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税務訴訟の傾向
一口に税務訴訟といっても、様々な形態のものがありますが、その多くは処分や裁決に関する取消訴訟です。
ここでは、税務訴訟としての取消訴訟を念頭において説明をしていきます。
税務訴訟には、大きく分けて租税の課税処分に関する課税訴訟と租税の徴収処分に関する徴収訴訟に分類されますが、課税訴訟が大半を占めています。
課税訴訟における納税者の勝訴率は10%前後となっており、納税者にとって非常に難しい訴訟といえるでしょう。
不服申立前置主義
租税処分に関する取消しを求める訴訟は、行政訴訟に属することになり、不服申立前置主義がとられています。
不服申立前置主義とは、不服申し立て手続を経ないと、訴訟が提起できないとされているもので、不服申し立て手続きを経ていることが一種の訴訟要件となっています。
課税処分との関係でいえば、国税不服審判所長に対する審査請求をした後でなければ取消訴訟を提起することができないということになります。
将来の訴訟を見据えて、審査請求などの不服申し立て手続をすることが必要となります。
専門部で審理される
税務訴訟については、裁判所の「行政部」と呼ばれる部署で審理されます。
行政事件を専門に扱う部署のため、最新の判例傾向や手続について精通しており、的確な訴訟指揮が期待できます。
もっとも、税法については様々なものがあり、その内容も複雑なため、裁判官が問題となっている税法についての十分な理解を持っているとは限りません。
そのため、事実についての主張だけでなく、税法の解釈などについての主張もする必要性があり、主張・反論の機会が多く設けられることから、審理の時間が長くなる傾向にあります。
また、理論的な問題について争われることも多いため、理論的な主張を展開するために必要な専門的な文献を引用したり、多くの証拠を提出する必要がでてきます。
さらに、税法学者の方に意見書を書いてもらうこともありますが、その場合には意見書作成のために相当な期間がかかるために、訴訟がその期間止まってしまうということもあります。
このように、専門部で審理されることによるメリットもありますが、専門的な内容を審理するために、当事者としても専門的な知識を身に着け、相当な長期間を戦い抜く覚悟が必要になります。
総額主義
課税処分の取消しに関する紛争については、「総額主義」が採られていることから、課税処分の税額全体が果たして妥当であったのかどうかを争うことになります。
総額主義とは、「処分の同一性は処分によって確定された税額、すなわち、租税債務の同一性によって判断する」ことをいい、課税処分に対する訴訟の対象は、「確定された税額の適否」となります。
これに対する概念として争点主義があり、これは、「処分の同一性は処分理由の同一性によって判断する」ことをいい、こちらの訴訟対象は、「処分理由との関係における税額の適否」となります。
争点主義の場合には、処分理由ごとに適否が判断されることになり、違う処分理由であれば適法となるが、争われている処分理由では不適法となる場合には、処分が取り消されるということにつながります。
一方総額主義の場合には、実際に課税処分が行われた処分理由にとらわれず税額全体が適法かどうかを争うことになるため、課税処分の理由を変えれば税額が適法となる場合には、処分が維持されることになります。
そこで、課税当局は様々な処分理由を追加で主張してくることが考えられますし、納税者側としても様々な主張・反論を準備しておく必要があります。
原則として和解では終結しない
取消訴訟は行政訴訟にあたるため、基本的には和解で争訟が終結することはありません。
もっとも、まったく和解で終結することがないかというと、そういうわけではなく、和解の提案を裁判所が行う場合もあります。
和解で終結する場合には、判決で終了する場合に比べて時間が短縮されることになりますが、和解の提案を課税当局側が拒否する場合も多く、そのため、判決まで訴訟を継続することになり、一般の民事訴訟と比べてかなり長い期間争いを継続する必要があります。
このように、税務訴訟の場合、行政訴訟に該当するため、一般的な民事事件と比べて時間や労力が非常に多くかかる傾向にあります。税務訴訟の勝率も10%前後という厳しい現実もあるので、訴訟に向けた準備をしっかりしていく必要があります。
専門的な知識が必要になるので、ぜひ一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。