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医療機器販売会社と同社の代表取締役を東京国税局が告発した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件の概要
経費を水増しするなどして約1億円の所得を隠し、脱税したとして、東京国税局査察部が、医療機器販売会社であるA社と同社の代表取締役B氏を法人税法違反の疑いで横浜地検に告発していたことがわかった。
関係者によると、B氏は知人が関係する業者に手数料を支払ったように装ったり、金額を水増しした請求書を作らせたりして経費を膨らませ、2021年5月期までの3年間に約1億800万円の所得を隠し、約2900万円を脱税した疑いがある。得た資金は住宅ローンの返済などに充てていたという。
(2023年5月22日、朝日新聞DIGITALの記事より。一部改変)
法人税は法人の所得に課される税金
本事件のB氏は、医療機器販売業を営んでいたということですが、免れた税金は法人税となっています。
所得税も法人税も、同じく、「所得」に対する課税です。すなわち、法人税は、法人の「所得」税です。
所得の金額は、具体的には益金の額から損金の額を控除した金額のことになります。
法人税の申告期限等
法人税の申告には、「確定申告」と「中間申告」があります。
確定申告は、事業年度ごとに行うもので、申告期限は事業年度終了の日(決算日)の翌日から2か月以内です。
この間に、納めるべき法人税額を申告し、納税まで完了する必要があります。
たとえば,3月31日決算の会社は、5月31日までに申告し、納税を完了しなければなりません。
さらに、事業年度が6か月を超え、かつ前事業年度(12か月分)の確定法人税額が20万円を超える法人は、半期(6か月)ごとに中間申告も行う必要があります。
中間申告の期限は、事業開始の日から6か月を経過した日から2か月以内となっており、この日までに申告と納税を完了する必要があります。
確定申告の仕方がわからないなどの場合には、税理士などの専門家に相談しましょう。
刑事告発
本事件では、法人税法違反で横浜地検に告発がなされています。
脱税の方法には種々ありますが、本件では、経費の架空計上によって、実際の経費より多い経費にみせかけ、所得を少なくして脱税をしていたと考えられます。
ここでいう告発とは、国税局が査察調査の結果、刑事罰を与える必要があると考えた場合に、検察庁に刑事裁判にかけること(起訴)を求めて訴え出ることです。
告発は、基本的に脱税をしてしまった人や会社が所在する地域を管轄する地方検察庁に対して行われます。
なお、告発の対象は、事例のように3年間に限定されているのが通常です。
告発を受けた検察庁は、その後刑事事件として捜査を開始します。
場合によっては、被疑者を逮捕して身体拘束をしながら取り調べなどを行います。
そして捜査が終われば起訴するか不起訴にするかを決定します。
国税局から告発を受けた事件で起訴される確率は約70%くらいといわれています。
起訴された場合には、刑事裁判が始まります。
多くの場合、法人の代表者等には執行猶予付きの判決が下されますが、両罰規定によって法人(会社)にも罰金が課される場合が多いようです。
罰金の額は、法人税や所得税の場合、脱税額の20~30パーセントであるのが通常であり、本事例では、約2900万円の法人税を免れたということから、600~900万円くらいの罰金額が予想されます。
刑事告発を受けたら
脱税事件によって刑事告発をされたら、すぐに弁護士に相談しましょう。
告発を受けた場合には刑事手続が開始されます。刑事事件に強い弁護士に依頼をすることで、逮捕を避けることが出来たり、不起訴を勝ち取れたり、刑事裁判の結果が軽くなる可能性が出てきます。