地方消費税が1.76%となります。

※課税価格が1万円以下の物品の場合
課税価格の合計額が1万円以下の物品の輸入については、一定の場合を除いて関税及び消費税が免除されます。

輸入品を引き取る際の手続き

輸入品を保税地域から引き取ろうとする者は、原則として品名等や関税・消費税の金額などを記載した輸入申告書を保税地域を所轄する税関長に提出し、輸入品を引き取る時までに関税と消費税を納付する必要があります。
あらかじめ税関長の承認を受けた特例輸入者又は輸入通関の手続きを認定通関業者に委託した特例委託輸入者は貨物を引き取った後に関税と消費税を納付することができます。

輸入事後調査

輸入された貨物にかかる納税申告が適正に行われているかを事後的に確認し、不適切な申告を是正し、適切な申告指導を行うことにより適正な課税を確保することを目的として、税関が行う税務調査を「輸入事後調査」といいます。
ここで不正が発覚した場合には、国税局の査察や刑事告発が行われることもあります。
また、税関とは別に税務署などが独自に税務調査を行うことも可能です。

まとめ

貿易取引においても、税金の問題は切り離せません。
しっかりと税金について確認し、申告をする必要があります。
万が一、間違った申告をしてしまったら、直ちに修正手続きを行いましょう。

【制度解説】住民税について

2023-05-10

住民税の計算方法,納税時期等に関して弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

制度の概要について

所得税と並んでポピュラーな税に住民税があります。住民税には,市町村民税と道府県民税の2つがあり,毎年1月1日の時点で,当該市町村に住所を有する個人や会社などの法人に対し,地方税法に基づいて当該住所の地方公共団体が課税するというものです。
通例,毎年6月上旬頃に,納税義務者に対し,各地方公共団体から住民税の納付通知書が届けられ,通知による課税方式が採られていますが,個人の場合,FXなどの投資により所得がある場合には,その所得が年間20万円以下である場合(この場合所得税の申告は不要)であっても住民税の申告が必要となるので注意が必要です。
納付方法:一括払いから4回分割払いの選択が可能であり,納付通知書を用いて納付します。

税額の算定について


確定申告をしている個人事業主などの個人や,会社等の法人は,前年度の確定申告による所得を基に住民税が計算されます。
また,住民税には,その負担の内訳として所得割,均等割の2つがあります。
所得割とは納税者の所得に応じて課されるものであり,均等割りとは,所得に関係なく一定額が課されるというものです。この場合,確定申告により所得確定された金額は所得割の算定のベースとなります。
個人の住民税については,それぞれの計算式は次の通りです。

具体的計算式
所得割 
(所得金額-「所得控除額」)×10%-税額控除額=所得割の税額(①)
このうち,「所得控除額」には基礎控除額として原則43万円が認められています(一部高額所得者を除く)。
なお、住民税の所得控除額と所得税の基礎控除額とは違うことに注意が必要です。
均等割
前年度の総所得金額に応じて決まり,大体の地域では,年間4000円~5000円程度とされています(②)。
住民税額=上記①+上記②となります。

住民税の額に納得ができない場合は


通知を受けた住民税額に納得ができない場合は,各自治体の定める条例の規定に基づいて不服の申立てができるほか,行政不服審査法による審査請求ができます。さらに,行政上の手続きで解決できない場合には行政事件訴訟法により,裁判所で訴訟による紛争解決を求めることも可能となります。
当法律事務所では,所属の弁護士が国税局長に対し,税理士業務の通知を出しており,住民税を含めた税務事件にも注力しています。住民税の額や税務行政に不満がある方は,当法律事務所に一度相談されることをお勧めします。

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