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1 脱税事件の刑事罰について
まず脱税事件で刑事事件化した事件の多くを占める法人税法違反の処罰規定についてみていきます。
なお所得税法等、他の種類の税法違反についても概ね同様の刑罰が定められています。
法人税法159条第1項
偽りその他不正の行為により、第七十四条第一項第二号(確定申告)に規定する法人税の額(中略)につき法人税を免れ、又は第八十条第十項(欠損金の繰戻しによる還付)(第百四十四条の十三第十三項(欠損金の繰戻しによる還付)において準用する場合を含む。)の規定による法人税の還付を受けた場合には、法人の代表者(人格のない社団等の管理人及び法人課税信託の受託者である個人を含む。
以下第百六十二条(偽りの記載をした中間申告書を提出する等の罪)までにおいて同じ。)、代理人、使用人その他の従業者(当該法人が通算法人である場合には、他の通算法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者を含む。第百六十三条第一項(両罰規定)において同じ。)でその違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
この規定によれば、主に脱税として事件になる不正行為を働いて法人税を免れるないしは不正に還付を受けた場合には、10年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金刑、又はこれらを併科する(懲役と罰金の両方の罰を受けること)と定められています。
2 脱税事件の量刑の傾向
検察官に告発されて刑事事件化した脱税事件では起訴されて有罪判決となった場合、罰金刑のみが科されることは珍しく、執行猶予付きの懲役刑または実刑判決となることがほとんどになります。
また執行猶予付きの判決、実刑のいずれの場合についても罰金刑が併科されることが多くあります。
仮に実刑判決となればすぐに刑務所に行く必要がありますが、執行猶予付きの懲役刑となれば社会内での生活を継続することができます。
特に脱税事件では摘発されるのは会社の経営者であることが多く、今後の会社経営のことを考えればこの違いは非常に大きな意味を持ちます。
令和2年の統計では査察調査が入った事件で有罪判決を受けた86件のうち6件で被告人が実刑判決を受けています(国税庁 令和2年査察の概要)。この割合は低くない割合であるといえます。
以下では裁判で執行猶予判決など、より軽い判決を受けるために必要なことについて解説していきます。
3 脱税事件でより刑罰を軽くするには
刑事裁判において事件に対する量刑を決めるうえで最も重要なのは「犯情」といわれている事情になります。
これは犯罪事実に関する事情のことで脱税事件では脱税の額、脱税を行っていた期間、脱税の手口などが重要になります。
また犯情事実の他にも一般情状と呼ばれる犯情事実以外の事件や事件を起こした被告人の事情も量刑の判断では加味されるので、この点についてしっかりと主張していくことも大事になります。
脱税事件についての一般情状事実としては、脱税後の再発防止策、修正申告等の事後対応の有無などが重要な事情になります。
有罪か無罪かを争わない事件においてより軽い判決を受けるためには
- 裁判までに裁判で主張するための有利な事情を集め、主張のための証拠を準備すること
- 有利な犯情事実や一般情状が認められるかを適切な証拠に基づいて裁判所に主張すること
- 検察官から予想される主張や弁護側の主張に対する反論に対して適切に対応できるように尋問に向けた周到な準備をすること
など事前のしっかりとして準備が必要になります。
この準備は公判請求が予想される案件において始めるのが早すぎるということはありません。
裁判においてより有利な判決を得るために早期に脱税事件や刑事事件に精通した弁護士に相談して対応していくことをお勧めします。