不動産会社の脱税事件 よくある手口と発覚後のリスク・刑事処分を解説

税金とお金

今回は、不動産会社脱税について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

不動産会社について、よくある脱税事例

不動産分野の脱税は、景気や地価動向に左右されやすく、売買・賃貸・管理・SPC・関連会社取引が複雑に絡むため、査察・調査でも繰り返し取り上げられてきました。

脱税の要件である「偽りその他不正の行為」とは、最高裁判所の判例によると、単なる計算ミスではなく、税の賦課徴収を不能または著しく困難にするような偽計その他の工作を伴うものです。
不動産業界では、この工作が、契約名義、口座管理、紹介料、修繕費、国内外の関連会社、課税・非課税判定の操作として現れやすい、というのが実務的な特徴です。

• 賃料収入等の売上除外

手口
テナント賃料、更新料、礼金、管理料の一部を会計帳簿に載せず、個人名義口座や関係会社口座で留保する類型です。

動機
資金を会社外で直接コントロールしたい、赤字法人や欠損金とぶつけたい、私的流用の痕跡を薄めたい、という動機が典型です。

発覚経緯
賃貸借契約書、入金口座、管理ソフト、テナント側資料の照合でずれが出やすく、令和5年度に告発された事例では、不動産賃貸業を営む法人の無申告で得た資金が個人名義預金に留保され、遊興費に費消されていたとされています。

また、東京地裁平成30年11月20日判決でも、売上の一部除外が中心手口でした。

• 架空手数料や架空外注費の計上

手口
存在しない紹介料、コンサル料、仲介手数料、修繕費、工事代金を計上し、利益を圧縮する類型です。

動機
売買仲介や物件取得時には金額が大きく、架空経費を混ぜても外形上目立ちにくいため、短期間で所得を落としやすい点にあります。

発覚経緯
支払先側の申告内容、請求書の真正、実際の役務提供、振込後の現金還流の有無が当局の照合対象になります。

報道では、令和2年度に日本ユニバーサルが架空手数料計上で約8,900万円を脱税した疑いで告発され、平成29年度にMRエステートも架空経費等の計上で約2,400万円を脱税した疑いで告発されています。

• 意図的な無申告

手口
法人所得が出ていることを認識しながら、確定申告書自体を提出しない類型です。

動機
単年度の赤字回復局面、単発の売却益発生、資金難による納税回避、資産管理会社だから見つかりにくいという誤信が背景にあります。

発覚経緯
不動産登記、固定資産データ、賃料振込、支払調書、テナント側資料、法人番号情報の突合で端緒がつきやすく、最近の令和8年2月にも不動産賃貸会社N&Kの無申告事案が告発されています。また、前記のように令和5年度には不動産賃貸業を営む法人による単純無申告ほ脱事案が告発されています。

• 売却益の不申告と消費税還付スキーム

手口
土地・建物の売却益をそもそも申告しない類型と、消費税では、居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除を得るため、課税売上割合を人為的に引き上げる類型があります。

動機
売却益は一件当たりの利益が大きく、消費税還付スキームは現金流入が早いため、経営悪化局面で誘惑が強い点にあります。

発覚経緯
決済書類、登記、売買契約、取引相手側資料、インボイス・請求書・輸出/金地金取引資料の整合性で崩れやすいです。

報道では、平成31年度に、「西尾劇場」跡地売却益の不申告事案が告発され、国税庁発表の令和6年度査察の概要によると、不動産賃貸グループ法人の金地金スキームが公表されています。
また、大阪国税局発表の令和3年度査察察の概要によると、投資用マンション販売会社による国外法人利用の不正スキーム事案が取り上げられています。

• 国外法人や関連会社を使った所得移転

手口
海外法人、国内ペーパーカンパニー、親族会社を介して、手数料・委託料・仕入れ・サブリース収益の帰属をずらす類型です。

動機
誰に所得が帰属するかを曖昧にし、課税関係の把握を遅らせることにあります。 発覚経緯:近時は、各種資料情報の分析、国外送金等情報、デジタルフォレンジック、取引先照会が強化されてきており、従来より秘匿しにくくなっています。

発覚時の悪影響

税務面の一次被害は、申告漏れ本税だけでは終わりません。

税務署長が更正・決定を行える期間は原則として法定申告期限から5年ですが、偽りや不正の行為で税額を免れたり還付を受けたりした場合は7年に延びます。
さらに、事前通知前の自主修正なら過少申告加算税はかからない一方、通知後・調査後になるほど加算税率は重くなり、無申告事案では令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについて、300万円超部分に30パーセントの無申告加算税がかかり得ます。
延滞税も別途かかり、2026年は納期限後2か月まで年2.8パーセント、その後は年9.1パーセントです。 しかも、偽りその他不正の行為による事案は、延滞税の計算期間特例から外れます。

刑事面では、通常の税務調査と査察を分けて考える必要があります。

通常の実地調査は、原則として納税義務者と税務代理人の双方への事前通知があり、調査終了時には非違の有無に応じた説明手続が予定されています。
これに対し、査察調査は、刑事責任追及を目的とする犯則調査であり、事前通知や調査終了説明の手続になじまないとされています。 また、査察官は裁判官の許可状を得て、捜索・差押え等の強制処分を行い、証拠を収集した上で検察庁へ告発します。

加えて、行政処分・事業継続面の副次被害も重いものがあります。

重加算税は刑罰ではなく行政上の措置と整理されていますが、実務上は刑事事件と並行して会社の信用を大きく損ないます。
さらに不動産会社であれば、代表者に拘禁刑が付いた場合、宅地建物取引業法5条1項の免許欠格要件が問題化し得ますし、国土交通省資料でも、拘禁刑以上の刑や宅建業法違反等による罰金刑のほか、業務に関する不正・著しく不当な行為が免許審査上の論点になることが示されています。
ここに、金融機関の期限の利益喪失条項、取引先の表明保証違反条項、共同事業契約の解除条項、従業員の離職、顧客による預り金不安が重なると、税額以上の資金流出が起こります。

刑事処分と手続きの流れ

法律上の出発点は、どの条文類型に当たるかです。 法人税不正ほ脱や不正還付は法人税法159条、消費税不正ほ脱や不正還付は消費税法64条が中核で、いずれも10年以下の拘禁刑又は1,000万円以下の罰金、または併科が基本線です。

これに対し、故意に申告書を提出しない悪質な無申告ほ脱は、法人税法159条3項等の5年以下・500万円以下の類型が問題になり、単なる無申告は法人税法160条等の1年以下・50万円以下の比較的軽い犯罪類型です。
法人については、両罰規定により会社自体も罰金刑の主体になり得ます。

また、「代表者の責任」は、登記簿上の代表者に限りません。実質的に業務全般を統括し、売上除外や虚偽申告書の提出を指示した者は、個人として起訴・処罰対象になります。
実例として、令和6年5月24日には、名古屋地方裁判所が、不動産賃貸事業を営む法人とその実質経営者である弁護士に有罪判決を言い渡したと報じられています。

弁護士として取るべき対応

最優先すべきことは、初動の誤りであり、「隠ぺい」「口裏合わせ」「証拠改ざん」に見える行為を絶対に生じさせないことです。

社内では、会計システム・賃料管理システム・電子メール・チャット・稟議書・請求書PDF・口座入出金データの削除停止を即時指示し、窓口担当を一本化します。
同時に、税理士と弁護士で役割分担を明確にし、税額試算は税理士、事実認定・供述統制・対当局方針は弁護士が主導する体制が望ましいといえます。 まだ事前通知前であれば、自主修正申告の要否を最優先で判断すべきで、ここを逃すと過少申告加算税の免除メリットを失います。

社内調査では、単に「いくら漏れていたか」を数えるだけでは不十分です。
不動産会社では、物件別の賃料・管理料・更新料、売買案件別の仲介手数料、原状回復・修繕・建築費、紹介料、広告費、SPCや親族会社との資金移動、居住用賃貸建物の消費税判定、課税売上割合の算定根拠、インボイス保存状況までを一気通貫で見ていく必要があります。
消費税の仕入税額控除は、帳簿と適格請求書等の保存が要件であり、請求書等は原則7年間保存が必要です。

「示談・自首」の理解も重要です。
租税本犯では、一般の横領や詐欺のような被害者に対する示談交渉が中心になるわけではなく、実務の中心は修正申告、本税・加算税・延滞税の納付、納付計画の提示、社内統制の建て直しです。
また、刑法42条の自首は、捜査機関に発覚する前に自己の犯罪事実を申告することが要件であり、単なる修正申告や税務署への相談が当然に「自首」とイコールになるわけではありません。 もっとも、調査通知前の自主修正と完納努力は、税務・刑事の双方で有利な事情となり得、極めて重要です。

メディア対応も後回しにすべきではありません。 コメントは代表者、経理責任者、現場責任者が個別に出すのではなく、弁護士レビュー済みの一本化した声明に集約すべきです。外部説明で不用意に「単なるミス」「税理士のせい」などと断定すると、後に事実と異なることが判明した場合、かえって信頼を損なうことになります。
対外的な文言としては、現時点の手続段階、修正申告・調査協力の有無、資金繰りへの影響、顧客・取引先への継続対応だけに限定するのが安全です。

まとめ

今回のテーマで弁護士が最も強調すべき結論は明確です。 不動産会社脱税事件は、税務・刑事・免許・金融・レピュテーションが一体で崩れるため、「税理士だけで何とかする事件」でも、「刑事弁護だけで足りる事件」でもありません。
通常調査の段階であっても、すでに刑事化を見据えた証拠保全と説明統制を始め、修正申告のタイミング、経営者個人の責任の切り分け、会社の資金繰り防衛、宅建免許リスクの評価まで一気に設計することが、被害を最小化する王道です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不動産会社の税務申告をめぐって刑事事件化のおそれがある事案や、事業者の方が不安を抱える脱税関連の問題について相談を承っています。
不動産会社を経営する者として今後の対応に不安がある方、すでに無申告や申告漏れが心配な方は、早めにご相談ください。

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