【国税庁発表】令和4年度査察の概要

国税庁が報道発表した令和4年度査察の概要について、要点をまとめてみました。

査察の概要とは

「査察の概要」は、毎年国税庁が前年度の査察調査に対する取り組みや実績を報道発表するための資料として作成されているものです。
査察調査の件数や告発件数、起訴された事件での有罪事案の紹介、不正資金の隠匿場所や告発の多かった業種などがまとめられています。
また、査察調査を行った事案についてが、その一部について事例付きで紹介されています。
令和4年度査察調査の概要は6月14日に公開されました。

令和4年度査察の概要

令和4年度の査察調査の概要としては、
①検察庁に告発した件数は103件、脱税総額(告発分)は100億円
悪質な脱税者に対して厳正な査察調査を実施し、1件当たりの脱税額は9700万円。新型コロナの影響を受けた令和3年度と比較して、告発件数及び脱税総額とも大幅に増加し、告発率は74.1%と平成18年度以来の高水準に。

②消費税事案、無申告事案、国際事案のほか、その他の時流に即した社会的波及効果の高い事案を積極的に告発
消費税事案では、不正受還付事案を多数告発。競艇情報販売をしていた個人事業者の無申告事案や大規模な国際事案を告発。そのほか、近年、市場規模が拡大しているトレーディングカード販売業者の事案、SNSを利用し多数の給与所得者に所得税の不正還付を指南していた事案や下請け業者から受けた資金提供を隠匿して自己の収入としていた元請け会社の従業員の事案など、社会的波及効果の高い事案を告発。

③一審判決61件全てに有罪判決が言い渡され、3人に対して実刑判決
実刑判決のうち、査察事件単独で最も重いものは懲役1年4月、他の犯罪と併合されたものは懲役2年8月だった。

という3項目が紹介されています。

重点事案への取り組み

重点事案への取り組みとして、以下の内容が紹介されています。

①消費税事案
消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、34件を告発
消費税の仕入税額控除制度や輸出免税制度を悪用した不正受還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高い事案であることから、16件を告発

②無申告事案
納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告による逋脱犯について、15件を告発
そのうち、不正行為はないが、故意に申告書を提出しないで税を免れた単純無申告逋脱犯を適用した事案は6件

③国際事案
経済社会のグローバル化の進展に伴い、国境を越えた経済活動が複雑・多様化しているところ、様々な国との取引が行われており、国際取引を利用した脱税への対応が求められている。このような状況の中、外国法人を利用して不正を行っていた事案や海外に不正資金を隠しているなどの国際事案で、25件を告発
また、外国当局と不正事案に対する取組等について情報交換を行うなど、当局間の連携強化に取り組んでいる。

④その他の社会的波及効果の高い事案
トレーディングカード販売業者の法人税逋脱事案、SNSを利用して所得税の不正還付を指南し虚偽の還付申告書を提出させた所得税不正還付事案などを告発。

不正資金の留保・費消状況及び隠匿場所

脱税によって得た不正資金の多くは、現金や預貯金として留保されていたが、不動産購入や有価証券への投資のほか、高級品の購入や遊興費への費消なども見られた。
脱税によって得た不正資金の隠匿場所として、①床下に置かれた袋の中、②銀行の貸金庫の中、③クローゼットに置かれた金庫の中などに現金を隠していた例があった。

その他参考計表

①税目別の告発件数
所得税19件、法人税47件、相続税2件、消費税34件、源泉所得税1件

②告発の多かった業種
1位:建設業 22業者、2位:不動産業 13業者、3位:小売業 12業者、4位:人材派遣業 5業者
建設業、不動産業はここ数年1位2位を占めており、取り扱う金銭の額が多いことからも査察調査で狙われやすい業種といえます。

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