このページの目次
国税通則法22条の「郵便」について判断した裁決事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【裁決事例】
ゆうメールによる確定申告書が,法定申告期限後の3月16日に送達され,無申告加算税が適用されたところ,国税不服審判所の裁決でこれが是認された事例
【関係法規の内容】
・所得税の確定申告は,法定申告期限(毎年3月15日)までに税務署長に提出しなければならない。
・「郵便」により,申告書が提出された場合はその消印の日付で提出されたものとみなされる。
・締め切りに遅れた申告には無申告加算税(税額50万円まではプラス15%,50万円超部分はプラス20%)が適用される。
【事案の概要】
本件は,所得税の確定申告を「ゆうメール」で提出した納税者が,法定申告期限(本件では,平成24年3月15日)を超えた同年3月16日に上記「ゆうメール」を税務署に到達させたことから,無申告加算税の賦課決定を受けたというものです。
これに対し,上記納税者が,国税通則法22条によれば,「郵便により提出された場合には,通信日付印により表示された日」に提出されたものとみなす旨の規定を根拠に,「ゆうメール」で提出していることから「郵便」による提出であるとし,無申告加算税の賦課決定を不服として国税不服審判所に審査請求したというものです。
争点は,「ゆうメール」が上記法条の「郵便」(以下単に「郵便」という。)に当たり,発送時点で申告書を提出したとされるか否かという点です。
【裁決理由】
上記納税者は,「ゆうメール」は「郵便」に当たるから期限内に申告書を提出している旨主張する。しかし,「ゆうメール」は,次のように「郵便」には当たらない。
ここに,「郵便」とは,日本郵便株式会社(現行)において,国民の日常生活に不可欠の通信手段として高度に公共性を有する同社の独占事業であり,大量の郵便物を送達距離の長短,交通移動手段の地域差等に関係なく,同社の定める内国郵便約款に基づき迅速処理を果たす業務をいう。
「ゆうメール」は,同社の事務ではあるが,上記内国郵便約款ではなく,同社のポスパケット約款に基づくサービスであり,とりわけ,納税申告書等の信書の運送は出来ないとして,これを引受け拒絶の対象に含ませている。
これらの役務提供上の差異からすれば,「ゆうメール」は「郵便」には当たらない。
したがって,本件申告書は期限後に提出されたものである。
【留意点】
申告書の提出が期限に間に合わなかった場合,無申告とされ,加算税を課されることとなります。
この場合,国税通則法によれば,正当な理由がない限り「無申告加算税を課する。」と規定されており(66条1項),「課すことができる。」とは規定されてはいません。したがって,正当理由がない限り,無申告加算税の一律適用を受けるという不利益を受ける点には留意が必要です。
また,裁決には,税務署等に対し拘束力があり,今後,同一の事案に対し,同様の適用を受けることとなります。
このことから,ゆうメールによる申告書の提出は極力控え,やむを得ないとしても3月15日に必着させなければ不利益を受けることとなります。この点にはくれぐれも留意が必要です。