このページの目次
1 脱税事件で告発されるとどうなるか
脱税事件における告発とは、査察調査等で脱税の嫌疑がかかり、その件について検察庁に申告し処罰を求めることをいいます。
国税庁が公表しているデータでは、査察調査を受けた企業の多くが告発を受けるに至っており、査察調査を受けた企業等は非常に高い確率で刑事告発を受けているといえます。
検察庁に告発を受ければ刑事事件として捜査が行われることになり、その嫌疑が濃厚になった場合には関係者が逮捕・勾留される場合もあります。
そして捜査の結果、脱税事件が起訴されて有罪判決を受ければ刑罰を科されることになります。
2 査察調査と告発との関係
国税庁が公表しているデータによると令和2年度は査察調査を実施した件のうち、73.5%を刑事告発しているとのことです(令和3年6月国税庁 令和2年度査察の概要)。
同資料によれば、過去にわたっても査察調査を行った件のうち告発に至った件数の割合は概ね7割前後で推移しており査察調査を行われた場合には高い確率で刑事告発に至っているといえます。
3 刑事事件となった場合の流れ
先ほど簡単に説明した刑事事件の流れについて図を用いて詳しく説明していきます。
(1)逮捕から勾留まで
上記の図において脱税事件の端緒は国税庁等からの「告発」になります。
そして通常の刑事事件と異なるのは、脱税事件は検察庁に対する告発から事件がスタートするので警察署での逮捕ではなく、検察官による逮捕手続が取られる点です。
したがって逮捕された後に、検察官に送られる(送検)ことがないので、逮捕から48時間以内に勾留を決定するかの判断を裁判所が行うので、通常の刑事事件よりも勾留が決定するまでの時間が短く、初動が非常に重要になります。
(2)勾留から起訴まで
勾留請求がされると,裁判官が被疑者に対し質問を行い,被疑者の弁解を聞いたうえで勾留するかどうかを決めます。
裁判官が勾留の必要があると判断した場合には,原則として勾留請求がなされた日から10日間の範囲(延長されると最大20日間)で勾留されます。
一方,裁判官がこれ以上の延長は必要ないと判断した場合には釈放されます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談いただいた場合、勾留中には、次のような弁護活動を行います。
- 勾留請求された場合、裁判官に対し勾留しないように要請
- 勾留決定が出た場合、この決定に対して不服を申し立てる(準抗告の申立て)
- その他、勾留をやめてもらうための活動(勾留の取消請求、執行停止の申立て等)
(3)起訴から判決まで
起訴には正式な起訴と簡略化された裁判である略式起訴があります。
もっとも、脱税で告発される事件は脱税額が高額で悪質な場合といえますので、略式起訴で終結する可能性は低いと言えます。
正式な裁判では、起訴されると、正式に公開裁判が開かれますが、起訴から第1回公判が始まるまでは、だいたい2ヶ月程度かかります。
その間被告人は拘置所によって身柄を拘束されますが、起訴後であれば保釈制度を利用して、一時的に日常社会へ戻ることも不可能ではありません。
そして裁判では事実を争うのであれば無罪判決を、事実を争わないのであればより軽い判決を得られるように弁護活動を行っていきます。
無罪判決を目指すための弁護活動、より軽い判決を得るための弁護活動については別のページで改めて詳しく説明させていただきます。