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本年10月からインボイス制度が実施されました。
いまさらながら、インボイス制度とはどういうものか再確認してみましょう。
インボイスとは何か?
インボイスとは、日本語では「適格請求書」と言われます。これは、一定の商品の取引に際し、「売手から買手に対し、正確な適正税率、消費税額等を伝えるための手段」とされ、従来の請求書に
①事業者(売手)の登録番号
②適用税率
③税率ごとに区分した消費税額
の3つを要件として追加して記載した請求書のことを言います。
このインボイスは、請求書であり、売手側が買手側に発行することになります。すると、買手側にはどのような効果が生じるのでしょうか。
買手のメリット
買手は、このインボイスをなくすことなく保存することにより、税申告時に「仕入税額控除」を受けることができるのがメリットです。
「仕入税額控除」とは、インボイスの中には、上記のとおり③消費税額が記載されており、買手は、この消費税額含めた仕入代金額を売上金から差し引くことにより、課税対象となる収益が消費税額分だけ低くなることから納税額が抑えられるという仕組みになっています。
具体例では
たとえば、100万円の原料を消費税込みの110万円としてインボイスを受け取った買手は、製品として200万円の売上金を得た場合に、200万円-110万円=90万円(収益)となります。これに対し、同じ原料をインボイスの登録事業主でない売手から仕入れて200万円で売り上げた場合、仕入れ代金が消費税込みで110万円であったとしてもインボイスでない一般の請求書の場合には「仕入税額控除」として10万円を計上することができず収益は、200万円-100万円=100万円となり、消費税分の所得控除が受けられないことになります。
これが買手のメリットとなります。
また、インボイス発行者、受領者に共通するメリットとして、消費税の取扱の簡素化、迅速化につながるメリットもあるでしょう。
免税事業者の場合には?
申告期間の売上が1000万円以下の事業者は、たとえ、取引先から消費税額を受け取っていても、売上が1000万円以下ならば、免税事業者として消費税の申告は要りません。
では、1000万円前後の売上の場合、インボイスを発行する登録事業者として登録すべきか、免税事業者のままでいるかが悩ましい事業者の場合はどうなるでしょうか。
登録すると原則として、インボイスを発行できることとなり、買手がそのインボイスを受け取り、「仕入税額控除」を受けることができ、良好な取引先として取引を継続してくれることにつながるでしょう。
これに対し、登録せず免税事業者のままでいるならば、自身の消費税申告は確かに不要となりえますが、インボイスを発行できないことから、買手に「仕入税額控除」を不適用ならしめることから、取引先として敬遠されてしまいます。その結果、取引先を失いかねず、結局、総売上の減少を招きかねないおそれがあります。また、ひとたび登録事業者となった場合、1000万円以下の売上であったとしても、登録から2年間は免税事業者に戻ることができません。
経営戦略
果たして、ご自身の場合にも、業種、経営資金力、売上高、消費税の納付の要否、マーケッティング、取引先関係を踏まえた上、インボイスの登録事業者となる途を選ぶかどうか熟慮を要するところです。
もし、迷われたなら、弁護士、税理士に相談することをお勧めします。