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前回に引き続き、国税庁が6月14日に公開した令和4年度査察調査の概要で紹介されている告発事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
国際事案
事例5
E社及びF等は不正加担者と共謀し、同人が日本における代表者を務める外国法人に架空の支払い手数料等を計上する、あるいは暗号資産を取引所で譲渡した取引の主体を外国法人に仮装する方法などで、法人税又は所得税を免れていた。
解説
事例5で、支払い手数料を外国法人に支払ったように仮装した点は、その分を経費として計上することで過少申告となることはわかりやすいと思いますが、暗号資産の譲渡を外国法人が行ったように仮装したことも、本来であれば譲渡利益が発生しているはずなのにその部分を外国法人に割り当てていることにしているため、利益が出ていないとして過少申告をしているということになります。
国税庁は外国法人を利用したこういった国際取引についても重点事案として積極的に取り組んでいるため、国際取引だからといって安易に加担すべきではありません。実際に、この事例では加担者についても告発されています。
その他の社会的波及効果の高い事案
事例6
トレーディングカードゲームの小売を目的とする店舗を全国に展開し、各店舗においてイベントを行っているG社が、取引事実のない虚偽の領収書等を作成して、架空の仕入高を計上する方法により所得を秘匿し、法人税を免れていた。
事例7
Hは、多数の給与所得者を勧誘し、架空の事業所得の損失を計上して給与所得と損益通算することで所得税の還付を受ける不正手段を指南したうえ、内容虚偽の所得税の確定申告書を作成して同給与所得者に交付し、同人らの所得税を免れさせていた。
事例8
大手繊維会社の従業員Iは、下請業者から資金提供を受けていたが、親族が主宰する法人名で架空の請求書を作成し、当該請求書に基づき、下請業者から自身が管理する借名預金口座に資金を振り込ませるなどの方法により所得を隠匿したうえで、所得税の確定申告書を申告期限までに提出せずに多額の所得税を免れていた。
解説
いずれの事例も架空の請求書や領収書を作成して、金銭を支払ったかのように仮装し、実際には金銭(所得)を隠していたという事例です。
隠匿していた所得の額が高額であったり、不正スキームの指南役がいたり、立場を悪用したりといった悪質性が高いといえる事案が告発を受けています。
トレーディングカードについては、一部レアカードが数千万円の値段が付いたり、最近では投資の対象となったりしており、社会的にも注目されている分野であると言えます。
こういった社会的に波及効果が高いと考えられている事案についても、告発を積極的にして公表することで将来の脱税を抑止しようという目的もあるため、注目されている業種の方については、しっかりと確定申告をしていく必要があります。
まとめ
2回に分けて、国税庁が発表した令和4年度査察調査の概要に紹介されている告発事例を見てきました。
告発を受けると刑事事件として刑罰を受ける可能性が出てくるだけでなく、重加算税などの追徴課税も課されることになります。
そのため、査察調査を受けることになった場合には、告発を見据えて早めに専門家に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、脱税に関する相談は無料で行っておりますので、一度ご相談ください。