査察調査について

1 査察調査とは

査察調査とは、国税通則法という法律を根拠に行われる調査になります。

税務調査(「税務調査とは」のページも参照)が事前の通知を原則必要としていたのに対して、査察調査では突然国税局査察部の査察員が会社や事務所等に押しかけて調査が開始されます。

テレビやニュースなどで脱税の疑惑がある会社等に大勢の人が段ボールを持ち、列になって入っていくシーンが放送されることがありますが、そのようなイメージを持っていただければ分かりやすいと思います。

事前に綿密な内定調査を行い、ある程度の証拠を掴んでから査察調査に乗り出すことが通常です。

査察調査は任意調査に分類される税務調査とは異なり、強制調査に分類され臨検、捜索、差押等の権限があり、悪質な脱税を摘発することが目的の調査です。

すなわち納税者側の同意をとることなく、会社への立ち入りや、帳簿等の書類の押収ができます。

また査察調査を経た件のうち約7割の件で検察庁への告発がされており、査察調査がされ場合には刑事処罰を見据えていることが窺えます。

2 査察調査の種類

査察調査には、任意調査、強制調査、質問調査があります。
先述のように査察調査には証拠隠滅を防止するために事前の通知義務がありませんのでいきなり調査が始まることになります。

(1)任意調査

任意調査は国税通則法131条に定めがあり、質問や検査によって相手方の意思に反しない限度で行われる(質問に対する不答弁や、検査の拒否には刑事罰が科されます)点で税務調査と近似しています。

(2)強制調査

それに対して強制調査については国税通則法2条に定めがあり、犯則事件の調査をする際に必要が認められる場合に裁判官の許可を得て行われる臨検、捜索又は差押ができるとされています。

(3)質問調査

質問調査は強制調査などの後に行われる、査察員による取調べのことを指します。取り調べについては任意で行われるものでありますが、その取調べの対応結果によって、のちに検察官による逮捕・勾留がなされる危険がありますので対応には特に注意が必要です。

これらの調査については1年を超える期間行われることが通常です。また後に検察庁に告発されて刑事事件化されればさらに長期化する可能性が高くなります。

3 査察調査への対応の注意点

査察調査で一番重要なことは、検察官への刑事告発を避けることです。
そうはいっても査察調査(特に強制調査)が行われるケースでは、想定されている脱税の額が高額であるなど事案が悪質で、検察庁への刑事告発を前提にしているケースがほとんどといえます。

実際のケースにもよりますが国税局が疑っているような脱税の事実がないこと、国税局が疑っているほど高額の脱税がないことなどを質問調査などにおいて適切な説明を行っていく必要があります。

また場合によっては質問調査への弁護士の同席や、国税局などに弁護士を通じて意見書を提出して交渉することが有効な場合もあります。

4 査察調査に弁護士が立ち会うメリット

(1)はじめに

税務調査や査察調査を受ける場合には会社等に、税務の専門家である調査員や国税局の査察部員が来ることになり、対応に大変不安を覚えるかと思います。

税務調査(査察調査)において、税理士ではなく弁護士が立ち会うメリットを説明します。

特に刑事告発の可能性が高く、適切な対応が重要になる査察調査への対応に関して弁護士が立ち会うメリットを説明していきますが、以下で説明する各メリットは大部分が税務調査についても妥当します。

(2)査察部員からの質問に対する回答へ適切に対応できる

査察部員による調査では脱税にあたるかどうかについてなど、詳細な事実について質問されます。場合によっては現場で提出した資料に基づいて質問や指摘がなされる場合もあります。

弁護士は当該証拠からある事実が認められるか、法的な効果が発生するかの判断に精通しています。

したがって弁護士が査察調査に同席することによって場合によっては当該資料から問題とされている脱税の事実が認められないことや、法律の要件に照らして査察部員の指摘が誤っていることなどをすぐに指摘し、反論するなどして不当な課税処分を防ぐ事ができます。

このように査察部員からの質問などの調査に対して、弁護士が立会い、適切な主張や反論をすることで誤った処分などを防ぐことができます。

もちろん、査察部員の指摘が適切であった場合にも即座の修正申告を申し出るなどして刑事事件に発展しないように早期解決を交渉することも可能になります。

(3)調査の手続きの違法を即座に主張することができる

査察調査の手続きについては国税通則法に定めがあります。

国税通則法では査察調査の際に説明する義務がある内容や、どの程度理由を説明しなければならないかなど手続きのルールについて詳細に規定されています。

法律の規定に精通した弁護士が立会いをすることで適正な調査を行わせるための牽制にもなりますし、万が一国税通則法の規定に反する調査が行われた場合に、指摘し是正支えることが可能になります。

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