一人親方はインボイス登録すべき?制度の影響と脱税リスクを弁護士が解説

土木作業

一人親方として働いている方の中には、インボイス制度が始まってから、
「登録した方がよいのか。」
「登録しないと仕事を切られるのではないか。」
「消費税を納めていなかったら脱税になるのか。」
と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

インボイス制度は、単に請求書の書き方が変わる制度ではありません。
取引先との関係、消費税の負担、確定申告の内容にまで影響する制度です。

もっとも、インボイス制度に登録しないこと自体が直ちに脱税になるわけではありません。
問題となるのは、課税事業者として申告・納税義務があるのに、売上を隠したり、消費税を申告しなかったりする場合です。

今回は、一人親方にとってのインボイス制度の基本、一人親方に及ぶ実務上の影響、どのような場合に脱税につながるのか、逆にどのような場合は直ちに脱税ではないのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそもインボイス制度とは何か

インボイス制度とは、正式には「適格請求書等保存方式」といい、買手が仕入税額控除を受けるために、原則として売手から交付を受けた適格請求書を保存しなければならない制度です。
インボイスとは要件を満たした請求書等のことです。

仕入税額控除とは、売上にかかる消費税額から、仕入れや経費にかかる消費税額を差し引いて、納付すべき消費税額を計算する仕組みをいいます。

そして、適格請求書を発行できるのは、税務署に登録した「適格請求書発行事業者」に限られます。
そのため、一人親方が取引先からインボイスの発行を求められる場合には、登録するかどうかの判断が必要になります。

事例※フィクションです

建設業の一人親方であるAさんは、これまで売上が大きくなく、免税事業者として仕事を続けていました。
ところが、元請会社から「今後はインボイスを発行できる事業者でないと外注しにくい」と言われ、登録を検討することになりました。
Aさんは、登録すると消費税の申告が必要になることを知りながら、取引を維持したい一方で税負担を避けたいと考え、請求書には消費税相当額を上乗せしつつ、申告はしないままにしていました。

このような場合、単に制度に対応できていないという話ではなく、課税事業者としての申告義務違反脱税が問題になる可能性があるので注意が必要です。

インボイス制度が一人親方に与える影響

一人親方個人事業主です。
そのため、前々年の課税売上高が1000万円以下であれば、原則として消費税の納税義務が免除される免税事業者となります。
しかし、インボイスを発行するには適格請求書発行事業者の登録が必要であり、登録を受けると課税事業者として消費税の申告が必要になります。

この点が、一人親方にとって最も大きな影響です。なぜならこれまで免税事業者であったとしても適格請求書発行事業者を選択すれば、仮に基準期間の課税売上高が1000万円以下であったとしても課税事業者として消費税の申告・納税が求められることになるからです(消費税法第9条第1項、消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関する取扱通達第二2-5)。
これまで消費税を納めていなかった一人親方も、登録後は消費税の申告や帳簿保存が必要となり、資金繰りや経理処理の負担が増える可能性があります。

取引先との関係で生じる実務上の問題

インボイス制度の影響は、税務だけではなく取引関係にも及びます。
取引先が課税事業者であり、原則課税によって仕入税額控除を受ける場合には、一人親方からインボイスの交付を受けられないと、取引を打ち切られてしまう可能性があります。

もっとも、売上先が一般消費者である場合や、相手方が免税事業者である場合には、仕入額控除を行わないため、インボイスの保存を必要とせず、インボイス制度が始まったからといって影響はありません。
また、相手方が簡易課税制度(前々年の課税売上高が5000万円以下の事業者で、届け出をしている場合には、仕入額控除をみなし仕入率によって計上することができる制度)を採用している場合にもインボイスの保存が不要なので、影響はないといえます。

そのため、一人親方は一律に登録を考えるのではなく、免税事業者のままであるべきか、適格請求書発行事業者となり課税事業者となるべきかは取引先との関係によって検討すべきです。

インボイス制度に登録しないと脱税になるのか

インボイス制度に登録しないこと自体は、直ちに脱税ではありません。
もともと免税事業者であり、適格請求書発行事業者の登録をしないまま事業を続けること自体は制度上あり得る選択です。
ただし、課税事業者であるのに消費税を申告しない場合や、登録後に受け取った消費税相当額を売上から除外して申告しない場合、売上を隠して課税売上高を少なく見せる場合には、脱税の問題が生じます。

つまり、問題となるのは「登録しないこと」ではなく、「納税義務があるのに申告しないこと」や「虚偽の申告をすること」です。

一人親方が気を付けるべき点

一人親方が気を付けるべきなのは、まず自分が免税事業者なのか、課税事業者なのかを正確に把握することです。
そのうえで、登録の有無にかかわらず、売上、請求書、領収書、通帳履歴、外注費や材料費の記録をきちんと残し、確定申告を適正に行う必要があります。

また、免税事業者から適格請求書発行事業者になった事業者については、一定期間、納付税額を売上税額の2割とする「2割特例」が使える場合がありますが、これは恒久的な制度ではないため、特例終了後も見据えた資金管理が重要です。
制度が分からないまま放置することが、結果的に申告漏れ無申告につながるため注意が必要です。

まとめ

一人親方インボイス制度の問題は、単なる経理処理の話にとどまりません。
登録の判断を誤れば取引関係に影響し、申告対応を誤れば、加算税延滞税だけでなく、悪質な場合には脱税として刑事責任が問題となります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、税務申告をめぐって刑事事件化のおそれがある事案や、事業者の方が不安を抱える脱税関連の問題について相談を承っています。
一人親方として今後の対応に不安がある方、すでに申告漏れ無申告が心配な方は、早めにご相談ください。

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